プロフィール
概要
タチエとは2006年に放送されたスタジオディーン版Fate/stay nightのテレビアニメと、その後の劇場版に登場予定だったキャラクター。
『TYPE-MOON展Fate/stay night-15年の軌跡-』で入場者特典として配布された、Fate/unpublished material にその詳細な設定が掲載されている。
アニメ版製作時に既存の三つの物語に次ぐ、第四の物語の新要素として考案されたが、ボツとなった。
そして時を経て、Fate/Grand Orderのメインヒロインとしてリデザインされたのがマシュ・キリエライトである。
シールダーのサーヴァント。元々は死体の『再動』を得意とする魔術師であるアーネスト・グレイヴヒルが10年前に死亡したとある少女の死体に召喚したサーヴァントだったが、彼の脱落後は主のいないはぐれサーヴァントとして街を彷徨い、セイバーと衛宮士郎の二人にとって因縁のあるキャラとして立ち回ることとなる。
始めは自我がなく、アーネストの命令を機械的に実行するだけの存在だったが、人格を取り戻していくたびに凶暴性が増していく。タチエの人格と内部にいる英霊の一相がランダムに入れ替わるため、二重人格のようになっている。
外見年齢は士郎と同じくらいで、ざんばらに切った黒髪に、常に俯いているような寂しげな表情をしており、美少女ではあるが見ようによっては美少年にも見える。
普段着はセーラー服、サーヴァント時はラウンドシールドを中心に、セイバーのように変身(完全武装)する。
テレビアニメ版と劇場版でがらりと扱いの変わる(予定だった)キャラであり、テレビアニメ版ではチュートリアルキャラ、劇場版では『取り残されたもの』『見送るもの』というテーマを背負う。
なお、これ以降に取り扱う情報は主に劇場版の方の情報となる。
性格
マスターであるアーネスト・グレイヴヒルが『生きているもの』を信用せず、サーヴァントでさえ身近に置くことを良しとしなかったことから死体に憑依させることで召喚している。これはアーネスト自身の魔力負担を減らす為でもあるが、それ以上に自身の愛用する死体であれば完全な道具として扱えると考えたためである。
そのため、物語開始当初はタチエの意識もギャラハッドの意識もない。タチエはまだ眠っているようなものであり、ギャラハッドも不条理な召喚のため自分がどのようなモノであるかを理解していない状態である。
初期
アーネストのサーヴァントとして活動していた初期は、普段は物言わぬ死体として彼に付き従い、戦闘時にギャラハッドの意識が表に出る。が、右も左もわからない中で状況把握に努めたギャラハッドはアーネストを「汝は主君にあらず」と判を下し、単身で聖杯戦争に挑むこととなる。
タチエの意識も生まれ始め、自分を一度破ったセイバーと士郎に憎しみのような執着も見せる。
中期
タチエの方が主人格となっていく。ギャラハッドも過去の記憶を思い出し始めるが、自分の真名を思い出せずにいる。やがてセイバーがエクスカリバーを使用したことで自分の真名を思い出し、セイバーに対してやるべき事を明確化する。
一方、タチエはギャラハッドのフォローを受けながら無軌道な戦いを繰り返す。自身を維持する魔力補給のために人を殺し、もう死にたくない、あいつ(士郎)が憎いという妄念だけで動いているが、それが何処か間違っていると気付きながらも力を蓄えていく。
末期
ギャラハッドは完全にタチエのアドバイス役に回る。まるまる召喚された他のサーヴァントと違い、本当に一部だけが呼ばれた自分が現世に介入することはできない。シールダーのサーヴァントは、ギャラハッドの力を手に入れたタチエであると解釈すべきだ、と。
(そんな彼だが、自分を間違った王だったと悔やむセイバーとの対決時だけは表層に現れる。)
一方でタチエは街を彷徨い、10年の時の流れを実感し自分が帰る場所はどこにもないことを痛感する。悲しみを恨みに変えて原動力とするが、苦し紛れであることは本人も気付いている。甦り、死にたくないからと彷徨っているものの、どうあることが正しいのかは理解している。それでも胸に焼き付いた恐怖、理不尽な惨劇の記憶、火災によって全てを奪われた怨念は消え去らない。最終的には言峰の陣営へ与してしまう。
- タチエ
