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CV:広瀬すず

演:柴本優澄美竹田理央(舞台版)


「忘れないで…私たち、いつだってたった一人で戦っているわけじゃないんだよ」


概要編集

細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』の登場人物。


都内の進学校に通う女子高生で、九太)が再び人間の世界に戻ってきたときに訪れた図書館で出会う。


成績優秀な優等生だが常日頃より勉強に明け暮れ周囲とは距離を置いており、中にはそんな彼女を快く思わず軽蔑の眼差しを向ける者もいる。また実家は裕福だが、両親に幼い頃から自身の気持ちを顧みてもらえず勉強を強いられたために関係は冷え切っており、お世辞にもその家庭環境は良いとは言えなかった(奇しくもそれら境遇はバケモノ界で暮らすとある人物と共通している)。故にいがみ合っているとはいえ常日頃から育ての親である熊徹と馴れ合っている九太の家庭環境を羨んでいる。


ある日、いつものように行き着けの図書館で自主勉強をしていた際に突然白鯨の中の「」という文字の読み方を尋ねてきた蓮と出会い、その後日頃から自身を疎んじていた不良高校生らから言いがかりをつけられ乱行を受けていたところを彼に助けられる。そして蓮から9歳より一切(人間界の)教育を受けていないことを知らされると、その知的好奇心を感じ取り、彼に人間界の勉学を教え込むことで蓮との交流が始まることになる。それによって初めて自らを必要としてくれる理解者を得たことで次第に前向きとなり、彼との関係が深まると蓮のおニューの服を一緒に買うなど、プライベートな付き合いもするようになる。そんな彼との交流によって次第に自主性が身に付いていき、高校を卒業した暁には実家を出て独り立ちをする決意をしている他、中盤で蓮が熊徹と実の父親と仲違いしてしまったことで情緒不安定となって自分に詰め寄った際には、意を決してそんな彼に強烈なビンタを食らわしたのち励みの言葉をかけたり、終盤での人ならざる怪物と成り果てた人物との決戦の際には、強大な力を持つ彼に物怖じすることなく堂々と前に出て叱咤するという勇敢な行動を見せた。


エピローグでは、渋天街で行われた世界を救った蓮を讃えるための盛大な祝賀会に多々良に呼び出される形で参加し、そこで彼が高認を受験する意思表示をすると、それに大喜びした。


劇中で本格的に関わるのは中盤だが、物語冒頭でも多数のモブに混じって幼少時の彼女と思われる少女が母親と思われる人物に手を引かれる形で登場している。


存在に対する是非編集

鑑賞者たちの間では彼女の存在に対する疑問の声が散見されている。この意見については、否定派はもちろんのこと、肯定的な鑑賞者でさえ提唱、賛同をする声が湧出しているため、如何に楓の存在が鑑賞者の間で物議を醸しているかが窺える。


最大の要因としては本作の後半に於ける青年パートで、九太が人間界のことについて学んでいく展開自体に違和感を覚えにくくするためであろう。

そもそも本作最大のテーマは「九太と熊徹の種族を超えた成長と絆」であり、にもかかわらずその九太が熊徹の影響下を離れ、新たな(それもバケモノとは対を成す人間の)分野を学んでいくことから、そのメインテーマに反してしまうように見えることは否定できない。実際本作に対する批判は、主に後半の展開に集中している。


もっともそれを差し引いたとしても、楓の物語の関わり具合や劇中での行動、そして彼女のキャラクター性に対する批判もある。


第一に九太に勉強を教えることを提案するシーンでは、楓は彼と出会うまで一切面識がなかった上に登場に多少の唐突感が否めなかったことから、第三者目線から見れば彼女の行動は不審に思えてしまう部分はある。


これだけならまだしも、恐らく彼女が悪印象を抱かせた決定打となったのは、クライマックスでの九太と一郎彦の死闘に巻き込まれた際の行動であろう。


九太が自らの心の闇に侵され狂暴化した一郎彦を鎮静させるための闘いの準備の最終段階として、渋谷のセンター街で楓と待ち合わせ彼女に白鯨を手渡すと、意図せずして自分を追ってきた一郎彦と対峙。楓に危機が及ぶことを恐れた彼は彼女にすぐさまこの場から逃げるよう訴えかけるも、当の楓は一体何を考えたのか九太の手を掴んで離そうとしないという側から見たら妨害行為としか言いようのない行動に出たのである(おまけにこの時「離さないから」と言っている)。


その後紆余曲折あり代々木体育館で再戦となった際も九太は楓に逃げるよう促したが、寧ろ彼女は上記のように一郎彦を叱咤する行動に出た。

いくら彼に怒りを覚えたとはいえこの時の一郎彦は世界を脅威に晒す力を持っている上に、九太の警告を平然と無視してしまっているため、自殺行為同然と見えなくもない。また彼女は一郎彦が暴走するに至るまでの経緯どころか、素性すらも一切知らないにもかかわらずこの行動に出ているため、(描写を見た限りでは)何も知らないに上に実質部外者であるにもかかわらず辛辣な言葉を言う楓に、それまで抱いていた不審さも相まってより一層嫌悪感を持ってしまうだろう。更に映画版では楓が終始九太に同行した理由が明らかにされていないために、彼女が場違いに見えなくもなくなってしまっている。


