概要
L4宙域に存在するスペースコロニー「メンデル」にて、遺伝子企業G.A.R.M. R&D(Genetic Advanced Reproductive Medical Research Development:高度遺伝生殖医療研究所)のユーレン・ヒビキ率いる研究チームが開発した人工子宮により生まれたコーディネイター。なお、アニメ本編では主に「最高のコーディネイター」と呼ばれている。本項では、広く使われている「スーパーコーディネイター」と言う呼び方で統一する。
C.E.30年に到来した第一次コーディネイターブームにより露見した「遺伝子操作通りに生まれてこない(デザインした塩基配列通りの形質が胚の生育過程で発現しない)」という問題に際して、不均質な母胎という不確定要素に依存していることが原因であることを突き止めたユーレンにより、母体に依存しない人工子宮を開発し、操作通りにコーディネイターを誕生させることを目指して研究が開始された。
そのため、「スーパー(=最高の、〜を超越した)コーディネイター」というより「パーフェクト(=完全な、完成した)コーディネイター」という方が実態に即しているといえる。
その場合でも「パーフェクト=完璧な」と捉えてスーパーコーディネイターと同じ解釈で同じ誤解をできる、またするであろう点はまさに人の業であるが。
しかし、研究は難航し、同僚かつ妻であるヴィア・ヒビキの反対を押し切って実験を繰り返すも多くの命(主に胎児)を犠牲にしていった。
C.E.46年には資金難に陥るも、アル・ダ・フラガから人間のクローニングという違法行為を行う代わりに研究資金を援助するという提案を受け、資金の確保に成功し研究を続行する。しかし、ユーレンはその過程で狂気に囚われ最高の身体能力と頭脳を持ったコーディネイターを誕生させることを考えるようになり、ヴィアに宿った二卵性双生児のうち、男児の方を最後の実験体に選び、C.E.55年5月18日にスーパーコーディネイターであるキラ・ヒビキ(後のキラ・ヤマト)を誕生させることに成功した。もうひとりの二卵性双生児はナチュラルの女児であり、その子こそがカガリ・ヒビキ(後のカガリ・ユラ・アスハ)である。
ちなみに、キラに振られていた被検体番号が「No.00054125」だったことから、犠牲にした胎児(受精卵を含む)は5万を超えていた可能性が高い。
そして、キラの誕生という名の実証実験結果をもって人工子宮も完成したが、同日に計画を掴んだブルーコスモスによる人工子宮と成果物(キラ)を狙った襲撃に遭い、ユーレンやヴィアを含む研究チームの面々は殺害され、研究施設も半壊したことにより、人工子宮をはじめとする研究成果は失われた(この13年後にメンデルでバイオテロが起きたことでG.A.R.M. R&D社自体も倒産した)。唯一の成功例=ブルーコスモスにとって最大の厄ネタであるキラも当初はこの襲撃によって死亡したと思われていたが、偶然にもヴィアから妹のカリダ・ヤマトへカガリと共に預けられており、遺伝子研究に携わっていないカリダはテロの標的からは外れていたため共々難を逃れた。さらに同年には「トリノ議定書」という地球上における遺伝子改変を禁止する国際協定が採択され、それに伴いナチュラルの反コーディネイター感情が最悪となりコーディネイター需要=人工子宮の存在理由も激減したことから、結果として唯一の成功例だけを残してロストテクノロジーとなってしまい、第二第三の成功例が生み出されるようなことはなかった。
キラ以外にも人工子宮開発の過程で生まれたコーディネイターとして、キラと同年に生まれたカナード・パルスが存在するが、カナードはキラと違って失敗作である。カナード以外にもスーパーコーディネイターの失敗作が生存しているかは不明である。また、カナードも100%設計通りに生まれていないための失敗作に過ぎず、能力自体は一般コーディネイターを圧倒して戦闘用コーディネイターと互角以上に渡り合えるほど高く、SEEDと超人的な空間認識能力の有無を除けばキラに近い才能を有している(所謂「規格外野菜」の立ち位置にある)。
基本的に人間の理論値の範疇の能力しか持ちえないと言われることが多いが、完全な状態の遺伝子マップさえあれば、科学的に解明されていない機能でも付与できる可能性が高いことが判明している。
そして、設計側が調整していない要素については、操作の過程で消失しない限りは元来のものを引き継ぐようであり、キラの場合は母によく似た容姿の他、SEEDについても双子のカガリが有していることから、遺伝子操作ではなく元来の遺伝要因に由来している可能性がある。
なお、ギルバート・デュランダルやマルキオ導師の言動的にSEEDの遺伝子マップは解き明かされているようだが、作中世界のSEEDの学術的扱いは珍説であり、キラの直近に作ったと思われるカナードにも組み込まれていないことから当時のユーレンが意図的に組み込んだとは考えにくい。ただし、カナードについてはSEEDの発現に失敗しただけで、キラの遺伝子分析の過程でSEEDの因子を確認したが削除せず意図的に残した可能性も否定はできない。
余談
スーパーコーディネイターの名称とその由来
この用語は本編では一切使われておらず、外伝作品『機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY』で初登場した用語であり、前述したように本編における「最高のコーディネイター」の俗称である。
スーパーコーディネイターと呼ばれる原因は、ユーレンの研究目的を"コーディネイターを越えた新人類の創造"と誤解したためである。『SEED FREEDOM』において"同じメンデル内"で研究されていたアコードが「コーディネイターを越えた新人類」と明るみ出ており、ユーラシア連邦などが回収した資料の中にアコードのものも混ざっていた可能性が示唆されている(そもそも、回収する側はどの研究所で何の研究をしていたかを把握していない)。
