複雑な立ち位置
1946年、チャールズ・ギルモアによってゴルゴサウルス・ランセンシスとして記載された。論文の発表時にはギルモア本人が死去していたこともあり、その後は長らく収蔵庫で埃をかぶっていた。
しかし、1988年になってロバート・バッカーらが化石標本を再調査し、ナノティラヌス(元々は“クレヴェラノティラヌス”とするつもりだったらしい)という新属となった。この際、新属としての根拠の一つとなったのが頭蓋の癒合の具合である。頭蓋の癒合が進んでいた(と思われた)ことから、本種は成体でも5m程の恐竜と結論付けられた。
ところが近年この個体が若年個体だったとする論文が発表され、今度はティラノサウルスの幼体と判断する説が浮上した。当初バッカーらが考えていたほど模式標本の保存状態は良くなく(石膏で復元された部位がバッカーらの想定よりも多かった)、頭蓋の大部分は癒合していなかったのである。
また、最近になって発見された、「ジェーン」の愛称で呼ばれる全長7mの骨格も、ナノティラヌスにすべきかティラノサウルスの幼体とすべきかで論争が噴出した。(ジェーンにおいても成長は止まりきっていなかったのは確からしい)
これに対し歯の本数や形状、CTスキャンで復元した脳の構造などが異なるため、別種であるとする反論も生まれ、現在なお議論され続けている。
歯の本数に関しては、成長過程でその数が変化しなかった可能性がタルボサウルスの研究から指摘されており、注目されている。
さらに2006年、モンタナ州から「Montana Dueling Dinosaurs」と名付けられた、ナノティラヌスと思しき獣脚類がカスモサウルス類と相打ちになって死んだと思われる化石が見つかった。この標本はジェーンよりもさらに保存状態が良く、多くの骨が確認されているのだが、オークションにかけられた際目標の価格まで到達しなかったために落札されておらず、今後の詳細な研究が待たれる。
生態(本種が独立種であるとした場合)
全長7m強・体重1トン前後、「森林地域に適応すべく小型化した」と言われることが多いが、実際のところははっきりしない。頭部は比較的細身で、歯も他のティラノサウルス科の恐竜に比べ薄いため、比較的小型の獲物を捕食していたと考えられていた。
「Montana Dueling Dinosaurs」の標本を調べたところ、前足はティラノサウルスより長く発達しており、前足も狩りなどで十分役立っていたかもしれない。またトリケラトプスとともに見つかったことから比較的大型の恐竜を捕食していた可能性が浮上したが、体重は10トン弱にもなるトリケラトプスの10分の1しかなかったため、アルバートサウルスやダスプレトサウルスのように群れで狩りをした可能性も示唆される。
フィクションにおけるナノティラヌス
白亜紀恐竜奇譚竜の国のユタでは、親兄弟が死に主人公ユタが成り行きから孵化に立会った事からユタの飼い竜となる。珍しいアルビノ(白竜)であり金銭的価値は大きいらしい。成長前に本作が打ち切りと言う事も有り、これといった活躍は無いマスコット的な存在。