概要
1990年にアメリカ・サウスダコタ州から発見されたティラノサウルスの標本。愛称は発見者である古生物学者スーザン・ヘンドリクソン氏に由来する。
発掘はブラックヒルズ地質学研究所が行ったが、土地の所有者との権利争いの末に化石はFBIに押収。所有権を巡る法廷闘争ののち、1997年にサザビーズでオークションにかけられ、マクドナルドやディズニーの支援を受けたシカゴのフィールド自然史博物館が約760万ドル(手数料含めた総額は836万2500ドル)で落札した。
この金額は日本円に換算すると約10億円に達し、化石標本に支払われた金額としては長らく史上最高額だった。
ほぼ完全な形で残った骨だけでも73%、最終的な残存率では骨格の90%が見つかっており、現在発見されている中でも最良の標本。全長12.3m、体高3.66m、推定体重8.4~14tに達し、現在までに発見されているティラノサウルスとしても2番目の巨体を誇る。
骨の精密検査の結果、死亡時の年齢はおよそ28歳で、この時点ですでに成長がある程度と待っていたことから、ティラノサウルスの寿命が30歳前後だった可能性が浮上した。
骨には至る所に病変が有り、生涯にわたって数多くの怪我や病気に苦しんでいたと考えられている。その1つが痛風であり、右前足が溶けかかったような跡が見つかっている。
死因に関しては、下顎には穴が空いていたことから、かつては同族との闘争に敗れ殺されたものと考えられていた。だが現在では、下顎の穴はおそらく現生鳥類も感染するトリコモナス症によるものと考えられ、それが原因で食べ物を噛めなくなり餓死した可能性もある。
日本では2005年に開催された「恐竜博2005」において、復元骨格と実物化石1点(肋骨の胴椎関節部)が特別にフィールド自然史博物館から貸し出された。2013年には、新たな復元骨格が「恐竜博2005」の開催地の一つだった福岡県の北九州市立いのちのたび博物館で常設展示となっている。