概要
上海アリス幻樂団作品の二次創作に登場することのある行政組織で、それは主に「ZUN's Music Collection」に登場する秘封倶楽部及びその世界観、あるいは東方Projectに登場する「外の世界」にまつわる二次創作に登場する事が多い。
2017年3月現在、少なくとも原作である「ZUN's Music Collection」や東方Project全般では「結界省」などの名称・組織等は登場しない。
また二次創作であるが、二次創作全般に組み込まれた概念・設定という訳でもない。
「結界省」という視点を前提としない創作もあれば、作品によっては登場することがある、といったものである。いわば「共有され、時に使用されることのある二次創作」の設定の一つである。
例えば同様に二次創作的アプローチの一つであるマエリベリー・ハーン(メリー)にまつわる「紫=メリー説」などは、それを組み込んだ作品もあれば組み込まない(二者は別々のアイデンティティとする立場の)作品もあり、こういったアプローチの方法と同様に作品ごとの世界観に合わせた選択性をもつものとなっている。
秘封倶楽部などに関連する創作を見るとき、同世界観にまつわる創作の多様性、同時に二次創作的想像の深みを同時に象徴するものの一つといえるだろう。
原作における「結界」
上記原作には、その二次創作において「結界省」という行政の想像にも結びつき得る、社会状況、人々のメンタリティなどに関連した記述がある。
例えば「蓮台野夜行」では「 結界を暴く行為 」は「 均衡を崩す恐れがあるから禁止されている 」とされている。「 均衡 」が具体的にどのようなものであるかは不明であるが、そのような心理とも関連し得る社会全般のメンタリティについては「 管理外の物を恐れる 」(「伊弉諾物質」)などともされている。
身の回りのものを天然物から人工物へと移行している様子で、例えば食料(「夢違科学世紀」、「旧約酒場」他)や環境(「伊弉諾物質」他)にも人間の加工は広がり、一つの生態系を人工的に生み出すチャレンジ(「鳥船遺跡」)も行われている。
「 だから、彼女の能力はオカルトな物として秘密にしなければならない 」
(蓮子。メリーについて。「伊弉諾物質」)
またもう一つの秘封倶楽部である宇佐見菫子はまさにその結界の向こう側の世界を「 曝く 」ことを目論んだ存在でもあり、同時に複数の方法で結界の向こう側の幻想郷に至ってもいる(『東方深秘録』他)。
東方Projectでは「結界」を構成した側とそれを維持する側の視点も登場しており、例えば八雲紫による博麗大結界提案、博麗霊夢(博麗の巫女)による結界管理等の様子が語られている。
「結界」を越えるという点では「外の世界」から幻想郷へとやってきた守矢神社の面々(『東方風神録』)、肉体または精神の状態で二つの世界を渡った霧雨魔理沙(前者は主に『深秘録』、後者は『東方茨歌仙』)の他、『深秘録』での騒動に巻き込まれた一部の面々、森近霖之助(『東方香霖堂』)などが「結界」を越えるという体験を得ている。
また月の都は幻想郷とは別に近年の外の世界との接触がある(『東方儚月抄』)。
このように、上海アリス幻樂団作品では複数の観点・立場からそれぞれが同一のものであるかは不明ながら「結界」または「結界」を通した世界の姿が描かれており、作中でも特に幻想郷側の妖怪などにとっては個々の存在性にまで関わる極めて重要な要素となっている。
二次創作における「結界省」の一例
※以下の記述は主に「ZUN's Music Collection」で語られる「 日本 」における二次創作的アプローチである「結界省」について、2017年時点の日本の行政体系を参考に記述されています。
現実の情勢の変化、または上海アリス幻樂団作品の進展によって記述内容が上記いずれかまたは両者いずれもの実際に沿わないものとなる可能性もあります。
日本の行政機関の編成と「結界省」
ここにおける「省」とは、中央省庁における行政機関の組織の体系の一種を指すものである。
文脈によっては当該の組織が関連する物理的・制度手続き的な所在地や建造物自体を指し示すこともあるだろう。
日本の省庁設置にかかる各種法律等や慣例(たとえば「いわゆる建制順」)からみるに、「省」の行政区分は「府」(例えば「内閣府」等)に次ぐもので、「庁」に先んじるものである。
例えば「庁」から「省」へ移行することは「格上げ」ともされる。
