概要
融資・ローンもほぼ同じ意味合いで使われるが、どちらかというと銀行などから厳格な審査を経た上で借金をすることを指す事が多く、知人や親族などから借金をする場合にはあまり用いられない(俗に「親ローン」などという呼び方をすることはある)。
トラブルが起きやすく、銀行や信販会社等からお金を借りる場合は借りる側(債務者)の信用情報や収入情報などが重要となる。また、家族間は兎も角友人間での金銭の貸借は往々にして友達関係にヒビが入ったり疎遠になったりすることも珍しくない。
借金が返せなくなって身を滅ぼすパターンとしては最も身近なものであるため、アウトロー系の創作物の題材にもなりやすい。
…という話が世の中に出回っていたり、実際に自身や知人が体験した人も多いことから「借金=悪」というイメージが蔓延しているが、実際のところ、資本主義経済を回しているのはズバリ借金という存在に他ならない。国が経済のインフレ・デフレを管理するにあたり、まず超短期の借金の金利を操作するのも、結局のところ借金が景気そのものだからである、と言っても決して過言ではない。
人はなぜ借金をするのか?それは、やりたいことや買いたいもののための金が貯まるのを待つには、人間の一生はあまりにも短すぎるからである。
借金が出来なければ子供がいるうちに家を買うことはできないし、家庭によっては若いうちに大学に通うこともできないかもしれない。独立起業したい人だって、業種によっては資金が貯まるのを待っていたら還暦を迎えてしまうだろう。
それなら一念発起をして若いうちに借金をして投資してさらに大きく稼いだり、買ったもので得られる便益を享受する方が圧倒的に幸せだろう。
借金は経済を回す、どころかうまく使えば人間の一生をも回すのである。
結局のところ、借金が悪になるのはその目的が「浪費」であるケースがほとんどであり、借金をしてもっと大きな利益を生む「資産」を買う場合はむしろ人生を輝かせる可能性もある。
この考え方を、金融業界では「レバレッジをかける」という。
※もちろん借金は大きなリスクと不安を産むため、実際に借りるには熟慮を要する、というのは大前提である。
マクロ経済学的にも、景気の定期的な循環サイクルが存在するのも、人類がここまでの経済成長ができたのも、借金と大いに関係がある。詳しくは下の動画を参照されたい。
そして金融機関は金が余ってる人と金が足りない人を結びつけ、借金により経済を回すという社会的役割を持った企業であるということができる。
一般人でも金融の仕組みを利用して、銀行に預金を預けたり債券などの有価証券を購入したりすることで、貸し手側になって収入を受け取ることもできる(投資)。
借金の種類
個人の借金は文字通り銀行や信販会社から現金その物を融資する方式と、現金を融資する代わりにクレジットカード会社や信販会社がその代金を立て替える方式が存在する。
前者は超短期は「キャッシング」、中長期なら「ローン」と呼ばれる。後者は「ショッピングクレジット」と呼ばれ、悪名高いリボルビング払いも該当する。
例えば自動車の場合などは、そのブランド専門の金融会社(トヨタファイナンスなど)も存在し、消費者に自動車ローンを提供することもある。最近流行りの残価クレジット設定(残クレ)も、そうした会社が提供している。この場合は転売を防ぐため、借金を返し終わるまでは金融会社が法律上の物品の所有者となる。
企業が金を借りる方法としては、金融機関から直接現金を融資してもらう方法と、有価証券を発行することで金融機関以外も含めた幅広い相手から借金する場合の2パターンがある。
有価証券の種類として代表的なものは債券(社債)である。また「予め定められた金額で株式を買う権利」は「ワラント債」と呼ばれ、これを危機を凌ぐために企業が発行することもある。
国(中央政府)や地方自治体(地方政府)が借金をする場合もある。これも債券(公債)の発行によって行われる。国の借金(国債)はしばし社会問題として取り沙汰されるが、マクロ経済をコントロールする目的も含まれるため、一概に悪とは言えない場合もある。
一般に個人の借金は短期の方が金利が高く、企業・政府は長期の方が金利が高い傾向にある。
世知辛い話をすると、個人で普段の娯楽やショッピングにも借金をしてしまうような層は返済能力に問題がある場合が多く、自転車操業に陥っていることもある。債務不履行のリスクを企業は背負うため、そのリスクの分だけ金利が高めに設定されている(リスク・プレミアム)。
一方で超長期で数千万円の家を買うような層は、それなりの規模の仕事を持っているきちんとした人である場合が多く、金利は低めにしてもらえる。富裕層ともなればさらに低金利に巨額を融資してもらえるし、むしろ銀行から「借金してください」と頭を下げられるほどである。
