概要
父親が銀行の頭取、母親は心理療法士、大叔父が映画監督のアンソニー・アスキス、曾祖父が元イギリスの首相という驚くべき血筋の持ち主、英国名はHelena Bonham Carter、敬称をつけてDame Helena Bonham Carterとも。80年代に”A Room with a View”(眺めのいい部屋)や”Lady Jane”(レディージェーン)でブレイクして以来、その奇抜で目を引くファッションスタイルと共に知られている。
アカデミー賞には1998年の”The Wings of the Dove”(鳩の翼)と2011年の”The King’s Speech”(英国王のスピーチ)で2度のノミネートを受け、その他英国アカデミー賞やエミー賞、全米映画俳優組合賞など多数の受賞歴を持つ。(後述)
若い頃から「英国の薔薇」や「コルセットクイーン」の異名で親しまれ(注1)、その軽快なユーモアセンスと歯に絹着せぬ物言いで人気を博した。
女優業の他に“Wallace and Gromit”(ウォレスとグルミット)や、“Corpse bride”(コープスブライド)では声優を、ナレーター等も務めている。
若い世代の映画ファンの間では、“Harry Potter”(ハリー・ポッター)シリーズのヴォルデモート卿の腹心で死喰い人、残酷にして狂気的な魔女のベラトリックス・レストレンジ役を務めた女優として世界的に良く知られている。
2023年現在での最新作は、Netflixオリジナル映画シリーズ2作目の“ENOLA HOLMES2”(エノーラホームズの事件簿)におけるエウドゥーラ・ホームズ役、ドラマ作品では“NOLLY”(日本未公開)におけるエノーラ・ゴートン役であり、2024年1月に英国で公開予定の“One Life”ではバービー・ウィントン役で出演している。
プロフィール
誕生日 | 1966年5月26日 |
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出生地 | 英国、ロンドン、イズリントン |
学歴 | ウェストミンスタースクール、サウス・ハムステッド高校 |
職業 | 女優(1983〜現在:2023) |
出演作 | (後述) |
受賞歴 | (後述) |
パートナー | ケネス・ブラナー(1994〜1999)、ティム・バートン(2001〜2014)、ライ・ダグ・ホルンバー(2018〜現在:2023) |
子供 | ビリー・バートン(息子)、ネル・バートン(娘) |
出演作(ネタバレ注意)
⚠️pixiv百科は日本のサイトであるため、作品名は邦題の出ているものはそれに倣って、日本未公開作品の場合はカタカナで書くか適当な訳を付した。なお、正式な邦題ではないものについては鉤括弧を設けず(仮)を置くものとした。
共に原題、役名は英語で併記する。
映画及びTVドラマシリーズ(声の出演を除く)
薔薇模様(仮)(1993)
原題:A PATTERN OF ROSES
役名:ネッティ・ベリンジャー(Netty Bellinger)
『マイアミバイス』(1984)
原題:MIAMI VICE
役名:テレサ・ライオンズ(Dr. Theresa Lyons)
『眺めのいい部屋』(1985)
原題:A ROOM WITH A VIEW
役名:ルーシー・ハニーチャーチ(Lucy Honeychurch)
ヘレナの出世作として知られる『眺めのいい部屋』は、イタリアのフェレンツェ及びロンドンを舞台にしたロマンス映画である。19世紀末〜20世紀初頭、叔母と共にイタリア旅行に来ていた令嬢と、同じく叔父と旅行に来ていた青年が出会い劇的な恋に落ちるがその命運や如何に……!?というありがちな展開ながら、パラソルもコルセットも無くして久しい現代人には観ているだけで新鮮な雰囲気が楽しめる。フィレンツェを現代に観光旅行で訪れても味わえない格式のある雰囲気を、視界として楽しむことが出来るだろう。
叔母役(cousinと呼びかけているため「従姉妹」と訳されているが、シェイクスピアの『十二夜』でもあるようにcousinで叔母や叔父を示すこともあり、年齢差的に考えても叔母だと思われる)を務めたのはマギー・スミス、後に『ハリー・ポッター』シリーズで再び共演することになるなどとは知る由もない二人の掛け合いが、ベラトリックスとマクゴナガルであると考えながらみるとなかなか非常に面白い。18歳の初々しい英国の薔薇が、次にあった時にはガタガタの付け歯でケタケタ笑う狂気のアラフォー魔女になっているとはまさか思わなかっただろう。だが考えて見れば、マクゴナガルはベラトリックスの在学中から教師をしているはずなので、心境としてはマクゴナガルとマギーで意外とリンクしていたのかもしれない。
