概要
上海アリス幻樂団による「ZUN's Music Collection」に登場する酒場。
第九弾作品の「旧約酒場」に登場する。
作中では「ZUN's Music Collection」第二弾作品である「蓮台野夜行」以後、同シリーズに主人公格として登場する宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン(メリー)の二人がここを訪れている。
作品としての「旧約酒場」には「オールドアダム」の語が複数の場面で登場しており、例えば作品名としての「旧約酒場」併記の英字タイトルでは「 Dateless Bar "Old Adam". 」と「オールドアダム」の部分が独立して登場しており、同部分が一つの節・名称であることを見ることができる。
ただしこれはブックレットの内表記や上海アリス幻樂団ホームページ(博麗幻想書籍、2016年7月22日付け)などなどにみられるもので、ブックレット表紙(ジャケット)のデザインでは「 Dateless Bar Old Adam 」と「 " " 」(ダブルクォーテーション)が記載されていないデザインともなっている。
またジャケットデザインではピリオドの表記も見られない。
この酒場の名前を関するものとしては同作に収録の楽曲に「バー・オールドアダム」があり、同曲に併記の英字タイトルは「 Bar "Old Adam" 」となっている。
なお、「旧約酒場」ブックレット本文デザインには、目次ページを除いたページの上下に花のデザインに並んで「 OLD ADAM 」の文字列が連続して登場している。
「オールドアダム」
蓮子によれば、「バー・オールドアダム」は「 夜な夜な特殊な人間達が集まっては独自の経験談を語ったり、意見を交換している 」(原文では「 特殊 」に黒丸のルビ)場所で、来店客のほとんどが不思議な世界を語る「 奇異な内容 」(「燕石博物誌」)の書物である「 燕石博物誌 」の読者にして同種の不思議な体験をもつとされる。
店舗の内部の様子は具体的には描かれていないが、メリーの印象では「 不気味なお店 」。
バーとして提供する酒類にも特徴があり、蓮子とメリーの住まうこの世界には「新型酒」と「旧型酒」の二種類があるが、オールドアダムでは後者の旧型酒を「 専門 」で取り扱う。
旧型酒は人類史における飲料用アルコール類の直系統のもので、「 自然の酵母が作り上げたお酒 」。
この世界では旧型酒の方が貴重でかつ高価である。
「旧約酒場」作中当日に蓮子とメリーが飲んだものは「 フォービドゥンサイダー 」(英語表記では「 forbidden cider 」か)で、これは林檎酒(シードル)をベースにした黄色のカクテル。
直訳すると「禁断の(禁止された)林檎酒」などとなるか。
来店客に目を向けることなく挨拶する「 愛想の無いマスター 」からこのお酒が配られることが、店内で来店客同士が「 不思議な話 」を始める合図ともなっている。
「 秘封倶楽部の課外活動としては最高だわ 」(蓮子、「旧約酒場」)
この他Dr.レイテンシーを名乗った「 初老の男性 」は蓮子やメリーが聞いたことのないお酒を注文しており、作中では主人公二人がその名前を知らなかったこともあってこのお酒の名称は登場していない。
二次創作では
二次創作でも「オールドアダム」が舞台として登場することがあり、作中では描かれていない店内の様子をはじめマスターや来店客の様子なども想像されることがある。
また「旧約酒場」作中時間以後も「オールドアダム」に通う蓮子とメリーや集いを通して生まれる人間関係、あるいは時には「旧約酒場」作中でメリーが行ったような他の客たちの関心の掌握などを通してメリーたちがより特別な存在となっていく様子を想像する作品もあるなど、「オールドアダム」をステージとして広がる想像は多様である。
作品によっては蓮子やメリーに主題をおかずにオールドアダムのとある一日を描くことで、蓮子とメリーの住まう世界と、その世界で「禁止されている」というオカルトを求める人々の群像劇にアプローチしていくといった作品もあり、オールドアダム自体もまた今日の社会にあってその埒外とされた「何か」、秘封倶楽部の視点でいう所の「 不思議 」を求める人々(または何らかの存在)の拠り所として機能する様子が描かれることもある。
さらにはこのオールドアダムが同じく上海アリス幻樂団の東方Projectで展開されている幻想郷との接点となるという考察や想像もあり、時にはオールドアダム自体が博麗神社のような幻想郷との「境界」として機能するといった展開を試みる創作アプローチもある。
例えば元々幻想郷にあってファンの間でも秘封倶楽部と強い関連性が想像されている人物やその関係者がバーのマスターを務めていたりオーナーだったり、あるいは「不思議な来客」や「常連」としてここを訪れたりといった様子には、オールドアダム登場以前から想像されてきた秘封倶楽部と幻想郷の深いかかわり合いを見ることができる。
オールドアダムもまた、二つの世界を結ぶ場所ともなり得るのである。
また、もう一つの秘封倶楽部である宇佐見菫子とオールドアダムの接触も想像されている。
ただし菫子の初登場した『東方深秘録』時点では菫子は未成年(高校生)であるため、菫子の住まう世界が現在の日本と同様の飲酒制限年齢に関する法律を備えている場合、(都道府県の各条例などを考慮しない場合でも)法律の面では菫子はオールドアダムでお酒を嗜むことはできない。
菫子の住まう世界にオールドアダムがあるかどうかも不明である。
一方で菫子はSNSを利用しており、自ら発信も行なっている(『東方文果真報』、『東方香霖堂』他)。
創作によってはこのSNSを通してオカルト探求者の集いの場としてのオールドアダムと菫子が(SNS上で)出会うといった想像もある。その時はオールドアダム本体が発信するホームページへのアクセスであったり、あるいは口コミのようなネットワークを通じた直接的または偶発的な認知であったり、はたまた菫子の何らかのアカウントともいうべき電子ネットワーク上のIDに、誰か他者がオールドアダムの存在を伝えるといった接触の在り方が見られている。
特に菫子がオールドアダムを知るまでに他者が介する場合は電子上で通常でない何かの作用が介入するといった想像もあり、これは『深秘録』終盤のような、時にオカルトに翻弄される菫子の姿の想像にもまた繋がり得るものでもある。
なお、「旧約酒場」でのオールドアダムでの様子は蓮子とメリーが(特殊な体験を得た、あるいは求める人々という、必ずしも無作為のマジョリティではないものの)明確に他者とリアルタイムで交流する描写が初めて描かれたものでもあり、これによって一部で継続的に検証と考察が試みられている蓮子・メリーの非実在仮説、架空存在説とも言えるような両者の実存そのものに懐疑的な可能性も視野に納める視点に対して、その実在を表明し得る根拠としての描写ともなった。
ただし先述のように作中で交流した人々の属性に偏りがある(無作為のマジョリティではない)ため、例えば二人がイマジナリーフレンドのようなそれを求める人々の前にしか姿を現さない存在と解する立場を否定するだけの十分な条件とはなっていないなど議論は未だ十全な決着を見てはいない。