概要
「ポケモンGO」における対人戦(PvP:Player vs Player)はサービス開始当初から待ち望まれていたが、2018年12月のアップデートによって遂に実現された。
仕様
相手にポケモンを見せ合うことなく双方3匹ずつ手持ちに入れ、シングルバトル形式で行う。原作のバトル施設で行われる形式と思えばよい。
ジムバトルやレイドバトル同様通常技を使い続けるとスペシャルアタック(これまでゲージ技と呼んでいたが、トレーナーバトルにはゲージがないためチャージ技と呼ばれる)が使えるようになる。
だがスペシャルアタックの仕様が通常と大きく異なる。
- スペシャルアタックを使用した時、試合がいったん中断される。5秒の間に画面に表示されるマークをスワイプすることでパワーを貯めて放つ
- スペシャルアタックを使われた相手はシールドを張るかどうかの選択を迫られるが、それ以外の行動は取れない。シールドを使えば完全無効化できるが、使用できるのは1試合2回まで
- 両方が同時にスペシャルアタックを使うことはできない。発動が被った場合攻撃が高い方が先攻となる
- スペシャルアタックを受けたとしても自分のスペシャルアタックに必要なチャージは一切変化しない
この他「避けるコマンドが存在しない」「技威力やチャージ必要量が通常とは異なる」など、独自の仕様が多い。
交代についても厳しく、1回交代すると一定時間(30秒ほど)経過するか倒されるまで再交代ができない。なお交代した時にそれまで溜めていたチャージ分は保ったままになる。
一部の技で能力が上昇したり下降したりするが、これは交代した時にリセットされる。
リーグ
以下の3つに分かれている。
- スーパーリーグ(CP上限1500)
- ハイパーリーグ(CP上限2500)
- マスターリーグ(無制限)
何とCP制限が設けられ、これによって最大CPの高いポケモンのフル強化こそ最強とされてきた状況が一変してしまったのだ。
特にスーパーリーグは一部伝説が使用できないことから、マリルリ、チルタリス、ブラッキー、エアームドなどこれまで最大CPが低く注目されなかった様々なポケモンが活躍の場を広げるきっかけになっている。
耐久が高いポケモンの場合最大CPが低いこともあり、制限内で高耐久を実現できるとあって目下引っ張り凧である。
対戦できる相手と報酬
近くにいるプレイヤーと戦うのが一番イメージしやすいが、フレンド機能により「親友」以上になれば遠距離でも戦うことができる(もちろん双方がアプリを起動してあり、かつOKを貰えればの話だが)。
なお、相手がいなくてもチームリーダー(キャンデラ、ブランシェ、スパーク)と何度も戦うことができる。こちらは使用ポケモンが決まっているほか、シールドを使ってくるタイミングも決まっているので対策が立てやすい。
報酬は「チームリーダーと戦うことで1日1回」「他のプレイヤーと戦うことで1日3回」貰うことができる。この報酬には何と「シンオウの石」が含まれ、フレンドに乏しいユーザーからは怨嗟の声が漏れている。
まあ「勝っても負けても報酬の確率に変化はない」のは救いだが。
GOロケット団とのバトル
2019年7月からはGOロケット団のしたっぱと、同年11月からは幹部であるリーダーおよびボスのサカキとトレーナーバトルを行うことができるようになった(サカキは月に一度挑戦できるスペシャルリサーチ限定だが)。
バトルのシステムは概ね通常と同様だが、リーグが存在しない、戦闘後にポケモンのダメージが回復しない(キズぐすりで回復させる必要がある)という違いもある。
また、バトルに勝っても通常のPVP関連のメダルには回数が加算されない(ロケット団関連には“ヒーロー”という別のメダルが存在するため)。
報酬に関しても受け取れる回数には制限はなく、バトルに勝利すれば、1日に何回でも受け取ることができる。したっぱの場合、報酬は星の砂×500とロケットレーダーの作成に必要なアイテムである「ふしぎなパーツ」で固定されているが、リーダーの場合、各種回復アイテムの他、なんと運が良ければ進化アイテムである「イッシュのいし」を入手できる。確率はそこまで高くはないが、狙ってみる価値はあるだろう。また、最近ではどく・あくタイプのポケモンが孵化する12kmタマゴが貰えるようになった。
