曖昧さ回避
- 『ケルト神話』に登場するクー・フーリンの幼名。本項で解説。
- 『女神転生シリーズ』に登場するキャラクター。本項で解説。
- 『Fateシリーズ』に登場するキャラクター。⇒セタンタ(Fate)
概要
『ケルト神話』の英雄クー・フーリンは、他の神話に登場する英雄達の例に洩れず、神がかった誕生譚が存在する。
彼の母親であるコンホヴォル王の妹(娘)デヒテラは、ある時王宮から姿を消し、必死の捜索空しく三年の月日がたっても見つかることはなかった。
そんなある日、コンホヴォルは農作物を荒らす鳥の群れを討伐しにいくことになった。部下とともになんとか鳥を追い払ったコンホヴォルだが、気づけば愛の神オイングスの領土であるブルー・ナ・ボインにまで来てしまい、そこで一夜を明かすことになった。ところが、野営地の探索に出かけた部下の一人(一説ではフェルグスとも)が豪華な館でルーと共に暮らすデヒテラを発見する。コンホヴォルはすぐに妹に帰ってくるよう告げるが、デヒテラは病気を理由に断り、代わりに己の息子をコンホヴォルに預けた。この子供こそがセタンタであり、セタンタはデヒテラの妹フィンコームに預けられ王族として育てられたという。
また、鳥退治にデヒテラが加わっている別の伝承が存在する。
ブルー・ナ・ボインの館で一夜を明かすことになったコンホヴォル一行だが、夜更けに館に住む貴婦人が一人の男の子、馬が二頭の仔馬(後のマッハとセングリウ)を生んだ。偶然に驚く一行だが、翌朝になると男の子と仔馬を残して家人ごと館が消え失せていたのである。コンホヴォルは男の子と仔馬を連れて帰ったが、男の子は間もなく死んでしまい、その養育を任されていたデヒテラは悲しみに暮れる。そんなある日、デヒテラは誤って一匹の蠅を飲み込んでしまうが、その夜、夢の中に太陽神ルーが現れる。ルーは、死んだ男の子は自分の子供であり、デヒテラはその生まれ変わりを身籠ったことと、子供にはセタンタと名付けるように告げたという。
だが、デヒテラがまだ未婚だった事もあり、詳しい事情を知らない騎士団の間ではコンホヴォルが酔った末に彼女を孕ませたという噂が広まってしまい、コンホヴォルは打開策としてフェルグス・マック・ロイと話をつけ、彼の兄の元へデヒテラを嫁がせることにした。
セタンタは伯母フィンコームの下で成長し、七歳になった彼に転機が訪れる。
ある日、セタンタはハーリング(球技の一種)において十二人の少年を相手に一人で渡り合っていたところをコンホヴォル王に見とめられ、鍛冶屋クランの館の会食に招待される。
セタンタは後で向かうことを約束し、コンホヴォルはそのままクランの館に向かった。ところが、コンホヴォルはセタンタのことを忘れてしまい、警備の為にクランの番犬を庭に放すことを許してしまう。このクランの番犬は十人の戦士でも敵わず、百匹の犬に匹敵するという猛犬だったが、遅れてやってきたセタンタは番犬を素手で殺してしまう。騒ぎを聞きつけて駆け付けたコンホヴォル達は、セタンタの武勇に驚き、口々に賞賛した。しかし、クランのみは自慢の番犬を殺されたことで悲しんでおり、セタンタは彼に代わりの番犬を見つけることと、その間自分がクランの番犬役を務めることを約束する。
これ以来、セタンタはクー・フーリン(クランの猛犬)と呼ばれるようになったのである。
創作作品のセタンタ
女神転生シリーズ
初出作品は『真・女神転生Ⅲ』で、種族は「妖精」。物理攻撃に特化した能力値とスキルを持つ。
『真Ⅲ』では仲魔であるセタンタがレベルアップすると変異システムで幻魔クー・フーリンに変わるという神話本来の形に忠実な扱いをされており、女神スカアハとの特殊会話も存在する。
当然ながら、ゲームシステム上、セタンタとクー・フーリンは別個の悪魔として登場するが、視点が変われば別の存在になるのが神話や『女神転生シリーズ』の悪魔なので、別段問題のない仕様である。
『ペルソナ』シリーズでも登場。アルカナは『P3』では「星」だが、『P4』と『P5』では「皇帝」、『PQ2』では「正義」となっている。
なお、「正義」は『P3』以降は固有ペルソナを除いて聖人か天使が充てがわれるのだが、『PQ2』ではセタンタは唯一の例外として居座っている(余談だが、『ペルソナ5』登場時には何故かボイスがアークエンジェルの流用となっていた)。