近年の各種中央の行政機関の再編であれば環境庁から環境省(2001年)、防衛庁からの防衛省(2007年)への「格上げ」などが行われている。組織の長も「庁」であれば「長官」あるいはごくまれに「総裁」(例えば旧法務庁、法務総裁)となることが多いが、「省」は「大臣」となる。「結界省」であれば、特別な理由がなければ「結界省大臣」や「結界大臣」と呼ばれるだろう。
一般に、すべての行政機関は内閣をその長とするが、日本では内閣を監視する性質から会計検査院のみ内閣に属さないというケースがある。
「結界省」についても三権分立にも記述される行政権の長としての内閣に属するかどうか、という点も二次創作ごとにアプローチが異なる。
すなわち内閣がその権限を掌握できているか、あるいは内閣の権限さえも届かない異例中の異例な体系にあるのか、といったアプローチは、「結界」とその向こう側の世界に対する眼差しの在り方を含めた世界観を考察するにあたってポイントの一つともなり得る。
あるいは普段は内閣に帰属しつつも、「何らかの事態」が起きた場合は内閣の管轄を離れる判断権限を持つ、といった事態対処における特例的な性質をもつと想像されることもある。一般に安全保障の局面などで何らかの事態が発生した際は内閣のもとに意思決定がより結束するものであるが、結界省もまたそうなるかどうかについては作品に登場する「結界省」の性質、政治的位置づけ、あるいは社会における「結界」に対する潜在的な危機意識ごとに様々である。
その場合、「結界省」の人事や予算、保有する権限などあらゆる行政手続き面、それを定め構築せしめるための憲法の記述・法律の記述等も異なるだろう。一例として内閣の権限外ということは内閣総理大臣による大臣の任免権が及ばないということでもあり、となればその強い独立権限を持った結界省を有する日本の行政的力学は大分変わったものとなるだろう。
このようなケースでは「省」とは名ばかりの、「府」以上の存在である。
「結界省」の英語表記の一例
一般に英語表記で日本の「~省」を指す場合は「 ministry 」が当てられ、「 ministry of ~(管轄する行政業務等)」等となる。
例えば実際の財務省は「 Ministry of Finance 」となり、「 MOF 」とも略される。
より長い名称を持つものとしては、実際の文部科学省の英語表記にみる「 Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology 」(略称は「 MEXT 」)などもある。直訳すると「教育、文化、スポーツ、科学、技術の省」などとなるか。
所管する業務によって名称は長くもなるし、コンパクトにもなる。
「結界省」もまた英語の表記、すなわち同時に国際的にも表示する機関の名称を持ち得るが、二次創作ごとに「結界省」の行政業務をどのように位置づけるかによって英語の名称の在り方も変わってくるものともなっている。「結界」を、ニュアンスの共感も含めてダイレクトに表現する英単語が存在しないため、様々な意訳で対応するものもある。
この「結界」の訳に作品ごとに想定される省庁の業務が併記されることもあり、例えば結界の「監視」を主眼とした組織を描くなら「 supervising 」(例えば「結界(監視)省」)、あるいはさらに介入的に「保安」(安全保障)まで行うならば「 security 」(例えば「結界(保安)省」)の語を充てることもある。
また先述のように「結界」の単語的翻訳への困難性、あるいは含有意味の多義性から、業務内容含め特定の英訳をあてずに「 Kekkai 」などと固有表現として表し、別途訳注・解説を付属するという特例がなされるというケースも想像されている。この場合は「Ministry of Kekkai 」等となるか。
「結界省」の業務一例
そのような名称にも表現され得る結界省が所管する行政業務には二次創作の個別の作品ごとに様々あるが、概ね共通するのは「結界の管理」である。
それは主に「結界」の監視や状況の把握、記録、報告などで構成されることが多い。
結界省のみが行える、独占的な所掌の業務と見られることも多く、時には他省庁の業務・事務と範囲を同一にしつつも「結界」絡みとなると結界省の権限が優先すると想像される場合もある。
例えば実際の省庁の業務と関連付けて仮定すると、結界にまつわる区域・地域を国土交通省や農林水産省ではなく結界省が独占管理していたり、結界に関わって何らかのダメージを負った人々の療養全般を厚生労働省ではなく結界省が独自に行う、といった想像が一例である。
