Chiharu怪人態
ちはるかいじんたい
概要
“呪の歌”と称され世間を騒がせている国民的人気アイドルChiharuが歌う『Platinum Smile』を聴いた者を惨殺する連続猟奇殺人事件の犯人、謎の包帯の女の正体。
秘密結社「SHOCKER」のナノロボット散布実験に巻き込まれ、兄・風見志郎共々知らず知らずの内にナノロボットによる改造手術に適合し改造人間へと成り果てていた志郎の妹、本物のChiharu=風見ちはるその人が生み出した思念体。
実は現在活動中のChiharuはドル箱の彼女を手放したくなかった事務所が本物の代わりに立てた替え玉であり、本物のChiharuは既にショッカーに回収され、行方不明となっていた。
と言ってもショッカーの陰謀というよりは、不幸な偶然が積み重なってしまった事故であった。
兄の志郎に会いに彼が経営する会社「エクサストリーム」へと赴いたちはるは、その際に上記にある通りナノロボット散布実験に巻き込まれ、適合はしたが無自覚のまま、ショッカーの工作員が会社を封鎖する寸前のすれ違いで仕事のために現場へと戻った。
だが、彼女の人気に嫉妬した新人アイドル2人に出来心で階段から突き飛ばされ、そのはずみで配電盤に顔面から衝突。
その結果、配電盤の高圧電流の影響でナノロボットが暴走し、ぶつけた顔の左半分が整形手術を施しても治らないほどに爛れさせた挙句、複眼を持つ素顔となってしまった……。
絶望に打ちひしがれた彼女は、自身の時計を形見として兄の志郎のもとへと送り唯一無二の親友である菊間琴美と最後の電話を交わした後、投身自殺を図るも、既に改造人間となっていた彼女は死ぬことすら敵わず、更に暴走したナノロボットの影響が全身にも及ぶ。
その後、情報を掴んだショッカーに機密保持のために回収され、ゴミ同然に廃棄されていた。
その容姿はちはるの面影を残してはいるが……体の左半分が内臓のような物が露出した海洋生物然とした姿となり、特に左足部分が肥大化しているために動くことがままならず、這いつくばっての移動しかできない(要はリングに登場する貞子がTVから這い出てくるような感じの動き)。
それ故なのか、無意識のうちに自身の思念体を操る能力に目覚めたらしく、これを操って自身の偽物が歌う『Platinum Smile』を本物が歌っていると思い込んで聞いているファンたちを次々に惨殺。物語の終盤では自身を絶望のどん底に陥れた影武者たち、そして自身を金儲けの道具としか見ていない芸能プロダクションのマネージャーと社長たちにもその牙を向き、報いを受けさせていった。
なお、兄以外で自身のことを誰よりも理解していた本当の親友である琴美だけは唯一殺されていない。
最終的には自身でも制御できないこの能力を止めたい旨を兄である志郎=仮面ライダーV3に告げ、彼女の悲痛な最期の希望を受け入れたV3の手によって本体である彼女が葬られたことにより、思念体も消滅したかと思われたが……。
Chiharuと呼ばれた女
劇中でChiharuと呼ばれた少女は、計3名いる。
- オリジナルの風見ちはる
上述した不幸な事故によってナノロボットが暴走し、怪人へと変貌してしまった本物のChiharu=風見ちはる。
- 戸塚尚子
ちはるの成功を妬み、事故に合わせた新人アイドルの一人。といっても少し転んで怪我をすればいい程度に考えており、配電盤に衝突してしまったのは全く予想外だった模様。
その後は事務所の意向でちはるそっくりに整形し二代目となるも、雑誌のインタビューに答えたり風呂場で鼻歌を歌うなど、Chiharu生活を満喫しているようだった。
しかし風呂の中から手が現れたり、首筋に指の痕のような消えない部分が現れるなどの怪奇現象に遭遇した末、思念態に襲われ顔を切り刻まれ屋上から身を投げた(状況からして突き落とされた?)。
その後、自宅のアパートを訪れた本郷と琴美に自分がちはるではないことを告げ絶命した。
- 谷口由香里
尚子と同じくちはるを妬んでいたが突き落とすのはやり過ぎだと思っていたものの、尚子に逆らえず共犯者になってしまった。
尚子の死後、整形を受けて三代目ちはるになったが罪悪感と他者の顔で過ごすことに耐えられなくなり錯乱。本郷達に自分たちの犯した過ちを打ち明けた。
しかし終盤、思念態に社長とマネージャーを殺され必死の命乞いも空しく首をはねられ死亡した。
彼女が勇気を出して尚子を止めていれば、こんな事にはならなかったのかもしれない……。
能力
上記にもある通り、自身の代わりとなる思念体を生み出し自在に操ることができる。
この能力は本体でも制御出来ない能力であり、その行動原理や殺害方法(かつて自身が施された整形手術の後をなぞる様に顔を滅多切り)から推測するに彼女が無意識下で抱いている世間への強い絶望感や憎しみ、復讐心から生まれた存在である模様(そのため、肉親以外で本当の彼女の理解者であった親友の琴美のみは襲い掛かるも殺害されなかった)。
人間を殺害する際は、背中から超高速で動く半透明状のクラゲの触手のような物を出現させ人間の顔をかつて自身が受けた整形手術の跡をなぞるように切り刻む。
その後……
『…コロ…シテ……!』
『……殺シテヤル』
上述の思念体は本体が死亡した際に完全に消滅したかと思われていたが……凄まじい怨念によるものなのか、実際は既に本体から独立した存在となってしまっていたようである。
エンドロール後のシーンにおいて再び実体化。偽物が歌う『Platinum Smile』を聴くパチンコ打ちに襲いかかっていた。
もはやホラー映画のようなラストである。念のため言っておくが本作は『仮面ライダーV3』をモチーフにした特撮ヒーロー映画である…。
余談
原作における風見雪子に当たるキャラクターだが、一般人の女性だった雪子とは異なる形で描かれている。また、ちはる役の森絵梨佳は仮面ライダー響鬼にて持田ひとみを演じていた。
ラストシーンでちはるの思念体に襲われたパチンコを打っている男性客を演じた久保田悠来は後に仮面ライダー斬月/呉島貴虎を演じることになる。
劇中多くの惨劇を引き起こした彼女だが、驚くべきことに全ての元凶たるSHOCKERはその存在を全く認知しておらず、失敗作が思念態を生み出して人を殺していることなど考えもしていなかった。
彼女を本当の意味でモンスターに変えてしまったのは、芸能界、ひいてはアイドル業界の闇の部分と言えるかもしれない……。