解説
同時代の李白と並ぶ中国の二大詩人で「詩聖」と称される。
生真面目な性格で世渡り下手だったらしく、就職できないまま各地を放浪し、不遇の生活を送った。詩才が評価されて44歳の時に得た職も安禄山の乱で失い、再び放浪生活に入る(このとき作った詩が「国破れて山河在り」で有名な『春望』である)。私生活を記録した詩がそのまま時代の記録ともなった。そういう杜甫の作風は「詩で書いた歴史」と言われている。
8行からなる律詩を得意分野とし、緻密な観察や構成力を、漢詩の中でも最も厳格な規律をもつ詩に託した。
また古体詩では、身辺の現実、それに関わる所感を、冷厳に、実録風に綴っていった。杜甫の詩は堅苦しくて暗いという先入観をもたらすが、彼の詩は全体として、きわめて端整で誠実な中に時折、渋い幻想味や思いがけないユーモアが漂うのも大きな特色で、偉ぶらない温かさ、打たれ強さ、不器用な愚直さが、読み手の心に飛び込んでくる。
誤表記
社甫 - 正しくは木偏で、示偏ではない。古典・世界史の試験に出題されるとクラスに数人はやらかす。