SEED(ガンダムSEED)
しーど
概要
アニメ『機動戦士ガンダムSEED』において、登場人物が覚醒している状態、およびそれを可能とする因子(宇宙世紀におけるニュータイプへの目覚め的描写に近い)。
『種(SEED)』が割れる描写から、「種割れ」と呼ばれる。
正式名称は『SEED(Superior Evolutionary Element Destined-factor=「優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子」の頭字語)』と呼ばれており、ナチュラル、コーディネイターを問わず発現する(ただし、発現者=保因者はコーディネイターの方が多い)。
保因者が戦闘などで危機的状況に陥った、あるいは感情を発露させたことを契機として覚醒(発現)する。その際、あたかも種(水晶のようにもみえるがタイトルのSEED=種からして)が割れたかのような描写が入るため、この覚醒状態に入る瞬間をファンの間で「種割れ」と言うようになったようである。また、覚醒している間、絵で言う目の中にある白い輝き(ハイライト)が無くなるのが特徴である。
劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』では、演出が変わり、SEEDを持つ者の瞳の色と同じ色のDNAの二重螺旋が走り抜けていき、その中心で『種』が割れる演出となった。
効果
覚醒している間は、空間や環境の把握・認識力が劇的に向上し、周囲のすべての動きが指先で感じられるほど精密に把握できるようになる。その程度は、敵機の装甲にある微細な傷、自機のエンジン音、計器類が示す全ての数値、発射・拡散したビーム粒子の軌跡といったものを全て同時に知覚できるほどであり、背後からの攻撃にさえ反応できる。さらに、運動神経や反射神経も向上し、冷静さも取り戻す(後者については「急に頭の中クリアになって...」と述べられている)。モビルスーツ戦闘においては格上と渡り合えるようになり同格なら優勢を取れるほどのパワーアップに繋がるため、キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、カガリ・ユラ・アスハ、シン・アスカは戦闘に活用している。一方、ラクス・クラインは覚醒はしたものの戦闘に用いたことは『FREEDOM』まで無く、また初めて覚醒描写が描かれたのも『FREEDOM』であった。
一度でも覚醒を経験すると再び契機となりえる状況に陥る度に自動的に覚醒するようになる。契機とする状況の程度には個人差があり、感情の起伏が激しいシンは比較的覚醒しやすい。また、扱いに慣れることによって任意に覚醒できるようにもなる。
戦闘(状況)に一区切りつく≒契機となった状況から脱すると自動的に解除される(裏を返せば状況から脱しない限り覚醒を維持できる)。また、リキャストタイムも長い(作中描写的に数時間単位)ことから、一戦闘につき一度しか使用できない(使用していない)。しかし、フレイ・アルスターを目の前で殺された際のキラだけは極度の絶望と憎悪から短時間に2度目の覚醒を行った。
前述の通り、幾つかの使用制限はあるもののデメリットやリスクは一切存在しないため基本的に使い得となる。任意に覚醒できるようになったキラは頻繁に活用するようになった上、戦闘序盤から覚醒することで数時間単位の長時間覚醒(この間にシンがリキャストを挟んで2回覚醒している)も行っている。
作中世界での扱い
エリカ・シモンズによると(C.E.71年3月23日時点で)「以前一度だけ学会誌に発表されて論議を呼んだ」とされる代物であり、作中世界の科学において因子となる遺伝子マップと超人的な能力を発揮すること以外の詳細は判明していない。そのため、エリカは一般コーディネイターを凌駕するキラの能力を説明するために「想起されたい」という形で無理やり持ち出していた。
一方、コーディネーターのような人為的な遺伝子調整をせずに「超人的な能力を発揮すること」ができる点に着目したマルキオ導師は「人類が進化を遂げるための可能性」と考え、ナチュラルとコーディネイターの軋轢が渦巻くコズミック・イラにおいて保因者こそが人類を融和する存在であるべきとする持論を提唱しており、キラとラクスに対しても「自分の向かうべき場所、せねばならぬことはやがておのずと知れましょう。あなた方はSEEDを持つ者。ゆえに」と説いている。