『レディージェーン』(1986)
原題:LADY JANE
役名:ジェーン・グレイ嬢(Lady Jane Grey)
フランス悲劇の王妃がマリー・アントワネットなら、イギリス悲劇の女王はジェーン・グレイだろう。そう言われることもあるほど有名な一人の少女の、実話としてのイングランド悲劇を表した作品である。かの高名なエリザベス一世の2代前の女王であり、別名を「九日間の女王」。後の『キングオブファイヤー』ではアンブーリンを演じたヘレナだが、「千日の」にしろ「九日間の」にしろ、イギリスは悲劇性を強調する際に期間を冠させたがる傾向があるらしい。カクテル「ブラッディメアリー」でお馴染みのメアリー女王と王位継承を巡って争い、最終的には10代半ばの若さで夫と共に処刑された悲劇の少女である。日本では「怖い絵」の代表作となっている絵のモデルの少女と言った方がイメージしやすいかもしれない。
16世紀当時の宗教改革後の混乱と、真っ向からぶつかり合う信仰心のあり方は、歴史が好きな人には興味深く、キリスト教徒であれば号泣必至で、残忍なメアリー女王のイメージが随分と変化するきっかけにもなるかもしれない。ヘレナ本人の宗教観はむしろユダヤ教寄りらしいのだが、そんなことはつゆほどにも感じさせない敬虔なプロテスタント振りは圧巻である。「私にはそんなことは信じられない!」と叫び、信仰と共に死ぬことを選んだその覚悟は、無神教者の多い日本ではなかなか理解されないかもしれないが、それが勿体無く思えるほどには涙を誘う。
また成人後初の映画主演ということで、おそらくは(要追記)初となるベッドシーンも(お気持ち程度だが)見られ、だが設定としても10代半ばの夫婦ということで非常に初々しく「知ってた?」「何を?」「今したようなこと」「ええ、読むだけで顔が赤くなってしまうような本でね」というピロートークでの掛け合いは、まさに聞いているだけで赤くなってしまいそうである。
『モーリス』(1987)
原題:MAURICA
役名:クリケットの試合に出た女性(ゲスト出演)
恋は嵐のように(仮)(1987)
原題:A HAZARD OF HEARTS
役名:セリーナ・スタバリー(Serena Staverley)
残念ながら日本語字幕はないが、耳が慣れれば日本人でも聞き取りやすい、非常に洗練されたブリティッシュアクセントが印象的な作品。
内容としては「賭け事狂いの父親(紳士の身分)が、賭けで失った財産権と一人娘(セリーナ)の所有権(結婚)を賭けて最後の賭けに挑むものの負け絶望して自殺し、財産と娘の所有権を手にした男性に対してさらに賭けを挑んだ青年(ジャスティン)が賭けに勝って、その権利で父親を失い孤児になった(母親はセリーナを産む時に亡くなっている)セリーナの面倒を見ることになったのだが……?」という話である。
結論としてはお察しの通りのセリーナとジャスティンのラブロマンスなのだが、ジャスティンの家というのがなかなかに闇が深く、ついでを言うと当初にセリーナの所有権を引き受けた男性というのがかなりネチっこい奴で、いい歳をしてセリーナに強気で迫り続けている。
善人悪人に関係なく人死がかなり出る上、セリーナが襲われかけるシーンまであるため心臓の弱い人は注意が必要。
ヘレナが演じるのは主役兼ヒロインのセリーナ・スタバリーで、190近い長身の美青年とのラブロマンスには非常に目が癒される。
勿論舞台はイングランドであり、服装からおそらく年代は19世紀であるため、そもそも娘の所有権とは何ぞやとか結婚を勝手に決めるなとか、野暮ことを言ってはいけない。
ヘレナが20歳にようやくなった頃の作品であるため、童顔なのもあってとにかく可愛い。まだ色気というのはなかなか出ないが、それを差し引いても十二分にお釣りが来るほど終始可愛い。「英国の薔薇」の二つ名に誰もが納得せざるを得ない可憐さ、溢れ出る貴族のお嬢様然とした貫禄は流石は「コルセットクイーン」と言ったところである。
テンポの良さも観ていて飽きないし、個人的にはもう少し評価が高くてもいいと思うのだが受賞歴は特になし。
『ラ・マスケラ』(1988)
原題:La Mascara(THE MASK)
役名:イーリス(Iris)
全編イタリア語映画のこの作品、ヘレナの巧みなイタリア語が聞けるという意味でとても楽しい映画である。
