君たち女神を信じるかい?ニケの女神。その女神が狙われている…
ゲンよ、一刻も早く探し出せ!女神を守るのだ!
北海道の原野に繰り広げられる壮大なスリルとアクション!
さぁ、みんなで見よう「ウルトラマンレオ」!!
放送日
1974年8月30日
登場怪獣
アルファ星人ニケの女神
殺し屋宇宙人ノースサタン
STORY
明け方、聖火台の下に立つひとりの女性。彼女は表情ひとつ変える事なく、燃える炎を真っ直ぐに見つめていた。
(場面転換)
宇宙空間を飛ぶ、赤い塊のような光る物体。
ナレーション「正体不明の宇宙船が、高速に近いスピードで日本列島に向け接近しているとの連絡が第四宇宙ステーションから入った。MACは緊急配備についた。モロボシ隊長の命令により、おおとり隊員は北海道のパトロールに出動した。そして、マッキー2号にはもう1人、北海道出身の北山隊員が乗っていた」
機内にて、北山に話しかけるゲン。
ゲン「北山さんはたしか、この間の…オーロラ国際スキー大会で優勝したんですよね?」
北山「うん。間もなく、俺には決して忘れることのできない手稲山が見えてくるぞ」
ゲン「そうですか…!」
北山とすっかり打ち解け、楽しげな様子のゲン。ダンの通信により、その近くに宇宙船が着陸すると知らされる。すると、北山が例の宇宙船を発見した。
宇宙船は聖火台の方を旋回し、それを見てあの女性が笑顔で手を振る。そして近くの平野に着陸しようとしたその時、怪しいうめき声が鳴り響き、巨大な宇宙人が姿を現した!
女性の顔が一瞬にして曇る。宇宙人は宇宙船に狙いを定め、口から煙と共に大量の含み針を発射。宇宙船は炎上しながら近くの山に墜落し、爆発してしまう。
嘆く女性。一方のマッキー2号では、ゲンが宇宙人の同士討ちだと推測し、巨大な宇宙人へ接近。宇宙人はマッキー2号を捕まえようとするが避けられ、悔しげに近くの山を蹴飛ばす。すると、今度は聖火台の女性を標的に進撃。一瞬女性を見失うもののすぐまた見つけ、邪魔なロープウェイを含み針で破壊した。大急ぎで逃げるあまり転びながらも走り続ける女性。マッキー2号の2人も彼女の姿を認め、着陸して助けに行く。
宇宙人は次々と含み針を撃ち出し、やがて2人がその場に駆けつけるものの、針の一本が女性の服に突き刺さり抜けなくなってしまう。
すると北山は彼女の姿に、「ニケの女神」と呟く。ゲンがマックガンで宇宙人と応戦する中、北山は女性の針を抜いて救出。
ニケの女神「あなたは、あの時の北山さん…」
北山「さぁ、早く逃げるんだ!」
ニケの女神「でも…」
北山「後は僕に任してくれ!」
2人は顔見知りらしかった。北山もマックガンで宇宙人を攻撃するが、なんと含み針が北山の右脚に命中し、倒れてしまう。北山を守るべくゲンはより激しくマックガンを発射し、大量の弾丸を食らった宇宙人は紫の煙と共に退却した。
ゲンが北山を助け起こしていると、そこへ「ニケの女神」なる女性が戻って来た。
ニケの女神「北山さん…!」
北山「ニケの…女神…」
ゲン「ニケの女神…?」
そこで北山は気を失ってしまう。ゲンが揺り起こしても北山は目を覚まさない。そしてゲンが再びニケの女神を見てみると、彼女の目が青く光って見えた。
ゲン「君は、宇宙人…」
それを聞いたニケの女神は、ゲンが呼び止めるのも聞かず去っていった…
(場面転換)
海岸にてダンに叱責され、杖で殴られるゲン。
ダン「なんという不手際だ!その女が宇宙人と分かりながら、何故逃がしてしまったんだ」
ゲン「しかし、北山さんが重体だったんです…!」
ダン「言い訳などいらん!何故逃がしてしまったんだ…その宇宙人を逃がしたために、もっと大きな被害が出るかも知れん!」
ゲン「それは大丈夫です!彼女は被害者です」
ダン「馬鹿!考えてもみろ、ノースサタンは宇宙人を狙っているんだ!宇宙人のいる限りノースサタンは現れる…その女のいる場所は皆危険だ!私はそれを心配しているんだ…それを防ぐのが、ゲン…私とお前の役目だ」
ゲン「はい!」
ダン「いいか?次の被害者が出ない内に、彼女を探し出すんだ!」
ダンはその場を去る。しかし、残されたゲンは途方に暮れてしまった。
ゲン(宇宙人を探せと言われても、一体この広い北海道を、どうやって探したらいいんだ…?)