企業では急場を凌ぐための短期の借金は慣例的に珍しくない。特に銀行では金が大きく動く分、1日や数ヶ月だけのワンショットの中央銀行からの借金がよく使われる。金融機関の経済的活動を円滑にするため、(インフレ抑制目的の利上げの期間を除き)基本的に金利は安めに設定される。
そして長期の借金になるほど、金利は高めに設定される。
※もちろん企業・政府でも財務状況的に破綻リスクが高いと思われている発行体は、短期の借金であっても金利が高めに設定される。これもリスク・プレミアムの考え方である。
なお物品を借りる「リース」も毎月お金を払う点や、初期費用を抑えて高額なものを使用できるという点においては、借金に近い性質のものであるといえる。
借金の返済
当然融資を受けるというのはお金を貸し与えることであり、債務者は融資者にお金を返済する義務が生じる。この時借りたお金(元本)はもちろんのこと、元本に応じた利息(利子)を支払う必要が生じる。この利子が融資者にとって儲けとなるわけである。
ショッピングクレジット等では一括返済という指定の期日に融資額(及び利子)を全額支払うという元本一括返済方式がとられる場合も多いが、大体の場合は分割返済方式である事が多く、その支払い方法は何通りか存在する。
元利均等返済
毎回返済金額が一緒になる返済方式。但し実際の返済金額は利息を支払う必要があるため、最初は返済金額に占める利息の割合が多いのが特徴的である。
元金均等返済
毎回決まった金額の元金を返済する方式。その為、利息が多い最初は支払う金額が多めになりやすい。
残高スライド方式(残高リボルビング方式)
返済額が一定なのは元利均等返済と同様であるがその返済額が元本に応じて変動する返済方式であり、追加の融資などが行われる消費者金融などで多用される。
借金のメリット/デメリット
借金のメリットは何と言っても現在お金が無い、または不足している状態であったとしても商品を購入したり、急な出費に対応する事が出来たりすることである。
例えばパソコンが急に壊れ、新しいパソコンを購入するのに10万円要ったとして、直ぐに払うだけの能力が無い場合に借金をすることで購入し、次の収入で返済する、と言った具合である。
しかしながらこのメリットは同時にデメリットでもあり、現在お金が無くても商品を購入したり、お金を獲得する事が出来たりするため、返済能力を超える借金を行ってしまうことも珍しくは無い。
このような時、昔なら信販会社がヤクザや反社会的勢力と繋がっており、取り立てにヤクザがおしかけてくる事もあったが、近年は法規制の強化によって厳しい取り立ては難しくなった。
日本は借金を返さなくてもすぐに刑法上の罪に問われることはないが、それでも債務不履行で自己破産や夜逃げといった事態に陥ると社会的信用を失い、クレジットカードや銀行口座が作れないなど生きづらい環境に追い込まれることになる。
借金を最大限に活かせる人
もう一つの借金のメリットは、現金を手元においたまま、手持ちのお金を増やせる点にある。つまり金はすでに十分あるけれど借金をする、というパターンである。これなら確かに前項目で述べたような債務不履行の危険が無くなるが、利息払う分だけ損することになるのでは?と思われるだろう。
このパターンのポイントは消費・浪費のためではなく、投資のために借金を活用する点である。
金融業界には「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を奪う」という格言がある通り、お金持ちほど低金利に金を借りられるが、お金が無い人ほど高金利で金を借りなければならないという原則がある。
この考え方から行くと、金を借りる必要のないお金持ちほど、むしろ借金をすべき、ということになる。
手元に現金を残しつつ、富裕層特有の圧倒的な低金利で借金して、高い利回りの資産を買う。成功すればもちろん良し、失敗に終わっても手元資金が豊富なので破産はしない。
というかそもそも失敗する確率自体が低い。一般庶民が利回り30%という超絶ハイリスク・ハイリターン投資で100万円を投げ捨てて心臓バクバクさせながらなんとか勝ち取れるかどうか分からない利益よりも、富裕層が1億円を利回り1%という超絶安全資産※に投じるだけで気苦労せず確実に得られる利益の方が3倍以上大きい利益を叩き出してしまう。富裕層側は全く無理をする必要が無いのである。
しかも、もし富裕層側が3%(一般的な資産運用における平均よりやや堅実なリターン)を目指すだけでその差は10倍になってしまうし、さらに資産に余裕があるからリスク自体を取りに行きやすい……と、完全なワンサイドゲーム状態である。
