概要
『幻想少女大戦』は、『スーパーロボット大戦』(以下『スパロボ』)シリーズのシステムを基として製作された。
『東方Project』(以下『東方』)の二次創作ゲームである。制作サークルは「さんぼん堂」。
四部作によるシリーズ構成で、各作品とその頒布実績は次の通り。
作品名 | 初頒布機会・日付 | 備考 |
---|---|---|
『幻想少女大戦 紅』 | コミックマーケット77、2009年12月 | DL版、OSTあり |
『幻想少女大戦 妖』 | 第九回博麗神社例大祭、2012年5月 | DL版、OSTあり |
『幻想少女大戦 永』 | コミックマーケット86、2014年8月 | DL版、OSTあり |
『幻想少女大戦 夢』 | 第十四回博麗神社例大祭、2017年5月 | |
『幻想少女大戦 CompleteBox』 | コミックマーケット96、2019年9月 |
作品の発表形式はパッケージ版を最初に、以後ダウンロード形式による発表がなされるという順をたどっている。ダウンロード形式は2016年から順次行われている。ダウンロード版の発表に至った経緯などは幻想少女大戦公式ブログでも語られている(2016年4月2日付)。
また、ビジュアルを全作リライト(カットイン追加も含む)・新規シナリオ・新規音楽が追加された「幻想少女大戦 CompleteBox」が発売。
以下の記述では必要に応じて各作品について共通する部分である『幻想少女大戦』を省略し、それぞれ『紅』『妖』『永』『夢』と記述する。
なおpixivでは本タグはオリジナル作品にも用いられているが、本記事で記述するものは上記のさんぼん堂による『幻想少女大戦』である。
また、『東方』と『スーパーロボット大戦シリーズ』のコラボタグとしての機能も持つ。
そして、まさかにしてようやく「Play,Doujin!」への参加も決定された。
タイトルを「幻想少女大戦-DREAM OF THE STRAYDREAMER-」としてNintendoSwitchに移植される。発売日は2022年3月31日。
幻想少女大戦 紅
以下は第一作目である『幻想少女大戦 紅』についての概要である。
ストーリー
他シリーズのストーリーが語られたり『紅魔郷』には出ていなかったキャラクターを話に組み込むなど、
システム
単に『スパロボ』のシステムを再現するだけに留まらず、
「弾幕」や「グレイズ」といった『東方』ならではのオリジナル要素を搭載し、
「敵陣のど真ん中に高回避力ユニットを突っ込ませればそれだけで安心」といった
いわゆるリアル系無双をさせにくくするなど、工夫を凝らしている。
また、原作の個性豊かなスペルカードも独自に表現されている。
戦闘
『スーパーロボット大戦』の大きな特徴である戦闘アニメも再現しており、
技の中には『スパロボ』やその他ロボットアニメのオマージュを取り入れたシーンや台詞も見られる。
また、戦闘中の台詞の掛け合いもパターンが多い。
BGM
『東方』のアレンジBGMが全面的に使用されているが、特徴の一つとして
敵味方含めて全キャラに専用BGMが搭載されている(毛玉などの雑魚を除く)。
中には聴く人が聴けば一瞬で分かるほどにスパロボBGMを意識したアレンジも含まれている。
参考:
幻想少女大戦紅 オリジナルサウンドトラック クロスフェードデモ(ニコニコ動画)
バージョンとダウンロード版
『紅』は最終更新ver.として「Ver.1.1.2」が発表されていたが、その後2016年に、当時は登場していなかったOS(windows7)に対応するなどの目的から「Ver.1.2.0」が発表された。
パッケージ版へ対応するものとしてはパッチとして配布されている。
同アップデートではゲームシステム等全体への大きな変更はないが、「紅」の続編である「妖」において盛り込まれた新規の開発アイデアやゲーム中の呼称などについて一部を「紅」にフィードバックする試みがなされている。