そしてエピローグの祝賀会のシーンでは、上記のように九太に高認の願書を見せつけ受験の意思を問うたわけだが、そもそもその場は飽くまで英雄となった彼を祝う為にある上、受ける意思を見せればそれは即ちバケモノ界との別れを意味するために、その行動は客観視すればあまりに非常識に写ってしまう。


他にも、中盤の九太の新しい服を購入するシーンでは小説版、及び漫画版で鮮明に描写されているが、なんと彼に有無を言わせずしかも自腹で買わせていたことが明らかとなった。余計なお世話だ。


このように、楓は客観的に窺うと不可解な行動を連発してしまっているため、否定派肯定派問わず鑑賞者たちからはいらない子呼ばわりされ不快を買われても致し方ないキャラクターとなってしまっている


しかしこれは作品の尺の都合から、後半の展開に至る経緯や、他のキャラクターと比較して彼女のキャラクター性の描写がかなり簡潔に済ませられてしまったが故の弊害である節があり、決して楓に落ち度があるわけではない。


そもそも青年期の九太は自尊心と好奇心が芽生えた影響から自身の知らない分野を探求していた矢先であり、そんなバケモノ界とは対を成した人間界のことをよく知る楓は打って付けの人物だったのである。即ち楓が彼に勉強を教えることを提案したのは、九太の知的好奇心に応えるためである。


そして自らの必要性を感じるようになった彼女は次第に自らの在り方を見出すようになり、遂には幼い頃から自身と向き合わなかった両親と決別する決意を固めていた。これは即ち如何なる困難があろうとも親の支援なくして一人で生きて行くということを覚悟しているということである。


終盤の一郎彦との決戦での行動は、九太の手を掴んだことについてはこの時の楓の心情を推察するに、彼を失いたくないが故の行動である。彼女からしてみれば、九太は自らの在り方を見出させてくれた恩人であり、そんな彼が自らの身を危険に晒そうとするのであれば事情がどうであれ止めに入るのはなんら可笑しいことではない。


代々木体育館に於ける叱咤については、確かに彼女は描写を見た限りでは事情を把握してはいないが、一方でこの時一郎彦が仕出かしていることは下手をすれば大勢の死者(それも上述のようにほぼ全員が彼の因縁とは一切無関係の罪なき人)を出しかねない凶行であり、その被害に遭う者からすれば理由はともあれこの上なく理不尽極まりない故に、彼女もまた周囲を躊躇わず暴走する一郎彦に怒りを感じることはなんら不自然ではない。


即ち、楓の一郎彦に対する叱咤は自らの私怨で周囲の犠牲も躊躇せずに身勝手な暴走をし、尚且つ互いをカバーし合って弱さと至らなさを克服し成長した自身や九太と比較して自らの弱さ、至らなさと向き合わなかった彼に対する義憤故である。そしてこの際に発した台詞は彼女及び九太と一郎彦との対比を表し、同時にこのシーンもまた楓が強い女性へと成長したことを印象付ける描写であると言えよう。


エピローグでの九太に高認受験の意思を問うたことに対しては、この時の九太は「互いに切磋琢磨して武芸を極め熊徹を宗師にする」というバケモノ界での目標を達成していたため既に無闇に渋天街に居つく必要はなくなっており、故に自ら得た人間界という新たな居場所になり得る世界で、新たな目標を目指そうとしていたのである。

即ち、エピローグは彼の渋天街からの旅立ちを表したパートであり、そのため楓のこの時の行動は彼のその決意を後押ししていると言えよう。


また九太が彼女に言われるがまま新たな衣服を購入する描写は、(手段はともかくとして)彼が熊徹の影響下を脱しつつあることを示唆している(実際見れば分かる通り、九太のそれまでの服装は熊徹から支給されたものである上に、彼のキャラクター性を色濃く反映されたデザインをしている)。


これらのことを総じて、楓は九太を熊徹から一人立ちさせ自主性を確立させるための重要なキーパーソンで、尚且つ家庭環境の面から一郎彦と対比されたキャラクターであるため、本作に於いて必要不可欠な存在である


しかし劇中では上記の通りこれらに関する描写が希薄であるため結果として鑑賞者に不可解な印象を抱かせかねない羽目になってしまい、結局のところ彼女の存在が本作の否の評価を生む最大の原因の一つとなっていることもまた事実である。


関連タグ編集

バケモノの子 九太


蓮楓…蓮(九太)とのNLカップリングタグ。

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