さらに、勝利後には相手の持っていたシャドウポケモンを1匹捕獲することができる。個体値はランダムだが、リトレーン(浄化)すれば実用レベルの個体値になる可能性もある(稀にリトレーンする必要がない程の高い個体値の者を捕まえられることもあるが)ため、ぜひ狙っておきたい。リーダーの場合、低確率ながら色違いの個体を落としていくこともあるため、運よく遭遇出来たら絶対に手に入れておきたい。
なお、シャドウポケモンは通常の個体と比べて攻撃力が飛躍的に上昇しているため、耐久の低いポケモンだと苦戦を強いられることが多い(例えば、カイリキーのような低耐久高火力型のポケモンに、攻撃力の高さにものを言わせてゴリ押しさせようとすると、あっさり返り討ちに遭ってしまうことも珍しくない)。
また、リーダーは攻撃力だけでなく耐久面でも底上げされているらしく、さらにしたっぱとは異なりシールドも使用してくるので、したっぱの時よりも攻略難易度が上がっている。
こうしたこともあり、通常のトレーナーバトルと同様、多少火力は落ちても、耐久性の高いポケモンを使用した方が結果的に安定して戦いを進めやすくなることもあるため、タイプ相性だけでなく、そのあたりも念頭に置きながら戦うポケモンを選ぶようにしたい。
また、リーダーを相手にする際には、開幕後にシールドをいち早く消費させる必要があるため、発動コストの少ない小技を取りそろえたポケモンが重要視されやすい。
GOバトルリーグ
2020年1月30日から実装されたシステムで、原典でいうところのランクマッチに相当するもの。
プレシーズンを経て、同年3月11日から本格的な運用が開始されている。
内容は、他のプレイヤーと対戦を重ねることでランクを上げつつ様々な報酬を獲得していくというものになっている。
対戦する相手は通信している世界中のユーザーの中からランダムで選ばれるため、フレンド同士の対戦のように中々マッチングできなくて気を揉む…といった心配はないのでご安心を。
なお、対戦は最初の5回は無償で挑戦できるものの、それ以降は3km歩くか距離に応じて一定のポケコインを支払って距離を短縮させないと参加ができないが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う形でこの制約は廃止された(当初の段階では一時的に廃止するつもりだったが、開催期間のほとんどがコロナウイルスの感染拡大時期と被っていたため、永続的に廃止する方向に転換された)。また、ある程度の公平性を期すために挑戦できる回数に制限が設けられており、1日5セット(25戦)まで(※)しか挑戦することができない。
ランクは1~24まであり、シーズン8ではランク1~6、11、16、20では対戦を重ねていけば勝敗に関わりなく昇級することができるが、ランク7~10では各セット1勝、ランク12~15、17~19では到達後に5~20勝以上しなければ昇級することができない。ランク21~24になるとレートをある程度上げないと昇級ができなくなる(ランク21:2000以上、ランク22:2500以上、ランク23:2750以上、ランク24:3000以上)ので、勝率も重要になってくる。
最高ランクの24(LEGENDランク)になると、昇級がなくなり、レートを上げることのみが可能となる。
なお、ズルッグ・ワシボン・プルリル(♂)は当初野生・タマゴ・レイド・リサーチ報酬のいずれでも登場しておらず、ズルッグはランク4以上、ワシボンはランク7以上の報酬限定での入手となっていたが、バトルの苦手なユーザーからの批判があったためか、後日、大発見のリワードに設定することで全てのプレイヤーに行き渡るようになっている(ズルッグとワシボンはタマゴからも孵化するようになった。プルリル♂も特定のイベントでリサーチの報酬になったことがある)。
また、マスクド・ピカチュウがランク24(LEGEND)に到達したプレイヤーへの報酬として実装されている。
