底蟲村の しん太郎どん
痛い痛いと 泣いてござる
何が痛いと 蟹コがきけば
悪たれ鼬の ふうのしんに
喉を切られて 話ができぬ
それで痛いと 泣いてござる
びゅうびゅうびゅうの ざんぶらぶん
びゅうびゅうびゅうの ざんぶらぶん
概要
続編であるが、前作『かまいたちの夜』がゲームの中の架空の出来事(劇中劇)という扱い。「わらべ唄篇」など前作との繋がりが深いものも多いが、予備知識なしでも楽しめる様になっている。
前作同様マルチシナリオ形式で、メインシナリオ「わらべ唄篇」をクリアすると伝奇・ホラー要素の強い三本のサブシナリオが解放され、さらにこれらをクリアするとコメディタッチのシナリオ「ピンクのしおり」が解放される。
シナリオ間にゆるい関連性や設定の共有などが見られ、全体像としては前作とは若干異なる作り。その反面、本編の流れから外れたバッドエンドではそれまでのシナリオ設定から大きく離れることもあり、不条理ギャグやホラー調の展開を見せることがある。
これらをクリアすると、今まで以上に陰惨なシナリオの「黒のしおり」が解放。オールクリアした上である演出を見ると「金のしおり」となり、シナリオ冒頭で途中で謎の電波文が表示されるという演出が入る。
前作に引き続き脚本は我孫子武丸、それに加え田中啓文と牧野修を迎える。
ただし我孫子は今作では脚本監修とごく一部のサブシナリオに留まり、「わらべ唄篇」は田中が執筆している。
主人公を始めとした今作のメインメンバー(島への招待客)は、前作『かまいたちの夜』から引き続き登場した9人、新たに登場した4人、そして姿を見せない「我孫子武丸」を加えた計14人。
この他にも前作の登場人物や新キャラクターが登場している。
ストーリー
雪山のペンション「シュプール」でおきた殺人事件を題材にしたゲームソフト『かまいたちの夜』(前作)が大ヒット。
1年半後、その礼として主人公(透)とヒロイン(真理)はゲームの作者である「我孫子武丸」から彼の別荘「三日月島の三日月館」へと招待された。
ゲームの登場人物は、実は当時「シュプール」に泊まった実在する人物がモデルだったのだが、実際にはゲームのような凄惨な殺人事件など起きておらず、皆で楽しく過ごした思い出しかなかった。
一方でペンションのオーナーにもかかわらず招待を受けていなかった小林は腹を立て、安孫子に一つ文句でも言ってやろうと透と真理に無理矢理同行してくる。
当時の宿泊客も我孫子から招待を受け、次々と絶海の孤島である三日月島へとやってくる。
加えて我孫子から「続編の打ち合わせ」の連絡を受けたゲームプロデューサーと作曲家も島に来ていた。
しかし、肝心の招待主である我孫子は「急用で遅れる」との伝言を管理人の老女・菱田キヨに残したのみで、一向に姿を現さない。
ゲームをプレイした限り、当時「シュプール」にいた者しか知らないような細かい描写もある。
もしかして、この中に「我孫子武丸」がいるのだろうか?
そんな折、どこか不気味な三日月館の中で事件が……
登場人物
- 声優はドラマCD版およびPSP版収録『ちょっとエッチなかまいたちの夜2』のもの。
1からの続投キャラ
前作の「ミステリー編」の登場人物はサブシナリオを含めれば全員出ているが、前作が「ゲームの中の出来事」ということで設定は少し変化している、
矢島透(CV:小野大輔(PSP版))
今作でも主人公を務める大学生。普段は冴えないが、いざという時に鋭い推理力を発揮する。
真理とは相変わらず友達以上恋人未満の間柄。 前作と同じく名前の変更可。
小林真理(CV:細野雅世(PSP版))
今作のヒロイン兼「サイキック編」の主人公。
透のガールフレンド、才色兼備でスタイルも抜群。前作と今作の間で大学を辞めて両親と共に北海道に行き、透とは久しぶりの再会となる。
作中では透の片想い的な描写が多いが、選択肢や結末次第では透とキスしたり結婚するなど、彼女自身も本心では透の事を想っている事が窺える。
(ラブテスター編ではベストエンドを迎えれば透と明確に結ばれる。)
歴史・宗教・時事などに人並み以上の知識がある。透と同じく名前の変更可。
小林二郎(CV:坂東尚樹(PSP版))
真理の叔父。脱サラ後に長野で妻の今日子と一緒にペンション「シュプール」を経営する。
料理の腕は超一流。自分に招待状を送らなかった我孫子に文句でも言ってやろうと考え、強引についてきた。
「シュプール」の元アルバイト。