英語以上に日本人の殆どがイタリア語は話せないかと思われるので、字幕付きなのがありがたい。(ただしキャスト説明で『ハムレット』がケネス・ブラナー監督と説明されていて、かなり膝から崩れ落ちそうになる。おそらくは『フランケンシュタイン』か『ヴァージンフライト』の方を考えていたのだろうが、『ハムレット』はメル・ギブソン監督の代表作の一つなので、恥ずかしいからやめて欲しい。販売するならせめて確認してから書いて欲しい)
多くの日本人は「仮面」で「イタリア」で「映画」と聞けば『オペラ座の怪人』をイメージしてしまうのではなかろうかと思うが、この映画はオペラ座の怪人とは全くなんの関係もない。内容を言えば「放蕩生活に走っていた貴族の青年が旅芸人の少女に惚れて、初対面に持たせた悪印象をなんとか挽回する+自分が誰だか知られるのを恐れて仮面をつけてストーカー(?)した結果、最終的にハッピーエンドに終わりました」というようなものである。
映画としての出来は、悪くはないがストーリーが急展開過ぎるのと、あまりにも現実味のない設定に少々気持ちが置いてきぼりを喰らってしまう感はあり、「公爵が旅芸人と結ばれるは無理がある」とか言い始めてはおしまいである。
ヘレナのイタリア語も、流石にネイティブと共演していると英語ほどの流暢さはないのかもしれないが、それにしても全編イタリア語映画で主演を張るイギリス女優とはどういうことなのかさっぱりわからない。これがケンブリッジ合格を蹴る頭脳だということだろうか。
とりあえず終始可愛らしく、発音をしっかり出そうとしているのか英語映画の時よりも口の動きが大きいのがとても愛らしい。
『ザビジョン:衛生テレビの陰謀』(1988)
原題:THE VISION
役名:ジョー・マリナー(Jo Marriner)
『フランチェスコ』(1989)
原題:FRNCESCO
役名:アッシジのクレア(Clare of Assisi)
いざ蹴りをつけん(仮)(1989)
原題:GETTING IT RIGHT
役名:ミネルバ・マンディ嬢(Lady Minerva Munday)
日本では未公開のこの作品、英語での字幕やネットでの説明も少なく、正直内容を理解するにはバイリンガルの友人に頼るか、ネイティブの友人に英語でなんとか説明してもらうか、あるいは自分で必至にリスニングして意味を理解するしか視聴の方法がなく、ヘレナの出演作の中でもなかなか非英語ネイティブには敷居の高い作品の一つである。
筋書きだけをいえば「蹴りをつけろ!(仮)」と言うタイトルの通り、30を超えても未だ独身で両親と同居している美容師のギャビンが3人のそれぞれに個性的な女性たちと突如関わりを持つこととなり、さて彼が最終的に「蹴りをつけて」選ぶのは誰か?という話である。ヘレナが演じるのは堅苦しい家の作法にうんざりとしてふらふらと遊び歩く富豪の令嬢で、一介の美容師に過ぎない主人公を妙に気に入って(というよりもからかって)婚約者として両親に紹介するも途中でギャビンに逃げられてしまい、相手の不明な子供を妊娠していたらしい彼女は最後は救急車で緊急搬送されてしまう。
ある意味で非常に「ヘレナらしい」役柄で、雰囲気だけで言えばそれまでの毅然とした気位の高そうなお姫様というよりは、気位は相変わらず高そうなものの狂気をさらに強めに帯びて、どちらかといえば狂った後のオフィーリアの方に近いと言えるかもしれない。今やヘレナの代名詞とも言える「クレイジー」な演技の先駆けでもあり、殆どその初期の作品である。
レビューを見る限りネイティブ勢にはかなり評価が高いのだが、映画そのものとしても役者たちにしても受賞歴は特になし。風刺タッチなコメディということなのだが、どのあたりがコメディなのかもどの辺りに風刺があるのかも、わかるようでわかりにくい。衣装や演出にも取り立てて凝ったところはなく、あえて言えば主人公の心情が背景で読み上げられているのが珍しいかもしれない。ヘレナの登場シーンも少なくはないが多くもなく、彼女のためだけに海外から通販して鬼リスニングするには些かローリターンかもしれないが、やはりここはファンとして一応は視聴をお勧めしたい。
(要追記、視聴者には是非編集のお手伝いをお願いしたい)
ロマンティックイリュージョン(仮)(1989)
原題:ARMS AND THE MAN
役名:Raina Petkoff
『ハムレット』(1990)
原題:HAMLET
役名:Ophelia
ヘレナ初のシェイクスピア映画で、「文学界のモナリザ」と名高い『ハムレット』においてヒロインのオフィーリアを演じた。映画としてはメル・ギブソンの巧みな監督によって尺を縮めた中でも良く纏められており、シェイクスピア研究者の中でも評価の高い作品であるといえる。
