概要
個体値とはポケモンの才能・素質を再現するためのシステムである。第1世代の赤緑から存在するシステムで、ある意味『ポケットモンスター』を支える存在と言ってもよい。
本シリーズでは種族・レベルが全く同じポケモンでも、捕まえるたびに能力が変わる。当初はコンピュータRPGでよくある乱数と思われていたが、後に検証によって第2世代以前は0~15、それ以降は0~31の値が振られて、それに応じて能力が変わっていることが明らかになった。以降、このシステムを個体値と呼ぶようになった。
かつては隠しパラメータで”知る人ぞ知る要素”であったが、個体値によってタイプが変わる「めざめるパワー」や個体値を判別するジャッジ機能が実装されたり、果てはステータス画面のグラフで確認できる等、第9世代現在では周知の事実となっている。
なお「個体値」は非公式の呼び名で、一部の攻略本では採用されているものの公式由来ではない。公式は「生まれつきのつよさ」あるいは単に「のうりょく」という表現を用いている。2023年にポケモン情報局公式Twitterの漫画「放課後ポケモン研究部」で「個体値」表記がはっきりと使われたことがあったが、後にそのツイートは削除された。
解説
ポケモンと遭遇した時、HP~特防の各パラメータにランダムで0~31(第2世代以前は0~15)の数値が割り振られる。これに応じてそのポケモンの長所・短所が決まる。
例えば攻撃31のポケモンであれば物理攻撃が得意ということになり、HP31・特防31であれば特殊耐久に優れていることになる。逆に素早さ0なら足が遅い、防御0なら物理攻撃に脆いということになる。
このシステムによって同じ種類・レベルのポケモンでも個性が生まれ、そのポケモンが他のプレイヤーと違う「自分だけのポケモン」であることが強調される。またランダム故に完璧な個体値が成立する確率は限りなく低いため、厳選するにしても妥協が必要で、攻撃特化の個体か素早さ特化の個体か...といった駆け引きも生じる。
非常に画期的かつ面白い要素だったのだが、一部プレイヤーによって改造や乱数調整で無理やり高個体値が生み出される等、公平性を損ねる要因にもなっていた。ほか対戦のノウハウが確立されると個体値だけでなく性格も厳選する必要が出てきたり、素早さ31未満の個体は対戦の土俵にすら立てないことが分かったり、めざめるパワーのために厳密な個体値操作が必須になったり等、手間が増えるだけの謎システムだという指摘も増えていった。
こうした事情を考慮してか、新作の度に個体値厳選のハードルが下げられ、第9世代現在では不正せずとも遺伝・レイド・すごいとっくんで簡単に高個体値を入手できるようになっている。めざパに至っては廃止されている。もはや”個性”という触れ込みは形骸化しており、”レベルに次ぐ育成要素”という扱いになっている。
ほか、大会で好成績を残したプレイヤーと同じステータス調整を施したポケモンを配布する等の救済措置が取られることもある(後述の余談も参照)
個体値厳選のやり方
そもそも厳選しない(すごいとっくん)
第7世代以降は「すごいとっくん」により、好きなポケモンの個体値を31まで引き上げられるようになっている。トリルパ等で素早さ0の個体が必要な場合等を除き、基本的にはこの方法で事足りる。性格は「〇〇ハーブ」で、特性も「とくせいカプセル」「とくせいパッチ」で変更できる。
デメリットとして遺伝するのは元々の個体値であるため、すごいとっくんで孵化厳選用の良個体を作ることはできない。またとくせいパッチは入手難度が高く、無理に変更するよりはレイド等で直接隠れ特性持ちを狙った方が早かったり。
ロード&リセット
主に準伝説~禁伝などの固定エンカウントで使える方法。これらのポケモンはタマゴを作れない関係で3V以上の最低保証がされていることが多く、4V以上が欲しい等の事情がなければ数回のリトライで良個体を入手できる。なお性質上ゲットできるのは1体だけなので、厳選というよりはパラメータの「吟味」である。
デメリットとして性格一致を狙うと少し面倒になる。こだわりがなければ後で「〇〇ハーブ」を使って変更した方がよい。
レイド
第8世代のマックスレイド、第9世代のテラレイドでは良個体を入手しやすい。特に難度★6にもなると5V以上確定でほぼ理想個体となる。状況次第で隠れ特性持ちを狙えるのもメリット。性格は「〇〇ハーブ」で変更しよう。
ミラクルボックス/マジカル交換
