「天才、と言って貰おうか」
「鑑賞会は強制参加だよ」
巻頭ポエム
世界一嫌いだと言ってくれ(原作31巻)
プロフィール
概要
藍染惣右介率いる十刃の一人で、虚圏内では“最高の研究者”や、“あらゆる霊性兵器開発のスペシャリスト”として知られているマッドサイエンティスト。さらに第6十刃のグリムジョー・ジャガージャックの従属官であるイールフォルト・グランツの弟にあたる。
一人称は「僕」で、端正な顔立ちをしていて普段は冷静かつ挑発的な言動をしているが、興奮したり自分の想定外の事態が起きると、途端に顔面崩壊レベルの凄まじい変顔を晒しながら早口になったり取り乱して逆上したりする。
ちなみに眼鏡のように見えるものは仮面の名残であり、レンズは入っていない。
性格は、どこまでも自分の研究欲を満たす事こそを最優先とする傲慢かつ利己的なド外道で、兄のイールフォルトの事も「カス」呼ばわりするだけに飽き足らず、彼の傷の治療をした時に秘かに戦闘記録を収集する為の録霊蟲(ろくれいちゅう)を仕込でいて、彼の事はただの『録霊蟲を運搬する為の箱』として利用しており、肉親の情などは皆無である。これは後述する過去を見れば分かるが、虚になったからではなく生前からこういう人物だった。
また、上記の言動からも分かるが、自分以外のものは基本的に「研究対象」として見下しており、それは自分以外の十刃や破面も同じ事で、他の十刃が死んでもむしろ研究サンプルが増えたとして喜び、十刃落ちに至っては一護達に敗れて瀕死の彼等にトドメを刺し、死体をサンプルとして回収しようとしていた。
加えて、戦闘中に服が焼けた際には、恋次らを放置して着替えに戻ったりと、常に敵を見下した慢心した態度を崩さない。
従属官に対しても、十刃の中では最も多くの従属官を従えているが、その理由はザエルアポロが彼等を喰らう事でその肉体を回復させる能力を付加しているからであり、彼自身は従属官の事をただの「回復薬」としか認識していない。ザエルアポロに相方を喰われて悲しむ従属官に対して、「騒ぐな、また新しいのを作ってやる」と平然と言い放つ等、とてつもないブラック上司である。
一方で、藍染に対してはその力に強い畏怖を抱いているらしく、意外にも忠誠心は高く完全に服従している。ただし、それでも研究欲には勝てず、前述した十刃落ちにトドメ刺して死体を回収していた件は藍染にも内密に行い、藍染の前では平身低頭して誤魔化していたが、藍染からは見抜かれていてさりげなく釘を刺された際には冷や汗をかいていた。
ちなみに外見は若く見えるが、実は十刃の前身の「刃」の頃から所属していた最古参のメンバーの一人で、虚としてはかなり昔から虚圏に存在していた古い個体だと思われる。
帰刃【邪淫妃】(フォルニカラス)
解号は【啜れ】。
帰刃の際には刀を飲み込んで、全身がボールのように膨らみ、内部から破裂するような形で変身を遂げる。
解放すると、首から下が触手に覆われてドレスのような服に変化し、背中に四本の羽が生える。眼鏡が飾りに変化し、道化師のメイクのような仮面紋が現れる。
技
- 2体の巨人を従える
服に接続された2体の巨人を操る。巨人は普段は服の中に収納されている。
- 相手のクローンを生み出す
身体から血液のような液体を噴き出し、触れた相手にそっくりなクローンを作り出す。クローンは目元の模様と髪質の違いで区別できる。また、体色や服装も自分の意志で変えられる。
- 相手を操る
自分を食べた敵を操る能力。
- 球体幕(テロン・バロン)
羽で自身の全身を包む防御技。
- 人形芝居(テアトロ・デ・ティテレ)
羽で相手を包んで、相手の人形を作り出す。人形の中には内臓や腱のパーツが入っており、パーツを破壊するとそれに応じた相手の内臓も潰される。
『ドラえもん』の秘密道具「のろいのカメラ」が元ネタと思われる。
- 受胎告知(ガブリエール)
相手に自分を孕ませる能力。ザエルアポロが最も自慢にしている能力にして、彼にとっては他の何よりも最も重要な力。
自身が死亡した時に備えてのバックアップ用の技で、予め相手のへそに触手を挿して内臓に卵を産んでおく。そして自身が死亡した際に自動発動し、その後は母体の全てを吸収して成長し、口から這い出して新たな生誕を果たす。
技の発動後、母体は干からびた遺体になり(ザエルアポロ曰く「干からびたベーコン」)、能力解説しながら成長していく描写は狂気そのもの。記憶は本体からそのまま引き継がれているらしく、これはザエルアポロの子供でも分身でもなく、実質的にはザエルアポロ本人が蘇生しているのと変わらない。
本人はこの能力を、何度死んでも灰から再誕して復活する不死鳥に例えており、「単なる不死ではなく、死んでもより完全な存在として再誕する事こそ完璧な生命」だとしている。
アニメ版では、そのままだと流石に規制に引っ掛かったのか、大人の事情で相手の毛穴から侵入し、対象を構成する霊子を吸収(補充とも言い換えられている)して自らの身体へと再構成するという設定に変更され、被対象者の口から桃色の煙が吐き出され、その内部で細胞分裂が行われ復活する。
その為、アニメ版では母体(ネム)は干からびたベーコンにはならならず、ザエルアポロ曰く「蝶が孵化した後の繭」という表現に変更されている。ちなみにやられている時のネムがものすごくエロく描かれている。それは良かったのか...
