概要
映画版:岡田准一
ドラマ版:向井理
作家・百田尚樹氏のデビュー小説『永遠の0』に登場する人物であり、大日本帝国海軍の零式艦上戦闘機パイロットである。現代パートの主要人物である佐伯健太郎と、その姉慶子の実の祖父で、母清子の父親。妻・松乃がいる。
(現在存命の健太郎と慶子の祖父・賢一郎は、清子が生まれてからの祖母・松乃の再婚相手)
健太郎と慶子は、実の祖父は「特攻隊で亡くなった」とだけ聞かされていた。
彼を知る戦友にインタビューし、その足取りを追ううちに、名前しか知らない祖父の意外な面を発見していくというのが物語の主軸となっている。
経歴
元々は囲碁棋士を目指していたが、幼いころに両親を亡くし、15歳で海兵団に入団した。その後、空母赤城の戦闘機パイロットとして真珠湾攻撃に参加し、ミッドウェー海戦での戦いで母艦の赤城を喪失した後は、ラバウル航空隊に配属され一度内地へ帰還。更に後に筑波海軍航空隊で教官を務め、鹿屋海軍航空隊の鹿屋飛行場から特攻隊に志願し、出撃後に米空母タイコンデロガに突入して未帰還となる。享年26。
人物
海軍の戦闘機乗りとしては珍しく、下の物へも丁寧な口調で話す温和な人物で、巧みな操縦技術を持った優秀な航空兵であったが、妻子を案じ「必ず生きて帰る」と公言しており、命を重んじる思考から上官に意見することもあり、中には「臆病者」と称する者も存在した。
その一方で教官としては非常に厳しく、鉄拳制裁こそ行わなかったものの、訓練後の講評では容赦ないダメ出しをするため、しばしば訓練生の反感を買っていた。実際には「半端な状態で戦場に送り出しても無駄死にさせるだけ」という考えから、訓練を長引かせてでも徹底的に技術を教え込もうという弟子思いゆえのやり方であった。
しかし、戦況が逼迫していた当時は、中途半端でもとにかく早く卒業させることが求められていたため、なかなか訓練生を合格させない宮部は、上層部からも問題視されていたという。
毎晩欠かさず鍛錬に努め、機体の整備にも非常に気を遣い、恐ろしく慎重な操縦で、実戦において無謀に撃墜することよりも、撃墜されないことを重要に説いた。
モデル
百田氏は作中に詳しく書いていないが、彼のモデルになったと思われる搭乗員は数多くいるようであり、本作の読者である元零戦搭乗員の笠井智一氏は、架空の人物を描いてはいるものの「宮部のような人物が確かにいた」と話しており、
「戦争で若者が死ぬのは悲しいことです。二度と戦争を起こしてはなりません。ただ、あの時代、若いパイロットたちは皆、日本を、日本人を守りたいという一心だけで命懸けで戦っていたのです。その思いだけは語り伝えたいのです。」
と語っている。
自身も特攻を拒否した経験のある、同じく元搭乗員の原田要氏は、小説を読んだことをきっかけに著者の百田氏と面会し、「この主人公は彼のことではないか」と様々な戦友の顔がよぎったと述べた。
優れた操縦による戦法は、撃墜王と言われる岩本徹三の実話にも共通している。
劇場版ラストの特攻シーンでの突入に至るまでの降下、低空横滑り、引き起こし背面飛行、前部甲板へ突入の一連の動作は1945年5月14日、菊水6号作戦で空母エンタープライズに突入した神風特攻第6筑波隊、富安俊助中尉をモデルにしていると思われる