『ポケモンホーム』のミラクルボックス、もしくは『SV』のマジカル交換で良個体をもらえるまで交換を繰り返す。
孵化厳選の過程で大量に生み出されたハズレ(通称:孵化余り)をミラクルボックスで流しているプレイヤーは多く、性格一致3~4Vや不一致5Vといった”あと一歩”の個体が流れて来ることはままある。基本的に孵化厳選は対戦目的でやるので、これらの孵化余りは対戦向きのポケモンであることが多く、育てればそのまま実戦に投入できる。
デメリットとしてはやはり狙ったポケモンを入手できないことだが、対戦環境を整えるための第一歩としては悪くない選択肢である。
孵化厳選
過去世代で主流だったやり方。タマゴから生まれるポケモンは両親の個体値をランダムで3種類(「あかいいと」で5種類)受け継ぐ仕様があり、それを利用して良個体を作る。
例えば攻撃Vの父親+素早さVの母親の組み合わせなら、上手くそれぞれの個体値を受け継ぐことができれば子供は”攻撃V+素早さV”の良個体となる。同様に2V同士から3V個体、3V同士から4V個体...といった感じで、どんどん子供を強くしていける。「かわらずのいし」で性格を操作できるのもメリット。
デメリットは恐ろしく時間がかかることで、これしかなかった過去世代はともかく第9世代現在で真面目に孵化厳選をするのは現実的ではない。基本的にはレイドで狙った方がよく、孵化厳選は性格やパラメータのズレ(素早さ以外Vなど)を直すための最終調整として行う。
捕獲厳選
古典的なやり方。同じポケモンを乱獲した後、そこから良個体を厳選していく。運ゲーだが1V程度なら割りとすぐ捕まえられたりする。ここから更に孵化厳選で個体値を操作していくのが昔のやり方だった。現在では攻撃0、素早さ0等、イカサマ対策やトリルパ要員で必要な個体値を狙うために使われる。
作品ごとの個体値
第2世代以前
「こうげき」「ぼうぎょ」「すばやさ」「とくしゅ」の4つのパラメータにそれぞれ0から15までの値が割り振られる。「HP」の個体値は上述の4つのパラメータをもとにして計算されていたため存在せず、第2世代の「とくこう」「とくぼう」は、同じ「とくしゅ」のパラメータを参照していた。
初代作の時点で捕獲した同種族・同レベルのポケモンのステータスが一定していない事は把握されており、一部の熱心なユーザーの研究で「個体値」「努力値」のシステムが明らかにされた。
しかし初代ポケモンの対戦はオマケとして急遽実装された要素だったため、個体値厳選のための仕組みなど整っていなかった。そのため厳選手段は「ポケモンをひたすら捕まえる」しかなかった。そもそも当時は90年代後半でネットは普及しておらず解析ツール等もなかったため、まず個体値を特定すること自体が難しかった。当然、狙って個体値Fを出すなんて不可能である。そのためシンプルに同じポケモンを大量に捕まえて、一番パラメータの高い個体を採用するという手法が取られた。
というか、そもそも三値の存在とそのシステムを知っているプレイヤー自体が少なく、まだタイプ・覚えるわざ・種族値等で強さが議論されていた時代だったので、正直なところ真面目に厳選するプレイヤーは皆無だった。VC版でも一般層はせいぜい素早さFを狙う程度である。
第2世代以降は、タマゴから生まれたポケモンが親の個体値の一部を引き継ぐようになり、「タマゴを使った厳選」が可能になった。とはいえ初代同様まだまだ三値の知名度は低く、00カップの地区予選優勝者が個体値0の努力値MAXを下回る数値のHPの個体を使用していた等という話もあったほどだった。
当時の普通のプレイヤーはタマゴ孵化のシステムをそもそも個体値目当てで行っておらず、マシン技の継承やタマゴ技の遺伝、単純に野生では数量限定であったり入手困難であったりする種族をたくさん集めたい、などの理由で専ら行われた。
後年のVC版のオフ会勢となると4Fかそれに近い個体、対戦仕様のライコウなどを厳選で出すこともあるが、これは極一部の特殊な例なので参考にはし難い。
第3世代
「HP」「こうげき」「ぼうぎょ」「とくこう」「とくぼう」「すばやさ」の6つのパラメータに0から31までの値が割り振られる方式に変更された。
加えて性格システムの実装により、”性格のパラメータ補正と個体値Vを一致させる”必要が出て来たため、厳選の難度は過去作より大幅に上がっている。例えば素早さVでも、性格が素早さ低下補正の”れいせい”だと全く意味がなくなる。
