アーネスト・グレイヴヒル
あーねすとぐれいゔひる
「私の考えは君と同じだよヤングマジシャン。魔術師同士の争いにおいて、無関係な人々を巻き込むのは魔道に反する。犠牲を出すというのなら―――それは魔術師か、とうに死んでいる者だけにするべきだ」
2006年に放送された『Fate/stay night』のTVアニメ版とその後の劇場版で登場するはずだったオリジナルキャラクター。元々は新要素を加えた第四のルートとでも言うべき内容となるはずだったが、ゲーム準拠の内容でアニメ化することになったことで彼も没案となった。
「TYPE-MOON展 Fate/stay night -15年の軌跡-」で配布された、『Fate/unpublished material』でその設定が公開されている。
オリジナルルートにおけるサーヴァント、シールダーのマスター。金髪に緑色の眼をした、外見年齢30代前半の男性。身長は180cmあるかないかであり、高級だが嫌味のないスーツを着込む、常に穏和な顔立ちの男性。
一人称は『私』であり、挨拶は「ごきげんよう」だが、高圧的だったり嫌味っぽいところはなく、丁寧で柔らかい、相手を思いやるような口調である。
出身はアメリカであり、二代ほど前までは魔術協会の中心、ロンドンでそれなりに名の通った名門だった家系の出身。
聖杯戦争のために来日した魔術師であり、魔術協会には所属しているものの、実際に足を運ぶのは年に一度か二度だけという幽霊会員。協会のルールに身を置かず単独での研究を好むため半フリーランスといえる立場。
バゼット・フラガ・マクレミッツとは別の部署からの派遣であり、互いに面識はない。彼が送り出されたのは10年前の聖杯戦争でロード・エルメロイを失ったことを受け、魔術協会が将来有望な魔術師を失うわけにはいかないと考えたため。協会にとって彼は「失っても痛手にならない」人材である。
紳士然としており街の人々を気遣っているようにもみえるが、戦いが始まれば冬木市の人間を背景としか思わない非人間。
調和を好む、分別のある平和主義者。子供から見た理想的な『保護者としての男性』であり、大人になっていない者から見れば頼りになる温かさを持つ。迷える少年少女を確かな人生経験と価値観をもって導く教師であり、頼れる大人。
ただしそれは表層だけのものであり、根が魔術師そのものである彼が好むのは基本的に『自分を中心とした』調和であり、その実行のためには何の躊躇もない。
他人の痛みや迷いを深く理解しているかのように振る舞うが、内面ではまったく考慮していない。口にする助言や説法は正しいこと、良いことのように聞こえるが、これらはすべて『自分のためにならないものは要らない』という理念に基づいた言動であり、彼にとって世界とは『助け合い、与えあう』ものではなく、『自分を助け、自分に与える』ものである。
無論世界はそのようにはできておらず、アーネストという人間の方が世界を回す歯車のひとつにすぎないが、彼は自分が『世界の主』などとは考えていないため、内面が自己矛盾で崩壊することはない。
矛盾した話ではあるが、彼は世界が「自分に与えるだけのもの」と捉えていながら、同時に自身が「世界の歯車のひとつ」だと納得している。自分は奴隷だが世界中の王はこの奴隷のために奉仕している、と確信しており、この破綻こそが生まれついての魔術師の証である。
端的に言えば『自分だけが大切な人間(ただし自分が一番偉い、という誇大妄想癖ではない)』であり、その一点が保たれているかぎり、この上なくいい人な紳士である。逆に言えば自分にとって不利益な流れになると率先してその原因を排除しにかかる。
人間の名前を覚えるつもりがないため、大抵の相手は「君」と呼び、名前で呼ぶことは滅多にない。
人間としての善悪は弁えているが、そのどちらも支持せず、そもそも自分の行為は善悪どちらでもないと達観している。
聖杯に望む願いは特にない。あくまで『仕事として』マスターをしているだけであり、いつも通り自分の思うがままにやっていれば、聖杯は自分の手元に転がり込んでくるのだから、一人のマスターとしてそれなりの仕事をすればいいだろうという考えである。
死体の再動を得意とする魔術師。一見してネクロマンサーであるが、死体に魂を宿らせることで動かす降霊術とは違い、魂や精神の宿らない死体を、かつてそれらが宿っていたであろう頃と同じ性能で動かすことができるというもの。生者への妄念を原動力とする死霊とは別物で、死体にネジを巻いてスイッチをオンにすることが、アーネストの魔術である。
このことから時計塔における所属も降霊科ではなく創造科。
得意分野は基本的な魔術である体律(体の調整)、同律(外界との体感一致)、感知(魔力、魔術行使の感知)の他、自身を守るための防壁魔術各種と天性の才能といえる『死体の再動』。
実年齢が外見年齢よりやや上なのも、体律による若作りである。
使い魔の類は全くなく、これはアーネストが自分以外の者を信じていない(必要としない)ことによるもの。たとえ死霊であっても使役することはできないというが、そもそも彼自身も興味がない。
自分のサーヴァントも死体に憑依させる形で召喚しており、普段は物言わぬ死体として彼に付き従い、戦闘時のみ内部にいる英霊が表に出る。これは魔力消費を抑えるためであり、それ以上にアーネストがたとえサーヴァントであろうと“生きているもの”を身近に置くことを良しとしなかったためである。
魔術師としては遠坂凛に大きく後れを取り、魔術師としての能力やマスターとしての力は平均的であるとされる。
彼に魔術師の異常性と、聖杯戦争の非情性を思い知らせるのがアーネストの役回りである。
最初こそ「これから競い合う同士とはいえ、必要以上にいがみ合う必要はないでしょう」と大人な対応をするアーネストに『まともな魔術師もいるじゃないか』と好印象を抱いていたが、一般人を巻き込まないのはあくまで「魔術を隠匿するため」でしかないことや、彼の魔術が死体を操るもの(誰も殺していないという点では確かに人道に適っている)という価値観の違いを知り、敵対する。
アーネストの人物像は『魔術師としての覚悟はないまま聖杯戦争で血を流す覚悟をもった士郎』に対する『魔術師としての覚悟はあるのに聖杯戦争で血を流す覚悟のなかったアーネスト』と、対比させる形で設定されたものである。
召喚したサーヴァント。物語の中盤直前あたりでマスターとしての権利を放棄し帰国しようとするも、自我が浮上し始めた彼女によって殺害され、令呪を奪われる。
御三家でもない、外来の魔術師でありながら教会でのルール説明に居合わせたアーネストを無能と評した。終始彼のことを信用せず、気を許すこともなかった。
自分は既に満たされていると語るアーネストが、本当に望んでいるものは『恒久的な力、他者を圧倒する絶対者としての己』であることを初対面で看破した。
魔力消費を抑えるためにアーネストが自分のサーヴァントを憑依させた死体も、元々は言峰が用意したものである。
アーネスト・ファーゴ
同じファーストネームの(恐らく無関係の)魔術師。
ファーゴ家はアニムスフィアの分家で、そのアニムスフィアはデミ・サーヴァントを作り出しており、タチエをサーヴァントにしている所業と重なるものがある。
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すべて見る※※※SN第四√ネタバレ有※※※ 「再始動」
こちらはTYPE-MOON展来場者特典を読みながら見切り発車で書き始めたため、書いてから数秒で公式との設定矛盾が生まれたワンシーン 念のために書くけど、Fate/unpublished materialにこんなシーンは全く出てきません。 キャラ設定見ただけで書いたからネ!901文字pixiv小説作品