「ドミソ」「レファラ」「シレファ」などのように基本的に音階を1つ飛ばしで3つ以上の音を同時に鳴らす。一番下の音を根音(ルート)と呼び、2番目の音を3rd(サード)、3番目を5th(フィフス)、4番目を7th(セブンス)と呼ぶ。3つの音を鳴らす和音を三和音と呼ぶ。4つの音は四和音と呼ぶ。和音の構成音はオクターブが違っていても同じ音として扱われる。例えば「ドミソ」のソが高いソでも低いソでも同じ和音として扱われる。同じ音が複数入っている場合もある。例えば普通のドと高いドを同時に鳴らすこともある。逆に一部の音を省略することもある。主に5thが省略されることが多い。
※この記事の内容を理解するためには音程の知識が不可欠です。
三和音には日本語の名称がついている。
- 長三和音 ルートから長3度、完全5度の音を鳴らす。明るい和音。ドミソ、ソシレなど。
- 短三和音 ルートから短3度、完全5度の音を鳴らす。暗い和音。レファラ、ラドミなど
- 増三和音 ルートから長3度、増5度の音を鳴らす。ドミソ#など。
- 減三和音 ルートから短3度、減5度の音を鳴らす。シレファなど。
それぞれをメジャー・マイナー・オーグメント・ディミニッシュと呼ぶことがある。
四和音は英語の名称で呼ばれることが多い。日本語の名称がついているものもある。
- メジャーセブンス 長三和音+長7度 長7の和音とも言う。
- セブンス 長三和音+短7度
- マイナーメジャーセブンス 短三和音+長7度
- マイナーセブンス 短三和音+短7度 短7の和音とも言う。
- ディミニッシュセブンス 減三和音+減7度 減7の和音とも言う。
- ハーフディミニッシュ 減三和音+短7度
ディミニッシュは減三和音で演奏されることは少なく、一般的には減7が使われる。
このほかにも、三和音に6thを加えた和音や後述の付加音なども存在する。
7thより上の音を和音に加えること。9th、11th、13thがある。これより上は他の音と重複するため15th以上は存在しない。9thは長9度、11thは完全11度、13thは長6度となる。テンションに♯や♭などの調号が付くこともあり、オルタードテンションと呼ばれる。ただし存在しない調号の組み合わせもある。♭11thは3rdと同じになってしまうので存在しない。♯13thはセブンスと同じになってしまうので存在しない。調号が付いていないテンションをナチュラルテンションと呼ぶ。そのほかにも理論上は存在しうるが使用しないものがあり、以下のようなセオリーがある。
- ♭9thと♯9thが使えるのはセブンスコードのみ。
- 11thはマイナー系のコードで使う。
- #11thはメジャー系のコードで使う。(3rdと11thが短9度となり相性が悪いため)
- 13thはメジャー系のコードで使う。
- 転回
和音の低い音を1オクターブ上に移動させること。例えば「ドミソ」を転回させて「ミソド」にしたりする。ルートを1オクターブ上に持って行ったものを第1転回形、第1転回形から3rdを1オクターブ上に持って行ったものを第2転回形と呼ぶ。高い音から低い音に急に下がったり、逆に急に上がったりするコード進行を多用するのは弾きにくいなどの理由でよくないので、転回させて前後との音程が小さくなるようにすることが必要となる。
- 付加音
三和音に9th、11th、13thを加えること。コードネームはadd。
- 繋留和音
3rdの代わりに4thを用いたコード。コードネームはsus4。非常に不安定な和音なので一時的に使用してすぐに通常の和音に戻ることが多い。
- パワーコード
3rdを省略してルートと5thだけを弾くコード。ロックで用いられる。和音の定義は3つ以上の音を同時に鳴らすことなので厳密には和音ではない。
- アルペジオ
各音を同時に鳴らさず、メロディのように分散させて鳴らすこと。ハープなどの弦楽器をポロロンと一気に奏でるのもアルペジオである。「アルペッジョ」のほうが原語の発音に近い。
- トライトーン
音程が全音三つ分、つまり増4度または減5度のこと。セブンスコードにはこのトライトーンが含まれているため後述のドミナントモーションを起こすことができる。
- クリシェ
和音の構成音のうちの1つが1音ずつ上がっていくまたは下がっていくコード進行。ここでいう1音とは「ソ→ファ→ミ→レ」のような音階単位でも「ソ♯→ソ→ファ♯→ファ」のような半音単位でも可。
- ダイアトニックコード
音階の構成音のみで作った和音。sus4などの特殊な和音を含めるかどうかは定義がはっきりしていない。
- アボイドノート
避けるべき音のこと。和音の構成音の短9度上になる音をメロディで鳴らすと相性が悪いので避けるべき音とされている。もちろん短2度上も同じ扱いとなる。ただし絶対に使ってはいけないわけではなく、あくまでも使い方に注意が必要という程度である。
コードネームは和音を文字や記号で表したものである。コードネームの書き方には以下のような決まりがある。
1.最初にルートの音名を書く。♯や♭は音名の後に書く。