『ルビサファ』の段階ではまだ「シンクロ」や「かわらずのいし」といった性格固定の手段がなかったため、一致3Vのような高個体を狙うのはほぼ不可能だった。いじっぱり+AV、ひかえめ+CV、ようき/おくびょう+SV等、一致1Vで妥協するのが一般的だった。それ以上はもうポケモン廃人の領域とされた。
禁止級伝説が使用できたポケモンリーグ2004決勝大会優勝者のメンバーにラティオスが手持ちとして入っていたが、個体値バグが見られたRSの徘徊産よりマシな0V個体であったことからも、当時の厳選事情が窺い知れる。
開発側もさすがにこのままではマズいと感じたのか、『エメラルド』では「かわらずのいし」に性格を遺伝させる効果が追加され、性格一致+1~2V程度なら現実的なやり込みで実現できるようになった。また廃人コンテンツバトルタワーへの挑戦をきっかけに、個体値厳選に手を出すといったケースも見られた。
一方、乱数調整(エメループ)のやり方が確立され、不正じみた方法で理想個体が作られるなど別の問題も生じた。とは言え、そうでもしないと当時のバランスで理想個体は入手不能だったので仕方のない部分もある。
第4世代
「パワー○○」という持ち物が登場し、タマゴから生まれるポケモンに対し、(1種類のパラメータだけだが)確実に特定の個体値を遺伝させることができるようになった。
この時期に対応ハードであるニンテンドーDSのWi-Fi機能を利用してのインターネット対戦要素も追加されたが、メーカー側からはあくまで通信機能のオマケ要素としか捉えられていなかった。
乱数調整はこの世代の展開期の途中から確立されたがまだ発展途上で、エメループなどの原始的な乱数調整しかできない層は、第3世代の孵化乱数ですらも完全な理想個体までとはいかない状況であった。
それでも、エメループぐらいでもバトルタワー制覇ぐらいなら困らないため、非対戦勢にとってはエメループしかできなくとも不便はなかったと言える。
基本的に各都道府県の予選突破者は乱数調整で理想個体かほぼ理想の個体を調達した者が大半であったが、非乱数勢がWCS2010日本代表決定戦に進出するなど乱数勢以外も健闘した。
当時の一般層は孵化厳選でも2Vから3Vが限度で、4Vともなれば自己最高傑作レベルであった。個体値事情としては他には、適当に野生で捕まえたボックスの余り物が偶々性格一致で2Vだった時に実戦投入するぐらいであったか。
第5世代
ここに至って、インターネットの普及・YouTubeやニコニコ動画といった動画投稿サイトの隆盛に伴い、誰でも気軽に対人戦が出来る環境が整った事や過去の大会の記録映像が見易くなった事・動画配信者側が自身の知識を披露する解説動画を投稿する等の活動を行った事でガチ勢とカジュアルプレイヤーの差が浮き彫りになり、「個体値」「厳選」といった用語が一般にも知れ渡るようになった。
また、ボタンを押しっぱなしで延々と走り続けられる施設や、コストさえ支払えば瞬時に卵を孵化出来る店などが導入され、卵孵化厳選を念頭に置いている様な要素を公式が追加してきた。
乱数勢はA05Vや6Vといった理想個体を簡単に使えるようになり、非乱数勢も頑張れば4Vぐらいの個体で対戦の土俵に上がれるなど、個体値事情も改善された。誇張でも何でもなく、その辺の野生のA抜け5V、C抜け5V程度は乱数調整で3分もあれば手に入るぐらいである。熟練者かつプレイ環境が理想であれば、A05V、6Vといった個体値6箇所全部理想かつ性格・特性一致の個体が孵化厳選で1匹あたり10分前後で手に入る。
ニコニコ生放送でポケモン生主に配布個体を貢げば乱数調整で調達した理想個体を手に入れることも世代展開期当時はできた。
GTSを利用していても善意のプレイヤーから貰えれば3Vぐらいの孵化余りが貰えることがあった。
残念ながらメーカー側の経験不足もあってこの時期の対戦環境はあまりよく評価されてはいない。
第6世代
前作の反省もあってか、ここにきて厳選環境は大きな転換点を迎える。
まず、タマゴの親となるポケモンに「あかいいと」というアイテムを持たせることで、最大5個までの個体値が遺伝するようになった。タマゴが利用できない伝説ポケモンについても、最低でもいずれか3つの個体値が最大で登場するようになっている。
加えて、多数のポケモンのサブウェポンとして扱われてきためざめるパワーの威力変動が廃止され、60固定でタイプのみ変動となり、この点でも厳選難易度は低下した。