無口で消極的な性格。必要な事しかやらないが、そんな自分を寂しく思ったりする捨てられた子犬系少女。
精神年齢は死亡した16歳の頃のもの。生前は大人しめの、ノーモア暴力な少女でありその面影は残っているが、甦ったといっても死体にすぎないので、生前の彼女とは別物。彼女だったものはとうに消え失せ、残骸が新たな意志をもったもの。
10年前の聖杯戦争で発生した大火災から生き延びた少年である衛宮士郎とは逆に、大火災で事切れてしまった少女。かつての惨劇の中で瓦礫の下敷となってしまい士郎に助けを求めるも、見向きもされなかった。(タチエは助けを呼んでいるつもりだったが、実は既に死んでいた。)
そのような経緯から、自分を無視し、あまつさえ生き延びている衛宮士郎に対して強い憎しみを抱いている。
一人称は「わたし」。口調はややすっぱ。「……そう、だけど」「……そういうの、イヤ」「……気に食わないな、あなた」など。根は大人しいのに必死に拒絶している感じ。ぽつぽつと喋る。混乱時は荒い呼吸ばかりで滅多に喋らない。
基本的に『聖杯を手に入れる』ことに関連する事しかできず、他の人間らしいことをしようとすると“既に死んでいる”という事実がストッパーになって何もできなくなってしまう。とは言っても本当は人間らしいことをしたいので、第三者に(強引に)誘われたら断れず、ずるずると付いていくことに。
混乱状態にさえならなければ、いたって普通のヒロイン系。
円卓の騎士のひとりであり、唯一聖杯探索に成功した騎士(他にも聖杯を見つけた騎士はいたが、最終的な意味で『成功』したのはギャラハッドのみという扱い)。
基本的には表に出てくることはなく、タチエのフォローに回る。表に出てきた場合、死にたくないという生への執着と10年前の大火災の恐怖から混乱し見境なく暴れ出してしまうタチエとは逆に、迷いのない厳格な少年騎士に変貌する。
が、こちらはこちらで戦闘に一切容赦がないのでやはり危険。
彼が表に出ているときは、丁寧だが人懐っこい少年口調となる。「ええ、そうですね」「そういうのはお断りです」「趣味があいませんね、ボクたち」など。大抵の相手は「あなた」と呼ぶが、知り合ってくると名字を呼び捨てになる。
能力
シールダーらしく防御に長けた能力を持ち、盾による防御は概念的なものかAランクを上回る攻撃でしか突破できず、偽・螺旋剣をも防ぐ。
(そのため『Aが最高ランクである』という認識をしていたこの時の遠坂凛は、「そんなの無敵じゃない」と拗ねてしまっている。)
また死体ということで割と不死身であり、魔力さえ補給すれば体は復元し、痛みも感じない。
一方で死体に英霊を埋め込むという変則召喚であることから発揮できる実力にムラがあり、序盤での対アーチャー戦では宝具を持っているだけの死体にすぎなかったため防戦一方、中盤での対セイバー戦では戦力は互角だが疑似的に『受肉』していることで頑丈さでは上回る状態となっている。
死体に埋め込まれたことで霊体化もできないなど総合的にはメリットよりもデメリットの方が大きい状況だが、アーネストの脱落後も様々なサーヴァントと戦うこととなり、その度に生き延び、次第に本来の戦い方を思い出していくこととなる。
宝具
災禍指す時の断片(アラウンド・ラウンドシールド)
円卓の騎士・ギャラハッドの名を知らしめたエピソード、『災厄の席』にまつわる伝承を宝具にしたもの。タチエの装備している盾。概念的、或いはAランクを上回る攻撃でなければ突破不可能。
この盾は物理的に高い防御力を持つが、ヘラクレスの十二の試練のように『Aランク以下は無効』という概念が付与されているわけではなく、騎英の手綱クラスの直撃は防げない。
ただし、約束された勝利の剣を初めとする円卓の騎士やそれに関連する武装に対して、高い追加効果を持つ。
また、ラウンドシールドには特別な呪いがかかっており、ギャラハッド以外の者が触れるとカウンターとして聖槍が射出される。これは聖なる盾の逸話に由来するものである。
なお、この聖槍はビームではなく実体を持つ武装。色合いやデザインはFGOにおける第二再臨のモルガンが携えているものに近い。
誉れ高き時の円卓(ロード・キャメロット)
ラウンドシールドの最大展開。エーテル塊を用いて残る円卓部分を形成、完全な円卓を再現し、それを触媒として円卓の騎士たちの城、キャメロット城の城壁を前面に展開する。城壁の形をしたバリアー。