2.3rdを表す記号を書く。短3度ならmを書き、長3度なら何も書かない。減三和音はdim、増三和音はaugと書く。
3.7thを表す記号を書く。短7度なら7、長7度ならM7を書く。dim7の場合は7thも減7度になる。三和音のときは何も書かない。
4.5thを表す記号を書く。減5度なら(-5)または(♭5)、増5度なら(+5)または(♯5)を書く。完全5度なら何も書かない。減三和音と増三和音は先述の書き方もあるので複数の記述法があることになる。
5.テンションを表す記号を書く。
その他の特殊な和音は下の表を参照。
- 根音がC(ド)のときの例
長三和音 | C | ド ミ ソ |
短三和音 | Cm | ド ミ♭ ソ |
減三和音 | Cdim・Cm(-5)・Cm(♭5) | ド ミ♭ ソ♭ |
増三和音 | Caug・C(+5)・C(♯5) | ド ミ ソ♯ |
長三和音+長7度 | CM7 | ド ミ ソ シ |
長三和音+短7度 | C7 | ド ミ ソ シ♭ |
短三和音+長7度 | CmM7 | ド ミ♭ ソ シ |
短三和音+短7度 | Cm7 | ド ミ♭ ソ シ♭ |
減三和音+減7度 | Cdim7 | ド ミ♭ ソ♭ ラ |
減三和音+短7度 | Cm7(-5)・Cm7(♭5) | ド ミ♭ ソ♭ シ♭ |
増三和音+短7度 | Caug7 | ド ミ ソ♯ シ♭ |
長2度+完全5度 | Csus2 | ド レ ソ |
完全4度+完全5度 | Csus4 | ド ファ ソ |
長三和音+長6度 | C6 | ド ミ ソ ラ |
短三和音+長6度 | Cm6 | ド ミ♭ ソ ラ |
長三和音+短7度+長9度 | C7(9) | ド ミ ソ シ♭ レ |
長三和音+長9度 | Cadd9 | ド ミ ソ レ |
ここに挙げたのは一例であり、これ以外の書き方もある。例えばCM7はCmaj7と書くこともある。もともとが簡易的な表記法であるため正式なルールは存在しない。
まずダイアトニックコードにIからVIIの番号を割り当てる。長調の場合はドミソがI、レファラがII(以下略)となる。四和音も同様にドミソシがI、レファラドがII(以下略)となる。短調の場合はラドミがI(以下略)となる。短調は自然的短音階を使う場合と和声的短音階を使う場合がある。この番号をディグリーネームと呼ぶ。ちなみにVの四和音「ソシレファ」には属7という名前がついている。長調のVIIの四和音「シレファラ」には導7という名前がついている。I・IV・Vは主要三和音と呼ばれる。主要三和音というのは「主要な3つの和音」という意味で、構成音が3つという意味ではない。そのため「ドミソシ」「ファラドミ」「ソシレファ」などの四和音も含まれる。主要三和音だけでコード進行を作ることもできるが、それだけだとつまらない曲になってしまうため他のコードも使われる。そのため主要三和音以外のコードは代理コードと呼ばれる。代理コードにはダイアトニックコードでないものも存在する。
長調 | 自然的短音階 | 和声的短音階 | |
I | CM7 ドミソシ | Am7 ラドミソ | AmM7 ラドミソ# |
II | Dm7 レファラド | Bm(-5) シレファラ | Bm(-5) シレファラ |
III | Em7 ミソシレ | CM7 ドミソシ | CM7(+5) ドミソ#シ |
IV | FM7 ファラドミ | Dm7 レファラド | Dm7 レファラド |
V | G7 ソシレファ | Em7 ミソシレ | E7 ミソ#シレ |
VI | Am7 ラドミソ | FM7 ファラドミ | FM7 ファラドミ |
VII | Bm(-5) シレファラ | G7 ソシレファ | G#dim7 ソ#シレファ |
※コードネームはハ長調またはイ短調のときのものです。
ちなみにコードネームはディグリーネームと組み合わせた表記法もある。ルートを表す音名を番号に置き換えるだけである。例えば「ソ シ レ ファ」(属7)はV7、「レ♭ ファ ラ♭ シ」は♭II7と表記することができる。通常のコードネームとは違い、ルート(根音)の♯や♭は最初に書くことがある。
続いてIからVIIの和音を3種類に分類する。
- トニック(T) IとIIIとVI
- サブドミナント(S) IIとIV
- ドミナント(D) VとVII
短調のVIとVIIはサブドミナントとしても使える。
トニックは安定した和音を指し、ドミナントは不安定な和音を指す。サブドミナントは両者の橋渡し的な役割をする。トーク番組に例えるならトニックはぶれない進行役、サブドミナントは自分も目立つ盛り上げ役、ドミナントは大爆笑をとれるボケ役という感じである。
以下の3パターンが基本のコード進行となる。
- トニック→サブドミナント→トニック
- トニック→ドミナント→トニック
- トニック→サブドミナント→ドミナント→トニック
ドミナントからサブドミナントに進むことはできない。同じ分類に進む場合は主要三和音から代理コードに移行する。