かの有名な時計台の前で考え込むゲン。各地を歩き回ってみるが、ニケの女神の行方は掴めない。ふと、「ニケの像」という建造物の前で歩みを止めたゲンは、あの時の北山の言葉を思い出し、斗南病院へ見舞いに赴く。
ゲン「北山さん、容態は如何ですか」
北山「うん…大分気分はいいが、手術をしなくてはならないそうだ」
ゲン「手術を?」
北山「あと三時間後に、右足を切断しなければならないかも知れん」
ゲン「えっ…」
北山「おおとり、もう、スキーもできなくなってしまうかも知れん…その前に、たった一つ…五体満足のうちに、俺の頼みを聞いてくれんか」
強く頷くゲン。北山は続ける。
北山「ありがとう…実は、会いたい人が、一人いるんだ」
ゲン「ニケの女神ですね…」
北山「あぁ…俺にとって、まるで夢のような出来事だった…本当にそんな出来事があったのかどうかさえ、信じられないような…俺は、オーロラ国際スキー大会に行くため、船に乗っていた…」
(場面転換)
船の上で、美しい女性を見つける北山。それに見惚れていると…
謎の宇宙人が姿を現し、女性に襲いかかる。首を絞められ、海に落とされかける女性だったが、間一髪で北山が彼女を救った。宇宙人は北山に含み針を放つが、北山は軽いフットワークで右に左に躱す。全ての含み針を回避し、宇宙人と格闘、そして投げ飛ばす。宇宙人は海へ消えた。戦いを終えた北山に、女性が近付き、首飾りを外す。
女性「ありがとうございました…お礼に、これを受け取ってください」
北山「いやぁ、とんでもない。僕はただ…」
女性「いえ、どうしても受け取ってください。あなたは、私の命の恩人です。勝利の女神像ですわ…それを持っている人は、必ず勝利の栄光に翼すると言われています」
北山「僕はこれから、オーロラ国際スキー大会に行くんです」
女性「あなたはきっと優勝致しますわ…」
北山「僕が?」
女性「自信を持ってください、北山さん」
北山「えっ、どうして僕の名を?あなたは、一体誰なんですか」
女性「ニケの女神です…」
北山「ニケの女神…?」
そして辺りに霧がかかり、晴れた頃には彼女の姿は消えていた。
驚く北山だが、彼の手には勝利の女神像が…
(場面転換)
北山「俺は夢だと思った…しかし俺の手には、このペンダントがあったんだ…!そして、彼女の預言通り優勝できたんだ…俺はどうしても、彼女の正体を知りたい!たとえ彼女が、人間でなくてもいいんだ…俺は彼女がここに来てくれたら、この手術も成功するに違いないと信じてるんだ…」
ゲン「北山さん、彼女の姿を見たのは、聖火台の所でしたね…」
北山「うん…」
病院にてその言葉を聞いたゲンは、突然ハッとする…
(場面転換)
マックカーで聖火台へ向かうゲン。そこには、確かにあのニケの女神が立っていた。ゲンは車を降り、彼女の名を呼ぶが、ゲンの顔を見たニケの女神は逃走。ゲンも後を追う。
(Aパート終了)
林を下るニケの女神と、それを追うゲン。転んだニケの女神にゲンは追いつくが、ニケの女神は木に寄りかかってゲンを警戒する。
ゲン「逃げないでくれ!」
ニケの女神「あたしの事を宇宙人だと知っているあなたは、サタンの仲間ね」
ゲン「違う!僕は…ウルトラマンレオだ!」
ニケの女神「ウルトラマンレオ…?」
ゲン「そうだ!お願いだから聞いてくれ、北山さんの…伝言を持って来たんだ!」
ニケの女神「北山さんの?北山さんは無事なのね!」
ゲン「…しかし、二度とスキーを履けなくなるかも知れない…君を助けようとして、彼は右足を傷つけてしまったんだ…手術の前に会ってやってくれ!」
ニケの女神「北山さん…!」
ニケの女神は目を閉じ、あの時の事を思い出す。他の参加者が次々脱落する中、見事なテクニックでゴールを決めた、北山の姿を。
ナレーション「オーロラ国際スキー大会で、北山は優勝した」
やがて目を開いたニケの女神は、木に縋り付く。