また、メーカー側でも対戦レギュレーションの整備や更新を行なう等の対応を順次するようになった。
とはいえ孵化効率は第7世代以降と比べると悪く、そうしたこともあって素早さが重要でないポケモンの素早さ個体値を妥協したA抜け、C抜け4V、耐久が重要視されないポケモンの耐久個体値の箇所を妥協した4Vがまだまだ草の根レベルでは普通に使われていた。特に乱数ポケモンが締め出されたレーティングバトルORASリーグでは、第6世代から伝説のポケモンが最低3V保証となったとはいえ、まだまだ準伝説を4V程度で妥協するプレイヤーも多かった。
第7世代
長年隠されてきた「個体値」のパラメータを、プレイヤーがグラフの形で遂に目視で確認できるようになった。もちろん、パワー系や「あかいいと」による個体値の遺伝の仕組みもそのまま引き継がれている。
更に、「すごいとっくん」が追加され、個体値が低いポケモンであっても最終的には個体値を最大まで強化することが可能になった。詳しくは当該項目参照。
ただし、すごいとっくんによって引き上げられた個体値パラメータは「さいこう」ではなく「きたえた!」と表示されるため、それを嫌って今までどおりの厳選を行っているプレイヤーも存在する。
まだまだ個体値厳選は一定程度の負担がかかる作業であったため、攻撃のステータスを先制攻撃技でしか使わない両刀型で攻撃の個体値を妥協する、先手を取ることを求められない起点作り型や耐久型で素早さの個体値を妥協するなど、ガチ勢の中でも妥協個体は一定数存在した。当時両刀型性格でもU箇所次第では5V1Uの個体が普通に実戦投入圏内であった(そもそもU箇所と努力値配分次第では5V1Uと6Vとでステータスに変わりはなかった)。正直、レーティングバトルで高レートを目指すなら、厳選に拘るよりも多少個体値を妥協してでも様々な型を試してパーティを回した方が良いまであった。
当時動画サイトで配信されるミラクル交換会の主催者も、3V、4Vぐらいで妥協した孵化余りを放流することが普通にあった。特に後年より手に入りにくい高個体値メタモンでないと高個体値の量産が難しい性別不明ポケモンなどでは猶更であった。つまり、この世代でも個体値事情は改善途上であったと言える。
尚、ミラクル交換の配信者が配信中にリスナーからミラクル交換で送られた個体の個体値を確認する行為は、個体値で貰った個体に優劣を付ける行為として失礼にあたるとされる傾向にある。
第8世代
『剣盾』はシリーズ中、厳選環境が最も緩和されたと言ってもいい作品となっている。
まず、新要素のマックスレイドバトルで高個体値のポケモンと遭遇しやすくなっている。レベルが上がるほどポケモンの個体値は高くなり、基本的には挑戦するレベル-1個のステータスで「さいこう」の状態が保障されているが、ピックアップレイドでは挑戦するレベルと「さいこう」になっているステータスの個数が同じになっているため、最高ランクの★5のレイドをクリアできれば、5V以上の個体が確実に手に入ることになる(運が良ければ6V個体や即戦力として使える個体が手に入ることも)。もちろん最高ランクであることもあり、攻略難易度は相応に高いものの、苦労して挑戦するだけの価値は十分にあると言えるだろう。
もちろん、パワー系や「あかいいと」の仕様も前作から引き継がれている。
また、本作の預かり屋では「横並び遺伝」という新たな遺伝のシステムも確立(詳細は預かり屋の記事を参照)。加えて、めざめるパワーが廃止された代わりにわざマシンの種類が実質200種類に増加、めざパ依存だったポケモンも何らかの形でサブウェポンを覚えられるようになった。つまり、技の遺伝と個体厳選を同時に熟したり、めざパを気にしたりする必要がなくなったため、気兼ねなく5Vや6Vの個体を作れるようになったわけである。
こうしたテコ入れもあり、第8世代はこれまでの作品と比較しても厳選の難易度が劇的に低下しており、カジュアルプレイヤーであっても、遺伝の仕組みやタマゴグループに関する知識さえしっかり身に着けることができれば孵化厳選も含めた個体値厳選が比較的手軽に行えるようになった(タマゴグループや技遺伝の複雑な経路に関しても、現在は攻略サイトの充実もあり、少し調べれば簡単に情報を入手することができるので、わざわざ暗記する必要がなくなった点も大きい)。
このため、孵化厳選で5Vや6Vを狙っている程度ではもはやポケモン廃人とは呼べなくなったという声も一部ではある(理由は後述)。