また同サークルのアップデートパッチの配布は緊急のものでない限りシステム面の改善や調整の他にも新規会話などの追加要素を含んでいることが多く、本アップデートにおいても中断メッセージの追加などが同時に込められている。
先述のように本作はダウンロード版としての展開もなされており、そちらの初期ゲームバージョンも順次「Ver.1.2.0」のものに切り替えられる。切り替え前の「Ver.1.1.2」のダウンロード版を手にしている場合はさんぼん堂公式サイト(本記事末尾外部リンク参照)より対応パッチを入手すると良い。
本作についてはパッケージ版の制作も引き続き行われるとのことで、作品を求める際にはパッケージ版とダウンロード版の二つの発表形式に触れることができる状況となっている。
幻想少女大戦 妖
以下は第二作目である『幻想少女大戦 妖』についての概要である。
ストーリー
―――幻想郷―――
それは東の国の辺境の地に、古くから存在している。
人間と妖怪が住み、そのその歴史を脈々と紡ぐ、小さな隠れ里。
幻想郷には、二つの大きな結界がある。
力の弱まった妖怪を幻想郷に呼びこむ「幻と実体の結界」
幻想郷とその外部を常識と非常識の境界で分かつ「博麗大結界」
これらによって、幻想郷は外の世界との往来を断っている。
そこで人間と妖怪は、独自の文化を築きながら暮らしていたのである。
第一一八季夏、幻想郷を紅い霧と嵐が襲った。
人体に有毒な紅い霧は幻想郷中に広がり、人々を苦しめた。
後に紅霧異変と呼ばれるこの事件を解決したのは二人の人間だった。
結界内の調和を保つことを役割とする博麗神社の巫女、博麗霊夢。
偉大な魔法使いを目指す普通の少女、霧雨魔理沙。
二人を中心として結束した人妖は、種族の垣根を越えて協力し、
異変の首謀者であるレミリア・スカーレットを打ち破ったのである。
そのころ、妖怪の山では新たな事件が起こっていた。
外の世界の神々、守矢神社が幻想郷にやってきたのである。
守矢の神々は山の妖怪たちと衝突し、さらには博麗神社に営業停止を言い渡す。
しかし、戦いの末に博麗霊夢は東風谷早苗を撃退し、博麗神社を守った。
手を引いた守矢神社は妖怪の山に伏して、沈黙したのである。
幻想郷に一時の平和が訪れたかに見えた。
しかし、人妖たちに与えられた平穏の時は、長くなかったのである。
―――そして、幻想郷に秋が訪れた。
(幻想少女大戦妖 ブックレットより)
前作『紅』同様、『東方Project』の他作品ストーリーやキャラクターの登場など、
今作ににおいても豊富なクロスオーバー展開が繰り広げられる。
特に今作では前作でストーリーが持ち越された『東方風神録』関連について、
本格的なストーリー展開がなされている。
続編であるが、『紅』未プレイでも『妖』をプレイする事は可能である。
システム
前作のシステムを継承しつつ、「嫁システム」のリニューアルや固有スキルの追加、
汎用スキルのリニューアルなどにおいて、変更が行われている。
また、戦況報告の追加や検索機能、ズーム機能、サブウインドウの追加など
システム面な追加があり、プレイ環境が更に向上している。
BGMについてもキャラクター個別設定機能の追加などで、
ユーザーが自分好みのスタイルでプレイできる環境が整えられている。
戦闘・BGM
前作のアクティブで華麗な戦闘アニメは顕在で、さらに向上している。
セリフにおける掛け合いやオマージュなどは、今作でもバリエーションが極めて豊富である。
BGMにおいても見事なアレンジの傾向は『紅』から継続されており、
複数の楽曲からの大胆なMIXや聴く者を唸らせる秀逸なアレンジなどで、
物語をこの上なく盛り上げる。今作においても必聴のものばかりである。
参考:
幻想少女大戦妖 オリジナルサウンドトラック 紹介動画(ニコニコ動画)