逆に、この研究を知っているものは全員が「最高のコーディネイター」と呼んでおり、その研究目的を理解している。一方で、アコードの研究と同一視されたアウラ・マハ・ハイバルとその子供達であるアコードは「アコードの出来損ない」と呼んでいる。
才能と努力
作中にてキラ自身が述べているように、いくら才能・素質があろうと努力しなければ開花することはないため、スーパーコーディネイターがそのポテンシャルを発揮しきるには、あらゆる分野を網羅するための応分の努力をしなければならない。当然努力量と成長速度は常人に比べて比較にならないが、ある程度の努力は不可欠である。
そして、計画の唯一の成功例であるキラはというと、ヘリオポリス襲撃事件までは学校の宿題をサボり友人に泣きつくほどの面倒くさがりだったため、ゲーム好きがたたって興味を持ったプログラミングを除き、その才能を開花させることはなかった。
才能を開花させたプログラミングについても、ゼミの担当教員であるカトー教授がいち早くキラの才能を見抜いて課題責めにした(その課題の中には本職がやるようなものも含まれていた)ことも大きく、さらにやらなければ・できなければ友人諸共死ぬことになるMS操縦も含めて、キラの逸脱した才能はどれも他者や環境から努力を強制されたことで開花したものである。
また、フラガ家の遺伝子由来と思われる空間認識能力の素質もラウ・ル・クルーゼとの何度かの交戦を通して段階的に開花しており、最終的には激情を誘因としたSEEDの発現により完全に開花させた。
これらは「遺伝子的に向いているからと言って性格が向いているとは限らない」という好例悪例であり、MS操縦という人殺しの才能でメンタルを削り憔悴していったキラの様子を見ればよく分かる通り、その生き様や苦悩そのものがデスティニープランへの反論及び起き得る悲劇の縮図となっている。
身体能力についても、劇中にて約7mの高さを容易く飛び降りたり、片手で前方倒立回転をしたりしている他、銃を所持するテロリストに飛びハイキックをかましたり、地球連合軍の軍人ジェラード・ガルシアを合気道の要領で投げ飛ばして制圧する等の描写もあり、先天的な運動神経自体は非常に優れている(マリュー・ラミアスがキラをコーディネイターを疑い出したキッカケもこの身体能力の高さを見たたため)。
しかし、身長の割りに体重が軽すぎることもあって、白兵戦ではアスラン・ザラのような軍人の中でもトップクラスの能力の持ち主には太刀打ちできないらしく、実際に劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』でキラがアスランと拳を交えた時はキラの攻撃はアスランに全く当たらず、一方的に殴られていた。また『FREEDOM』小説版でも、キラは「剣など使えない」「兵士としての訓練さえ受けていない」と明記されている。
これらについては、ポケモンの個体値・種族値・努力値・実数値を用いてわかりやすく例えることができる。改造で全ての個体値を最大かつ種族値の配分を効率化したのがスーパーコーディネイター(キラ)に該当し、いくら個体値が最大かつ種族値が優秀でも努力値を振らなければ実数値は大したことないという話である。
ちなみに、スーパーコーディネイター技術誕生のきっかけとなった問題についても、個体値厳選に失敗した個体を逃がす(捨てる)という点において酷似している。
特殊能力の謎
キラを語る上で「ラウ・ル・クルーゼ製造のために採取されたアル・ダ・フラガの遺伝子情報に由来すると思われる、フラガ家に遺伝する『科学では説明がつかない先見性や特殊能力』を保有している」と言う話しが当たり前のように話題として度々挙がるが、それを指し示す資料は確認されていない。「最高の人類を作ることに固執したユーレンならやりかねない」ことに加え、ラウ、ムウ・ラ・フラガ、レイ・ザ・バレルといったフラガ家の遺伝子を持った者たちと探知し合っている(これによりネオ・ロアノークをムウと判断して確保に動いたりレイをラウと誤認して動揺したりしている)ことを論拠とする一考察である。
『SEED FREEDOM』のシン・アスカや『ASTRAY』シリーズのモーガン・シュバリエにもフラガ家やキラと同じ能力の描写があり、そもそもの話だがフラガ家=空間認識能力の出処とは限らない。
キラの容姿
「最高のコーディネイター」を掲げた割に作中世界におけるキラの容姿は実母ヴィアとよく似ている(つまり作中世界において整った容姿ではあるがイケメンというほどではない)。ユーレンにとって妻ヴィアの容姿こそが最高であったための意図的な措置なのか、自分の子供として容姿だけでも維持したかったのか、調整意図は不明である。カガリとキラは(作中世界基準では)似ていないため、ヴィアに似せるために調整を施した可能性もある。
人工子宮内の発達速度
キラとカガリは母体が異なりながらも同日に生まれたことと、出産の直後にテロがあった=
出産予定が概ね正確に予想されていたことから、人工子宮内の発達速度は人間の母体と同等か、ある程度の範囲で出産のタイミングを調整できると想像される。
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関連タグ
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ユーレン・ヒビキ:開発者。
ヴィア・ヒビキ:助手にして開発者の妻。
キラ・ヤマト:唯一の成功例。
カナード・パルス:実験体の生き残り。
カガリ・ユラ・アスハ:成功例の片割れ。ただし実験や調整はされていない。
アル・ダ・フラガ:資金提供者。
アコード:キラ・ヤマト誕生の約3か月ほど前に最初のロット分が製造された、コーディネイターを越える新たな人類。計画同士の相互関連性は不明だが、初期ロットであるオルフェ・ラム・タオはキラと似ている。
ホシノ・ルリ:『機動戦艦ナデシコ』の登場人物だが、「遺伝子操作で生まれた」という設定を持つためか、共演している『スーパーロボット大戦V』では彼女も「スーパーコーディネイターの成功例」という設定になっている。