う、き、君は?
朱い髪の娘
ケイリッドの魔術の街サリアから北に坂道を登っていった場所にある廃れた教会で腐れ病に苦しみ、蹲っている若い娘。
話しかけても言葉少なめに近づかないでほしいと息も絶え絶えに忠告して来るだけである。ちなみにこの時点では加護が張られているため攻撃しても彼女に攻撃できず、敵対もできない。
どうやら右腕の深傷をどうにかする必要がありそうだ。
無垢金の針
エオニアの沼を彷徨う嘗ての宿将オニールが落とす、折れた「無垢金の針」というアイテムを、魔術街サリア近くのボロ屋に座っている賢者ゴーリーに渡し、修復してもらう事で彼女を癒すことが出来る。
右腕を失ったものの、普段通りに会話できる程に回復した彼女は、針のお礼にタリスマン、「義手剣士の伝承」を渡してくる。
これは技量を上げる恩恵があるため、技量剣士を目指す褪せ人ならば貰っておいて損はないだろう。
その後は旅に出ると言って、別れを告げると何処かへと去っていった。
戦乙女の義手
物語の中盤に差し掛かる頃に辿り着くアルター高原で偶然再会することになるが、失くした右腕のせいで思うように武器を振るえず、自分を助けてくれた主人公の助けになれないことを歯痒く思っていると言う。
思う所があるのならば、彼女の右腕を用立ててみても良いだろう。
アルター高原の奥まった場所には「日陰城」と言う女神マレニアと縁が深い要塞がある。城主マレーマレーが秘匿し続けていた「戦乙女の義手」は、その精巧さ故に肉の腕と寸分違わぬ動きをすると言われ、彼女にピッタリだろう。
何故か嘗てケイリッドを征戦したマレニアの足取りを追っており、右腕を受け取った彼女は感謝と共に再び、女神がいると言う黄金樹のその先へと旅立っていった。
この後の展開によっては、ドミヌラという何処かで見たような村で、彼女と再び会うことが出来るが、その頃になると、右腕の義手はかなり様になっている。
ちょうどかの女神を思わせる程に。
聖樹の地
物語も終わりを迎える頃に、行き着くことになる雪深い巨人たちの山嶺。その更に雪深い場所で再び出会うことになるが、彼女の方はここで再会したことに驚いているようである。
どうやら彼女の旅も終わりが見え始めているようで、マレニアが今この地の先にある「聖樹」と呼ばれる場所にいる事までは突き止めていた。
その後彼女の話から、ここから北にあるソール城砦で「聖樹の秘割符」を入手。これをこの地を訪れるために使った「ロルドの大昇降機」で翳すことで、聖樹の地へと至る道が開かれることになる。
聖樹の地こと「ミケラの聖樹」は、物語に深く関わらない一種の隠しダンジョンとなっているせいなのか、その地を守る兵の強さは他の比ではなく、生半な備えではマレニアに会う所か、非常に手痛い門前払いを食らうことになる。
とはいえ、なんとかそれを突破し、命辛々「祈祷室」にある祝福に駆け込んだ時、彼女と最後の再会を果たすことになる。
聖樹の支え、エブレフェール
祈祷室で再会した彼女は、この頃になると最早この出会いに運命じみた何かを感じ始めたらしく、自らの目的、その真意を語ってくれる。
曰く彼女とマレニアは、近親の繋がりがあるのだという。それも親戚という遠い物ではなく、もっと近しい、言うなれば母と娘、あるいはそれに類似した物なのだという。
彼女自身もそれらのいずれかに当てはまるのかは詳らかには分からない物の、確かに彼女とマレニアには決して遠くない関わりがあるのだと確信している。
そして、わざわざこの地まで訪れたのには、女神にかつてケイリッドで堕とした「ある物」を返したいからだというのだが、もしその気があるのならば、彼女の願いの、その助けをしてみても良いかもしれない。
まずは聖樹を更に奥へ進み、朱い液体を垂れ流す排水路を下って行こう。その行き着く先にはエオニア程ではない物のかなりの規模の沼が存在する。
複雑に絡まった聖樹の根を、落ちないように慎重に降りていくと、その中心に朱い沼の影響を受けた「爛れた樹霊」が待ち構えている。
彼女の願いを叶えたいのならば、倒すことは必須。蛇のように畝り予想しづらい動きをし、それが巨体となって素早く動き回る強敵であり、迂闊に沼にも入ることも出来ないため、苦戦を強いられることは必至である。
事前に霊薬の調合や「石鹸」の準備をしよう。焦らなければ、他で戦った樹霊とほぼ変わらないため、ここまで戦ってきた褪せ人ならば対処は可能である。冷静にいこう。
選択の時
樹霊を倒すと、その付近の足場に黄金と赤の、両方のサインが出現する。
ここに来て彼女と協力するか、それとも敵対するかを選択することになるのだが、彼女の願いのその先を見届けたいのならば、迷わず協力を選択しよう。
黄金のサインにふれ、彼女の世界に入ると、ミリセントの姉妹たちが彼女に襲いかかっている。ミリセント本人も非常に強く、彼女一人でもどうにかなるのだが、確率の妙によっては押し切られることもある。
非常に素早い強敵であるが、体力面ではそれ程でもないのが幸いか。
姉妹たちを排除すると「腐敗翼剣の徽章」を手に入る。攻撃が連続する程に、攻撃力が高まっていく効果を持ち、ロールプレイ上連撃を繰り出す機会が多い「技量剣士」にぴったりなタリスマンと言えるだろう。
