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概要編集

人間とは相対する存在である「バケモノ」の世界で育った九太)と、人間の世界で育った


思想も文化も全く異なる世界で育ったこの二人はひょんなことから出会うことになり、以降楓が蓮に人間界の勉強を教えるうちに、両者は親密な関係になっていく。


本作唯一にして事実上公式と言えるNLカップリングであるが、劇中でこの二人が互いを恋愛的に意識した明確な描写はない上に(一応楓の通う学校の校門で2人が語り合った際に楓の友人たちが「その人楓の彼氏ィー?」と2人を揶揄するシーンがあるなど、それらしい伏線はある)、後述の理由から楓に不快感や嫌悪感を抱く鑑賞者が少なくないことから、カップリングとしてはむしろBLカップリングである『熊九』や『九一』の方が支持されていたりする(前者はコンビタグも兼ねるが)。


劇中での2人の絡み編集

蓮がふとしたことで8年ぶりに人間界に戻り、そこでバケモノ界ではあまり触れ合う機会がなかった文字に混乱し、少しでも見知った文字を探そうと図書館に立ち寄った際、ふと手に取った「白鯨」を開き「鯨」という字の読み方が分からず、そこへ偶然いつものように図書館に自習しに訪れていた楓がいたことから、彼女にそれを尋ねたことで二人は出会う。


その直後、館内のマナーを守らず大声で喋ったり飲食をしていた楓を嫌う高校生たちを「騒ぐなら外で騒ぎなよ」と彼女が注意し追い出した後その場に戻ると、蓮は忽然とそこから姿を消す。


夜になり閉館時間になったことで楓が帰路に着いた際、先ほどの不良高校生らが「外なら何をしてもいい」を理由に彼女を絡み袋叩きにしようとする。するとそこへ蓮が現れ、不良たちは彼も袋叩きにしようとするも、持ち前の武の心得でこれを返り討ちにし、結果として楓を救い出す。


その後小さな駐車場にて楓は「暴力は良くない」と言いつつも蓮に助けたことへの感謝を述べ、彼が小3以降教育を一切受けていないことを知ると、白鯨の内容を理解することを目的に勉強を教えることを提案する。蓮がそれに同意すると、楓は自己紹介として自らの名を名乗り、返しに蓮もバケモノ界に於ける名前である「九太」ではなく、本名にして人間界の名前である「蓮」と名乗る。こうして対極する世界同士で育った二人の交流が始まることとなった。


以降、蓮と楓は時間を見つけては出会った場所である図書館を始め様々な場所で勉強するようになり、当初は小学校低学年程度の学力しかなかった蓮は知的好奇心や楓の教え方の上手さ、そして予め備わっていた高い才覚によって楓と出会って数ヶ月が経つ頃には大学受験に挑戦することが出来るほどの学力を身につける。一方の楓も始めて自身を必要としてくれる存在と出会ったことで次第に前向きな思考となり、それまで目を背けてきた自らの本心と向き合うようになった。


やがて蓮は楓の薦めで大学を目指すことを決意し、まずは高認受験の手続きのために二人一緒に役所へ相談に訪れる。一度はその時取り合った中年の男性職員から「無理でしょ」と冷たくあしらわれ諦めかけてしまうも、その後親切な女性職員から高認や大学進学の資料を手渡され改めて大学進学への意欲が芽生える。


その後高認の受験に必要な新しい人間界での住民票を登録した際にそれまで居場所が分からなかった父親の現住所を知り、その付近へ立ち寄ると父親との再開を果たす。


こうして蓮は人間界に居つくことが出来るようになったものの、これによって以降彼は人間界とバケモノ界、どちらに住むべきかという大きな悩みに直面することになる。


それに関する悩みを楓に話したのち、今後の進路を育ての親である熊徹に相談しようとそれまで暮らしていたバケモノの街・「渋天街」へ帰るも、双方の心情の食い違いから言い争いとなった挙句仲違いしてしまい、更にその後は実の父親とも同じようなことから離別し、結果として二人の父と半ば決別し両世界に居場所を失ってしまう。


その後蓮と楓は例の図書館付近で合流したのち小さな駐車場に移動すると、蓮は「教えてくれ、俺は一体なんなんだ?人間かな?それともバケモノかな?それとも醜い怪物かな?」と自らの不安と鬱憤をぶつけるかの如く楓に詰め寄る。彼女は蓮の豹変ぶりに恐怖するも、意を決して彼の頬を叩いたのち抱きしめ、自分も同じようなことで苦しいことがあると励ましの言葉をかける。


それによって正気を取り戻した蓮は改めて話を付けるべくバケモノ界へ向かうことを楓に伝えると、楓は「もし自分で危ないって思ったり、さっきみたいな気持ちになったら思い出して」と右手首につけていた赤い紐のお守りを彼に手渡す。


その後文字通り渋天街へ帰った蓮は、街の長・「宗師」の次期就任者を決めるための闘技試合で候補者である熊徹を勝利に導き彼との絆を取り戻すも、直後結果を認めようとしなかった対戦相手である猪王山の息子・一郎彦が熊徹に重傷を負わせてしまう。彼はそれに激昂するも楓のお守りによって我に帰り、その後一郎彦が自身と同じく人間であることを知ると暴走した彼と戦うことを決意。