後者は「緑のサナトリウム」の想像とも結びつくもので、メリーが収容された「サナトリウム」の最上位の管轄者は結界省だった、という二次創作的アプローチもある。
時に省庁をまたがった公共事業の計画に対する強い権限が想像されることもあり、例えば卯酉東海道敷設に際して直進ルートを変更し迂回ルートによる建設計画を通したのは結界省の意見と権限によるものだった、とする当時の秘匿された内部状況に結界省の存在を想像するものもある。
このケースでもその目的は「結界」の管理の一つと見られている。
「衛星トリフネ」内部に設置された神社も日本文化のアニミズム的世界観の延長としてのものだけではなく結界省が積み重ねてきた結界研究的な意味もまた帯びていたなどの想像でも、その影響力の幅広さが描かれるものとなっている。
また「管理」という面では時には結界省職員が特殊な調査権や「私人による現行犯逮捕」以外での独自の逮捕権を保有すると設定されることもある。
「結界暴きは禁止されている」とあるが、どのレベルで禁止されているかについては「旧約酒場」までの時点では語られていないため、二次創作において「禁止」を「法律的禁止」などの視点でとらえた時、そこに結界省の業務が発生しうるものともなる。
その活動範囲はサイバー空間でもみられることがあり、二次創作作品によってはサイバー空間でも独自に活動する結界省(職員)の姿が描かれることもある。
このように「結界」だけでなく「結界」に関わる人々全般に対してその業務を負うと想像するケースもあり、作品によっては時には秘封倶楽部がすでに結界省の監視対象となっていることもある。
この他、そういった結界管理の直接業務だけでなく一般の省庁としての業務でもある統計情報としての「白書」の発行や結界に関する広報・啓蒙を行う業務、あるいは日本ならではの行政文化として、省のマスコットが想像されたりすることもある。
結界省ホームページをはじめSNS、動画サイトにおける公式アカウントの保有運営に関する想像など、情報社会ならではといえる想像もある。
具体的な一例としては結界暴きの危険性を訴えるスローガンが記載された政府広報ポスターが制作され、公共のイベントでは結界省マスコットがそれを呼びかける。
コマーシャルでは結界省ホームページのURLや相談窓口の連絡先などが広報される。
蓮子やメリーが通う大学にも結界省発行の注意喚起や啓蒙のチラシが貼られる、などのケースも考えられるだろう。
業務についても二次創作の作品ごとに個性があり結界の重要性や危険性といった様々な視点が作品ごとの濃淡を伴いながら各々の作中における社会のメンタリティと結びついた、作品ごとに異なる「結界省」が生まれている。
先述のケースのように結界をゆるやかに保全する結界省や強力な権限と遂行力をもって市民であっても制圧的に管理する結界省など、その姿は多様である。
結界省の組織一例
一般に、省は内部部局と外局を有する。前者は大臣官房以下、局や部、さらにその下に課や室がある。後者はそういった内部部局と並立しつつ、内部部局よりも特殊性や専門性が高い業務を受け持つ(参考1)。
例えば実際の消費者庁は内閣府の外局である。
さらに「特別な機関」などが設置されることもあり、例えば実際の検察庁は法務省の「特別な機関」である。
この他では出先機関としての地方支部局を保有することも多い。
結界省についても様々な関連機関が想像されることがあり、例えば組織例としては日本の結界の情報を一元管理する内部部局的組織、新たな結界を捜索する専門職員達によって構成される外局的組織、実際に日本各地の結界にまつわる業務に臨床的に携わる各種地方組織などの構成がケースとして挙げられる。
独自に他者の身柄を拘束することも業務に含む「結界省」の想像では、そのための要員や施設の必要性もあり、組織規模はさらに膨らむことにもなるだろう。
先述のように広報活動を行う部署の存在も想像の一つである。
あるいは結界省自体を管理運営するための独自の上位委員会的組織が発足していたりと、「結界省」を構成し、あるいはそれ自体を維持管理する周辺事項もまた多岐にわたる。
この他、「省」は一般に所定の独立行政法人を管轄することもあるが、結界省もまた業務によっては何らかの法人を管轄し得るだろう。
本部所在地はどこか
「結界省」にまつわる二次創作的議論の一つとして、その中央としての所在地がどこにあるか、というものがある。「ZUN's Music Collection」では日本の首都とその機能は「 神亀の遷都 」によって京都へと移行している。結界省もまた「 千年以上 」にわたる霊的研究を継続する都市である京都(「卯酉東海道」)にその本部を置くと想像されることも多い。
