プロフィール
概要
自分の事を『愚者』を意味する「フェルズ」と名乗る謎の魔導師。『ギルド』の主神であるウラノスに仕えている身だが、その存在についてギルドの職員達には知らされておらず、その外見からギルド内では【幽霊(ゴースト)】として噂されており、一種の都市伝説的な存在となっている。
その正体は、800年程前に彼の魔法大国《アルテナ》に所属していた魔導師であり、『神秘』のアビリティを極めた事で、永遠の生命をもたらすとされるアイテム『賢者の石』の精製にただ一人成功した伝説の人物『賢者』の成れの果て。
ちなみに、フェルズのかつての主神は自分の眷族をおもちゃにして楽しむロクデナシの部類だったらしく、せっかく精製した『賢者の石』をフェルズの目の前で砕いてしまい、その事にショックを受けたフェルズを見て腹がよじれるほど笑い続けたとの事だが、この時の『賢者』の話はどうしようもないオチが待ち受けている昔話として現代まで伝わっている(本編2巻でエイナがこの話をベルに教えている)。その後、紆余曲折へと経た末にオラリオへと辿り着き、ギルドの主神であるウラノスに仕える事になった。
本編より先に外伝『ソード・オラトリア』の方で登場し、アイズの前に現れてある依頼をする。本編での登場は第三部・異端児編であり、以降は重要人物として活躍する。
人物像
容姿
全身を黒衣で包んでおり、その姿故に本来の姿はおろか、性別すらも判別できないものとなっているが、その黒衣の下の体には肉がなく、骸骨の姿となっている。
フェルズがこんな体になってしまった理由は、上述にある通り数百年前に『賢者の石』を自分の主神に砕かれた後は、無限の知識を求めて永遠の命に執着し、「不死の秘法」を編み出したが失敗に終わり、寿命こそなくなったがその代償に肉と皮が腐り果てた為である。この事で、自らの愚かさに気づき、『愚者』を意味する「フェルズ」の名を名乗る様になる。
ちなみにフェルズは、自分の体が骨である事は結構気にしており、周囲から骨と呼ばれるたびに「骨と呼ぶな」と叫んでいる。
性格
見た目こそ不気味だが、所々人間臭く、非常に面倒見の良い人物。かつては『賢者』と呼ばれていた事もあって非常に聡明。長生きしている事もあって、虚言、弄言といった、舌戦もやり慣れている。『メモリア・フレーゼ』のイベントなどでは結構ひょうきんな一面も見せており、読者からは「ボケもツッコミもシリアスもこなす有能なキャラ」と称されている。
真面目で純粋故に『偽善者』と罵られて酷く気に病んでいたベルに対しても、「偽善者こそ英雄になる資格があり、愚者であれ」と諭しており、その後の彼の行動に大きな影響を与える事になっている(勿論、フェルズの語っている『偽善者』とは、「善行を働くがその本質は自分の損得のために行う者」ではなく、ベルの様に「自分の信念に従い行動するが周囲からは理解されず自己満足だと罵られる者」の事を指す)。
作中では、モンスターでありながら知性や感情を持ち合わせた『異端児(ゼノス)』達の連絡役を裏の仕事と引き受けており、「人類との共存を願う」彼等を理解し、意見の調整役や庇護を担ったりもしている。また、長年ウラヌスに仕えている故か、神々同様ダンジョンについても何か知っている模様。
劇中の様相
ウラヌスの命を受けて、【ヘスティア・ファミリア】の主神であるヘスティアを半ば強引に連れて行く形でウラノスと引き合わせ、自分は人間でありながら『異端児』のウィーネを保護したベルたちには異端児達の詳細について教えている。
その後、【イケロス・ファミリア】の暴挙によって、オラリオ中が『異端児』を巡る騒動になった際は、【ヘスティア・ファミリア】と共に事態の解決のために奔走する事になる。しかし、ダイダロス通りの攻防戦の終盤では、ヘルメスの神意に踊らされてしまい、異端児達を窮地に追い込んだ失態を犯してしまう。