また、シーズン8以降はそこまで到達できなかったプレイヤーでもレガシー技を含むほぼすべての技を任意で覚えさせることができる「すごいわざマシン ノーマル」が、ランク19まで昇格させれば、「すごいわざマシン スペシャル」が配布される。
※ 「GOバトルデイ」というイベントが行われる際には制限が緩和され、最大25セット(125戦)対戦できるようになる。また、5戦中1勝もできなかった場合は、特例として1勝するか15連敗するまでバトルに挑戦できる時期もあった(ただし、連敗するとその分レートも下がるので注意)。
問題点
上記のように、トレーナーバトルはジム戦やレイドのような単純な力推しで片づけられるようなものではないため、これまであまり日の目を見ることがなかったポケモンにも多数スポットが当たるようになっており、その点を評価する声は多い。
……が、残念ながらプレイヤーからの評判は国内外を問わずすこぶる悪いのが現状である。
参入のハードルの高さ
何より参入までのハードルが異様なまでに高い。
原作と異なり個体厳選を任意で行うことができず、野生やレイドなどでたまたまゲットしたものを採用するしかなく、しかも交換で個体だけ手に入れようとすると個体値が交換前と変わってしまうせいで貰う前は適性があった個体を貰ったら適性が消滅したなんていう事例まであるときた。初代ポケモンも真っ青である。
スーパーリーグやハイパーリーグであれば攻撃の個体値ができるだけ低いものが最も適性があるのだが、たくさん手に入れようと思い天候ブーストに頼ると個体値0がありえなくなるため適性から外れやすい(4が最低)というジレンマに陥る。レイドバトルであれば手に入る確実性が増すがこちらはもっと不適(10が最低)。更には交換で手に入れようとするとフレンドとの友好度が上がれば上がるほど適性から外れやすくなる(貰う時の個体値が全体的に上昇するため)という仕様全否定の状態になる。つまるところ、スーパーおよびハイパーリーグ用の個体はレイドやリサーチ・キラ交換等に頼らず、野生出現するものから地道に厳選していくしか方法がない。とんでもなく面倒な話である。運よく理想個体を拾えたとしても、その頃にはそのポケモンが既に環境に食い込めなくなっていたなんて事態もありうる。
かといってマスターリーグに照準を合わせようとすると、今度はフル強化が必要となり、ほしのすなやアメ類があっという間に涸渇する。期間限定の伝説のポケモンが手に入るまで待つ羽目になることも。
しかも相棒機能の充実により「相棒にしている時にだけ最高状態」のポケモン(CPが上昇しちょうどいい値となるため)などというよく分からないポケモンまで出てくる始末。
そんなに難しいゲームではなかったはずなのだが……
技の厳選もしなければならず、わざマシンやほしのすなを大量に消費することになる。場合によっては過去覚えられた技を覚えた個体まで投入しなければいけない有様。いつぞやのこいつらである。
さすがにこれはいけないと踏んだか公式が遂に過去覚えられた技の復活に乗り出した。どうして最初から残さなかった。
加えて、本編も楽しんでいるトレーナーは仕様の違いやバトルの単純さに愕然として食わず嫌い状態であることが多い。
フレンド同士で練習試合的に対戦する場合にもフレンドとの友好度を“親友”まで上げないと遠距離での対戦が行えないという制約があった(2020年3月より一時的に撤廃)のもマイナス。
強い人に教えを請おうとしてもそもそも同じ個体が手に入らない以上参考になりにくい。
不具合の多さ
そして、肝心要のGOバトルリーグもフリーズを始めとした様々なバグの温床になってしまっており、さらにこうした評判の悪さに拍車をかけてしまっている。
(フリーズ後に)ようやく再起動したと思ったら一方的に屠られている、相手がシールドを3回以上使用する、こちらが使用したシールドが反映されないなどフロンティアクオリティも真っ青な怪現象まであり、襲いかかるストレスに耐えて我慢しないと上記の報酬は得られないため、どうしようもない。
交代ルールに関する批判
また、交代の制限の厳しさも批判の対象となっている。