V7→Iのコード進行をドミナントモーションと呼ぶ。(他のコード進行も含む場合がある)
もちろんメロディとの相性を考えるのも重要である。例えばメロディが「ファソラ」の部分に「ドミソ」というコードを当てるのはおそらく合わない。基本的にはメロディに使われている音が多く含まれているコードを使ったほうが合いやすい。ただし、あえて合わない和音を使うという手法もある。
属7以外の四和音を副7と呼ぶ。副7の扱い方には注意が必要となる。まず副7の最高音と直前のコードの最高音が同じである必要がある。そして、その音を直後の和音で半音または全音下に移行させる。
コード進行はジャンルによって大きく異なるため、この法則に全く当てはまらないこともよくある。
ブルースではドミナントからサブドミナントに進むことがある。例えばロマンシングサガのジャミルのテーマはこの進行を用いている。
ビートたけしの浅草キッドという曲はドミナントからサブドミナントに進むだけでなくII→IVという相性の悪いコード進行を用いている。
愛をからだに吹きこんでは短調なのに曲のほとんどすべてがメジャーコードである。
ジャズでは四和音が基本でテンションもよく用いられる。
要はジャンルによって出したい雰囲気が異なるのでコード進行の法則が異なると考えられる。
例えばファミリーマート入店音でおなじみのPanasonicメロディーチャイムにコードをつけると次のような感じになる。あくまでも一例であり原曲のコード進行ではない。
- 主要三和音のみを使った例 D D G G A A D ディグリーネームだとI→IV→V→I
- 主要三和音以外も使った例 D D F♯m F♯m Em A7 D ディグリーネームだとI→IIIm→IIm→V7→I
- ダイアトニックコード以外も使った例 D D F♯m F♯m Em E♭7 D ディグリーネームだとI→III→II→♭II7→I
ちなみにコード進行は著作権は存在しない。コード進行はパターンが限られているのでどうしても既存の曲とかぶってしまう。さらにコード進行は曲の要素の一部でしかなく、コード進行のみからメロディを再現することは不可能だからである。ただし、既存の曲のコード進行を公開する場合はこれに当てはまらない恐れがあるので注意が必要。
- サブドミナントマイナー
短調のダイアトニックコードで第6音が使われているものは、同じ主音の長調でも使用できる。これをサブドミナントマイナーと呼ぶ。長調の階名で言うと三和音では「レ ファ ラ♭」「ファ ラ♭ ド」「ラ♭ ド ミ♭」、四和音では「レ ファ ラ♭ ド」「ファ ラ♭ ド ミ♭」「ラ♭ ド ミ♭ ソ」「シ♭ レ ファ ラ♭」となる。通常のサブドミナントからサブドミナントマイナーに移行するのが一般的。
山崎まさよしの「One more time,One more chance」や秦基博の「ひまわりの約束」などに使われている。
- ドリアの6
逆に、短調では同じ主音の長調のIVを使用することができる。短調の階名で言うと「レ ファ♯ ラ」となる。これをドリアの6と呼ぶ。ドリア旋法に由来する。
- 裏コード
V7を♭II7に置き換えることもできる。この♭II7のことを裏コードと呼ぶ。階名で言うと「レ♭ ファ ラ♭ シ」となる。正反対の調で使われる属7であるためこう呼ばれる。
- ナポリの6
短調ではIIのルートを半音下げた和音がサブドミナントとして使える。転回させて使う場合も多い。階名で言うと「レ ファ シ♭」となる。これをナポリの6と呼ぶ。転回するとレとシ♭が短6度となるためこう呼ばれる。裏コードと似ているがこちらはサブドミナントとして使う。
- ピカルディの3
短調の曲をメジャーコードで終わらせることをピカルディの3と呼ぶ。短調の曲が最後だけ同じ主音の長調に転調する。昔のヨーロッパでは暗いまま曲が終わることをよしとしなかったため明るい和音を最後に使った。
パプリカのBメロに使われている。
- セカンダリードミナント
V7→I以外でもドミナントモーションをすることができる。Dmを例にとると、Dmを仮のIと見立てると仮のV7はA7となる。そこでA7→Dmというコード進行ができる。このようにI以外を仮のIと見立ててドミナントモーションを行うことができるコードをセカンダリードミナントという。ただしVIIにはセカンダリードミナントが使えない。Vにかかる仮のV7はドミナントのドミナントなのでダブルドミナントまたはドッペルドミナントと呼ぶ。簡単に言えば完全5度上のセブンスコードを前に置くということである。仮のIに当たるコードの種類は問われない。
「やさしさに包まれたなら」などに使われている。
先述のツーファイブとセカンダリードミナントの合わせ技も可能。仮のII→仮のV→仮のIというコード進行になる。例えばEm→A7→Dmというコード進行ができる。
- パッシングディミニッシュ
ルートが全音差のコードの間にディミニッシュコードを挟み込むことができる。例えばC→Dmの間にC#dimを入れることができる。
- V♯dimとVaug
V7の代わりにV♯dimやVaugを使うこともできる。