自分やウラノスと同様に異端児の存在を知り、協力する姿勢を見せていながら、本心では人類と異端児の共存を「絵空事」と見下し、ベルを自分の神意通りに動く『神工の英雄』にするために異端児達の良心に付け込んで『犠牲』を強要したヘルメスには本気で怒りを見せているが、同時にベルが神の思惑通りにはならない「決断」を取ると信じる事を選択。事実、ベルは最後までフェルズの期待通り『異端児』を守るという信念を貫き、アステリオスとの死闘を以って『異端児』を巡る騒動の最中に渦巻いた全ての悪意と神意を覆す事に成功した。
異端児を巡る騒動が収束後は、異端児の望んでいた「人類との共存」は遠のいてしまったかもしれないと嘆きつつも、ベルがオラリオ中を敵に回してでも異端児達を守る為に戦い抜いた姿を見た事で、彼に対して信頼と希望を抱き、主神のウラヌスと共にベルに全てを賭ける事を決意する。
異端児を巡る騒動から数日後、ベルに戦う理由を与える為に「ダンジョン最下層の攻略を成し遂げなければ人類と異端児の共存はあり得ない」と教えている。その際、彼から「ダンジョンとは何なのか?」「最下層に何があるのか?」と聞かれた際は、「結ばれた誓約…そして、決着だ」という意味深な発言をしている。
フレイヤがオラリオ中に『魅了』を施した際、自身も『魅了』を掛けられており、無意識にウラノスの監視を行っていた。フレイヤがウラノスと直接対面した時の会話で『魅了』を掛けられたことを知り、掛けられた事に全く気付かず違和感も無い事には、フレイヤの真の恐ろしさを実感し、戦慄している。その後は、ウラノスに薪の配布を【ガネーシャ・ファミリア】から【ヘルメス・ファミリア】に変更を指示された時は認識改定(リセット)を逆手に取られて、疑問を抱かせることなく従っており、ヘスティアによって自分を含めたオラリオ中の人々が『魅了』から解放される。
【フレイヤ・ファミリア】との『派閥大戦』では立場もあって直接の協力は出来なかったが、リリから『派閥大戦』に勝つ為にありったけの魔道具を提供しろと言われ、異端児の騒動で迷惑をかけた事やリリの迫力もあって、アスフィと共にやむなくこれを応じる。
ウラノスには【ロキ・ファミリア】が『派閥大戦』に参戦できないことを抗議したが、ウラノスがここで選択を誤ればフレイヤは女神の『軛』から解放されず、また過ちを犯すかもしれないという答えを聞いた後、【ヘスティア・ファミリア】が正攻法で【フレイヤ・ファミリア】に勝利するのが王道だと告げたことに、王道だろうが邪道だろうが持てる全てを注がなければ【フレイヤ・ファミリア】は倒せないと愚痴を言っている。
アストレア・レコード
本編7年前の『闇派閥』との戦いが書かれた『アストレア・レコード』では、文字通り不眠不休で行動し、秘密裏に闇派閥の一団を殲滅したり、オラリオ中の冒険者と一般人を陰から治療していた。
能力
戦闘ではLv.4のステイタスに加え、数々の強力な魔道具を駆使して戦う。全身を包む黒衣は呪詛を防ぐことができ、両手には魔力を衝撃波にして放つことが出来る「魔咆手(マジック・イーター)」を装備している。魔法は回復系に特化しており、その回復効果は『都市最高の治療師(ヒーラー)』であるアミッドにも引けを取らない。
『神秘』の発展アビリティを極めている事もあって、絶大な効果を持つ魔道具を製作する事が可能。その腕前はオラリオ屈指の魔道具製作者であるアスフィ以上で、彼女もフェルズの魔道具の規格外の性能に驚嘆している。
このようにかつて『賢者』と呼ばれていただけの能力を有しているが、現在の骸骨の姿になってからは『神の恩恵(ファルナ)』が刻まれている背中の肉を失ったので、ステイタスの更新をする事が出来ず、これ以上強くなることは叶わない。
ステイタス
Lv.4
力 | 耐久 | 器用 | 敏捷 | 魔力 |
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? | ? | ? | ? | ? |