基本的にポケモンバトルは不利な対面に持ち込まれたら他のポケモンと交代して事態を打開するのがセオリーなのだが、ポケモンGOのバトルは一度ポケモンを交代させると一定時間交代ができなくなってしまうため、交代ができるまではたとえタイプ相性が不利な対面であってもバトルを継続することを強いられる。
一番の問題は、1匹目の時点で相性が不利なポケモンとかち合ってしまった場合で、そのまま戦闘を続行させるのは厳しいし、かといって交代させようものなら相手もそれに反応して即座にポケモンを交代させてくるので、結局のところ交代させる意味がなくなってしまう。つまり、1匹目で対面不利であった場合、ほぼ8割方負けが確定したと言っても過言ではない程不利な状況に追い込まれてしまうのである。
こちらがポケモンを交代させた後、一定時間相手がポケモンを交代できなくする時間を設ける等の措置を設ければ話は変わってくるのかもしれないが…。
その他
プレイヤーからはこうした不具合や不満点を一向に修正しようとせず、バトル限定の報酬を設けたりバトルに絡んだリサーチを実装するなどすることでトレーナーバトルへの参加を強要させているという批判の声も多い。
遂には、報酬で貰えるポケモン目当てで、わざと連敗を重ねる無気力試合を重ねてレートを下げ、自分より弱いユーザーと当たるようにする者まで出てきている。
本来ならばこんなストレスゲーになるような要素にはならなかったはずなのだが……
しかも、2020年3月以降は、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で、外でのプレイが推奨されず、家でやれることがトレーナーバトルしかなくなったような状態でもこの有り様であり(それどころか、公式がバトルを推奨すべく上記距離制限を完全撤廃したためにバトルに手を出すユーザーが増え、余計にバグの餌食になりやすくなっている)、GOバトルリーグどころかポケモンGOそのもののプレイヤー人口が減少するという由々しき事態の原因の1つにもなってしまった。
流石にまずいと判断されたのか、フィールドリサーチを始め他のコンテンツについても家で出来るようにテコ入れがなされてきているが、それはつまりトレーナーバトル推進が誤りだったことを認めたようなものであり、猶更浮かばれない。
せめて「交換で個体値が変動しないようになる」「遠距離でも交換が簡単にできるようになる」の2つがあれば、参加の敷居はぐっと低くなるのだが、後者はともかく前者は交換目当てでポケモンを集めてきたユーザーからの批判が必至であるため厳しいところである。
そして、現在ではスマートフォンでも遊べるポケモンの対戦ゲームとして「ポケモンユナイト」という強力なライバルまで登場しているため、GOバトルの立場はより一層危ういものになってしまっている。
総括
長々と書いてきたが、要約すると、「参戦個体の厳選がかなり困難」「対戦環境が不安定」「公式の対応のまずさ」「強力なライバル作品の登場」の四重苦に見舞われ、存在意義そのものが窮地に陥っているのである。
一応、動画サイト等で解説動画が続々と出たり、ポケモンWCSの種目としても採用されるなど、バトル好きには一定の需要がある模様であるが、そもそもGOバトルリーグのプレイ人口自体がそこまで多くはないという指摘の声もあり、結局のところ局所的な人気に留まってしまっていることは否めない。
とにかく一人で黙々と進めるしかなく、レイドバトル・フレンド機能・AR写真等でプレイヤー同士の連帯や交流を推進してきた流れの中でトレーナーバトルだけが真逆に孤独の道を進んでいるため悪い部分が余計に目立って浮いてしまったとも言える。
これは散歩ゲームという当初のコンセプトそのものを崩壊させかねない深刻な断絶であり、GOバトルしかやらない人とそれ以外の人とではまるで話が噛み合わず、人間関係のトラブルも発生しやすい。嫌気がさしてポケモンGO自体を辞めてしまうプレイヤーも少なからず存在している。
これらを鑑みて、「結局のところプレイヤーの間に深刻な対立を生み出しただけ」、「そもそも対人戦自体がポケモンGOというゲームと相性がよくなかったのではないか」と言う指摘の声も出ている。