概要
ナッチャンWorldは、かつて北海道と全国各地を結んでいた東日本フェリーの青函航路用として製造された、双胴高速フェリー。オーストラリアのインキャット・タスマニア社によって2008年に製造された。
東日本フェリー時代
姉妹船である「ナッチャンRera」(前年の2007年に就航)と共に鳴物入りで青函航路に就航。高速バスとの連携で、同航路のライバル青函トンネル津軽海峡線の鉄道貨物に対抗するための手段として期待された。
かつて、同航路には同じく高速フェリーとして「ゆにこん」という船が使用されたが、欠航率が高く僅か3年で撤退、売却された過去があり、本船はその反省を活かして満を持して投入された。
…が、投入から半年も経たずに運航会社の東日本フェリーが経営破綻、また高速故のコストの高さ故に運賃や車両輸送費を高額に設定したことから定期的に利用する客に嫌われたこともあり、燃料費の高騰も相まって2008年末には早くも運航停止を食らってしまう。
津軽海峡フェリー時代
東日本フェリーの子会社であった津軽海峡フェリーは、貨物船から発展したモノクラスフェリーを当時運航していたが、東日本フェリーの経営破たんにより同社の便も引き継ぐこととなり、同航路に就航していた船たちも揃って津軽海峡フェリーの所属となった。そう、こいつもである。
折しも函館港開港150周年という節目の年に就航したこともあり、姉妹船「Rera」と共に横浜まで出向いてPRイベントを行うなど、イベント船として活用された。
その後、姉妹船「Rera」が函館港にて寝ている中、当船は2009年から2012年まで、夏季限定ながら青函航路に復帰することとなり、幻と化しかけた高速フェリーを束の間ながらも楽しむことが出来た。
だが、2012年の夏を持って、同船は運航停止。同年10月には「Rera」が台湾に売却され、「麗娜輪」と改名した後、2024年にギリシャに売却され「EuroChampion Jet」と改名された。
防衛省への徴用
元々、姉妹船「Rera」と共にその高速性と、それでいて自動車を運搬出来るという特性から、離島奪還作戦に使うための高速輸送艦艇として自衛隊が活用するという構想が存在した(実際、アメリカでは同型船が軍事輸送任務に就く)のだが、当初の計画は実現されず「Rera」の方は売られてしまう。
一方で2011年に発生した東日本大震災では緊急災害支援物資輸送船として活躍し、実際にその効果の有用性が確かめられたのか、ついに2014年になって防衛省が借り上げることとなり、以後は自衛隊の輸送船として活動することとなる。
船籍は津軽海峡フェリーのままだが、将来的には20年契約で新会社に移行する予定。なお、大型車両輸送のため、船体左舷後ろにランプウェイが増設され、これにより専用の岸壁が無くても着岸・運用が可能になった。
なお船体は青函航路の時代に公募で選ばれた良い子のイラストが、自衛艦艇になってもまだ採用されている。(横山雅司『本当にあった!特殊乗り物大図鑑』p47の、「最も派手な自衛艦艇」という表現は、多分事実でいいと思う)
なお観光船として活用することも考えられており、2018年2月から函館港において行われたディナー・クルーズで一般向け運航が再開された。
同年8月には青森ねぶた祭りツアーで6年ぶりに古巣の津軽海峡での運航が行われている。
船体概要
総トン数10712トン、全長112m、全幅30.5m、ウォータージェット推進、ディーゼル駆動
航海速力最大36ノット(満載時)、最大旅客定員約1700名
関連項目
はくおう - 新日本海フェリーが所有し、自衛隊が同じく借り上げる輸送船(特設艦船)。全長200m・通常の単胴型ながら29ノットの高速で走行可能なため、大型輸送船としての活用、病院船としての利用を期待される。
氷川丸 - 戦前の民間客船を徴用により病院船とした例。姉妹船日枝丸など特設輸送船として他の業務に従事した船もあるが、同船以外は大戦を生き残れなかった。
クイーンエリザベス2 - 大戦後に建造された大型客船。オーシャンライナーとしての高速性を確保し、フォークランド紛争時に徴用されている。