概要
「牽引車」とは「工場や電車区などで修理車や入換用車輌を牽引したり、自走装置のない車両や中間電動車などの試運転や移動に使用する」(国鉄電車ガイドブック・旧性能電車編(下)より抜粋)という、旅客扱いを行わない業務用の事業用車である。本形式が改造された1970年代半ばでは、大抵が一線を退いた旧型国電の改造で賄っていたため、本形式も旧型通勤電車の72系モハ72形より改造されたものである。
事業用車とは
営業用車でなく、部内事業用途に使用される改造車が出自ということから見た目は度外視されるため、珍奇な外観の車両が多い。本車は見た目はそのなかでは比較的おとなしい部類に入る。前面デザインはは当時製造中だった新造の103系1200代のデザインを一部取り入れているので、外観にまったく無配慮なわけではない。
出自
改造の種車になったのは、1950年代後半に製造された、72系通勤電車後期形のモハ72であるが、車体は台枠以外ほとんど新造となっている。
種車の電気部品である制御機・モーター、台車は流用であるが、当時の新形車と連結するためにブレーキ関係や補助電源がまるまる新品になっているので、非公式・空制側の床下機器はほぼ全て付け変えとなっており、室内の大半は交流用電装品で占められている。(添乗用座席が3人分しかない)ここまで徹底的に改造するのであったらもう全部新造でも良かったのではないかと思えてならない。
なお業務用扉は種車の客扉の再利用で、プレス模様のある(該当車は1~5番(中央線用低屋根モハ72850))ここだけ1950年代デザインが残っている。(6・7番は種車(72系最終形・モハ72920)の関係からプレスの無い平板タイプとなっている。)
全車がJRに引き継がれたが、老朽化の進行により徐々に廃車され2006年に形式消滅した。
(秋田車両センターに1番が、青森車両センターに4番がそれぞれ最後まで残っていた)