戦いを終え、再び自分の世界に帰還すると、彼女は戦っていた場所に蹲っている。
実はこの時彼女は蠢く腐敗を抑えていた無垢金の針を抜いてしまっている。そしてこの針を用立ててくれた褪せ人にこの針を修復した人物にこう伝えて欲しいと、伝言を託す。
私は、私でない何かとして咲くくらいなら
私は、私のまま腐りゆくことを選ぶ
共に戦い、そしてずっと助けてくれたを褪せ人に感謝の言葉を残すと、最期の頼みとして自分から離れてほしいと言う。
彼女の内に蠢く腐敗は今や抑えることが出来ない程に激しく隆起しているという。悍ましく腐り果てるその呪いが褪せ人を傷つけないように...。
その意を汲み取り、この場を離れた後、再びここに訪れると、彼女の遺体からテキストの変わった無垢金の針を入手することができる。
...私は、マレニアに返したいのだ
かつて彼女のものだった意志を
朱い腐敗の呼び声に、人として抗う矜持を
こうして、彼女の長い物語は幕を閉じることになった。
その正体
彼女の正体は、誤解を承知で言うとマレニアのクローンである。
ケイリッドに征戦に訪れたマレニアは、将軍ラダーンに追い詰められてしまい、戦いに終止符を打つために、内にずっと秘めていた「腐敗」を開放したのだという。
これによってラダーンはかつての徳と誉を失う程に蝕まれ、荒れ果てた砂丘を彷徨うことになったが、彼女の方も無傷ではいられなかったらしく、そのまま意識不明の重体に陥ったマレニアを担いで部下たちは急いで北の聖樹の地へと帰還したという。
しかしその時の腐敗はケイリッドを蝕み続け、特に両者が相討ったエオニアの地には真っ赤に広がる大きな沼が現れた。
「朱い腐敗」。それは尋常の生物の体を酷く蝕む劇毒であるが、しかしその本質は誕生と腐敗を繰り返す歪なメビウスの輪である。
そしてエオニアの沼は言わば「生命のスープ」のような物であり、多くの生物がここから誕生し、ケイリッドに広がっていった。
ミリセントもその一人であり、彼女とその三人の姉妹は沼に浮かび上がった所を賢者ゴーリーに見出され、彼に育てられたのだという。
ただ、彼女たちは同族たちとは違い、人の姿をし、そして内に「朱い腐敗」を秘めた言わばマレニアと同一の形質を備えていた。
彼女とは何度か遭遇する機会があるので、折に触れて観察してみるといいだろう。顔には特徴的なアザがあり、それは後に遭遇する女神マレニアの面影を感じさせる物がある。
そしてそれ以上に彼女はマレニアの意識を強く引き継いでいた。
それは腐敗の女神ではなく、内に蠢く腐敗に抗おうとした一人の意思ある人間としてのマレニアである。
言わばマレニアの良心。それを受け継いだのが、彼女だった訳である。
ゴーリー
大量の偶像を描いた布切れ
その偶像は信徒を模している
形なき物を頑なに信じ、祈る様は
孤独な教祖にすら勇気を与える
信仰とはつまり肯定であろう
〜「集う信徒の宣布」より〜
表面上を追っていくと、この物語は一人の女性の覚悟とその最期を見届けるただ一人の友人の美しくも儚い友情物語の様を呈するが、しかしここに一人の老人の存在を加えると、異なる物語が浮かび上がってくる。
ミリセントの病状を治す、無垢金の針を仕立てくれたゴーリーであるが、もし彼に斬りかかると、その正体が露見することになる。
それはケイリッドの地を彷徨く「腐敗の眷属」と呼ばれるゲジゲジと人を足して、割ったような姿をした異形の知的種族であり、エオニアに朱い腐敗を齎した女神マレニアがその生誕に深く関わっている。
どうも「ゴーリー」と言う人の姿は、彼らが人間に接触する際に共通して使う「隠れ蓑」のような物らしく、彼を殺しても次に異なる蟲がその皮を被る事になる。
ある意味不死というべきその正体は、よく見てみれば彼の座り方がどこかおかしいこと、人間にとって終末の如きケイリッドにありながらどこか無関心そうな様子等、伏線はこの時からある程度は示されている。
ゴーリーの願いは詰まるところ彼ら沼地の子供であり、母マレニアに思慕を抱く蟲たちの総意である。
もし、そのことを知って尚彼らに協力するという道を選ぶのならば、物語は素朴な友情物語から種族全体の願いを叶える複雑な宗教物語へと変貌する。
腐敗の眷属たちは、ケイリッドだけに限らず「狭間の地」の各地にその姿を隠しているらしく、彼らの目は常にミリセント一人の動向に向けられている。
ただボロ家に座っているにもかかわらず、異様にゴーリーが彼女の旅路に詳しかったのもこうしたカラクリがあったようだ。
その後ミリセントが聖樹まで至ると、それを察し、ボロ屋を訪れた褪せ人に最後の願いを頼んでくる。
それは彼女の「殺害」である。
彼らは腐敗をケイリッドに齎した「朱い腐敗」、その真っ赤な花の開花を望んでおり、未だに蕾であるミリセントを、その状態まで持っていくことを強く望んでいる。
彼らはマレニアに棄てられたのだという。この事は、ミリセントに協力し、彼女の最期を見届けた後に彼のボロ屋を訪れた時に聞くことが出来る。
...ミリセント。
...マレニア様。
...そんなにも我らがお嫌いですか?...
