概要
セリ目トベラ科トベラ属の常緑低木。
折った茎や葉、根に独特の臭気があり、節分の際に地方によっては鬼追いの魔除けであるイワシの頭とともに戸口に吊されたことから、扉(とびら)が訛ってこの名もしくはトベラノキと呼ばれるようになったといわれる。
英名はtobira(トビラ)およびjapanese tobira(ジャパニーズ・トビラ)で、特徴的なチーズ臭からcheesewood (チーズウッド)とも呼ばれている。
東アジアの温暖な海岸部に分布し、朝鮮半島南部、中国南部、台湾および日本においては新潟県・岩手県以南で見られる。
海岸性森林の最前線に生える雌雄異株の低木であるが、条件が良いと高さ6mほどの小高木まで成長する。
ツヤのある楕円形の葉は互生で枝先に集まって付き、4~6月になると枝先に甘い芳香のある最初は白いが黄変していく5弁の花が咲く。
球形の果実は熟すと3裂して赤い粘液が付着した種子を露出するが、無味無臭であり人間の食用には適さない。
海岸部でも旺盛に生育するので、造園樹木として世界各国の海岸公園での生け垣や街路樹、分離帯などとして植えられているが、栽培種にはトベラキジラミという害虫がつきやすく、この虫が分泌する甘露によって発生する「すす病」が目立つことがある。
文化的な扱い
花言葉は「ずっと待っています」。
上記のように節分の際に悪臭による鬼追いとして、ヒイラギが入手しづらい漁村などの海岸近隣地域で戸口に掲げられていた。
伊豆七島では旧暦1月24日になると、海難法師という恐ろしい水死したものの亡霊が海からやってくるので、やはりヒイラギとともに掲げられ、どうしても外に出なければいけないときには身を守るために頭に葉を括り付けたのだという。
葉は次の日には燃やされ、その際に大きな音を出して膨らむと豊作になるといわれている。
この枝が化けたとべら坊という妖怪が肥後(熊本県)には伝わるという。
漢方薬として枝葉が「海桐(かいとう)」と呼ばれている。通経・解毒に効能があるとされ、生理不順や寄生性皮膚病に処方される。
特徴的なチーズ臭から、方言および俗称や隠語として乳酸菌などの常在菌によって強い匂いのある女陰を指し示すのに用いられることがあるが、とても失礼な表現なので注意が必要である。