発展アビリティ
- 神秘
神の十八番、『奇跡』を発動させ魔道具の制作が可能となるレアアビリティ。フェルズはこのアビリティを歴史上最高まで極めたとされている。その為、強力なマジックアイテムの数々の発明や、永遠の生命をもたらすとされる『賢者の石』の生成にまで至る事に成功する。
- 魔導
魔法の効果を向上させるアビリティ。こちらのアビリティも最高位まで極めているらしく、フェルズの扱う魔法は「奇跡」とも言える強力な物となっている。
魔法
- ディア・パナケイア
詠唱式:【ピオスの蛇杖(つえ)、ピオネの母光(ひかり)。治療の権能をもって交わり、全てを癒せ】
全癒魔法。対象の疲労や負傷、そして『呪詛(カース)』の呪いすらも、完全に癒す事が出来る。
全ての回復魔法の中でも最上位の効果を持つ。
- ディア・オルフェウス
詠唱式:【未踏の領域よ、禁忌の壁よ。今日この日、我が身は天の法典に背く】【ピオスの蛇杖(つえ)、サルスの杯。治癒の権能をもってしても届かざる汝の声よ、どうか待っていてほしい】【王の審判、断罪の雷霆(ひかり)。神(しゅ)の摂理に逆らい焼きつくされるというのなら、自ら冥府へと赴こう】【開け戒門(カロン)、冥界(とき)の河を越えて。聞き入れよ、冥王(おう)よ。狂おしきこの冀求(せんりつ)を】【止まらぬ涙、散る慟哭(うたごえ)。代償は既に支払った】【光の道よ。定められた過去を生贄に、愚かな願望(ねがい)を照らしてほしい】【嗚呼、私は振り返らない】
蘇生魔法。フェルズの全魔力をつぎ込むことで対象を蘇らせる事が出来るという、数ある魔法の中でも規格外の魔法。但し、この魔法はウィーネが初めての成功例であり、それまでは魔法が発現してからの800年間、一回も成功しなかったとの事。(ウィーネに対して【ディア・オルフェウス】が初めて成功した理由に、発展アビリティ『幸運』の所有者であるベルがいたからではないかという考察がある)
作中で【ディア・オルフェウス】を発動した際に、フレイヤが「何度か見たことがあるわね、あの光」と発言していることから、今まで使っては失敗し、その都度悲しみに打ちひしがれてきたのかは想像に難くない。その為、フェルズはこの魔法を、「魔法数(スロット)」を埋めるだけの無駄な魔法と恨んでさえいたが、ウィーネを蘇らせる際に初めて成功したことで、「意味はあったんだなぁ」と言葉を漏らし報われる事となる。
魔道具
- 魔咆手(マジック・イーター)
フェルズが主に戦闘で使用する攻撃用魔道具。『魔力』を弾代わりにして、衝撃波を放つことが出来る。詠唱を必要としないため速攻性もあり、ベルの持つ速攻魔法『ファイヤボルト』の魔道具版とも言える代物。ただし、あちらと違い燃費は悪いらしい。
- リバース・ヴェール
アスフィが制作した漆黒兜(ハデス・ヘッド)と同様に、透明状態(インビジビリティ)になる効果を持ったマント。あちらとの違いは、装備すると強制的に透明になるのではなく、通常状態と透明状態を使え分けることが出来る両面仕立(リバーシブル)という点。使い勝手はいいが、こちらの魔道具もあくまで姿のみを消すだけなので、五感が超人レベルになっている上級冒険者(特に嗅覚などが鋭い獣人)などには気づかれてしまう事がある。そのため、完全に気配を消すためには複数の魔道具を使う必要がある。
- 黒霧(ブラックミスト)
眼晶より小さめの黒玉。割ると黒煙が噴出して目眩しになる上に、対象に絡みつく効果もある。【ロキ・ファミリア】を相手にして窮地に陥っていた異端児達を救出する際と、ダイダロス通りでの攻防戦で使用されている。第一級冒険者と言えど、簡単には対象の位置を把握出来ない程。
- 幻想花
記憶された物体の幻影を、花粉を吸い込んだ者に幻視させることの出来る、青と赤の花弁。ただし、『耐異常』の発展アビリティ所有者には防がれてしまう。