みどりとの結婚を機に大学を中退し、現在はスポーツ用品店で働いている。
ドラマCD版では主人公。
久保田みどり(CV:栄順(ドラマCD版) / 増田ゆき(PSP版))
「シュプール」の元アルバイト。
「1」と「2」の間で俊夫と結婚、姓が「篠崎」から「久保田」に変わった。
現在は俊夫と同じスポーツ用品店の事務員として働いている。相変わらず年齢不詳。
(説明書によれば俊夫より1歳上の27歳と明記されている)
渡瀬可奈子
OL。美人だがキツい性格をしている。
会社では受付嬢の仕事をしており、啓子とは同僚で親友。
北野啓子
OL。可奈子の同僚で食欲旺盛のぽっちゃり体型。
可奈子とは正反対のおっとりした性格だが、不思議と馬が合うらしい。
フリーカメラマン。
長身で逞しい身体付きと髭面のワイルドな風貌に反して紳士な一面がある。職業柄、地方の伝承や風習などに非常に詳しい。
大阪の不動産会社社長。金儲けの話には目が無いが、どこか憎めない中年の男性。
「1」と「2」の間で妻の春子とは色々あって離婚し、現在は夏美と結婚している。
本来は彼と春子に招待状が来ていたのだが、流石に別れた女房と一緒に来ることはできないということで夏美を連れて三日月島に来た。
以下は三日月島のメインメンバーにはおらず、別の形で登場する。
小林今日子
小林の妻。夫と違い、料理がすさまじく下手。友達と別の旅行に出かけており、また招待状も来ていない為に今回は参加していない。
香山春子
香山の前妻。落ち着いた雰囲気の和風美人。香山とは離婚している。
招待状が香山宛に来ていたものの、別れた彼女には知らされなかったため参加していない。
河村亜希
前作では加奈子と啓子の同僚として登場。しかし、今作では意外な形で登場する。
田中一郎
コートと帽子に身を包んだ謎の人物。
ジェニー
ペンション「シュプール」の飼い猫。
新キャラ
香山夏美(CV:青井愛(ドラマCD版) / 氷上恭子(PSP版))
香山の後妻。親と子ほど年が離れている。物静かな春子とは正反対に、茶髪と濃い化粧でかなり派手な容姿。香山同様関西弁を話す。
当時「シュプール」に居なかったが、香山に誘われて彼と共に島に来た。
勝気でさっぱりとした性格。一部シナリオでは知識が深く鋭い考察力を見せている。
正岡慎太郎(CV:伊藤ヨタロウ(ドラマCD版))
ゲームプロデューサー。31歳。
当時「シュプール」に居なかったが、ゲーム『かまいたちの夜』のプロデュースを手がけた人物として、「続編の打ち合わせ」のために島に招待された。
かなりの女好きで軽薄。女性に対して馴れ馴れしく接する。実は閉所恐怖症で、窓のない三日月館の部屋割りに不安を覚えている。
村上つとむ
自称「大物作曲家」。41歳。
当時「シュプール」に居なかったが、ゲーム『かまいたちの夜』の続編のBGMを担当することになり、「続編の打ち合わせ」のために島に招待された。
プライドは高く怒りの沸点は低いという厄介者。事あるごとに大声を出す。ただしゲームの進行次第では本人の「音楽家としての実力」を垣間見ることができるシーンも存在する。
菱田キヨ(CV:伊藤ヨタロウ(ドラマCD版) / 羽鳥靖子(PSP版))
我孫子に雇われ、「三日月館」の管理を任されている老女。77歳。白髪で腰は曲がり、顔や手には深いしわが刻まれている。
控えめで柔和な性格で、誰に対しても腰が低い。
我孫子武丸
ゲーム『かまいたちの夜』の原作者。透たちを「三日月館」に招待した謎の人物。正岡や村上、キヨとは業務上で連絡を取っていたが、全て手紙やメールであった為、彼らも実際に我孫子に会ったことはない。
ゲームの内容から当時の関係者の誰かである可能性が高い。設定上、それぞれのシナリオによって正体が異なる(意外な人物が正体の場合も)。
ただし実際に本人が登場して姿が描写されるシーンがある。いかつい顔のお世辞にもハンサムとは言えない若い男……と表現されているが……
モデルは言わずもがな、前作の脚本を担当した実在のミステリー作家。
岸猿伊右衛門
明治時代に紡績事業で財を成した岸猿家最後の当主。
奉公人を奴隷のように酷使し、見せしめの為に堅牢な「三日月館」を建設、監獄として使っていた。
しかし昭和に入ってから岸猿家は没落の一途をたどり、ついに伊右衛門は狂を発して三日月島の岸壁から身を投げたという。
四ツ橋某太郎
「僕の恋愛篇」に登場。誰だお前は!?
