概要
藤子・F・不二雄原作の漫画『ドラえもん』のエピソードの一つ。長らく、「小学四年生」1972年3月号にしか掲載されていなかった貴重な最終回の一つであったが、現在はもう一つの最終回「ドラえもん未来へ帰る」と同じく「藤子・F・不二雄大全集 ドラえもん」第1巻に収録されている。
「小学四年生」掲載時にこのタイトルはなく、大全集掲載に伴ってつけられた。
ちなみに、このような最終回が描かれたのは、1972年当時は「小学五年生」「小学六年生」に『ドラえもん』が連載されていなかったためである。
翌年の1973年から『ドラえもん』は「小学五年生」「小学六年生」でも連載を開始するが、その直前の「小学五年生」1973年3月号には、のび太がドラえもんのことを懐かしがっていると、机からドラえもんが姿を現し「六年生になるんだろ。きみにとってだいじなときだ」と言ってのび太との再会を喜ぶ内容の予告が掲載されている。
ストーリー
今日も今日とて家に帰るなり、ドラえもんに何か頼もうとするのび太。しかし自分の部屋で誰かが話をしていることに気づき、入ってみるとドラえもんとセワシがいた。
セワシはのび太に「じつはね、そろそろドラえもんを……」と切り出すが、ドラえもんは自分が言うからと止めて、セワシを未来に帰らせた。
ドラえもんはどこかしょんぼりした雰囲気になりながらも、のび太に何かを伝えようとするが、のび太は明日友達とサイクリングに行くことになったものの、自分は自転車に乗れず、自転車を持ってはいるものの、転ぶと痛いと言う理由から物置にしまいっぱなし。そんな事を友人達に言えない為、「よし行こう」と約束してしまった…との事で、のび太は「なんとかしてよ」といつも通り頼み込む。
しかしドラえもんは「どうにもならないね!自転車に乗れる機械なんてあるものか!」「どうしてそう人にばかりたよるんだっ!!ぐずぐずいってるひまに、練習したらどうだっ!!」と怒鳴りつけて部屋を出ていった。
何故急に怒鳴られたのか訳も分からず部屋を出るのび太だったが、そのうちどうにかしてくれるだろうとあくまで楽観的にとらえていた。ドラえもんはその様子を見ながら呆れる。
これじゃだめだと、ドラえもんは心を鬼にして言う事を決意する。
のび太の後を追い、心を鬼にして何か言おうとするが、のび太は待ってましたとばかりにドラえもんにどら焼きを差し出す。
のび太は自分の分もドラえもんに与えつつ、日ごろの感謝を込めてこう話した。
「きみにはいつもたすけられてばかりいるからなあ。もし、この世にきみがいなかったらと思うとぞっとするよ。とてもぼくなんか生きていけないな。どうかこれからもよろしく……あれっ、いないや。」
話の途中でドラえもんはいないくなっていた。ドラえもんはのび太の部屋で自分が未来に帰るなんて言えないと泣き崩れていた。見かねて戻ってきたセワシはドラえもんにある提案をする。
のび太が部屋に戻ると、ドラえもんが苦しそうに唸っていた。セワシはこの時代の空気が悪いせいで体の機械に錆が付いてしまったという。のび太は泣きながら、未来へ連れてって何とか直すよう頼み込んだ。
ドラえもんは「だけどぼくがいっちゃったらこまるんじゃない?」と心配するが、のび太は「こまるにきまってらい。でもきみが元気になるためなら、どんながまんでもするよ。」と答える。
それを聞いたドラえもんは「ウワーオなんとやさしいことば」と泣き出してしまう。そして壊れそうというのは嘘だと告げた。
騙されたことを怒ったのび太だったが、ドラえもんは「君の為なんだ」と告げ、セワシも「わかってくれよおじいちゃん」と答える。
このままではのび太はドラえもんに頼る癖がついて、一人では何もできないダメ人間になってしまう。自分の力で何でもできる強い人になってほしいがために、未来に帰るのだという。
親友と子孫の説得を聴いたのび太は、「自信はないけど頑張る」と決意した。
そしてついにドラえもんと別れる時がやって来た
「きみのことわすれないよ」
「ぼ、ぼくだって……ククク」
互いに別れを惜しみ、涙を流しながらも別れの挨拶をかわしあうのだった。
「さようならあ」
それから間もなくして、のび太は自転車に乗る練習を始めた。何度も転んで傷だらけになり、ママからも「無理しないで辞めたら?」と言われるも、のび太は立ち上がる。
「だ、だいじょうぶ……イテテテ。ドラえもんとやくそくしたんだ。」
そして遠い未来である22世紀、ドラえもんとセワシはタイムテレビでそんなのび太の様子を見守っていたのだった。
「がんばれ、がんばれ!!「タイムテレビ」でおうえんしているぞ!!」
映像化について
このエピソードは現在、封印作品となっている日テレ版の最終回でのみ映像化されている。
その中ではしずか、ジャイアン、スネ夫といったいつものメンバーも登場し、セワシの代わりにガチャ子が登場。ドラえもんの送別会が開かれたり、お土産にどら焼きを渡すといった追加要素がある。
関連タグ
さようなら、ドラえもん:おなじみの最終回エピソード。本エピソードとは「頼ってくるのび太をドラえもんが突き放す」「のび太が一念発起する」などプロット的な意味での共通項が多い。
ドラえもん未来へ帰る:もうひとつの最終回エピソード