「理解できんね、先王。人とは裏切るものだ。裏切るものが人なのだ。なぜならば、誰しも己こそが主人であり、他者は決してそうなり得ない。よって規律が必要なのだ」
「正道というのは野蛮な言葉だな。その正しさの銃弾で、貴様はどれだけの人々の尊厳を撃ち抜いてきたのだ?」
「力はただの力にすぎない。重要なのはそれをどのように使うかだ」
「銀水聖海の規律のためならば、罪なき世界を撃つ覚悟を持てるもの。それこそが《銀界魔弾(ゾネイド)》を所有する資格だ、元首アノス」
「我が軍はすでに分析を完了した」
「《絶渦》を止めるのは《銀界魔弾(ゾネイド)》のみ」
「オルドフと同じく、理想主義者よ。どこが敵に回った程度で崩れるものなど、我が世界の求める平和ではない」
「銀水聖海のすべてを敵に回そうと揺るぎもしない軍事力、それこそが我々深淵総軍が求める真の平和だ」
「目的は達した」
「退却の判断を下すなら今だ。我々はこれより、深淵世界へ向かう。この魔弾世界ごと深淵世界を撃ち抜き、火露を略奪する。我々こそが深淵世界に進化するのだ」
「貴様たちは命が惜しかろう。出て行くがいい」
「その感傷は、非合理だ。滅びた者にはなにも残らんよ」
「魂など存在しない。滅べば無だ」
◇
「虚言ならばパブロヘタラを撃つ」
「……貴……様……は、狩猟貴族では……ない、な……」
概要
聖上六学院にして序列一位である魔弾世界エレネシアの元首。〝大提督〟の称号を持つ。
初登場
第十四章《魔弾世界》編、§プロローグ 【聖遺言】にて初登場した。
描写※加筆予定
大提督ジジは先王オルドフ・ハインリエルを《魔深根源穿孔凶弾(ベリアリウス)》にて撃ち抜き、彼をとある泡沫世界に幽閉した。
また、銀滅魔法《銀界魔弾(ゾネイド)》を開発し、それにて絵画世界アプトミステと転生世界ミリティアを砲撃した。
そして、それを止めようと魔弾世界に潜入したアノスとの戦闘では、《極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)》を、魔弾世界の秩序があるとはいえ二十数発も防いでおり、また、その内の一発は《掌握魔手(レイオン)》と《涅槃七歩征服(ギリエリアム・ナヴィエム)》の三歩目、そしてその後に二度目の《掌握魔手(レイオン)》を使い増幅されたものである。
それから、《掌握魔手(レイオン)》にて増幅された《銀界魔弾(ゾネイド)》をも受け切り、耐えている。
容姿
壮年の男の姿をしており、その身に纏っている孔雀緑の軍服には飾緒と勲章がつけられ、ジャケット風のマント──ペリースを左肩にかけている。
また、制帽を規律正しく被っていて、その顔には軍人然とした厳めしさがあり、なによりも冷徹である。
人物
魔弾世界のためならば、自らが滅びることも厭わないという全体主義の権化のような人物であり、〝より深いところにいる者が、浅いところにいる者を管理する〟という考えを持っている。
また、魂は存在しないという価値観のため、神魔射手オードゥスと共に、死者の根源を〝利用〟するといった尊厳破壊に等しい行為を平然と行っている。
〝利用〟
《填魔弾倉》にて、第二魔王ムトーの根源を使い、いくつもの世界を侵略した。そして、強者と戦うことしか興味のなかった彼の、その力を用いた弾丸で、弱者──老人や子供を撃ち抜き、銀泡を征服した。
能力
様々な魔弾魔法を操る。ここでは、彼が使用した魔法を記述する。
詳細は魔法一覧(魔王学院の不適合者)を参照。
- 《魔弾防壁(ゴルロム)》
魔弾のみに強固な力を発する反魔法。
その防御性能はジジが使えば、魔弾や魔法砲撃以外の攻撃が大幅に減衰する魔弾世界で行使されたものとはいえ、アノスの《極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)》を防ぎ切るほど。
しかし、前述の《涅槃征服七歩(ギリエリアム・ナヴィエム)》の三歩目と二度《掌握魔手(レイオン)》にて増幅された《極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)》には耐えきれず、破られてしまった。
- 《魔深連鎖誘爆弾印(ゴルゾロス)》