…そうしたこともあってか、BDSPでは、ポケモンの個体厳選や育成の仕様がDPt当時に近いものに戻ってしまったため、特に剣盾でのお手軽さに慣れてしまったプレイヤーの間ではかったるいと感じる者が続出することになった。グラフによるステータスの可視化や、遺伝用のアイテム、すごいとっくん等、剣盾からそのまま引き継がれた要素も多いのだが……。
幸いなことに、現在はポケモンホームとの連動が解禁されているので、どうしても厳選するのが面倒だという場合は、高個体値のポケモンの手に入りやすい剣盾で厳選してから連れてくるという選択も十分ありだろう。
一方、『LEGENDSアルセウス』では個体値は存在しない。
これは、そもそも個体値厳選が意味を為す対人戦要素自体が現状採用されていないことも影響していると考えられ、このため過去作と比べると厳選の難易度が低くなっている(というか、厳選する重要性すら薄れている)。
本編タイプのスピンオフで個体値がシステムとして実装されていないというのは中々に珍しいと言えるだろう。
その代わりに「がんばレベル」というものが実装されている。本編作品に移した際の個体値は初期がんばレベルによって決まり、がんばレベル3で個体値31となる。ただし本編での「おうかん」と違い、道具を使って上げた分は考慮されない。
従って、本編作品でも使いたい場合はがんばレベルにも気を遣うと良いだろう(特に下げた方が良いステータス)。
第9世代
『SV』では孵化のユーザーインターフェース自体は第8世代よりも大幅に改悪されたと断言して差し支えない。
特に個体値0の箇所を自分で粘る場合、例えばHBD0の個体を一から作る場合は、一種の苦行と見做して差支えが無いほど多大な労力を要する。何せ個体値0の箇所を粘りながら個体値Vの箇所も粘らなければならないのだから。
そもそもHBD0の最脆個体の親はマジカル交換でもまともに流通しておらず、くれる人が特別にいない限り本当に自分で用意するしかない。
一方で、すごいとっくんがレベル50から可能となり、ぎんのおうかんもデリバードポーチにて20000円で市販されている。金策手段を考える必要はあるが、5Vや6V相当のステータスにするハードルに関しては大きく下がったと言える。
その金策手段も、発売当初から2年以上の間学校最強大会を利用した金策ニンフィアが存在しており、それが利用できなくなってからも2024年4月にどうぐプリンターの状況再現が確立されたことで、育成アイテムや換金アイテムを自在に乱造できるようになっていることから、そこまで確保には困らなくなっている。
このため、後述するA0個体やS0個体等を粘る場合を除いて、個体厳選をするメリットはほぼなくなったと言える。
この流れを受けて、本作ではストーリークリア後に遭遇できる伝説ポケモンも、V保証がなくなっており、相対的にA0やS0を狙いやすくなっている。Vが狙いにくくなったデメリットも、上記のようにおうかんの入手難易度がかなり緩和されたことを考えると殆ど無きに等しいと言って良いだろう。さらに、性格補正を変更するミントも店売りされたりレイドの報酬として入手出来たりと手に入りやすくなったため、極端な話、伝説ポケモンを厳選する際はAとSのどちらか(場合によっては両方とも)が0になっているかどうかにさえ気をつければ良くなったとも言える。
個体事情が余りに良くなり過ぎたせいか、色違いのついでに個体値を粘っている場合、A抜け5VやC抜け5V程度なら躊躇いなく逃がし、A05Vや6Vでようやくキープするプレイヤーも目立つようになった他、動画配信者の交換会でも、世代展開期やメタモン配布を除けば、個体値という項目はリスナーを惹き付ける要素としてほぼ顧みられないこととなった。
一方で、最強レイドで6V確定のポケモンを配布したり、2023年4月上旬に5V以上が確定したメタモンのイベントレイドを実施する等、個体厳選をしたいユーザーに対する救済措置と思われるゲーム内イベントを行ってもいる。
公式としても厳選という行為からの脱却を促しつつも、厳選をしたい古参ユーザーを蔑ろにはできないという難しい事情を抱えている模様で、かなり難しい匙加減を迫られていると言える。
総じて、一部に苦痛度の高い部分があるとはいえ、厳選したいユーザーもそうでないユーザーも楽しめるようバランスが取られているというべきか。
あえて個体値を下げるメリット
