概要
プラカノーンのメー・ナークとは、タイ王国のバンコクにあったプラカノーン村を舞台とした民話の主人公である女幽霊(ピー・プラーイ:難産で死んだ女性の悪霊)の名前である。
実在が信じられており、地元の人以外にはナン・ナーク(ナーク夫人)とも呼ばれ親しまれ、現在では終の場となったといわれる寺院ワット・マハーブットにおいて、出征前の軍人が家族の安全を願う守り神として崇められている。
愛情の深さゆえに人ならざる者になってしまった女性の悲恋であるこの話は、タイでは非常に人気があり何度も劇やドラマ、映画などになっている。
物語
ときは18世紀、チャクリー王朝初期の時代、プラカノーン村長にはナークという娘がおり、貧しいが働き者の庭師のマークと恋に落ちた。村長はそれを許さず勝手に金持ちの中国人との縁談を進めたため、ナークは駆け落ちをして結婚した。
しかし、妊娠したのと同時に夫のマークは徴兵され、離れ離れになってしまう。
親友のトゥイと老夫婦のター・ミーとヤイ・マーにナークは面倒を見てもらうことになったが、残念なことに難産で親子ともども亡くなってしまった。
ナークは手厚く葬られたが、愛情と未練の強さからピー・プラーイになって甦ってしまう。(悪の呪術師が秘薬の材料とするために遺体を穢したからだともいわれる)
兵役中の夫の元に赤ん坊とともに現れたが、帰るように諭され一夜を過ごした後に姿を消した。
そして一年後、兵役が終わり村に帰ってきた夫はトゥイに「ナークは死んだ」ことを知らされるが、「兵役中に会った」と口論になり、家に帰るとなんとナークは普通に家で暮らしていた。
それを見たトゥイは彼女は悪霊であることを訴えるが、ナークに「私たちの仲を裂こうとしている」と言われ退散するしかなかった。(邪魔をする村人は次々と呪い殺していたとも)
その後、ナークとマークは夫婦仲睦まじく暮らしていたが、ナークが臼で唐辛子を砕いていた際、杵を遠くに落としてしまった。(作っていた食品と、落としたものにはバリエーションがいくつかある)
そこでありえないほどの長さに手を伸ばして拾ったのを見られてしまい、正体がばれてしまう。
マークは逃げ出しワット・マハーブットという寺院に助けを求めたが、僧たちは経を唱え侵入を防ぐことしかできず、悪霊の正体を現し暴走したナークは村人たちを次々と呪い殺していった。
最後は、この地に訪れたネーン・チウという徳の高い少年僧によって退治され、遺骨は骨壺に収められて運河に捨てられた。
ネーン・チウによって、額の骨の一部から「プラ・クルアン」という非常に強力なお守りが造られ、チュムポーン親王などの王族の元を転々とした後、所在不明になっているともいわれている。