ニケの女神「あたしだって、2度も命を救ってくれた北山さんにお礼がしたい…!でも、あたしにはそれが出来ない…!あたしは、人間じゃないのよ…地球では、アルファ星に住むあたし達の事を、ニケの女神と呼んでいるわ…あたし達の星では、四年毎に誰かが地球を訪れ、人類の幸福を祝福する事になっていたの…それが、悪いノースサタン星人に邪魔されて…!」
ゲン「君が帰ろうとしていた、宇宙船を壊してしまったのか」
ニケの女神「もう、私は自分の星に帰ることはできない…」
ゲン「だったら北山さんに会ってやってくれ!北山さんは…君に会えたら手術が成功すると、信じているんだ!」
ニケの女神「私には、とてもそんな力はないわ」
ゲン「何を言っているんだ!北山さんは、もうスキーが出来なくなるかも知れないんだぜ…今の北山さんに必要なのは、君なんだ…!」
ニケの女神「でも、あたしが行って迷惑な事が…」
ゲン「今一番大切な事は、君と北山さんが、会う事なんだ…!」
(場面転換)
ゲンの熱心な説得により、ニケの女神は斗南病院を訪れ、北山と再会。
北山「…ありがとう」
待ち望んだ出会いに、北山は彼女の手を強く握る。しかし、病室に飾ってあった花が大きく揺れ、地鳴りの音が響く。外で待機していたゲンは、怪獣が出たと助けを求める声を聞き、暴れるノースサタンを目撃。
ゲン「しまった!ノースサタンに彼女の居場所が分かってしまったんだ」
一方病室では、ノースサタンの接近を悟り、北山を巻き込むまいと部屋を出て行こうとするニケの女神を、北山が引き止めていた。
北山「待ってくれ!行かないでくれ…」
ニケの女神「止めないで下さい…!あたしがいたら、ノースサタンはここを襲って来ます!北山さん、許して…あたしはアルファ星から来た宇宙人なんです…!」
北山「そんな…!」
ニケの女神「ノースサタンは私を狙ってるんです!」
北山「そんな事は問題じゃない、僕には君が必要なんだ…!」
ニケの女神「北山さん、手術の成功をお祈りします…!」
北山「ニケの女神…!」
恩人を自分の巻き添えにして死なせたくないニケの女神は、病院を飛び出してノースサタンの方へ向かっていく。ゲンは彼女を止めようとするが、そんな彼を止める声が。それはダンであった。
ダン「ゲン!貴様一体何をしたんだ」
ゲン「隊長!」
ダン「私があれ程言ったのに…彼女が現れる所に、怪獣が現れる事は分かっていた筈だ!」
ゲン「しかし僕には、会いたがってる北山さんと、彼女の気持ちを無視する事はできません!」
ダン「馬鹿!!」
ニケの女神は駐車場の中心で両手を上げ、ノースサタンに身を捧げる。
ゲン「彼女は…北山さんを助けようと、命懸けなんです!僕には…黙って見てられません!」
ダン「止めろ、レオにはなるな…!」
しかしゲンはダンの手を振り払い、レオへと変身。ノースサタンへ立ち向かう。
ダン「ゲン!!」
ゲン「レオーッ!!」
ノースサタンを蹴り飛ばし、投げ飛ばすレオ。しかし不安げに見守るダンの危惧した通り、ノースサタンはそう生優しい敵ではなかった。ノースサタンの吐き出す含み針が何発もレオに突き刺さり、体中を蜂の巣にされたレオは激痛に悶え苦しむ。ノースサタンはそんなレオを嘲笑うかのように、勝ち誇って紫の煙をあげ、意気揚々と撤退。レオは星人に何もできぬまま、地面にバッタリと倒れ込むのだった。
(場面転換)
ダンに無策に変身したことを注意されるゲン。
ダン「私の忠告を無視して、お前って奴は…!いいか、嘗て北山があの星人に勝つ事が出来たのには、理由があったんだぞ!彼はスキーの回転競技の優勝者だ、だからあの含み針を躱す事ができたんだ!サタンを倒すには、含み針の攻撃を躱す事だ!」
ゲン「回転競技…!」
そして広い平原に大量の旗を立てて擬似回転競技場を作り、ストップウォッチで時間を測りながら旗を走り抜いていく。ゲンが旗を越える毎に、あらかじめ埋められた時限式の爆弾が起動し、爆発を避けながら突っ走る。