こうしてお手軽に最高値を狙えるようになった個体値だが、実をいうとメイン画像の台詞のように6Vのポケモンが常に理想個体になっているかというと必ずしもそういうわけではない。というのも個体値を下げる事に大いに意義があるケースが多々あるからである。
先述の通り31は狙いやすくなっているが、31に固定化されるということは0を狙いにくくなっているということであり、厳選はやや面倒となっている。これから厳選することを考える場合、もしもどこかしらのステータスが「ダメかも」になっている個体を持っていた場合は、手放さずに遺伝要因として残しておくことを強くお勧めする。
なお、個体値を下げるメリットとしては以下の例がある。
素早さ個体値を下げる(通称“S0”)
- トリックルーム下で先手を取る
最もメジャーな0を狙う理由。
基本的に素早さの極端に低い種はむしろ素早さ最低を狙った方が有利になるケースが多い。
が、もちろん狙い過ぎると枷になるのでそこは要相談。
- ジャイロボールを採用する
ゆうかんナットレイ(素早さ種族値20)が撃つ場合、個体値Vだと最速レジエレキ相手ですら最大威力を出せないが、0だと最速キノガッサでも最大威力を狙える。逆に言えば、素早さが重要ではないポケモンは相手のジャイロボールの威力を下げるために素早さ個体値を下げてくる可能性も考えられる。
- 天候・フィールドを奪う
アナウンスされる特性は基本的に素早さの高いポケモンから発動するため最後に発動して上書きする。ユキノオーやカバルドン、コータスなどが代表格。
- スピードスワップを使う
相手と自分の素早さを入れ替える技「スピードスワップ」を使用するポケモンの場合、当然自身の素早さは下げた方が良いことになる。
ギルガルドは、特性バトルスイッチにより「シールドフォルムで相手の攻撃を受ける→フォルムチェンジをする→アタックフォルムで攻撃する」という順序で行動する場合に実質的なステータスが大きく上がるポケモンである。そのため「相手より後に行動する」ことがメリットになるため、狙って素早さを下げる事が少なくない。
相手に攻撃したのち控えと交代するこれらの技は後攻で打つ事で控えへの負担0で交代することができる。
優先度による後攻の補正がないカウンター技のメタルバーストやほうふくは、相手より遅くなくてはまともに使えない。
- TOD時の回復技
TOD戦術、すなわち時間切れによる判定勝ちを狙う場合、最終ターンに後攻で回復技を使えた方がHP量の判定で有利になる場合がある。
ほろびのうたは行動順が遅いほど後に倒れる。この技により戦闘が終了すると最後にポケモンが倒れた側の勝利となるため、素早さを下げて判定勝ちを狙う戦術がある。
攻撃系個体値を下げる(通称“A0”、“C0”)
特殊アタッカーや攻撃技を使用しないポケモンは基本的にこうげき個体値は下げ得と言える。一応、こだわりスカーフを持たせたポケモンがかなしばりを受けてわるあがきを出すなど、こうげき個体値が高い方が得をする場面も存在しているが、後述のようにメリットの方が圧倒的に大きいのでそこまで気にする必要はないだろう。
一方で、とくこう最低(通称C0)は現状A0と比べるとパワーシェア対策と味方攻撃時の被ダメージ軽減、第9世代のテラバースト関連以外でこれといったメリットがなく、無理に厳選する必要はないとする見方が多い。
- イカサマのダメージを減らす
相手の攻撃力の高さを参照してダメージを与える「イカサマ」の存在により、特殊アタッカーのAを0にすることは上級プレイヤーの間では必須と言われている。特にあく弱点のエスパー・ゴーストタイプのポケモンの場合、Aが最低か否かでイカサマを喰らった時のダメージで雲泥の差が出る。
とはいえダブルバトルでは等倍以下かつ特殊型の相手に「イカサマ」をポチポチ押すのが非合理なプレイングであるため、そうしたポケモンのAは妥協することが多い。第七世代の公式大型大会の優勝パーティの個体を再現した配布ポケモンも日本勢のものを再現した場合はA妥協が多く、極端な例ではWCS2017優勝パーティのゴルダックを再現したA30個体というものまである。
王冠育成が劇的に容易化した第9世代ですら、2023年ラテンアメリカ国際選手権優勝者の個体をそのまま再現した配布ペリッパーのAが8だったという事実があり、海外勢もA0にはあまりこだわりが無く、また界隈でA0厳選を徹底するかどうかは厳選・育成環境の改善に関係ないのかもしれない。
もっともこのような傾向は「いばる」が弱体化した第七世代以降の事で、第六世代は特にボルトロスが「いばる」サポーターとして猛威を振るっていたためA0厳選が半ば必須な環境であった。