ただ正直なところ、ヘレナの魅力の一つであら意志の強そうな顔立ちと表情からは、オフィーリアよりも後のオリヴィア(『十二夜』の方がハマり役であったとも言えるかもしれない。一般的に想像するオフィーリアよりはどうしても「まとも」そうに見えてしまう点と、そうでなくても「これだけ気の強そうなキッパリした美人が、男に裏切られたくらいでこうもなるかな」と些か疑問を抱かないでもない点が、仮にオフィーリアを「心優しくも心弱い、か弱く無実の乙女」のイメージで捉えるなら些か反するかもしれない。しかしこれはこれでシェイクスピアの解釈の一つと十分に言える魅力を持っているし、「若い男がみんなそうなのだとしても、私には赦せない」とハムレットの心変わりを嘆くシーンでの演技は、むしろ彼女の憤りと嘆きをより一層切実に伝えているとすら言えるかもしれない。
後年に演じた「ベラトリックス・レストレンジ(ハリー・ポッター)の若い頃」としてファンビデオを作るなら、衣装はともかく(衣装はギリシャ風なので、ファンビデオにベラトリックスとして使われていることは殆どない)顔つきや性格のあり様から1番説得力を与えることが出来るのではないかと思える作品である。
ビアトリクス・ポッターの若き日々(仮)(1990)
原題:THE EARLY LIFE OF BEATRIX POTTER
役名:ビアトリクス・ポッター(Beatrix Potter)
『ピーター・ラビット』の作者であるビアトリクス・ポッターの伝記的な作品。DVDにはなっておらず、僅かなシーンのみYouTube等で確認することが出来る。要追記。
『天使も許さぬ恋ゆえに』(1991)
原題:WHERE ANGELS FEAR TO TREAD
役名:キャロライン・アボット(Caroline Abbott)
日本語字幕版も発売されているが、VHSのみのバージョンであるためDVDへの焼き直しが必要。
『ハワーズエンド』(1992)
原題:HOWARDS END
役名:ヘレン・シュレーゲル(Helen Schlegel)
ヘレナの出演作としては、『眺めのいい部屋』に続き2度目の E.M.フォースター原作、ジェームズ・アイヴォリー監督の作品である。アカデミー賞、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、カンヌ国際映画祭にノミネートを受け、全部門でそれぞれに受賞歴のある秀作で、ヘレナも英国アカデミーの助演女優賞でノミネートを受けている。主演はエマ・トンプソンで、彼女はこの作品で第65回アカデミー賞を受賞した。
20世紀初頭の英国を舞台として、当時の英国の階級闘争の要素を上手く織り込みながら、複雑に交錯する人間心理を巧みに描写した作品。ヘレナは主演のエマ・トンプソン演じるマーガレット・シュレーゲルの妹ヘレン・シュレーゲル役を務め、物語全体を通して「富裕層と貧民層の架け橋」にあたる重要な役割を巧みに演じた。「コルセットクイーン」の異名を持つヘレナだが、正確には「コルセットの型に嵌まることを良しとしない進歩的な女性の代名詞」と言った方が正確であろうということが一層明らかになる作品の一つでもあり、『眺めのいい部屋』や『レディージェーン』で示したような「自己の信念を貫く」という時代に半ば逆行するような反骨心はここでもやはり健在である。
ちなみに主演のエマ・トンプソンとは初の共演作品であり、後述の事情から後に複雑な関係性に陥ってしまうこととはなるが、インタビュー(参照4)では「エマはとても優しくて、いい人だったわ」とのこと。原作が読解にはかなり難解であり「台詞合わせの時までにはとても全ては読みきれなかったのだけど、みんな同じだと知って安心したわ」と語った。
『アブソリュートリー・ファビュラス』(1992)
原題:ABSOLUTELY FABULOUS
役名:サフロンの夢(ゲスト出演)
ダンシングクイーン(仮)(1993)
原題:DANCING QUEEN
役名:Pandora/Julie(パンドラ/ジュリー)
『フランケンシュタイン』(1994)
原題:MARY SHELLEY’S FRANKENSTEIN
役名:Elizabeth Lavenza
『暗殺調書』(1994)
原題:FATAL DECEPTION:MRS. LEE HARVEY OSWALD
役名:マリーナ・オズワルド・ポーター(Marina Oswald Porter)
リー・オスワルドの名前はアメリカでこそ非常に有名だが、実は日本では知らない人も多いのではないだろうか。つまりこれはケネディ大統領暗殺事件の犯人と目されていた青年の妻の物語である。