「母」が我らを捨てたのならば、もう一人の代わりを用立てよう。
ミリセントとその姉妹たちを育てたのは、そうした思惑があったようである。
彼らに協力して一人の娘を犠牲に、種族の大願を果たすか、それでも彼女の意志を尊重し、最期まで友情を優先するかは他ならぬ「貴方」に委ねられている。
素晴らしき裏切りの絶望により
蕾たる彼女は、色めく花となった
そして、いつか再誕するだろう
美しき、赤い戦乙女となって
〜「ミリセントの義手」より〜
余談
・彼女の遺体から手に入る針は、マレニアを撃破した後に現れる朱い「マレニアの花」に返すことで、「ミケラの針」として返ってくる。
これは、「狂い火」と呼ばれる状態を抑えるために必要なキーアイテムであり、後味の悪い「狂い火の王」の結末迎えることなく、他の結末を選ぶことが出来る。
ただし、これはある場所で使用しなくては効果がないのだが...。
・一連のクエストには元ネタになったと思わしき話がある。
「蟲の神」という絵本がそれである。
これはアメリカで発行された絵本なのだが、幼い「ミリセント」という少女が、人間ぐらいはありそうな「蟲」たちに攫われ、彼らの「神」の生贄にされるという話が、淡々とした短い英文と寒々としたモノクロのペン画で描かれている。
登場人物や話の運びなどかなりの部分でオマージュと取れる類似性があり、しかも極め付けは作者の名前である。
恐らく賢者ゴーリーの名前は氏から取ったのであろう。
もし気になったのならば、現在日本では英文学を中心に翻訳されている柴田元幸氏が訳したシリーズが好評発売中である。
下にAmazonのリンクを貼っておくので、興味があれば覗いてみてほしい。
・ミリセントのクエストを進める以上必ず訪れなくてはならない「典礼街オルディナ」と言う街は、聖樹へと続く道を魔術で隠している。
その封印を解くためには、それぞれ各所にある四つの像に灯に明かりを点けなくてはならないが、はっきり言うとここは下手なレガシーダンジョンよりも遥かに難しい。
一見すると静謐なこの街には、街路には見えない暗殺者が犬のように彷徨き、屋根には高精度なスナイプをかまして来る射手がこちらをうかがっている危険地帯である。
この二つの卑劣な敵の攻撃を掻い潜ることが求められるが、気分は最早スパイ映画の主人公である。
見る分は楽しいが、やっている側はそうではない事を思い知らせてくる点では良ステージと言えるだろう。
一応抜け道がないわけでもなく、動画サイトにはそうした動画がたくさんアップされている。詰まった時には参考にしてみるといいだろう。
・義手を渡す前のミリセントは左手に剣を持っているのだが、この状態で敵対し、盾受けなどによって体勢を崩されると、存在しない右腕による致命攻撃を繰り出してくる。
モーションやダメージ量の少なさ(それなりの装備をつけていれば数ミリ減るか減らないか程度の威力)から、内部処理としては見えないだけで素手の右腕が存在しているものと考えられる。何もない虚空に貫かれて盛大に血を吹き出すプレイヤーキャラは中々にシュール。敵対しても殺害しなければ結びの教会で敵対解除が出来るため、興味がある人は試してみるのも一興。
関連タグ
ヒガンバナ...彼女を裏切ると、後にその場所には朱い見事な花が咲くことになる。それはどこか現実世界において死を象徴するヒガンバナを思わせる。
この花に雌雄の別はなく、根から新しい茎が生える株分け、つまりクローンを作ることによって繁殖していくが、それは不思議なことにマレニアとミリセントとの関係によく似ている。