- こんらん自傷時のダメージを減らす
あく弱点でなくともこんらん時の自傷ダメージを軽減できるというメリットもある。
- ちからをすいとるの回復量を減らす
相手の攻撃能力値に依存する回復技、ちからをすいとるを使用する相手に対してその回復量を減らすことができる。
- パワーシェアで相手を弱らせる
攻撃・特攻を搾り取って弱らせる。ツボツボに使わせる場合はほぼ必須。
ただ、パワーシェアは現状かなり使いどころが限られる技なので、これを理由に0を狙うというプレイヤーはあまり多くない。
- ステータスが下がった際にもテラバーストで攻撃か特攻の内の狙った方を参照できるようにする
この技は、自分のランク補正込みのステータスが攻撃>特攻なら物理技になる特殊技だが、この時物理技になるか特殊技になるかでテラバーストを放つ側が受ける側に正常な役割を持てない場合がある。そこでA0厳選やC0厳選が行われる。
やや冗談に近いが、パオジアンのC0を粘る者が挙げる理由としては、A2段階下降時にギリギリAを参照できるというものがある。もっとも、パオジアンの場合はそもそもA2段階下降していればその時点で通常火力を撃たずにカタストロフィで後続に繋いだ方が得策なので、机上の空論に近い話だったりするが。
物理技・特殊技のうち一方にしか影響しない火力強化系特性を持っているパオジアンもそうだが、「ちからもち」を持つマリルリのように攻撃の実数値と実際の火力がかけ離れている種族の場合も、このような厳選は意味を持つ。参考までに、A無振りマリルリのA実数値70はCVマリルリのC実数値72を下回る。まぁ随分特殊な調整でもない限りA実数値がC実数値を下回るマリルリなど環境にはいるはずもないのだが。
第一パオジアンやマリルリのような(事実上の)火力強化系特性を持たない種族の場合、テラバーストの純粋な火力を追求するならA0やC0よりVであった方が好都合であったりする。
- 味方に攻撃する際のダメージを減らす
など
ダブルバトル、トリプルバトルにおいて、味方に攻撃するギミックでダメージを減らす。
ただし、残りHPの少ない敵ポケモンにこおりのつぶてを打つ場面で確定数がズレるなど、裏目に出る場合もあるので自身のPTと要相談。
防御系個体値を下げる(通称“D0”・“B0”)
- 反射技のダメージを増やす
上級者の間で好んで使われる襷カウンターが好例で、防御・特防が中途半端に高いと反射ダメージが足りない、という場合。第8世代のダイマックス環境では結構重要。
- ダウンロード対策
特性「ダウンロード」(ポリゴン系統等が持つ)は、相手の「ぼうぎょ」と「とくぼう」の能力値のうち「ぼうぎょ」の方が低い場合に「こうげき」が、「とくぼう」の方が低い場合に「とくこう」が上がる効果を持つ。
対戦でよく使われるポリゴン系統は種族値的に特殊型のパターンが多いため、あえて「ぼうぎょ」個体値を下げる事で上がるステータスを「こうげき」にし、相手の特性を腐らせる事ができる。ただしポリゴン2の中には物理技採用の型もいるので逆に調整が腐ることも。
ヌケニンとメタモン対面でのみ発動。変身後もHPは据え置きの関係上ヌケニンをメタモンにへんしんされると普通にHPが高いヌケニンが生まれてしまうため、こちらの技で倒しやすくするため防御系個体値を下げる。そもそも本物のヌケニンはHP1固定のため防御系能力は事実上使用されておらず、下げるデメリットなし。
HP個体値を下げる(通称“H0”)
- いのちのたまの反動ダメージを減らす
攻撃後に自分の最大HPの1/10を減らすいのちのたまを使う場合、HPを調整し下げる事で反動ダメージを減らし、逆に得をするパターンが存在する。
自身のHPを削り身代わりを生み出す技「みがわり」と、HPが1/4になった時にランク上昇などの効果を発動するきのみを組み合わせる際、3回のみがわりでちょうどきのみ発動圏内に入るようあえてHP個体値を下げる調整をする場合がある。
- 一部の回復技を使う
「やどりぎのタネ」や交換後の「ねがいごと」など、自分のHPに関係ない量回復する技を使う場合、自分のHPを下げた方が「きあいのタスキ」などの発動条件を満たしやすくなる。
HP&防御系個体値を下げる(通称“最脆”)
- がむしゃらを使う
