概要
病院や研究機関で働く看護AI。AIとしての使命は「看護AIとして人間の命を助けること」。
ヴィヴィの直系の後継機、シスターズのうちの一体。就役時期はヴィヴィの一年後。
黒髪に茶色がかった瞳で、常に穏やかかつ微笑を絶やさない。いかなるときも患者に安心を与えることを心がけるその姿は正に白衣の天使。
冴木タツヤが幼少時に入院していたときの看護担当で、人間不信に陥っていた彼と優しく触れ合う。二人の関係性はいつしか恋愛へと発展していった。そして成人した冴木は彼女がいる研究所へと就職し、彼女と再会する。
正史では冴木と結婚し、初めての人間とAIのカップルとなる。二人は人間とAIを繋ぐ架け橋となり、後世に名が残っている。
※画像はイメージイラスト。
小説版『Vivy:Prototype』
基本的な設定や経緯はアニメ版とほぼ共通しているが、型番『B-09』にて通称『ナイン』として稼働。最初の看護相手だった冴木タツヤからはじめは疎んじられていたが、病院から失踪先の島の教会で自分を保護した事を機に信頼して貰えるようになり、彼から『グレイス』と命名されるに至った。
また、ディーヴァと面識があり(但し、同一のボディを持つもヴィヴィは面識なし)、送別会で彼女に歌を歌って貰った誼がある。
修正史
ネタバレ注意
「サンライズが……あの日、僕の人生で最も幸せだった瞬間は、一瞬で崩れ去ったんだ」
修正史ではなんと、落陽事件による急激な世界情勢の変化の影響により、オリジナルのグレイスは、冴木が関わった使命変更実験の末に用途変更で「メタルフロート」の管理AIとなっており、メインタワーの中枢に核となる部分と癒着して一体化していた。冴木の元で暮らしていたグレイスは、似せた彼女の同型機のサポートAI「K5」だった。
「その白羽の矢が立ったのが、シスターズの中でも特に評価が高かったグレイスだ。」
5年前に冴木は確かにプロポーズをし結婚なども約束していたが、プロポーズの途中で二人の上司からサンライズが落下したという連絡が入ってしまう(その際に映像の上下のシネマスコープが消えており、これは恐らくヴィヴィとマツモトの介入によって正史と修正史の2つの歴史が分岐したという意図かと思われる)。
彼女がメタルフロートの管理AIにされてからは離れ離れになってしまい、それを裏付けるかのように冴木博士の左手薬指には指輪があったが、グレイスを模したサポートAIの手には指輪がなかったのだった。
マツモト曰く「メタルフロート」を動かしているAIロボットの一つ一つがグレイスであり、それらのデータを回収しても元通りの彼女に戻す事は不可能であると断じている。
ちなみにマツモトは
「本来なら、正史であの島が建設されるのは今からおよそ20年後なんですよ。」
とメタルフロート建設の本来の時期を語った。
冴木が開発した「メタルフロート」停止プログラムを託されたヴィヴィ達に、Mを介して打ち込まれた事で停止する過程でセキュリティ機能を発動する形で暴走した。「メタルフロート」を完全停止する為、管理AIであった彼女はヴィヴィに破壊された。(その際にグレイスは最期の瞬間、苦痛の表情ではなく、笑顔であった。そして、グレイスの目から青い液体が、まるで涙のようにこぼれていたのだった……)小説版では最後まで無表情のままヴィヴィに破壊された。
それに呼応していくかのように、メタルフロートの全ての作業用AIは一斉に機能が停止していったのであった。
その後、ヴィヴィの口からグレイスの最期を知った冴木は
「君にとって、歌で人を幸せにするという使命に、何か”代わり”はあるのかい? 僕にとっては、君の歌がグレイスだった。」
とグレイスを失ったショックを隠せず、茫然自失となってしまった。
そんな彼にヴィヴィは
「こんなことを言う資格は私にはありません…。ですがどうか…幸せになってください。」
と告げて後にしたのだが……
なんと彼は拳銃自殺をしてしまった。
皮肉にもその場所は正史の世界と同様に結婚を約束した教会跡であり、それを目撃してしまった彼女は目の前で飛行機事故で失ってしまったモモカと重なってしまい、そのショックからヴィヴィの人格が40年間アーカイブ内に引きこもることになり、ディーヴァの人格だけで動いていくことになってしまった。
こうしてグレイス編は、マツモトを除いてはあまりにも救いのない結末で終わってしまったのであった。
考察
小説版とアニメ本編の両方において、正史側の彼女が冴木との結婚後はどうなっていたのか明らかにならなかったため、ここではアニメ本編や原案小説の内容から基づき、冴木との結婚後の彼女の動向について考察していく。
- 正史でも彼女はメタルフロートの管理AIにされたのか?
