スターシップ・トゥルーパーズ
えいがばんうちゅうのせんし
原作については『宇宙の戦士』の記事を参照。
1998年公開。
『ロボコップ』『トータル・リコール』を生んだポール・バーホーベンが監督を務めた。
原作は、「人が乗り込んで操作する人型兵器」という概念を初めて生み出すなど、後のSF界に多大な影響を与えた偉大な作品だが、その映画化作品である今作は、バーホーベン監督の持ち味が発揮されまくった別物と化している。
具体的には、
- 敵のクリーチャーも味方の人間も派手に飛び散りまくる、血みどろ暴力描写のオンパレード
- 妙に都合よく体を露出する女性キャラ
のふたつの要素ばかりが目を引く、一言でいえばどぎつい内容である。
しかも、こういった要素は普通、予算に恵まれないB級映画がインパクトを出すために取り入れるものだが、今作は実に1億ドルという超A級予算なのにも関わらずそちらの方向へ舵を切っており、予算たっぷりの派手なVFXを用いたB級描写を楽しめるという、ある意味贅沢な映画体験を生んでいる。
また、それ以上に特徴的な点として、作品の右翼的プロパガンダ的な雰囲気が一層濃くなっていることが挙げられる。
もともと原作も、軍国主義的・戦争賛美的だとして激しい議論を巻き起こしていたが、今作ではそれらの要素をさらに発展させた結果、見事に針が振り切れている。映画の主軸となる物語の部分自体が、新たな入隊者を募るためのCM映像という体であり、冒頭などに「君も軍に入って宇宙生物をぶっ殺して人類の進歩に役立とう!」みたいなCM映像が挿入されていたりする。
結果、軍国主義・戦争賛美思想を痛烈に皮肉ったような内容として仕上がっている。
ちなみに、監督のポール・バーホーベンの出身地であるオランダのハーグは第2次世界大戦中に同盟国の筈のアメリカから爆撃を受けており、しかも、この時バーホーベンは物心が付いていた年齢だった。
要は、ナチスは大嫌いだが、米軍の事も同じ位のクソ野郎だと思っていた人物が、元アメリカ海軍の軍人だった小説家が書いた軍隊賛美的な内容の小説を映像化したのである。むしろ、何も起きない筈が無い。
その結果、原作者が米軍をイメージして描いたであろう架空の軍隊が、映画版ではナチスまがいの連中と化してしまった訳である。
あと、原作がSF界に送り出した偉大な発明であるパワードスーツが登場しない。
以上、いくつか特徴的な点を挙げたが、このように原作とはほぼ別物の映画として成立している。
そのため公開当時は、原作を愛するSFファンの多くから酷評を受け、興行収入も制作費回収がせいぜいという(=広告費はほとんど回収できなかった)大赤字で終わってしまった。
だが、潤沢な予算と当時最高峰の視覚効果技術によって生み出された、大量のエイリアンとの死闘はいまだに評価が高く、今作を大傑作として愛する人も多い。
続編が2作作られているのだが、どちらも低予算で、今作ほどの人気はない。
「星獣戦隊ギンガマン」の海外リメイク版である「パワーレンジャー・ロスト・ギャラクシー」では本作の機動歩兵によく似たテラ・ベンチャーの警備隊員が登場しているが、これは別にパクリという訳ではなく本作の撮影で使用されたヘルメットとアーマーが流用されているためである。
2012年には、日米合作で、アニメ作品『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』が、荒牧伸志を監督に据えて制作されている。
1996年に公開された日本の怪獣映画『ガメラ2』では、昆虫のような姿をした宇宙生物の大群と自衛隊が対峙するという、今作によく似たシチュエーションが展開されているが、こちらでは予算と技術の都合上、戦いの場面を描くことを諦めることになった。
しかしその後、ほかならぬ今作を見たあるスタッフが、「うちでもやろうと思えばできていたかもしれない」と回顧している。
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