「宝物庫の鍵を開けてやろう──」
概説
英雄王・ギルガメッシュが「王の財宝」に秘蔵する、バビロニア神話の知恵の神・エアの名を冠する剣。
しかしながら本来は無銘であり、ギルガメッシュが便宜上このように名付けているだけである。
あらゆる財宝の中で、ほとんど唯一贋作や派生した武器の存在しない、正真正銘ギルガメッシュだけの宝具。
よってこれを抜かせるということは、少なからずギルガメッシュが本気を見せるという意味を持つ。
その威力も、セイバーのエクスカリバーと互角、又はそれ以上とされており、『stay night』の時点からどんどん設定が付随されていった結果、その特異さ、強さは確固たるものとなっている。
「剣」とはいうがその形状は独特で、赤い光を放つ文様を備えた三つの円筒が連なるランスのような形状をしている。三つの円筒はそれぞれ「天」「地」「冥界」を表し、合わせて「宇宙」を体現する。
当人曰く「神造兵装」。
そもそもにして、この剣は「剣」という概念が誕生する以前から存在するため、剣のような見た目こそしているが、これ自体は真っ当に剣と言える代物ではない。それどころか武器でさえない。本質的にいうと剣というよりも「杖」に近い代物だとか。
このため、同じ神造兵装の「約束された勝利の剣」をも不完全とはいえ模倣した「無限の剣製」ですらも、この剣の投影はおろか解析さえ不可能である。
呼び出しには宝物庫の鍵となる剣(王律鍵バヴ=イル)を召喚し、起動することで宝物庫の最奥に封印されたエアを取り出す必要がある。
宝具の真名解放によって真価を発揮するため、本来はこちらの宝具の真名は解放時の名称が妥当と考えるべきだろう。
真名を解放せずとも、空間を捻じ曲げて暴風を起こすことが可能。
その威力は凄まじく、『Fate/stay night』の「UBWルート」では、先に「王の財宝」で射出した武器のうち、剣3本を巻き込んで粉々に吹き飛ばしている。
起動中は刀身である円筒がそれぞれ回転し、この回転によって空間をかき回して時空流を発生させる。
尚、この暴風により、エア使用時には宝物庫は使用できない他、発動にはある程度のタメが必要であるため、エアの使用時には前後で隙が生まれやすい。
真名解放によって最大出力を発揮し、三層の強大な力場を発生させる。
真名解放時の分類が「対界宝具」に分類されるように、これは世界に対して効果を発揮し、空間を引き裂き、あらゆる事象を粉砕せしめる。その力は数ある宝具でも、一つの頂点に君臨するとさえいわれる。
ギルガメッシュはこの剣を「真実を識るもの」と表現する。
曰く、「天地開闢以前、星があらゆる生命の存在を許さなかった原初の姿、地獄そのもの。それは語り継がれる記憶には無いが、遺伝子に刻まれている」という。
真名解放により、エアは“原初の地獄”を顕現させる。
『Fate/EXTRA-CCC』でも攻撃スキルとして登場する。
相手に筋力依存のダメージを与え、防御貫通の特性を秘めている。
元ネタ考察
元ネタは古代ヒッタイトの神話において、エアの宝物庫に存在する天地を乖離させたという剣。エアはこれの一撃を持って岩の巨人ウルリクムミの足を砕いて殺したという。
また、回転する剣という意味ではマルドゥクの使うリットゥという武器があり、エアの力を借りつつ、この剣を手にティアマトを倒し、天地を開闢したという。一説ではリットゥは炎を纏った剣で、これが地獄で罪人を焼き尽くす天使ウリエルの焔の剣の原典になったという。どこか『原初の地獄の再現』という特徴を連想させる逸話である。