ヘレナが演じるのは主演のミセス・リー・オスワルド、ケネディ暗殺の容疑がかかったまま死亡したリー・オスワルドの妻で、ロシア人の役を演じている。だが回想シーンではロシアが舞台ではあるが言語は全て英語、ロシア語を使うシーンは家庭教師をしている場面くらいでほとんど出ない。イギリス(アメリカ)の映画であるから仕方のないところはあるが、少々違和感は感じる。演出の関係なのか役の関係なのか、この映画は日本語の字幕なしで見てもそれなりにわかりやすく、おそらく全体的にアメリカ英語のアクセントが強いためなのだろう。だがヘレナが流暢なクイーンイングリッシュを操りながら「私の英語はあまり達者ではないのだけれど……」と言っている(ロシア人の設定なので)シーンはかなり面白い。
ケネディ暗殺の真相についてはその後の研究などでもかなり色々な考察がなされているところではあるが、その黒幕が誰であれ、1994年にこのような映画を作るというのはなかなかアメリカも強気というか、歴史的に考えても面白いものがある。もっともこの映画の主題はケネディの暗殺の真相がどうのというよりは「“英雄”を殺した男の妻」の人生に焦点を当てたものであるので、特に余計な知識がない方が楽しめるかもしれない。2023年現在は日本で前首相がスピーチ中にショットガンで暗殺されてから日も浅いが、その犯人の家族も同じような日々を現在送っているのかもしれないと思うとなかなか考えさせられるものがある(だがケネディの暗殺は時世的にも世界的なショックとダメージの大きいものだったし、当時と今とでは容疑者家族に与える影響はまた違うものがあっただろう)
回想シーンではリー・オスワルドも助演でかなり登場しているが、これがなかなかにヘレナ演じるマリーナと事あるごとに衝突し、演出的にどういう意図なのかは定かではないがかなり暴力的である。身寄りのない妻相手に声は荒げるわ手は出すわとなかなか立派にDV夫を演じているため、苦手な人はかなり覚悟を決めて観なければいけないかもしれない。だが別に悪い男というわけでもなく、その辺りも含めて妙にリアルである。
ヘレナがしっかりと母親役を演じたのはこれが初めてで(ハワーズエンドでも母親にはなっているが、母親の演技がメインではない)、20代前半から40代半ばまでの役を30前に演じているため40半ばの頃の設定では老けメイクが入っている。これは実際にヘレナが40半ばになった頃の雰囲気に非常に近く、化粧も演技も圧巻であるが、実際の方が皺は目立っていないかもしれない。実際の映像や音声も使ってドキュメンタリー調な雰囲気もあり、当時を知る人ならばその視点からも楽しめるだろう。ヘレナはこの作品でゴールデングローブの最優秀女優賞にノミネートを受けており、受賞は逃したが脚本や演出を含めても素晴らしい出来の映画である。是非観て頂きたい。日本語字幕版も一応販売されており、もし視聴希望ならば購入が必要だが、VHSしか存在しないためDVDへの焼き直しかVHS再生機の用意は必須である。
暗闇に開かれた瞳(仮)(1994)
原題:A DARK ADAPTED EYE
役名:フェイス・セヴァーン(Faith Severn)
バター(仮)(1994)
原題:BUTTER
役名:ドロシー(Dorothy)
『誘惑のアフロディーテ』(1995)
原題:MIGHTY APHRODITE
役名:アマンダ・ワインリブ(Amanda Weinrib)
『死の愛撫』(1995)
原題:MARGARET’S MUSEUM
役名:マーガレット・マクニール(Margaret MacNeil)
『十二夜』(1996)
原題:TWELFTH NIGHT
役名:オリヴィア(Olivia)
『恋人たちのポートレート』(1996)
原題:PORTRAITS CHINOIS
役名:アダ(Ada)
大規模戦争と20世紀の再構築(仮)(1996)
原題:THE GREATEST WAR AND THE SHAPING OF THE 20TH CENTURY
役名:ベラ・ブリテン(Vera Brittain)
『鳩の翼』(1997)
原題:THE WINGS OG THE DOVE
役名:ケイト・クロイ(Kate Croy)
アスピディストラを飛ばして(1997)
原題:KEEP THE ASPIDISTRA FLYING
役名:ローズマリー・ウォーターロー(Rosemary Waterlow)
KEEP THE ASPIDISTRA FLYINGが原題だが、アメリカを始めとした一部地域ではA MERRY WARの名前で知られる。
スウィートリベンジ(仮)(1998)
原題:SWEET REVENGE
役名:カレン・ナイトリー(Karen Knightly)