従属官
ザエルアポロが改造した虚を破面化させた者達。全員が胴体に縦三本のラインが入った服を着ている。ザエルアポロにそうされたのか全体的に知性は低く、前述通りザエルアポロ自身の回復薬を兼ねているが、アニメ版では食人描写に規制が入り、光球に変えて飲み込む形に変更されている。
- ルミーナ、ベローナ、メダゼピ
名前が判明している従属官。メダゼピは雨竜の矢で戦死、ルミーナは回復薬としてザエルアポロに食われ、ベローナは帰刃後は登場していない。
詳細はリンク先を参照。
作中の動向
登場した当初は、藍染の尋問に平身低頭して答える謙虚な姿勢を見せていたが、阿散井恋次や石田雨竜と交戦する頃には、冷酷無慈悲なマッドサイエンティストとしての本性を余さず発揮する。
雨竜が『希少種の生き残り』だと知るや狂気的な笑みを浮かべて歓喜したり、恋次の捨て身の戦法によって傷を負わされた際には、改造した部下を平然と貪り食って回復するなどした。
それを見た雨竜からは「バケモノ」と評されるが、当のザエルアポロは「天才、と言って貰おうか」と返している。
そして着替えを終え、邪淫妃の能力によって恋次と雨竜、ペッシェ、ドンドチャッカの4人を弄ぶが、尸魂界からの援軍として涅マユリが現れ、マッドサイエンティスト同士の対決となる。
彼の能力は雨竜の身体に仕込んでおいた監視用の菌を通してマユリに対策を立てられており、涅ネムを触手で捕らえて人質にするが、直後にマユリが発動した卍解『金色疋殺地蔵』に喰われる。
しかし、捕らえていたネムに「受胎告知」を使って復活、更に自分を喰った金色疋殺地蔵を操ってマユリを襲わせるが、金色疋殺地蔵はマユリ本人に攻撃すると自爆するようになっており、ダメージを与えられなかった。
更に、ネムの体内に仕込んであった「超人薬」を接種してしまい、1秒が100年にも感じられる感覚に陥ってしまう。肉体の動きが感覚に追い付かなくなったザエルアポロは、心臓に刀が刺さるまでの数秒間を、何百年にも感じる苦痛を味わいながら死亡した。
その後、『劇場版BLEACH 地獄篇』の宣伝として本誌に掲載された読み切り漫画及びアニメ299話で、アーロニーロと共に地獄に落ちていた事実が判明(後述する生前の所業を考えれば当然である)。地獄の住人である朱蓮一派と戦闘になる。
ちなみにアーロニーロの事は、以前から彼の頭部のカプセルを満たしている薄紅色の培養液を分析したいと思っていたらしく、それを見抜いていたのかアーロニーロからも元々嫌われており、再会後はすぐに一触即発になっていた。
朱蓮らとの戦いではアーロニーロが彼等を殺し、その後にアーロニーロを殺せば彼と合わせて研究サンプルが複数手に入ると目論んでいたが、結果的にはアーロニーロ共々朱蓮らに敗北。その後の動向は不明のままだったが……。
最終章・千年血戦篇では、ペルニダ戦にてネムを喪ったマユリの見た幻影として現れ、かつて科学者として「完璧」を厭悪していたにもかかわらず、ネムを「完璧」だと思い始めていたマユリの怠慢と矛盾を嘲笑う。
このザエルアポロは彼本人ではなく、あくまでマユリの見た幻影、もっと言えばマユリの中の葛藤が具現化した存在に過ぎなかったが、マユリはこの幻影をきっかけにネムの死を嘆くのをやめ、自ら進化する魂魄を新たに作り直そうと決意する。
この描写を見ても、何だかんだでザエルアポロの存在はマユリの中で、自分と全く異なるものを求めた科学者として記憶されていた模様。
過去(小説版ネタバレ)
実は元第0十刃(セロ・エスパーダ)で、ヴァストローデ級の大虚であった過去が明かされる。全盛期の実力は完全虚化した一護と同格とされ、現在の実力を遥かに超える最強の虚であった。
