碑文は終末の物語ではない。
創世の物語なのだとエマは語った。
では始めよう。究極AIと人が共に生きる、新しい世界の創造を。
CV:山崎たくみ
概要
「.hack」シリーズの舞台となるネットゲーム『The World』のプロトタイプ『fragment』を産み出した、天才プログラマーである1971年生まれのドイツ人男性。
異才の人工知能(AI)学者でもあり「分散処理と人工知能の可能性およびその未来」という論文で、人間とコンピュータのあるべき未来の姿を掲示し、一躍脚光を浴びる。そして、自分の仮説を実証するべく、無限の学習機能により人智を超えた存在となり得るAI、すなわち「究極AI」の開発に取り組んでいた。
だが、それは途中で行き詰まり挫折することとなる。
その後、2004年に突如としてネットゲーム『fragment』の製作を開始。そして2006年の夏。世界ネットワーク随一のシェアを誇る「ALTIMATE OS」の子会社であるCC社に、『fragment』を持ちかけた。
彼が製作した『fragment』なるファンタジーRPGは非常に練られたシステムと、深い世界観、そして興味深い物語を内包する力作であった。CC社の上層部は気に入り、ハロルドとの契約を取り付ける。
だが、彼は「fragmentを絶対に世界規模の"ネットワーク対応"のゲームにする」という条件のみを希望し、他には知的財産も金銭的報酬をも一切望むことはなかった。ただ「必ずネットゲームにして欲しい」と何度も念を押し、契約後は姿を消す。
そして2007年。世間の話題が『fragment』で持ちきりになる中でハロルド・ヒューイックは謎の失踪を遂げ、行方不明となる。失踪時の年齢は30代半ばほどであった。
後に『fragment』はCC社によって新しく『The World』と名を変えてリリースを開始。プレイヤー数2000万突破という空前の大ヒットを記録する。
真実
彼が創造したものはネットゲームなどではなく、究極AIを誕生させるための母体である。その詳細はモルガナ・モード・ゴンを参照。
1996年、25歳の秋。
究極AIの開発に挫折したハロルドは、知性の根幹を成すものを求めて、神智学・人智学に興味の領域を広げて行くが、その分野のセミナーにて美貌の詩人エマ・ウィーラントと出会う。そして彼女に一目惚れをしてしまい、強く惹かれていった。
彼女の方は愛人が存在しており、心から彼のことを愛していたわけでは無かった。しかしハロルドの才能を賞賛してはおり、エマも彼との交際を始めてゆく。
だが、2004年のある日。交通事故によりエマ・ウィーラントは長編叙事詩『黄昏の碑文』を遺し死亡してしまう。この際、エマはハロルドとの待ち合わせ場所に向かっており、ハロルドは彼女の死を知らず、銀杏の木がたつ丘の上でエマを待ち続けていたらしい...。
エマ・ウィーラントへの叶わなかった恋。
悲嘆に暮れたハロルドは、彼女への愛を形にするべく『黄昏の碑文』を具現化させた世界で、エマと自分の子供としての究極のAI「アウラ」を誕生させることを決意する。
そして、究極AIを生み出すための"人間の思考サンプリングシステム"『fragment』の開発に着手することとなった。
その後、2006年。CC社への売り込みに成功し、『fragment』は「ALTIMATE OS」対応の世界的なネットゲームとしてテストプレイを開始。
サンプルされた思考データはゲーム内に還元され、『fragment』自身が自律的に新たな成長続ける。そして、それは究極AIの糧となり、このまま順調に行けばアウラは誕生を迎えられる....そのはずだった。
だが、テストプレイの最中に最悪の事態が発生する。
『fragment』の中枢プログラム「モルガナ・モード・ゴン」。アウラ誕生の母体となるモルガナ自体に、人間の女性に近い人格が宿ってしまったのである。
彼女の暴走を食い止めるため。何より最愛の娘であるアウラを守るためにハロルドは自らの精神を『fragment』に移し、対話をするべくモルガナの元へ向かう。
そして2007年。彼はそのままモルガナに精神を破壊され、生きて現実世界に帰還することはなかった。
パロディモードにおいて
初代.hack//におけるパロディモードでは、他の登場人物達の例に漏れず、本編におけるシリアス要素が完全に消え失せている。
カマ口調の京都弁で喋り、恨み節のようなセリフを放つ。
また、その正体は本編とは異なり、ブラックローズの別人格的な存在である。
残留思念
ハロルド自身の精神は消失してしまったが、彼が生前に残した想いや言葉は記録され、徐々に壊れながらも残留データとして「ハロルドの部屋」などのブラックボックス内部に散在している。そして、それは「ハロルドの手記」や放浪AIとなどの残留思念として形をとり、訪れた者へ不思議な言葉を投げかけていた。
その思念体が語る言葉は「.hack」シリーズを通し、やがて司やカイト、ハセヲ達の行動の道標となってゆく。