ナレーション「ダンの命令した訓練とは、短時間のうちに右に左に、ステップを踏めるようになるためのものであった」
(場面転換)
ニケの女神はあの聖火台の元へ再び現れ、悲しそうに呟く。
ニケの女神「北山さんのことはもういい…私がここにいる限り、サタンの仲間は次々とやって来るわ…この地球に迷惑はかけることは出来ない…サタンの望み通り、私が死にさえすれば…」
すると雄叫びと共に、ノースサタンが襲来。彼女を捕らえようとする。抵抗せず、覚悟を決めようと彼女が目を閉じた時だった…銃声が鳴り響き、見てみればそこにいたのはダンだった。マックガンを手に、ノースサタンに猛攻をかける。ニケの女神はダンの手を掴み、攻撃を止めるが、行手をダンの杖で阻まれる。
ニケの女神「やめて下さい!私さえいなければ、サタンは帰るんです!」
ダン「待て!命を無駄にするものではない、我々に任せるんだ!」
ニケの女神「いえ、どうせ私は故郷の星に帰れないんです、同じ事です!」
ダン「私を信頼しなさい!!」
すると、遅れてマックカーでゲンが到着。
ゲン「隊長!!」
ダン「ゲン、頼むぞ!」
ゲン「はい!レオーッ!!」
レオが降り立ち、ノースサタンへ勇敢に挑む。何度も頭を殴りつけ、激しく争う。
ニケの女神は手を合わせて祈り、ダンもレオを信じて見守る。
ノースサタンは地面を転がり、起き上がったところをレオに蹴り飛ばされる。山を飛び越えて追うレオに、ノースサタンはご自慢の含み針殺法を使うが、レオは高速の側転やバク転でこれを回避。含み針が打ち込まれた山肌が爆発した。
その後もレオは回避行動を取り続け、流れ弾が木に突き刺さり真っ二つに。地面も槍まみれになり、全くレオに当たらない事にノースサタンは地団駄を踏む程に悔しがる。
そこへレオが前転の勢いをつけてノースサタンの顔面を蹴りつけ、体勢を崩したノースサタンに猛攻。そして見事なストレートパンチで、その土手っ腹を貫いた。
腹に風穴を開けられたノースサタンはたまらず叫び声を上げると、そこから火花を散らしながら回転し、大爆発するのであった。
恐怖の殺し屋は死んだ。安堵するニケの女神の肩にダンが手を当て、更にレオが手を差し伸べる。
ダン「あなたの星まで届けると言ってるんだ」
ニケの女神「まぁ…」
ダン「さぁ、早く」
ニケの女神「ありがとうございます…!」
ニケの女神はレオの掌に乗り、ダンへ手を振る。レオも笑顔のダンに頷き、宇宙へ飛び立った。
(場面転換)
その後、ゲンは北山を乗せたマックカーを走らせ、あのニケの像の前で車を停めた。北山の手術は無事成功したらしく元気そうだったが、別れの言葉を言えなかった彼女を想ってかニケ像を悲しげに見つめる。そして少し見た後、ゲンに語りかける。
北山「…行こうか」
ゲン「はい!」
マックカーはその場を後にする。ニケの像は、太陽の光を背に受けて立派にそびえ立っていた。
余談
北海道ロケ3話目にして、怪奇シリーズ最後の回。
ノースサタンは本作によくある「等身大時に見た目が変わる宇宙人」の一体であり、かつて北山と戦った宇宙人と同一人物なのだが、本編中で明確にノースサタンが二つの姿を切り替える場面はなく、等身大時のノースサタンは回想シーンにしか出てこない。そのため見ようによっては、「たまたま同じ含み針が武器の宇宙人2体が過去と現在で別々にニケの女神を狙った」ようにも見えてしまう。
本作における最後の特訓回でもある。また、ゲンがダンに杖で殴られるのもこの回が最後である。
北山隊員が気を失った事より、ゲンがニケの女神を逃がしてしまった事を叱責してしまうダン。これは本編第14話同様上司として失格としか言いようがない行動をしてしまっているが、次回ではゲンの理由もしっかり理解している。
北山隊員はこの回のみのゲストであり、以降登場しない。MACを辞めてスキー選手をしているのだろうか?