この他では作中にも登場する東京が二次創作における結界省に関連して登場することもあるが、こちらは先述のような地方支部局であったりするなど、その所在組織は本部直付きの機関の一つと想像されることもある。
結界省設置の経緯
「ZUN's Music Collection」では「京都」などをはじめ古くから結界にまつわる研究が続けられており、二次創作ではその研究の成果の一つが結界省という社会的存在に結びつく、といった想像がある。
結界の「 均衡 」が乱れることの意味が「 千年以上 」の研究を通して分かるからこそ、結界省という具体的な姿が生まれ、必要性が共有されてそれに取り組む具体的な存在が維持されるのである。
また設置されるに至る経緯について東方Project全般の世界観と密接に関連することもある。
特に菫子の登場によって二つの秘封倶楽部がその名称と活動を通して一部分ながら関連をもって語られたため、従来、蓮子とメリーの秘封倶楽部関連で想像が展開されてきた「結界省」について菫子の秘封倶楽部も通して東方Project全般にも想像が広がりやすくなったという進展の経緯もある。
例えば結界省自体の歴史について幻想郷の成立以前にまでその本体ないしは前身的組織を遡ることができるとする場合は、博麗大結界の展開に伴う紫らとの密約を見出したり、あるいは当時の妖怪達と人間の抗争を想像するものもある。この場合、結界省に至る組織の結成目的や組織が今日も維持される理由もまた変わってくることだろう。
また来るべき結界の向こう側の世界との種々の摩擦に準備するという長期目標も保有するといった想像からは、人間がもつ妖怪に感じる潜在的脅威を窺わせるものともなっている。
その一方で科学の力で妖怪を否定していく広報の様子などの想像からは、明確に対象を理解・解釈して定義を記述することで曖昧な心の状態、不安や恐怖などから生まれる存在である妖怪的存在に決定的に対抗する姿勢を見ることができ、これは近年の幻想郷における都市伝説騒動に対してその正体を明確にして対処まで口伝に含めて無効化するというカウンター的処置にも似ている。
反対・抵抗運動
結界省の二次創作では結界省の管轄業務に対する市民の反対運動なども想像されている。
例えば結界管理に伴う区画への進入制限などに反対するものやそもそもの権力介入に対する反対などが一例である。
結界省が調査権限や逮捕権などを持つとする想像でもそれに対する反発があると想像するものもある。
時には強い権限を持つ結界省に対抗するレジスタンス運動などが想像されることもある。
その際には結界省に反対する立場の人々が描かれることもあれば、結界省の現場の職員、上級職などの立場の人々が描かれることもある。
そしてそれを「結界」の向こうから誰か(何か)が笑みを浮かべながら見つめている、といった上海アリス幻樂団作品の複合的な二次創作ならではのケースである。
秘封倶楽部とのかかわりでは、結界省という社会体制自体もまた秘封倶楽部のような少女達の「 どこかママゴトっぽい 」ような、「 ジュブナイル的 」(「博麗神主」、『東方文花帖』魔術師メリー)な想像とは対比的なものであり、両者が立場を異にすることもあって、ゆるやかに相容れない様や、作品によっては直接的な対峙、対決が描かれることもある。
回想的に、熱量のままに社会へと挑戦した少女の大人への成長段階におけるほろ苦くも大切な記憶だったりすることもある。
「結界省」が語られる視点
結界省の登場については、作品ごとに様々なあり方がある。
たとえば組織を構成する職員などが登場することもあれば、個々の人間は登場せず社会の側面の一つとして登場することもある。
ディストピア的雰囲気を醸し、それを維持する装置として描かれる場合もある。
時には結界省の職員一人ひとりや結界省の活動自体が二次創作のメインテーマともなり得るなど、上海アリス幻樂団の世界観から生まれそれとも関連しつつ結界省に関連する人々の姿などオリジナル的要素をさらに一歩進めた要素として想像が展開されることもある。「結界省」自体もまた一つの二次創作の基盤として形を成している。
困難にぶつかりながらも前へ前へと世界を探し歩む秘封倶楽部の二人を時に羨ましく見つめる、かつてはオカルトサークルで仲間たちとそんな日々を送っていた職員、などというシーンなどがその一例である。
関連タグ
外部リンク
- 参考資料
wikipedia:日本の行政機関
wikipedia:外局(参考1)