ハハッ、見ろ!人がゴミのようだ!!ハッハッハッハッハッハッ!!
解説
この例えにはムスカの冷酷非情な本性が凝縮されている。この素晴らしいほどわかりやすい直喩を用いて人がゴミのようであることを表している。
宮崎駿は絵コンテで、「テレビゲームに夢中の男」(絵コンテISBN-13:978-4198613778 613頁)と記している(宮崎駿はテレビゲーム嫌い)。
経緯
ラピュタの制御装置を発見したムスカは遂に本性を露わにし、モウロ将軍や大勢の兵士達を空中に放り出して始末する。
辛うじて飛行戦艦ゴリアテに逃げ帰った兵は一矢報いようと、ゴリアテの重火砲でラピュタ目がけて砲撃してくるが、ラピュタには傷一つつけられない。
ムスカはその様子を見て「ハッハッハ、私と戦うつもりか!?」と冷笑しながらロボット兵の大群を出撃させた。
ロボット兵の攻撃に手も足も出ず、たちまち炎に包まれ墜落してゆくゴリアテ。
その酸鼻極まる光景から目を背けるシータに対し、ラピュタの底知れぬ力に酔いしれるムスカは「素晴らしい!最高のショーだと思わんかね?」とご満悦。
そればかりか、大破したゴリアテの艦底から無数の兵士達が落下してゆくのを「ほう?」と見たムスカは、興奮しきった表情で「ハハッ、見ろ!人がゴミのようだぁ!ハッハッハッハッハッハッ!」と楽しそうに高笑いするのだった。
尚この数分後(劇中ではもう少し時間が経っているとは思われるが、いずれにしろ短時間)、ムスカもまた「ゴミのようだ!!」と嘲笑った兵士達とほぼ同じ最期を遂げることとなった。
彼は"テレビゲームのプレイヤー"という「絶対的な安全圏から見下ろせる存在」などではなかったのだ。
「ゲーム」に夢中になって高揚する余り、大きな油断と隙が生まれたことが結果的に彼の命取りになった。その意味でもムスカの絶頂と「転落」の始まりを象徴する言葉とも言える。
余談1
展開として観ると、この台詞の直後に縄をほどくことに成功したシータに不意を突かれる形で飛行石を奪われて逃走され(この時ムスカは「何をする!」と叫んでシータを殴り飛ばしている。シータがムスカに飛び掛かって飛行石を奪う場面はシータの背中越しでしか描かれていないため、具体的には不明だが、逃走したシータに歯ぎしりしながらムスカが手を抑えているため、シータから噛みつきなどの奇襲を受け、思わず飛行石を手離したのだと思われる)、それが最終的に彼の破滅に繋がっていく。
余談2
ただムスカがこの展開に至る直前に、モウロ将軍や兵士達が土足でラピュタの内部にずかずかと踏み入り、欲望のままに財宝を根こそぎ略奪しようとする様子を見ている。ラピュタの真髄は超科学による軍事要塞だと考えていたムスカは「馬鹿共にはちょうどいい目眩ましだ」と吐き捨てていたものの、ラピュタの一族の関係者でもない地上人にラピュタを荒らし回られ、祖先の財宝を略奪されるというのは、ラピュタ王族の末裔としてはやはり腹に据えかねる物はあったのかも知れない。
ラピュタの雷をわざわざ特等席で見せたのは、「お前達地上人では勝ち目がないから降伏しろ」という、彼なりの最後通牒だったのだろう。
「SPY×FAMILY」にて
このセリフは後にSPY×FAMILYで、アーニャ・フォージャーのセリフとしてパロディされている。
「両親」と共に劇場や美術館などをひと通り巡った後、町を一望できる公園へと足を運び、その素晴らしい景観を前にアーニャが発した第一声こそ、
「わぁ~… ひとがゴミのようだ」。
それを聞いたロイドがすかさず「どこで覚えた?」と尋ねると、アーニャは「アニメ」と答えていたのだが、そのアニメが何かは謎。