また、元遺伝子研究者であるギルバート・デュランダルも保因者であることを理由にシンを過度に重用し、オーブ領海外縁での対地球連合軍戦において大暴れした彼の姿を見て覚醒したことに気付いていた。さらには、保因者の彼なら最高のコーディネイターとされるキラを倒しうるとまで考えていた。
ちなみに、全ての保因者は遺伝子研究に精通していないということもあり、自身の覚醒がSEEDによるものだとは知らない(知っているのはマルキオ導師・デュランダル・視聴者のみ)。ただし、キラとラクスについてはマルキオ導師の発言から「自身がSEEDというものを持っている」という認識はある。
保因者
アークエンジェルが危機に陥った際に初覚醒。以降は危機的状況や感情の高ぶりで自動的に覚醒するようになるが、精神的な区切りがついたフリーダム搭乗以降は任意に覚醒できるようになる。
シリーズを通して戦闘回数が最も多いため覚醒数も最も多い(計15回)。
ニコルを殺された憎しみとキラに手加減された(と思い込んだ)怒りにより初覚醒。以降は任意に覚醒できるようになる。
シリーズを通してキラに次ぐ戦闘回数だが覚醒数の方は少ない(計7回)。
初覚醒の要因は不明。
登場作品の最終決戦にて毎度覚醒している(計3回)。
仲間を殺された怒りにより初覚醒。保因者では唯一のナチュラル。
モビルスーツパイロットではなく政治家の道に進んだことから戦闘回数が少なく、初覚醒以降に覚醒したことはない(計1回)。
自身の無力感とそれに対する怒りにより初覚醒。以降は感情の高ぶりに応じて自動的に覚醒するようになる。
『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主役ということで戦闘回数も多いため覚醒数もキラに次いで多い(計9回)。
余談
元ネタ
元ネタは監督の福田己津央が担当した別作品『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』に登場する「ゼロの領域」と思われる。こちらの発動条件が若干緩和されリスク(過集中による消耗)も解消されたものがSEEDという関係にある。
制作側の見解
福田と設定担当の森田繁は共に「火事場の馬鹿力のようなもの」と発言している。それに加えて福田は「突然変異」「種の進化の過程にあるもの」とも言及している。
つまるところ、「(新人類が持ちうる能力として発露した)火事場の馬鹿力の如き力を一時的に使えるようになる突然変異」という簡潔な設定であり、作品タイトルにもなっているもののそれ以上の要素は含んでいない。他のガンダム作品で例えると、イノベイターが持つ脳量子波だけを使えるようになる突然変異といった具合であり、ニュータイプやイノベイターのように保因者自体が新人類というわけではなく、条件付きで新人類の力を前借りしているに過ぎない。
また、21世紀のダーウィン主義における「進化」というのは、突然変異によって生み出される遺伝的変異に自然選択が働くことによって駆動するものとされている。そう考えると突然変異として進化の過程にあるものとしたSEEDはダーウィン主義に忠実な設定であり、戦争という自然選択と合致して生き残るまでの過程を描いたのが『SEED』『DESTINY』『FREEDOM』とも言える。
関連項目
機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
キラ・ヤマト アスラン・ザラ ラクス・クライン シン・アスカ カガリ・ユラ・アスハ:保因者たち。
エリカ・シモンズ マルキオ導師 ギルバート・デュランダル:作中でSEEDを知っており言及したことのある者たち。
イザーク・ジュール:公式スピンオフ『たねきゃら劇場』ガンダム嫉妬・接触編にて、「自分がいつもアスランに勝てないのは種割れできないせいでは?」と考えディアッカを巻き込み特訓するが…?
空間認識能力:C.E.世界における特殊能力繋がり。こちらも作中科学において遺伝子調査を通して有無は分かるが詳細は分かっていない。
ゾーン:元ネタ(ゼロの領域)の元ネタ。