(こちらの動画は登場キャラクターによる対談と言う形をとっており、音楽に加え、幻想少女大戦そのものの味わいを感じとることもできる。ただし説明文にもあるように、ネタバレ注意。)
前作からの引き継ぎ
『紅』のクリアデータ(霊夢ルート、魔理沙ルート)を「妖」のsavedataフォルダに移すことで、
一部の『紅』のプレイ要素を『妖』に反映させる(引き継ぐ)事が出来る。
この引き継ぎは任意で、『紅』のデータを引き継がずに『妖』を始める事もできる。
(プレイ開始時に選択肢が表示される)
またこの引き継ぎは『妖』で周回プレイを行う際も継承される。
幻想少女大戦 永
以下は第三作目である『幻想少女大戦 永』についての概要である。
ストーリー
『永』の名の通り『東方永夜抄』を主軸としているが、全二作同様に原作のシリーズの複数の作品のストーリーやエピソード、キャラクターが様々に織り込まれている。
特に本作では『永夜抄』と関わりの深い作品や幻想郷の世界観の重要部分に関わる複数の世界との交流などが描かれている。
またストーリーの進展に伴い、本作から「戦艦」ユニットが追加された。
システム
全二作の基本システムは継承しつつ、フォントの変更や各場面のインターフェイスの向上、
出撃直前のミニインターミッションの追加などのゲームシステム全般に関わる点に変更が加えられ、
描画や表現もより鮮明になっている。
ゲーム性やプレイ上の戦略性の面でも、キャラクターの固有スキルや
スペルカードの弾幕効果などの要素などについても新たなアイデアによるものが多数登場するなど、
本作はさらに向上している。
また装備アイテムのアイコン追加などの細やかな点でもアイデアが追加されており、
ゲーム周辺の環境はその選択性含めより豊かなものとなっている。
ライブラリー機能についてもチャート、BGM、用語等各種図鑑の全てにおいて内容が増量している。
なお本作は前二作から継承した要素などに加えて本作そのもののストーリーやシステムもあってそのボリュームがこれまでに以上に増加しており、システムなどの修正含め随時各種パッチによって機能が追加されている。
2017年6月現在、最新パッチは「ver.1.2.0」(2017年2月26日更新)。
同現在時点ではこれが最終パッチとされている。
編成システム
本作にて新規に追加された要素として、「編成システム」がある。
これは二体のユニットを一つのペアに組み込み、一つのユニット単位として運用するものである。
主にシナリオステージに入る前のインターミッション(準備パート)で編成を行う。
ユニットは前衛と後衛からなり、戦闘時は前衛がユニットの主となる。
後衛は指定された武器による「支援攻撃」で前衛とともに攻撃できる他、
後衛ユニットが「援護防御」のスキルを持つ場合、前衛が攻撃された際にその防御を引き受ける事が出来る。
その他精神コマンド、スキルなどの点で様々なメリットがある。
加えてユニットの組み合わせにおいてはその組み合わせごとに名前を設定する事が出来る。
名前は指定された文字と制限文字数範囲内で自由に設定できるがデフォルトのペア名もあり、
組み合わせによっては特別な名称になることもある。
デフォルトの特殊なペア名は多彩で、対応する組み合わせの数も非常に多い。
前作からの引き継ぎ
本作においても全二作の作品のデータを引き継ぐ事が出来る。
また個別のシステムデータを上書きする形で追加する事も出来、
例えば過去作のスペルカードの取得枚数の実績をさらに追加する事も出来る。
幻想少女大戦 夢
以下は最終作である『幻想少女大戦 夢』についての概要である。
ストーリー
本作では『永』で発生した事件のその後も追いながら、幻想少女大戦らしい複数の原作のアレンジが語られる。加えて本作ではオリジナルストーリーも展開され、本格的にオリジナルキャラクターが登場するエピソードも語られる。詳細は次の記事も参照。ただしネタバレが含まれるため、既プレイまたは既クリアが推奨される(関連記事)。