異端児事件にて、ベル達に協力したナァーザが使用し、上記の欠点から下級冒険者や『耐異常』を持たない冒険者をターゲットに幻影を見せ、撹乱作戦を行った。
- 探索者の粉(シーカー・パウダー)
大瓶に詰まった白い粉末に血を垂らし、赤く染まった粉を地図に振りかけることで血の提供者の名前や位置が表示されるという効果を持つ。ただし、フェルズが地図作成した地図でなければ使用できない。そのため、異端児帰還作戦時はフェルズが自らの足を使って完成させた『ダイダロス通り』の地図・『名工の遺産(ダイダロス・レガシー)』と共に、ヘスティアに支給された。
- 眼晶(オクルス)
掌に収まる程度の大きさの双子水晶で、片方の水晶が捉えた光景と音声を別の水晶に映し出すことのできる、テレビ電話のような機能を持つ通信型魔道具。現在、作中で唯一登場している遠距離交信可能なアイテムでもあり、非常に重宝されている。オラリオ随一の魔道具製作者であるアスフィも、その存在を知って血が騒いだと言わしめるほどの作品。その利便性もあって作中では度々活躍している。
- 人形兵(ゴーレム)
3M近い大きさの、全身が超硬金属(アダマンタイト)で構成された金属の戦士。
『魔力』を短杖で飛ばすことで遠隔操作も可能だが、基本な自動制御で簡単な指示をこなすことが出来る。第一級冒険者ですら簡単には破壊することの出来ない強度を誇り、その性能と素材から一体作るのに総額で10億ヴァリス以上という莫大な資金が必要で、賢者と名乗っていたフェルズのみしか未だ至る事の出来ない至高の魔道具の一つであり、そのフェルズをして一生取っておきたかった隠し玉とする一品でもある。『怪物祭(モンスターフィリア)』の事件を受けて地下水路に配備されていたが、【ロキ・ファミリア】相手に境地に立たされた異端児達を救うべく、緊急で使用した。やたらテンション高くなりながら使用した事からも、フェルズにとっては相当な自信作であった事が窺えるが、Lv.6のティオナには全く通用せず一刀両断されてしまう。その光景を目にしたフェルズは、渾身の作品を呆気なく破壊された事でしばらく硬直し、空笑いしながら【ロキ・ファミリア】幹部メンバーの怪物っぷりを再認識する羽目となった。合掌。
余談
女性説
既に肉体がないため性別不明な人物であるが、読者の間では実は女性なのではないかと憶測がなされている。
理由としては
- 独白がどこか女性的
- 担当声優が小松未可子氏
- 魔道具を保管している場所の合言葉が「アルテラの猫は不老不死の夢を見るか」。※猫(黒猫)は魔女の使い魔とされている
- 『メモリア・フレーゼ』のイベント「ナイトメア・スクールライフ」にて、強力な結界内に無理矢理入った影響で、何故か幼女の姿になる(※公式曰く、幼少期の本人の姿ではないらしいが…)
などが挙げられている。
吟遊詩人オルフェウス
フェルズの蘇生魔法【ディア・オルフェウス】の元ネタであるギリシャ神話の登場人物。自分の妻を生き返らせるために冥府へと向かい、冥界の王ハーデースと「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件で、妻を生き返らせてもらえる事を約束したが、冥界からあと少しで抜け出すというところで後ろを振り返ってしまい、妻を生き返らせることに失敗した一人の愚者の名前。
【ディア・オルフェウス】の詠唱文を見てみると、オルフェウスの行動を基にした内容が散りばめられており、最後の【嗚呼、私は振り返らない】という一節には、オルフェウスと同じ過ちを繰り返さないという意味が込められている。
関連タグ
ブルック:フェルズと同じ様に肉体が無くなり、骨のみで現世に生きているキャラクター繋がり。また異形の姿をしていながら非常に人間臭く、義理堅い性格なども似ている。ちなみに、フェルズは他者の命を生き返らせる事が出来るが、ブルックは自分の命を一回だけ生き返らせることが出来るなど、二人とも蘇生能力を有しているという共通点もある。