マツモトは劇中においてそのことについては一度も言及していない。仮に彼女をメタルフロートの管理AIにさせようとした場合、「人類とAIの共存の旗印となった彼女に対してそういうことをさせるのか」という世間からの非難の声が出る可能性を考慮すると不可能である。
- 正史側のメタルフロートの管理AIは誰なのか?
劇中ではほとんど言及されておらず詳細は不明であるが、二人の結婚からメタルフロート建設まで空白の20年間に新型AIが多く製造され、そのAIが管理を任されたと思われる。
- 結婚後の二人の動向は?
アニメ本編では割愛されたが、小説版では「彼女自身に取り立てて大きな動きはなかったが、冴木とグレイスの二人は、人間とAIの両者の共存を目指す運動家と政治家の2つの勢力から祭り上げられることになった」とマツモトの証言で明らかになっている。
- 正史の2161年4月11日の『AIによる人類抹殺事件』においても彼女は健在だったのか?
そのことに対してマツモトですらさすがにその時の惨劇下では調べられなかったのか(若しくはその時に至るまでの彼女についての情報が入っていなかった)、明らかになっていない。但しこの時点では冴木は既に故人となっていることは間違いない。
仮に彼女が2161年時点でも健在だった場合、他のAI達の例に漏れることなく暴走し、多くの人類を抹殺していた可能性が高い。
だが2161年の『AIによる人類抹殺事件』を迎える前に、グレイス自身は稼働から90年近く経過している状態を迎えており、冴木の方も既に70~80代の高齢となっている。冴木が天寿を全うしたと同様に、その数年後に彼女自身も機能停止を迎えていったという可能性も否定できない(時期は2150年代と推測される)。
※これらの考察はあくまで推測に過ぎず、公式設定ではない。
なお、小説版では結末は異なっており、冴木は彼女を失っても拳銃自殺をすることなく、人類とAIの共存に余生を捧げていった。
また、彼と主人公(ディーヴァ)のやり取りは彼の老後に展開された。
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更なるネタバレ注意
完全限定生産版のBD及びDVD付属の特典ブックレットに掲載されている監督からのコメントによると、正史での彼女は冴木との結婚から20年後にメタルフロートが建設されても、コアに組み込まれていない事が明らかになった。
また、グレイスの代わりに誰かがメタルフロートの管理AIにされていない事も明らかになっている。
マツモト曰く「メタルフロートの内部は正史と修正史では少し異なっている」と証言しており、正史の方のメタルフロートの管理AIはニーアランドでいうナビのような実体を持たないタイプのAIかと思われる。
これは正史の世界でエステラ(実際は彼女に変装したエリザベス)が引き起こした落陽事件の影響が世間に色濃く残ったことでメタルフロートの建設が遅れてしまい、AI技術の発展が停滞状態へと陥ってしまったことが原因であるとスタッフは語っている。
悲しい結末を迎えた他のシスターズの中で、正史では唯一救いのあるキャラクターと言えるかもしれない。
その一方で冴木との結婚から2161年4月11日の『AIによる人類抹殺事件』に至るまでの彼女の動向については、特典ブックレットにおいても明らかにならなかった。