概要
戸塚慶文の漫画『アンデッドアンラック』に在る台詞・一幕。
主人公たちが神秘体験を経て辿り着いた悟り。
相手の事を記憶(たましい)に留め忘れずにいれば、人は死なないと信じる。
死を想う、だから記憶(ココ)にいる
謎の漫画家・安野雲によって導かれ、男性主人公・アンディの人生を変異させた本の世界で、自分と出会う遥か昔のアンディと邂逅する女性主人公・出雲風子。
何とか彼の当てがない旅を共にし、自身は心身を鍛えていきながら、不理解な一面がある過去のアンディへ思いを馳せていた。
ある月夜の下、唐突な対話をする2人。
この時には互いに馴染みある関係を再び築いてた事もあっての話題。それは心を許した相手でないと許されない真面目な話だった。
……風子
死ってのは、どういう事だと思う?
現時点で彼の解釈は「脳が思考を止めた時」という持論。人が考えて行動しているから挑め、変化が生まれる。それが出来なくなった時、人は死ぬんだと所感を抱いていた。
その思想にやんわりと否定する彼女。
私は…
誰にも覚えてもらえなくなった時が、本当の死だと思う
現時点で1人の女性にある解釈は「生きて会えないけど、心の中で死者は生きている」という感想。彼女は過去に両親を事故で…、いや自己の異能で殺してしまった、沢山の人を巻き込んで…。それで会えない事が死だと思っていた。でも時が経ち考えを変えていく。
なぜならば、自分の両親(パパとママ)は心の中で何時までも『お前は悪くない』『生きてれば いつか素敵な事が起こるから』と語りかけてくれた。それは罪の重みから逃れる為に作った幻影かも知れない。でも、未だに最愛の両親(パパとママ)に今でも助けられている実感から、まだ死んだ風に思えないのだと。
だから、今までの旅で死に別れてしまったアンディの仲間達も、きっと心の中で生きてるよと慈しい言葉を掛ける風子。
ああ そうだといいな
「いいね」と最良の心情変化が現れた微笑みをみせる過去のアンディ。
死は痛み偲ぶものだけでなく、
死を悼み尊ぶこともできる。
重い思いの想いがある悟りを得られたような満足気も感じれる本心が出ていた。そんな彼の朗らかな表情を、やっと笑ってくれた変化に素直な喜びが溢れる風子。
1865年4月15日 ワシントンDC
俺の一番古い記憶だ
それは風子が本世界に来ていた大きな目的に繋がる手掛かりであった。
そして風子へ教えたら彼女は去る事を察してもいた過去のアンディ。
でも大丈夫と、忘れなきゃ独りじゃない答えを得られたから。
これが契機となって唐突に、今は「記憶(魂)の本の世界」にいる影響で体は透け宙へ浮かんでいく。きっと次の時代へ向かう現象で、過去のアンディと別れる事態になり風子は未来へ繋ぐ言葉を交わす。
144年後!! 2020年8月1日!!
新宿駅で私達は出会うの!!
私 逃げたりしちゃうけど!!
ちゃんと捕まえて!!
そしたら その日 私がアナタにキスをする!!
だから忘れないで!!
忘れなければ…
…人は 死なない
最後の言葉は過去のアンディが繋いだ。最愛の女性が旅立った、月だけの夜空を仰ぎ視て、ぽつりと特大の心情を溢す彼氏。
…いいね 最高だ
備考
🎥忘れなければ/#アンデッドアンラック 第21話「MEMENTO Mori」より - YouTube
本稿の台詞・一幕が描かれる原作漫画の第42話は、アニメ版・第21話で映像化された。副題は「MEMENTO Mori(メメントモリ)」が冠されている。
これはラテン語の「Memento:忘れない」「Mori:死」を並べ―
- 人は必ず死ぬ事を忘れるな
- 死は自分にも訪れる事を忘れるなかれ
な感じの意味合いを有した言語。古代から連綿と受け継がれている警句で、時代・国々によって様々な解釈・引用がされている。特に病の大流行で貴族・平民を隔てず死が蔓延していた時流の重い印象【誰しにも来る死の恐怖】は大きく、当時の様子を描いた芸術作品(代表作:死の舞踏)も影響力を増長させている。
だが変わる。
確かに過去には死と隣合せにある不幸な時代があった。そして時は進み医療や社会は発展(変化)し、死の観念も多彩に変わっていく。
本作「アンデッドアンラック」にある題材【最高の死】へも深く関わる事で、上記で触れたように「死の解釈」を変えていく交流が描かれた。
そんな原作をアニメ化する補填としてか、改めて副題「MEMENTO Mori(メメントモリ)」を顧みると―
- 作中の「死を想う」を的確に表現した言語
- 本作の代名詞【否定する】と掛け、一般的な印象【必ず来る死】を否定して【死なず】【不死の理を強固にする】みたいな言葉遣い
これらの解釈は視聴者へ委ねるが如くの粋な言葉演出という視方も出来るだろう。
関連項目
ヒルルク(少年漫画:ONEPIECE編より)・・・不治の病を患いながら海賊のように強く運命と戦う信念を貫いたヤブ医者。彼の死に際に語った名言「人は、…人に、忘れられた時に死ぬ…!!!」(※意訳)から、自己の死を受け入れながら、他者へ己の夢「人を治す意志」は受け継がれる希望も確信し満面の笑みで人生に幕を降ろした。本稿の題材【死の本質】について、同掲載誌の大先輩作品へ登場する偉人を想起した方がいるだろう程に、後の新時代へ繋ぐ一役を担った偉大な医師の心は生き続けている。