登場経緯
東葉高速鉄道では、1996年4月の東葉高速線開業に合わせて同社向けの車両を用意する必要があったが、土地買収が難航し建設費が予想を上回ったために新車を投入する資金が確保できなかった。
車両製造費を削減する必要性から、相互乗り入れ相手である営団地下鉄東西線(当時)で使われ、05系電車の導入により余剰となっていた5000系電車100両(10両編成10本)を譲受。各種改造のうえ「東葉高速鉄道1000形」として投入されることになった(このほか増発の可能性を踏まえて2編成分が譲渡されているが、こちらは部品取りに回された)。
なお代替車両として製造された同社2000系の系列名は「系」だが、本系列は廃車まで1000「形」を名乗っていた。
改造項目
営団5000系の改造車のため、車体そのものは営団時代と変わらないが、内装・外装共に大幅に手が加えられた。改造種車はすべてステンレス車。
- 塗装変更のうえ前面形状をブラックフェイス化。営団時代の丸形ライトから角形ライトへ交換。
- ドアを新調。窓の大きさを営団時代の小窓から大窓に変更。
- 改造種車に戸袋窓のあった車両については、ステンレス材を貼り替えて戸袋窓を撤去。
改造は営団深川工場で行われた。使用部品が営団車と共通となるため、東葉高速鉄道の車両検査は2000系に代わった現在でも東京メトロ深川工場へ委託している。
また、改造時にJR東日本線内に直通するための機器を抜き取られているため、JR東日本区間内を走行することは不可能となった。
1000形への改造過渡期には東葉高速の帯になっただけの5000系という状態を見ることができた。この姿は東葉高速線開業前に東西線で見られたという。
廃車・置き換え
2001年に行われた、運輸政策審議会第18号で、営団東西線の輸送力増強に対応するため、保安装置をWS-ATC装置から新CS-ATC装置に交換することが決定。相互乗り入れをする東葉高速線でも、同保安装置の導入をすることとなった。
この時、東葉高速鉄道では、1000形を改造するか、新型車両による置き換えを行うかを長期検討した結果、改造だと工事費用が高くついてしまうと判断。新型車両の投入をすることになった。
2004年から2006年にかけて、05系13次車ベースの「東葉高速鉄道2000系」が投入。これにより本系列は運行を終了した。約10年の短期使用であったが、改造元の5000系の登場から40年近く経っており、これ以上の使用は難しかっただろう。
海外譲渡
最後まで残った3編成はインドネシアのPT KAI Commuter Jabodetabek(現在のPT Kereta Commuter Indonesia。「KRLコミューターライン」として運営)に譲渡され、5000系と共に余生を生きる。
譲渡された形式の中でも5000系と並んで特に老朽化が激しいことから元JR東日本205系による置き換え対象となり、2022年までに全車が廃車された。日本に保存車はないため、形式消滅となった。