『夢』のタイトルは先述の『紅』の段階から決定されており、オリジナルの要素を含んだ最終的なストーリー展開も当初から組み立てられていた(公式ブログ、「制作記録」2017年2月15日付記事)。
『幻想少女大戦』シリーズにおけるオリジナルキャラクターを登場させることの意義については『夢』ゲーム中ライブラリの複数のキャラクター記事などでも語られており、オリジナルキャラクターを登場させることの賛否や是非について葛藤や想いがあったことが語られている。
また『夢』制作現場では最終作である『夢』の制作中にも第一作である『紅』のアップデートパッチが並行して制作されたりと、『夢』時点でもシリーズ全般を通した精力的な作品展開がなされた。
なお『夢』をその作品名に含むものとしては原作『東方Project』に『東方夢時空』があるが、本作はこちらとは直接の関係はない。
システム
大幅にブラッシュアップされた『永』を引き継ぎつつ、フルパワーモード(ペアを組む1ユニットに付き1マップ1回限定の前衛後衛全力攻撃。「FPM」)やプラクティス(未出撃ユニットの内任意6名に経験値やPPを付与できる)の追加、特殊技能のうち「汎用スキル」の習得枠の増加といったさらなる追加要素を実装している。
既存キャラクターについても表情の追加がなされたり、一部SEが刷新されたりと、従来のものからさらなる改善がなされたもある。ライブラリでも『夢』での新規追加だけでなく『夢』ならではのデータの追加も行われている。
付属マニュアルのお遊びや原作リスペクトも健在である。
全作からの引継ぎ
本作でも前作『永』のデータを引き継ぐことができる。
オリジナルサウンドトラック
『幻想少女大戦』のBGMを収録したものとして2015年4月現在、『幻想少女大戦 紅』、『幻想少女大戦 妖』、『幻想少女大戦 永』の三作品に関連したサウンドトラックCDが発表されている。
いずれもCD3枚組のセットで、サウンドトラックならではのボーナストラックなども追加されている。
『幻想少女大戦』のサウンドはメンバーのcobu、Ibizaの両氏が個々にアレンジを担当しており、ゲーム中の「音樂室」の場面に加え、本CD付属のサウンドトラックブックレットでもそれぞれの想いが語られている。
また、同ブックレットではサークル代表さんぼん氏をはじめ音楽以外の「さんぼん堂」スタッフによるコメントや製作時のエピソードなども語られている。
『妖』のサウンドトラックブックレットではさらにゲーム中で登場する各種背景画や戦闘シーンのコンテ、ドット、シナリオテキストの一部カット等をはじめとしたゲームにまつわる様々な要素が掲載されている。
『永』のサウンドトラックブックレットでは上記のような要素に加えて未公開のキャラクタードット等の他、シナリオ担当の画伯氏によるサイドストーリーが書き下ろされ、ユニットグラフィック担当のがひろ氏の挿絵とともに掲載されている。
またブックレット冒頭には作品シリーズを通して斑氏による4コマ漫画が掲載されており、バージョンの異なるものが斑氏によってpixivにも投稿されている。
このように『幻想少女大戦』のサウンドトラックには音楽に加えて作品全体にまつわる多様な要素が織り込まれているため、収録された数々の音楽とともに、サウンドトラックそのものもまた「幻想少女大戦」の一つであると言える作品ともなっている。
参考:
幻想少女大戦永 オリジナルサウンドトラック 紹介動画(ニコニコ動画)
※前作サウンドトラック同様、本動画にもゲーム本編などのネタバレが多数織り込まれているため閲覧の際は注意が必要である。同動画は楽屋裏、ゲーム後日談の要素で展開されており、ゲームプレイ後に視聴すると良いだろう。
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