「他に相応しい王がいたのではないか」と疑念を持つアルトリアには、円卓の騎士や皆の心の拠り所だったキャメロットを打ち砕くことなどできない。まさに対アーサー王の究極とも言えるギャラハッドの宝具。
いまは遙か理想の城との違いは、あちらが白亜の城であるのに対し、こちらは黒を基調として所々青色のラインが走っている(FGOのモルガンに近い)こと、キャメロットの城壁に迎撃用盾眼球という外敵を迎撃するための機能が無数に存在していることである。
迎撃用盾眼球はコアを中心としてその周りを12の黒点が取り囲んでおり、黒点からはダビデ剣をガトリング状にアローレイン発射し、周囲の魔力がコアの盾眼球に集中することで聖槍が顕現する。この聖槍を複数展開し同時射出した場合、その威力は一時的とはいえ約束された勝利の剣と拮抗するほどとなる。
さらにこの盾眼球は城壁のどこからでも出現することができる。目線は敵対者を追って動き、侵入者を排除することさえ可能とする。
防御性能も当然高く、一点防御と全体防御の切り替えや正門柵を多重展開することで防壁とすることもできる。さらに大破しても魔力により修復することが可能であり、最終形態ともなれば魔力が集中してオーバーエッジのような状態となり、壁の崩壊と生成が物凄い速度で行われ、内部からはコールタール状のヘドロが噴出する。
城内に存在する円卓はギャラハッドの席だけひび割れており、タチエ(ギャラハッド)はその席、あるいは円卓の中心にある魔法陣に陣取りつつ城の機能を開放する。
関連人物
召喚したマスター。物語の中盤直前あたりでマスターとしての権利を放棄し帰国しようとするも、蘇生させられ、強引にサーヴァントにされたシールダーは反対。自我が浮上し始めたシールダーによって殺害され、令呪を奪われる。
特殊な関係ではあるが、以降はタチエがマスター、ギャラハッドがサーヴァントのようなものとなる。
タチエの死体を保管していた者。アーネストが死体にサーヴァントを召喚することに反対し止めもしたが、最終的には引き渡す。
物語の終盤では彼の陣営に与し、衛宮士郎の傷(大火災の記憶)を開く場にも居合わせることに。
タチエが憎しみを向ける相手。最終的に言峰が傷を開いた際に彼の記憶がタチエにも流れ込み、その思いを知ることとなる。
自分だけが助かろうと全てを見捨てたのではなく、最後まで生き残るために前に進んだ。背中にかかる数多の怨霊に、謝らず、許しを請わず、自分だけが生き残って、死んでいった者たちの代わりになるよう、正義の味方なんて生き方を選んだ。その歪さと苦しみ、精一杯の弔いに納得しながら、かつて歩み去っていった少年は自分の為ではなく死んでいった者たちのために生き延びようとしていたこと、それが尊い奇跡であったことを理解した。
物語の終盤、敵同士であるという関係性はそのままに彼を庇い、死亡する。10年前と同じ、去る者と置いていかれる者の構図だが、その意味は正反対のものとなっている。眩しいものを見るような心持で「うん―――」「いってらっしゃい」と彼の背中を見送り、満足げに微笑む最期を迎える。
ギャラハッドがかつて仕えた王。「他に相応しい王がいたのではないか」という疑念を持つ彼女にとって、ギャラハッドは『自分を糾すために現れた騎士』に映った。
宝具によりキャメロットを展開してセイバーを追い詰めるが、そこに彼女への憎しみは一切なく、むしろ尊敬と感謝だけがあった。この聖杯戦争でアーサー王にまみえられたことに感謝し、それを示すためにシールダーとして決戦を挑む。
「貴方こそ我々にとっての希望」「最悪の中で、最善を取り続けた1つの理想」「ですがその理想に捕らわれているのなら、この城を壊されるといい」「貴方が目指し、築き上げたものは、この城よりもっと広く、もっと価値のあるものだったのだから」
その発言を受け、彼女はそれまで控えていた約束された勝利の剣を全力行使し、キャメロットを凌駕する。ギャラハッドの精神はその時点で消滅し、後の力をタチエのために残した。
余談
Fate/Grand Orderへの再登場が望まれており、マシュの旧CVであった種田梨沙を希望する声もある。
シリアスなバックを持つ彼女だが、「タチエの立ち絵」という美味しいネタがある。