『ヴァーンフライト』(1998)
原題:THE THEORY OF FLIGHT
役名:ジェーン・サチャード(Jane Thatchard)
『エクスカリバー聖剣伝説』(1998)
原題:MERLIN
役名:モーガン・ル・フェイ(Morgan le Fay)
『ファイトクラブ』(1999)
原題:FIGHT CLUB
役名:マーラ・シンガー(Marla Singer)
女の友情(仮)(1999)
原題:WOMEN TALKING DIRTY
役名:コーラ(Cora)
殆ど完成された完璧な歴史(仮)(1999)
原題:The Nearly Complete and Utter History of Everything
役名:リリー(Lily)
『猿の惑星』(2001)
原題:PLANET OF THE APES
役名:アリ(Ari)
『ノボケイン/局部麻酔の罠』(2001)
原題:NOVOCAINE
役名:スーザン・アイビー(Susan Ivey)
『記憶のはばたき』(2002)
原題:TILL HUMAN VOICES WAKE US
役名:ルビー(Ruby)
マイハート(仮)(2002)
原題:THE HEART OF ME
役名: Dinah
『ライブフロムバグダッド』(2002)
原題:LIVE FROM BAGDAD
役名:イングリッド・フォルマネク(Ingrid Formanek)
『キングオブファイヤー』(2003)
原題:HENRY VIII
役名:アン・ブーリン(Anne Boleyn)
『ビッグ・フィッシュ』(2003)
原題:BIG FISH
役名:ジェニファー・ヒル/魔女(Jennifer Hill/The Witch)
『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』(2004)
原題:A SERIES OF UNFORTUNATE EVENTS
役名:ビアトリス・ボードレール(Beatrice Baudelaire)
『チャーリーとチョコレート工場』(2005)
原題:CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY
役名:バケット夫人(Mrs. Bucket)
『カンバセーションズ』(2005)
原題:CONVERSATIONS WITH OTHER WOMAN
役名:「女」(Woman)
マグニフィセント7(仮)(2005)
原題:MAGNIFICENT 7
役名:マギー・ジャクソン(Maggi Jackson)
『くたばれ!イングランド』(2006)
原題:SIXTY SIX
役名:エスター・ルーベンス(Esther Reubens)
『スウィニートッド』(2007)
原題:SWEENEY TODD: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET
役名:ラヴェット夫人(Mrs. Lovett)
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007)
原題:HARRY POTTER AND THE ORDER OF THE PHOENIX
役名:ベラトリックス・レストレンジ(Bellatrix Lestrange)
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(2009)
原題:HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE
役名:ベラトリックス・レストレンジ(Bellatrix Lestrange)
『ターミネーター4』(2009)
原題:TERMINATOR SALVATION
役名:セリーナ・コーガン博士/スカイネット(Dr. Serena Kogan/Skynet)
イーニッド(仮)(2009)
原題:ENID
役名:イーニッド・ブライトン(Enid Blyton)
『アリスインワンダーランド』(2010)
原題:ALICE IN WONDERLAND
役名:赤の女王/クリムのアイラセベス(Red Queen/Iracebeth of Crims)
『ハリー・ポッターと死の秘宝:パート1』(2010)
原題:HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS: PART 1
役名:ベラトリックス・レストレンジ(Bellatrix Lestrange)