真理と一緒に「シュプール」に行ったことがある。
義男
「僕の青春篇」に登場。
若い青年。ある人物の孫。
船長
主人公たちを島へ送迎し、島についての因縁を話す。
本名は不明。
「わらべ唄篇」「底蟲村篇」「わらび唄篇」「洞窟探検篇」では美声(?)を披露してそれぞれに歌を教えてくれる。
網曳和弘
「洞窟探検篇」に登場。船長の息子で民俗学者。
「陰陽篇」では、美樹本が持つ『網曳村――民間宗教の源流』という本の作者として名前が登場している。
ダイイング・メッセージ
三日月館別館(超高層ホテル)に泊まっていた謎の外国人。
「オオ!ドウシテバレタノデスカ!」
中村光一
ゲームの製作総指揮。
一部シナリオで登場。
中島ヒカル(CV:沢城みゆき(PSP版))
月山美咲(CV:谷井あすか(PSP版))
『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』からのゲストキャラクター。
「ちょっとエッチなかまいたちの夜2」でメイド役として登場する。
シナリオ
()内は脚本家
わらべ唄篇(田中啓文)
物語のメインシナリオ。前作の「ミステリー編」に相当する。
「三日月島」に伝わる奇妙なわらべ唄になぞらえて、招待客が次々と殺害されてゆく。潮流の関係で脱出不可能になった三日月島で、透は我孫子武丸の正体・密室・アリバイなどの謎に挑む。
前作と同様に密室サスペンスだが、前作と違い、選択次第で事件を未然に防ぐ事が展開上不可能となっている。
(早期に事件を解決することもできるが真相究明には至らず、バッドエンドになってしまう)
さらに最後の推理は「やり直し」が効くため、少なくとも本編では前作のような「サバイバル」ルートは無い。
ホラー、残虐的な要素もあるが、前作と違いバッドエンドになると唐突にパラレル設定の理不尽・ギャグ的な展開に切り替わることも多い。
ベストエンディングを迎えることで、底蟲村篇・サイキック篇・陰陽篇のシナリオが追加される。
底蟲村篇(田中啓文)
三日月島の廃村「底蟲村」に伝わる民間伝承にまつわるストーリー。
伝承に興味を示した招待客達は、廃墟と化した底蟲村を散策する。そこには見た事もない奇妙な果実がなっており……
わらべ唄に出てくる「みのむし」について、徐々にその真実が解明されてゆき、底蟲村の全貌も次第に明らかになる。ミミミミミミミミミミミ……
ホラー、グロテスクな要素が非常に多く、またそれに伴いBGM、背景、効果音も不気味なものが多い。
サイキック篇(牧野修)
このストーリーのみ、真理を主人公とした話になる。
実は真理は触れた者の記憶を読み取る「サイコメトリー」を有する超能力者だった。人事不省に陥った透に代わり、彼女は殺害された人物の調査を独自に開始する。
しかし島に招待された超能力者は、彼女一人ではなかった。「ガンツフェルト症候群」とは何なのか?
設定上、このシナリオでは一部のキャラの苗字(本名)が異なる。サスペンス的な要素が多いが、アクション的な要素もある。
アイダホポテトォォォォ!
陰陽篇(牧野修)
陰陽道の儀式にのっとった形で次々と不可解な死を遂げる人々。到底人間には不可能な方法で、招待客が次々と殺されていく。
殺害現場に残される紙、1人殺されるたびに食堂に血の線が1本ずつ引かれていき、有り得ない状況に招待客達は次第に追い詰められていく。
「参訪れるまでに、九執血で満たせよ。ひとつ、ふたつ、みつよついつつむつ、ななつやつ、ここのつ血に満たされば逆しまの力ぎんと溢れ、この世の法破れや、妙婆訶」
「犯人」の目的は?殺人から逃れる方法とは?すべてが揃うと何が起きるのか?