こうして「富める者はますます富む」という資本主義の正のスパイラル・勝ちパターンに入ることができる、というわけである。
※もちろん理論上は超絶安全資産だからと言って、発行体の破綻などで価値がゼロになってしまうリスクは完全にゼロにはできない。なので単一の資産に1億円全部突っ込むのではなく、幅広い資産・金融商品に少額ずつ分散投資するのが基本となる。
ちなみにこの理屈から行くと、「5億円も借金がある」と言っている人は、必ずしも日々生きるのがやっとで汲々としている多重債務者ではない。むしろ「5億円も借りられるだけの信用がある」と見方を変えるべきである。
借金に関する雑学
「国の借金」
日本の借金(といわれる国債発行額)は2022年現在で1241兆円である。1秒あたりにおよそ110万円程度ずつ増えていく計算であるため、正確な数値は日々(というか時々刻々と)変化していく。
国の借金などというインチキ経済用語が存在するが、正しくは「政府の借金」である。
インフレと借金
長期的にインフレが続く経済(≒成長が続く)においては、借金をするのが有利とされる。
これを説明するに当たって簡単にするため、極端なモデルケースを考えてみる。
例えばあなたが今500万円を借りて、1年後に利息込みで600万円を返さなければならないとする。この間に100円のドーナッツが200円になるようなインフレが起きていれば、あなたの賃金は2倍になっているはずである。つまり元々の手取り年収が500万円なら、1年後は1000万円になっているはず※なので、600万円の返済は簡単できる、というわけである。
(※ここでは税金や昇給までの時間差などは考慮しない)
この間あなたの購買力は変わらず、従ってドーナッツを買える個数も変わらず5万個であることに注目されたい。
この場合貸し手にとっては、利息込みの借金を返済してもらったにも関わらず、この間買えるドーナッツの個数は5万個から3万個になり、従って実質的には損をしてしまっていることになる。本来500万円が600万円になって、金利にして20%得するはずが、実際は購買力まで含めると40%の損失になってしまった。この20%を名目金利、-40%を実質金利と言い、マクロ経済や投資を学ぶ上では必須の考え方となる。
このケースで貸し手が損をしないためには、インフレを察知して予め金利を高くしておくか、変動金利(インフレになるにつれて利払いも増える金利設定)で貸し付けるなど、実質金利を意識した契約をすることが必要となる。
デフレの場合は逆で、もしドーナッツが50円になるような場合、あなたは手取り250万円になったにも関わらず返さなければならない借金は600万円のままなので、貯金がなければ破産か自転車操業に陥る。
逆に貸し手に取っては(債務不履行のリスクこそ生じているが)、完済してもらえればドーナッツ12万個分の購買力を得ることができる。
この場合の借金の名目金利は20%のままだが、実質金利は240%となる。
この考え方を応用すると、今後インフレになると考えれば借り手に、デフレになると考えれば貸し手に回るのが有利になると言える。ただ実際には皆が同じことを考えるのでインフレなら貸し手不足に、デフレでは借り手不足になりがちであり、(市場原理が働くため)思う存分自分の思うような金利で貸し借りできる、というわけには行かない。
またそもそも一寸先の経済の未来を見通すのは、ノーベル賞学者ですら困難を極めるため、上記の話を意思決定に用いる際は、あくまで参考程度に留めるのが吉である。
その他の借金の用法
スポーツのリーグ戦で負け越し数を借金という言い方で現すことがある。「チームの借金は2」など。
逆に勝ち越した分を「貯金」と呼び、勝ち越しの多い相手チームを「(チームに由来する名)銀行」と呼ぶことも。
借金が多いキャラクター
- デデデ陛下(星のカービィ(アニメ)):117京441兆2426億1370万8686デデン
- 両津勘吉(こちら葛飾区亀有公園前派出所):1663兆2928億5903万8850円
- ヘスティア(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか):2億ヴァリス(日本円だと2、300円くらい)
- 綾崎ハヤテ(ハヤテのごとく!):1億5838万4000円
- デンジ(チェンソーマン):約3800万円
- クロウ・ブルースト(第2次スーパーロボット大戦Z):当初親父から借金100万Gを相続し、見事返済してもさらに力を増して戻ってくる…という悲惨なループを続けている。
- ノーザーク(ACVI):借金をしては返済を踏み倒すことを繰り返しているというダメ人間。
関連タグ
吉本新喜劇:大抵の回で借金を抱えている人物が出てくる。