魔弾を誘爆する魔法。相手の体に剥がすことのできない青い紋様を浮かばせ、その紋様を魔弾に誘爆させる。また、紋様をつけるたびその威力は上がる。
一度紋様をつけられてしまえば、どこに移動しようと魔弾はついてくるため、回避することは不可能である。だが、誘爆した魔弾が爆発した刹那の瞬間だけはその力がなくなるという欠点がある。
- 《魔深五体囮弾(リヴエバーズ)》
自身の体の一部を対象とし、相手の魔法の威力をその箇所に集中させる魔法。
アノスとの戦闘の際には前述の増幅された《極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)》を右腕に集中させ、爆発させた。
また、欠点としては、この魔法の特性上仕方のないことではあるが、囮となったその箇所が失なわれてしまうということであり、自らの体すら弾丸の様な消耗品だという考えが根付く魔弾世界だからこそ生まれた魔法ともいえる。
- 《魔深流失波濤砲(ベレニツィア・ノイン)》
魔弾世界エレネシアの深層大魔法。
その威力は絶大であり、一発で《創造の月》アーティエルトノアと《破滅の太陽》サージエルドナーヴェを破壊できるほど。
使い勝手が良いらしく、ジジが率いる深淵総軍の隊長格の面々はこの魔法を多用している。また、二律僭主への対策として、《掌握魔手(レイオン)》でこの魔法を掴めば暴発するように術式が組み込まれている。
- 《銀界魔弾(ゾネイド)》
銀泡を崩壊させる、蒼黒の魔弾。
詳細は銀滅魔法(魔王学院の不適合者)を参照。
- 《魔深根源穿孔凶弾(ベリアリウス)》
魔弾世界エレネシアでもジジのみが行使できると言われている深層大魔法。
魔法陣の銃口から蒼き粒子を纏った刺滅の凶弾を発射する。鋭利かつ強力な魔弾であり、たとえ滅びの力に耐えうる物体だとしても、いとも容易く貫通させることができ、また、相手の根源の深奥に弾丸を残すこともできる。
そして、連射性能も高く、数発でアノスの《極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)》に打ち勝てるほどの力を持つ。
上記の描写だけでも不可侵領海に次ぐ実力を持つと思われる。
そして、後述する《填魔弾倉》とムトーの根源を所有している時には間違いなく不可侵領海にも匹敵する力を誇る。
第二魔王ムトーの根源刀を利用した魔弾
以下、第二魔王ムトーの根源保有時に使った魔法を記述する。
また、この魔法は魔弾世界エレネシアの主神である神魔射手オードゥスの権能、《填魔弾倉》や銀魔銃砲に依存しているため、オードゥスも使用できる。
- 《魔弾根源刀(ジ・ガヴロン)》
絶大なる第二魔王の力そのものである「根源刀」。
それを利用した、黒い短剣の形状をした魔弾を発射する魔法。
その力は絶大であり、《極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)》数発を一方的に切り裂き、アノスの《掌握魔手(レイオン)》ですら抑え込めないほどの力を持つ。
一方で、世界を滅ぼさないように力の制御がなされているため、世界が滅びることを憂慮せずに行使できる。
また、この魔弾はオードゥスの権能たる《填魔弾倉》がある限り、いくらでも装填できる。
- 《障壁根源刀(ジ・デドロム)》
《填魔弾倉》の権能で補填したムトーの根源を利用する魔法障壁。
《掌握魔手(レイオン)》にて威力を増幅した《魔弾根源刀(ジ・ガヴロン)》と大凡拮抗するほどの防御力を有する。
- 《二刀魔弾根源斬滅砲(ジ・エウヴリア・ガヴロン)》
《魔弾根源刀(ジ・ガヴロン)》を二つ行使して放つ魔法。
その性質上、世界を滅ぼさないように制御はされてはいるが、その魔弾は魔弾世界の大地を抉り取るほどの威力をもつ。
正体※第十六章《深層十二界》編における重大なネタバレを含みます!!
実は、先王オルドフ・ハインリエルを撃ち、第二魔王の根源を利用し、銀滅魔法の事件で暗躍していたのは本物の大提督ジジではない。
その正体は、ジジの首を奪い成り代わった正帝である。
また、本物のジジは、一万四千年前にパブロヘタラにて、フレアドールによって不意打ちを受けたことで滅ぼされ、首を奪われた。
そして、正帝ジジは銀滅魔法を巡る事件の際に、アノスによって滅ぼされた。