ホラー的な要素が強く、またそれに伴い残虐なシーンが非常に多い。
実は続編にて明かされる真相に最も近いシナリオ。
ピンクの栞
ぼくの青春篇(田中啓文)
本編から分岐する一本道の短編。どういう顔すりゃいいの。
ぼくの恋愛篇(田中啓文)
青春篇よりカオスな一本道の短編。血も凍るような結末。
わらび唄篇(我孫子武丸)
透は出発前から「何故か」身の危険を感じながらも三日月島に招待される。
真理が事件に巻き込まれることを危惧した透は準備に準備を重ね、彼女を守るべく大暴走。そんな透の心配も聞かず、真理は休暇を楽しんでいたが……
タイトルからして本編のパロディで、お笑い要素が強い物語。
「この村のご神体はカマボコ板に似た大きな岩でね、カマイタ様と呼ばれている。村のものは親しみを込めてこう呼ぶ……『カマイタっち』と」
「中学生のあだ名かい!苦しすぎるわ!」
官能篇(牧野修)
陰陽編から分岐するストーリー。PSP版で18禁(CERO旧レート)になった原因その1。
陰陽篇の設定を引き継いでいるものの、シナリオはその名の通り「官能的」な要素が強く、ギャグ的な要素も非常に多い。
やたら積極的な真理、悩ましく目の前で揺れる尻、男女関係なくモテる透。
赤いハンカチだけが知っている真実とは?
機種限定シナリオ
どちらも「ピンクのしおり」で出現。
ラブテスター篇(我孫子武丸)
PS2版のみ収録。操作が特殊なためPSP版では削除された。
ある条件を満たすとメニュー画面に現れる2人用シナリオで、2人の相性によってゲーム展開が変わる異色のストーリー。
デートをすることになった透(1P・男性役)と真理(2P・女性役)が、デートのために着ていく服を悩んだり、街に繰り出して一緒に映画を見たり食事をしたりと関係を深め、そして最後はホテルに……
選択肢をそれぞれのコントローラのボタンで決定する形式のため、お互いに相手が選んだ選択肢はわからないようになっている。
デートを最後まできちんと完遂できるかは2人の相性次第。
後に公式サイトでオンラインゲーム化されたり(現在はサービス終了)、『×3』の予約特典小説「挟み忘れた栞」でゲームブック化もされている。
ちょっとエッチなかまいたちの夜2
PSP版のみに収録されたサウンドドラマ(音声のみのシナリオ)。
真理と共に招待され、ちょっとした下心を抱えて三日月島を訪れた透だったが……
声優は初代から一新されている。今回のオチは……
黒のしおり
妄想篇(牧野修)
本編から分岐するストーリー。本作屈指のトラウマシナリオ。
物語の進行がとぎれとぎれになっていたり、等身大だったシルエットが歪曲していたりと、まるで夢の中にいるような描写がなされる。周囲の人物ばかりか透の発言や反応も歪で、おかしな事になっている。その原因とは……
惨殺篇(牧野修)
本編の第3の殺人が発生したところから分岐するストーリー。PSP版で18禁(CERO旧レート)になった原因その2。
「第3の犠牲者」の身体の中から出てきた、細い蟲のような生物。心の底から沸きあがる「ある感情」に、招待客達は少しずつ侵されてゆく。
「三日月館」で繰り広げられる血の狂宴。燃え上がるような夕焼けの中、真紅に染まった「奇妙な果実」の正体は……
題名通りに流血および暴力シーンが多く、効果音も不気味なものが多い。PSP版では規制により表現のマイルド化修正がかなり多い。
洞窟探検篇(牧野修)
本編から分岐するストーリー。
三日月島の地下に存在する「迷宮」が舞台。透と真理は協力して謎を解きながら冒険をすすめる。遠い異国の神話を髣髴とさせる迷宮最深部にある「宝」とは何か?
途中でセーブする事が出来ない場面があり、きちんと謎を明かしていかないと先に進めない。バッドエンドもそれなりにある。
陰謀篇?(謎のメッセージ)
「洞窟探検篇」のある場面であることをすると……
厳密に言うと今作では個別のシナリオ扱いではないが、金のしおりの条件のひとつになっている。
金のしおり
各ストーリーの全エンディングを迎え、さらに「洞窟探検篇」で謎のメッセージを見ることで出現する。
出現後は独立したシナリオが登場する訳ではないが、特定のルートを通過する時にランダムな確率で画面背景が突如バグり、謎の選択肢やメッセージが表示される。全4種類あり、非常にホラーな演出となっている。
余談
このゲームの背景のグラフィックは、日本各地をロケーションして撮影された写真をスキャンし、デジタル加工するという手法を使って製作されている。
シーンによっては特定の場所の写真だけでなく、複数の場所の写真を合成して作られている場合もある。
たとえば舞台となる三日月館は東京都水道局駒沢給水所(通称「双子の給水塔」)、JR原宿駅、戦場ヶ原の写真を合成している。