概要
クライムカイザーは、日本の競走馬。
TTG3強世代（76世代）の一頭で、トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラスの同期。
名前の由来は「Climb（上り詰める）Kaiser（皇帝）」である。しかし、斜行で失格するギリギリの強引な騎乗で「天馬」トウショウボーイを抑えて日本ダービーを勝利した事によって、「犯罪皇帝 (Crime Kaiser) 」との不名誉な渾名でヒール(悪役)扱いを受けた。
※馬齢は2000年までの旧表記(数え年)
誕生~3歳時
父ヴェンチア、母クインアズマ、母父シーフュリューという血統。
1975年6月28日に佐藤嘉秋厩舎所属馬としてデビュー。デビュー戦では3着、次走で初勝利。3戦目の条件特別戦のライラック賞ではレコード勝ちを収める。これ以降は勝ちきれず、3歳時は7戦2勝に終わった。
4歳時
4歳児初戦の京成杯で念願の重賞初制覇を果たす。次走の東京4歳ステークスではテンポイントに敗れ2着、次の弥生賞では勝利する。
クラシック初戦、皐月賞ではテンポイント・トウショウボーイに続く3番人気で挑んだが、皐月賞はトウショウボーイの圧勝で、クライムカイザーは5着に終わった。
そして運命の日本ダービー。レースは好スタートを切ったトウショウボーイ先頭で進み、テンポイントが5番手。先頭のトウショウボーイが圧倒的スピードで逃げ切るか…と思いきや、直線の入り口でそれまで実況に名前も呼ばれていなかったクライムカイザーがトウショウボーイに迫る。
クライムカイザー鞍上の加賀武見が「馬体を併せられると怯む」というトウショウボーイの弱点を突き、外側からトウショウボーイの進路を横切るように内側へ抜け出す。怯んだトウショウボーイは態勢を立て直して追走するも届かず、クライムカイザーが1馬身半差で勝利した。
加賀の騎乗は進路妨害ではと見られたが、充分に間隔を取っての騎乗と認められ、加賀への制裁・戒告は行われなかった。
この時の一見、強引に見えた騎乗によるダービー制覇ゆえにクライムカイザーはトウショウボーイのファンからヒール(悪役)扱いを受け、「犯罪皇帝 (Crime Kaiser) 」との不名誉な渾名が付いたのであった。
そして、クライムカイザーは日本ダービー以降は善戦するものの勝てなくなってしまう。札幌記念ではグレートセイカンとトウショウボーイに続く3着、神戸新聞杯ではトウショウボーイに5馬身差を付けられ2着、京都新聞杯では半馬身差まで詰め寄るも、再びトウショウボーイの2着。
クラシック最終戦の菊花賞では5着に敗れた。菊花賞優勝馬はグリーングラス、2着はテンポイント、3着はトウショウボーイであり、TTG3強時代が始まりつつあった。
5歳時
5歳となったクライムカイザーはアメリカジョッキークラブカップ5着、目黒記念4着、鳴尾記念4着、天皇賞(春)5着と、入着はするものの勝てなかった。
そして、出走馬6頭すべてが八大競走勝利馬という面子の揃った宝塚記念。先頭に立ったトウショウボーイに前半スロー・後半超ハイペースの追い込み馬には不利な展開に持ち込まれ、クライムカイザーは最下位の6着に沈み、生涯初めて掲示板を外した。この後故障を発症し、このレースを最後に引退した。
全成績は21戦5勝。1度も1番人気になる事は無かったが、5番人気以下になる事もなかった。着順もラストランの6着以外は全て掲示板に載り、「犯罪皇帝」と揶揄された割には安定した人気と戦績であった。
引退後
1979年より種牡馬として光伸牧場で供用された。毎年数頭に種付けする程度で共同通信杯4歳ステークス勝ち馬マイネルブレーブ以外には全く活躍馬を出せず、1994年に種牡馬引退。光伸牧場の功労馬として余生を過ごした。
グリーングラスが死亡した3か月後の2000年9月に心臓麻痺で亡くなった。享年28歳。
関連タグ
トウショウボーイ…通算１勝６敗。日本ダービー以降先着する事は無かった。「天馬」を討ち落としダービー馬に「上り詰めた皇帝」も、再び空高く翔ける天馬を緩やかな下り坂から見上げるばかりであった。
ペイザバトラー…第8回ジャパンカップで強引な斜行で勝利したアメリカの競走馬。ペイザバトラーの斜行は、タマモクロスに馬体を併せないための斜行だった（タマモクロスはトウショウボーイとは逆で、馬体を併せると無類の勝負根性を見せる馬だった）。進路妨害には当たらないものの強引すぎる斜行だとして、マッキャロン騎手は戒告処分を受けている。
