概要
航空機搭載型のロケット推進弾である。
小型ゆえ低威力、完全に無誘導。そのため命中精度には難があるが、ミサイルに比べてはるかに安く済むので現代でも重宝されている。
固定翼機にも搭載可能だが、高速で飛びながら撃ってもろくに当たらないので基本的にヘリ用。AH-1、AH-64等の攻撃ヘリや、輸送ヘリを改修したガンシップによって運用される。
Mk.66ロケットモーターと弾頭を組み合わせて使う仕様で、弾頭は対人榴弾、対装甲榴弾、フレシェット弾、照明弾、赤外線信号弾、発煙弾などがある。信管も任務に応じて変更可能。
誘導弾化
非誘導弾のロケット弾は命中精度が低く、あまり遠距離から狙うのには向いていないのだが、対空兵装の発達によりむやみに敵に接近するわけにもいかなくなってきた。
そうなると、命中精度を補うため一目標に何発も撃ち込まなければならなくなる。無駄弾が増えるばかりでなく、対象の撃破に必要な出撃回数、機数も増えることになるから、下手にミサイルを撃つよりも運用コストが高くつくケースがある。
じゃあミサイルを使えばいいかというとそうでもない。現代は付随被害を極力抑えることが目的とされるのだから、大型の対戦車ミサイルをなんにでも撃ちまくって周辺被害が大きくなりすぎてしまう事も問題なのだ。
目標に適切な最低限の威力で、加えて安価で、なおかつ無駄弾も出ない、つまるところ気軽に使えてよく当たる手頃な兵器が求められた。
その原型として選ばれたのがハイドラ70ロケット弾。これに誘導能力を付与した小型の空対地ミサイルが開発、運用されている。
APKWS(Advanced Precision Kill Weapon System)
先進精密攻撃兵器の意味。
射程は5,000mほど。固定翼機であれば10㎞ほどまで延びる。セミアクティヴレーザー誘導により高い命中精度を持ち、レーザー受信機を翼端に配置することで視野を広げている。
非公式に「ヘルファイア・ジュニア」とも。中東で実戦運用中。ヘリだけでなく、F-16、A-10といった固定翼機にも搭載される。
ハイドラロケット弾の弾頭とロケットモーターの中間に誘導装置を追加するのみで誘導弾化が完了し、ランチャーや発射母機には一切の改良が不要という、極まった簡便さが特徴。このため誘導弾のコストはベースとなる無誘導ロケットの10倍程度と、非常に安価である。
同類の兵器の開発はアメリカだけでなくトルコでも行われており、70mmロケット弾をベースに開発したセミアクティヴレーザー誘導の対戦車ミサイル「シリット」として発表されている。
2010年代に安価なドローンが普及すると、それに対抗できる安価で携行弾数の多い誘導兵器として注目された。
2019年にはアメリカ空軍がF-16Cからドローンに対する空対空射撃試験を行い、成功を納めている。
LOGIR (Low-Cost Guided Imaging Rocket)
韓国と共同開発中。
母機がレーザーを照射し続けなければならないAPKWSと違い、赤外線シーカーによる画像誘導で撃ちっぱなし能力がある。こちらは弾頭の前部に誘導部を持つ。
名前からも分かるようにAPKWS同様に安価である事が目的となっているが、レーザー誘導よりもいくらか高価なものになると思われる。