『英国王のスピーチ』(2010)
原題:THE KING'S SPEECH
役名:エリザベス王妃(Queen Elizabeth)
『トースト』(2010)
原題:TOAST
役名:ジョーン・ポッター(Joan Potter)
『ハリー・ポッターと死の秘宝パート2』(2011)
原題:HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS: PART 2
役名:ベラトリックス・レストレンジ(Bellatrix Lestrange)
『大いなる遺産』(2012)
原題:GREAT EXPECTATIONS
役名:ミス・ハヴィシャム(Miss Havisham)
『ダークシャドウ』(2012)
原題:DARK SHADOW
役名:ジュリア・ホフマン博士(Dr. Julia Hoffman)
治療(仮)(2012)
原題:A THERAPY
役名:患者(Patient)
『レミゼラブル』(2012)
原題:LES MISÉRABLES(2012)
役名:テナルディエ夫人(Mme. Thénardier)
THE LONE RANGER(2013)
Red Harrington
『天才スピヴィット』(2013)
原題:THE YOUNG AND PRODIGIOUS T.S. SPIVET
役名:クレア博士(Dr. Clair)
バートンとテイラー(仮)(2013)
原題:BURTON AND TAYLOR
役名:エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)
『MI5:世界を敵にしたスパイ』(2014)
原題:SALTING THE BATTLEFIELD
役名:マーゴット・ティレル(Margot Tyrrell)
『MI5:灼熱のコンスパイラシー』(2014)
原題:TURKS & CAICOS
役名:マーゴット・ティレル(Margot Tyrrell)
行動規範(仮)(2015)
原題:CODES OF CONDUST
役名:エスター・カウフマン(Esther Kaufmann)
『シンデレラ』(2015)
原文:CINDERELLA
役名:フェアリーゴッドマザー(The Fairy Godmother)
『未来を花束にして』(2015)
原題:SUFFRAGETTE
役名:イーディス・エリン(Edith Ellyn)
『鏡の国のアリス』(2016)
原題:ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS
役名:赤の女王/クリムのアイラセベス(Red Queen/Iracebeth of Crims)
愛するニーナへ(仮)(2016)
原題:LOVE,NINA
役名:ジョージ(George)
『THE CROWN』(2016)
原題:THE CROWN
役名:マーガレット王女(Princess Margaret,Countess of Snowdon)
『権利への階段』(2017)
原題:55 STEPS
役名:エレノア・リーゼ(Eleanor Riese)
『オーシャンズ8』(2018)
原題:OCEAN’S 8
役名:ローズ・ワイル(Rose Weil)
『エノーラ・ホームズの事件簿』(2020, part 2 is in 2022)
原題:ENOLA HOLMES(2)
役名:ユードリア・ホームズ(Eudoria Holmes)
掃除人(仮)(2021)
原題:THE CLEANER
役名:シーラ(Sheila)
ノリー(仮)(2022)
原題:NOLLY
役名:ノエル・ゴードン(Noele Gordon)
たが生命(仮)(2024公開予定)
原題:ONE LIFE
役名:バビ・ウィンストン(Babi Winston)
参考
・“Helena Bonham Carter”/Wikipedia
・“List of awards and nominations received by Helena Bonham Carter”/Wikipedia
・“Helena Bonham Carter movies: 12 greatest films ranked from worst to best”/Susan Wloszczyna,Misty Holland,Chris Beachum/May 21,2023
・“Helena Bonham Carter, back in that corset”/BY SAM ADAMS,SPECIAL TO THE TIMES/DEC. 2,2010