相手を自分の残りHPと同じHPにしてしまう「がむしゃら」を使う事が想定される場合、あえてHPを少なくした方が与えるダメージを増やせる。上記の「じたばた」、「きしかいせい」のパターンと共通する部分が多いが、きあいのタスキを用いて耐久をギリギリまで下げるパターンが多いため、防御系個体値下げと同時に行う事が多い。
- 倒れやすくする
ギミックパーツなどの役割を果たした後すぐに後続に繋ぐ必要があるポケモンは、相手や味方の攻撃で倒れやすくするため個体値を下げることがある。しれいとうシャリタツ等が有名。
その他
ビーストブーストは相手を倒した際に自分の最も高いステータスが1段階上昇するため、これをどうしても特定のステータスに掛けたい場合に本来最も高いステータスになる部分の個体値を意図して下げる場合がある。
- めざめるパワー関連(第7世代以前)
「めざめるパワー」は6Vの際は確定であくタイプになるが、あく技を追加効果なしのサブウェポンとして採用するメリットはかなり薄いため、何かしらのめざパを狙う場合は必然的に意図して個体値を下げる事になる。
なお、剣盾およびBDSPでは技自体が存在しないため厳選の際にこれを考慮する必要は無くなった。
能力ランクが変化する技(りゅうせいぐんなど)を使用した際に、テラスタル「テラバースト」が物理/特殊のどちらになるかが変わる。明確な仮想敵がいるなら、個体値によって打ち分けが可能。
救済措置など
上記のように、第8世代以降はマックスレイドバトルやテラレイドバトルにおいて優良な個体値のポケモンを手に入れることができるようになり、わざわざ連鎖を狙う必要がなくなったことから、ライトユーザーでも手軽に個体値厳選に手を出せるようになった。
加えて、近年のシリーズでは、ポケモンWCS等の国際的な大会が開催された際に、チャンピオンが使っていたポケモン1体を期間限定で全ユーザーに配信するという措置が取られるのが恒例となっている(予選・本戦共に)。ガチ勢が厳選しただけのことはあり、6V個体はもちろん、A0個体やS0個体といった、自力で孵化厳選する際の元手としても極めて有用な個体が配信されることもあるのは嬉しいところ。
ただし、肝心の配信期間が1日~数日と非常に短いので、できるだけ逃さずに入手していくようにしたい。大会が開催されることが告知されたら、どのようなポケモンがいつ配信されるのかといったことにも気を付けながら情報を入手していくようにしよう。
ポケモンSVでは、不定期で配信される最強のテラレイドバトルにおいて確定で6Vの個体を入手できる。最高難易度のレイドバトルということもあり、こちらもポケモンの育成など相応の労力をつぎ込まなければならないのが難点であるが、見返りは大変大きいので、腕前に自信があるのであれば狙っておいて損はない。
ポケモンGOにおける個体値
「HP」「こうげき」「ぼうぎょ」の3つの個体値パラメータが存在し、第2世代までと同様、0~15までの数値で評価されるという方式。
実装から長らくは大まかな値を教えてもらえるだけであったが、2019年7月のアップデートでグラフによる可視化(本編でいうジャッジ機能)が実現され、完全な確認が可能になった。
個体値の厳選は基本的には不可能であり、ひたすら数を捕まえるしかないが、「天候ブーストを受けている」「タマゴから生まれた」「レイドバトルやフィールドリサーチで出現」等のポケモンは個体値が高くなりやすい。
2019年9月時点で、ポケモンの個体値を変化させる手段は「ポケモン交換」と「リトレーン」の2つだけ。
ポケモン交換は自分が捕まえたポケモンしか行えないので、同じポケモンを何度も交換に出して個体値を厳選することはできない。
リトレーンは個体値を確実に高めることができるが、「シャドウポケモン」と呼ばれる特殊なポケモンでなければ行うことができないため、普通の個体には縁がない要素である。
ただ、本作は個体値が0~15の範囲で変動となっている関係上、原作と比べると個体値による性能差が極端に大きいわけではないため、そこまで個体値にこだわる必要はないと言われている(ただし、GOバトルリーグで好成績を残したいのであれば話は別で、しかもランクによっては指定されたCP内で強化しなければならない関係上、本編とはまた違った基準での個体値の判別が必要となる)。
そのため、個体厳選はどちらかといえば一種のやりこみ要素としての趣の方が強い。
関連タグ
めざめるパワー:個体値でタイプや威力が決まる。ただし狙うタイプによって細かい調整が必要になり、単純に全能力最高値(6V)を狙うより難度が高くなる。