生前は残虐な人体実験を繰り返していた錬金術師で、将軍である兄から敗残兵を送られては実験の材料にしていた。
ある日、工房の地下が死体で埋め尽くしかけた頃、彼等が殺した何百何千もの人間の魂が、虚と化して彼等を工房ごと押し潰し殺害する。兄弟は共に魂魄と化すが、現状を瞬時に理解し狂喜しながら兄の喉を噛み切り、魂を啜り取り込み、自らも虚と化して自分達を殺した虚を全て喰らい尽した。
その後は虚圏に行き、他の虚を喰らい続けた結果、人の姿を取り戻しヴァストローデ級となる。この当時は普段は冷静沈着な科学者だが、一方で戦闘になると精神が必要以上に昂り、相手を粉々になるまで破壊し尽くす戦闘狂の一面も有すると、まさにザエルアポロに兄のイールフォルトの人格を合わせたような性格をしていた。
しかし、科学者であるザエルアポロは最強の力には執着しておらず、かねてから「完璧な生命」を得る事を夢見ていた。今のままではそれを手に入れられない事を悟ったザエルアポロは、もう一度進化をやり直す為に最初に喰らった兄の魂を基点に、自分の中にある「戦士」としての性質を全て体外へと締め出す形で分離させた。こうして生まれたのが作中のイールフォルト・グランツである。
これにより、大幅に弱体化して十刃の座を一度は追われる事になったが、前述の「受胎告知」を獲得して念願を叶えた。同時に人格も戦闘狂な面が消えて現在のものとなった。
その後は、自身が新たに獲得した数々の力で再び第8十刃にまで返り咲いたが、本人は前述した「受胎告知」の力を得た事に満足しており、第0十刃の力と地位を失った事は全く気にしていない。
余談
リアルタイムでの戦闘期間はなんと一年にも及ぶ。
間にアーロニーロ戦、ウルキオラ戦、グリムジョー戦、ノイトラ戦、ゾマリ戦などが挟まっているとはいえ、それでも物凄い長さであった(それらを除いてザエルアポロ戦のみで数えても約4ヶ月の長さはある)。
この戦闘期間の長さに加えて、良くも悪くもあまりにも個性的な(はっきり言うと気持ち悪い)帰刃の姿や能力やそのキャラクターもあって、ファンからの評価は敵である事を差し引いても賛否両論である。
一方で、作者達からは気に入れられているのか、読み切りの漫画や小説などでも度々物語に絡んでくる。
関連イラスト
関連タグ
イールフォルト・グランツ 藍染惣右介 石田雨竜 阿散井恋次 涅マユリ シエン・グランツ
帰刃のその先へ:ゲームのオリジナル形態
その後(ネタバレ)
以下、ネタバレ注意
これまでも幾度となく存在感を出していたが、最終回から2年後を描いた特別読み切り「獄頤鳴鳴篇」にて、地獄の獄吏として復活するという衝撃的な再登場を果たした。
体に有った筈の穴は体の外に出ていて、身体に地獄の鎖が巻きついていたり等、デザインが大きく変わっており、地獄の鎖を用いた攻撃を行うなど戦闘スタイルも変化している。
かつて戦った恋次の前に現れるが、雨竜やマユリがいない事に若干不満を漏らしている。千里眼を有しているようであり、初対面である阿散井苺花を彼の娘であると見抜き、娘ごと恋次を殺そうとするが、間に入った黒崎一護と交戦。
「殺すぞ黒崎一護ォ!!!」
一護「誰だてめーは?」
※一護とザエルアポロは実は一度も本篇で会っていない。その為、ここが完全なる初対面である。
戦闘中、一護に地獄についての真実を伝え精神的な揺さぶりをかけるが、突如地獄の門から現れた巨大な双魚理によって胸を貫かれ、再び地獄へと連れ戻された。
せっかく再登場した割にはあっけない幕引きだったが、彼の告げた衝撃的な真実と意味深な言葉は、新たな章の幕開けを予感させた。