概要
エルウィン・ヨーゼフ2世とは、田中芳樹の小説『銀河英雄伝説』の登場人物である。
帝国暦482年、ゴールデンバウム朝銀河帝国第36代皇帝・フリードリヒ4世の子のなかで唯一成人したルードヴィヒ皇太子の子として生まれる。
皇太子の子でありながら母の身分は低く、ブラウンシュヴァイク公爵家やリッテンハイム侯爵家のような大貴族を後ろ盾をもたないエルウィン・ヨーゼフは次期皇帝として期待された存在ではなく、父・ルードヴィヒも帝国暦486年までに亡くなっており、むしろ冷遇された存在だった。
帝国暦487年、祖父・フリードリヒ4世の崩御後、エルウィン・ヨーゼフは門閥貴族が国政を壟断することを嫌う国務尚書・クラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵と帝国軍宇宙艦隊司令長官・ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥(侯爵)によって擁立され即位、
先帝・フリードリヒ4世の娘を妻にもち娘を次期皇帝に擁立しようとの野心をもつオットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵、ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世侯爵ら大貴族はガイエスブルグ要塞に籠り、対抗の意思をもって迎え撃つが敗北、
この帝国を二分する内乱終結後、ラインハルトを含む帝国艦隊幹部が捕虜との会見に臨んでいたところ、虜囚の一人・アンスバッハ准将が突如発砲し宇宙艦隊副司令長官・ジークフリード・キルヒアイス上級大将が死亡、宇宙艦隊は参謀長・パウル・フォン・オーベルシュタイン中将の献策を受けて国務尚書・リヒテンラーデ公爵を逮捕、一族を処刑した。
大乱が集結したことにより帝国の全権を手中にしたラインハルトは宮廷費と宮中の官吏や衛兵を削減、しかし、それでも大勢の大人が幼帝にかしずくという待遇を受けつづけることとなった。
帝国宰相となったラインハルトにとっても幼帝の存在は扱いに困るものであった。
報告によれば「幼帝・エルウィン・ヨーゼフ2世は陰気で見るべきものがない」性格であったが、「大器晩成という言葉もあり、ラインハルトの大望に将来障害となりうるかもしれない」可能性もあり、殺すに殺せない存在であった。
そんななかにあってラインハルトはフェザーンから門閥貴族の残党・アルフレット・フォン・ランズベルク伯爵とレオポルド・シューマッハ大佐を帝都オーディンに侵入させ、幼帝・エルウィン・ヨーゼフ2世を誘拐させ、自由惑星同盟に亡命させる計画をもちかけられ、ラインハルトも総参謀長・オーベルシュタイン上級大将と語らって計画を了解する。
そんな策謀を知るはずもなく、幼帝は誘拐され自由惑星同盟への亡命を余儀なくされ、門閥貴族の残党たちは自由惑星同盟首都・惑星ハイネセンにおいて「銀河帝国正統政府」を樹立する。
「銀河帝国正統政府」の樹立を知った帝国宰相・ラインハルト・フォン・ローエングラムは計画通り、エルウィン・ヨーゼフ2世を誘拐した門閥貴族と、幼帝を受け入れた自由惑星同盟の罪状を糾弾、両者に対して宣戦を布告、同時に幼帝を廃してカザリン・ケートヘン1世を新帝に擁立した。
帝国暦490年、同盟領を蹂躙する帝国軍は同盟首都・惑星ハイネセンを陥落させ、ここに「銀河帝国正統政府」は短い歴史を終えるが、そこに前皇帝・エルウィン・ヨーゼフ2世の姿はなかった。
同年、帝国宰相・ラインハルト・フォン・ローエングラムはゴールデンバウム朝最後の皇帝・カザリン・ケートヘン1世より譲位を受けて即位、ローエングラム朝銀河帝国が始まり、新帝国暦1年が始まる。
新帝国暦2年11月、ミイラ化した子供の遺体と、逃亡中の事柄を記した克明な手記とともに、エルウィン・ヨーゼフ2世を誘拐したランズベルク伯が逮捕される。
が、ランズベルク伯の証言ではエルウィン・ヨーゼフ2世は拒食症になり3月に死亡したとのこと、これらの記述は憲兵隊を信用させるに充分なものであったが、ランズベルク自身は精神を病んでおり彼は精神病院に収容されることとなった。
新帝国暦3年、ランズベルク伯とともにエルウィン・ヨーゼフ2世を誘拐したシューマッハが逮捕される。シューマッハの証言ではエルウィン・ヨーゼフ2世は新帝国暦2年3月頃にランズベルク伯のもとから逃亡、どこに行ったかは誰にもわからないという。
シューマッハの証言により、「(エルウィン・ヨーゼフ2世)その終わるところを知らず」と書かれることとなった。