それに備えるべく蓮は一旦人間界へ戻り公衆電話で楓を呼び出すと、渋谷のセンター街で二人は落ち合う。そして蓮は楓と出逢うきっかけとなった本である白鯨を彼女に差し出すとこれから自分がすることとこれまで一緒に勉強してきたことに対する感謝を伝える。それを訊いた楓はあまりに予想だにし得ない上に、彼との永遠の別れにもなり兼ねないことからそれを必死に引き留めようとする。


するとそこへ蓮を追って人間界に襲来した一郎彦が二人の前に出現。それを見た蓮は楓に逃げるよう必死に訴えかけるも、恐怖と彼の身を案じる楓は蓮の手を強く握り締めて離そうとしなかった。そして一郎彦が二人に襲い掛かると、蓮は楓を連れて後退りしたのち彼女の手を離して戦闘態勢に入り、剣を構えて一郎彦に斬りかかりそのまま彼と交戦になる。


しかし超常的な力を持った一郎彦には力及ばず、その力によって殴り飛ばされ敗退。そこへ楓が駆け寄ると、蓮は態勢を立て直すために彼女を連れてその場から立ち去るも、その後一郎彦は蓮との戦闘の際に楓が落とした白鯨を拾い読んだことで巨大な鯨の姿に変貌し、蓮を追いながら街中を暴走して破壊活動を繰り広げる。


あまりの一郎彦の強大さに呆然としてしまう蓮だが、楓は咄嗟の判断で彼を地下鉄に連れ込み、一時的に一郎彦の追跡から逃れることに成功する。


その後、楓は蓮と乗り込んだ地下鉄車内にて一郎彦との闘いを不安がる彼を自分も付いているから大丈夫と励まし蓮を勇気付け、地下鉄を降りると二人は人気のない閉館後の代々木体育館に居着き、そこを一郎彦との決戦の舞台に定める。


そして一郎彦が現れると蓮は楓に再度逃げるよう促すが、自らの心の闇に勝てず一方的に蓮を怨み周囲を顧みずに闇を暴発させ暴走する一郎彦に怒りを覚えた楓はむしろ躊躇せず一郎彦の前に出て言い放つ。


「あなたは何がしたいの!?憎い相手をズタズタに引き裂きたい!?踏みにじって力で押さえつけて満足する!?あなたはそんな姿をしているけど、報復に取り憑かれた人間の闇そのものよ!!誰だってみんな等しく闇を持ってる…蓮くんだって抱えてる…私だって!!私だって抱えたまま今も一生懸命もがいてる!!だから、簡単に呑み込まれたあなたなんかに蓮くんが負けるわけがない…私たちが負けるわけないんだから!!!」


そう楓が彼を叱責すると、一郎彦は彼女に襲い掛かるがすかさず蓮は楓をそこから退かせ、彼は意を決して鯨に対峙する。そして蓮は一郎彦と同質の力を元とした不穏な「穴」を解放し、そこに一郎彦を鯨ごと取り込み剣で突き刺そうとする。無論それは自殺行為の作戦であり、楓はそれをその時の衝撃で吹き飛ばされた蓮の相棒である謎の生物・チコと共に彼のやろうとすることを察し涙ながらにそれを見つめる。


しかしそこへ付喪神となった熊徹が蓮を救けに他のバケモノたちと共にその場に現れる。そして熊徹は蓮の穴を埋めるかの如く彼と一体化すると、蓮の心の中から彼を元気付け闘志を芽生えさせる。


そして「熊徹」という強力な剣を得た蓮は、楓を含めた自分を支えた人々が見守る中自らの剣を構えて鯨に斬りかかり、一郎彦の胸にある穴を切り裂く。それにより鯨は消滅し一郎彦は力なくその場に倒れ込んだのち、蓮から励ましとして楓のお守りを右手首に付けられた。


その後渋天街で世界を救った蓮を讃えるための祝宴会が実施され、バケモノ界での蓮の恩人の一人である多々良に呼び出された楓もそれに参加する。そして楓は蓮に近寄ると、彼から預けられていた白鯨を返した後、公認の願書を見せて蓮に受験するか否かを尋ねる。それに応じた蓮は、新たな挑戦をするために彼女に受験する意思を伝えると、返事に喜んだ楓と手を握り合い二人一緒にバケモノたちと共に祝宴会を楽しむのであった。


備考編集

とはいうものの、概要の欄にも記述した通り様々な要因からお世辞にもこの二人の組み合わせはコンビ、カップリング共に人気があるとは言い難い。


その一つとして、ネット上における楓の評判の悪さが挙げられる。楓が嫌われる詳しい理由については本人の項目を参照だが、彼女の物語の関わり具合が多少唐突かつ不自然であることからミステリアスな印象が否めず、また終盤での彼女の九太に対する行動が主人公の側にいるだけで何もしない「嫌われるヒロイン像」に当て嵌まってしまっていることが主とされる。


他にも楓の九太との関係性が、熊徹や一郎彦と比べて希薄な印象を与えかねないことも挙げられる。原因として、二人の交流が他の主要人物と比較して劇中ではあまりフォーカスされていないことに加え、映画版では九太が人間界に立ち戻ってから図書館に訪れるまでの経緯が一切触れられておらず(図書館に訪れた経緯は小説版にて判明するものの、これに納得していない鑑賞者は少なくなくさらなる議論を呼ぶことに)、また二人が交流するきっかけとなった出来事が不良に絡まれた楓を偶然その場に居合わせた九太が助けるというなんとも味気ない展開であるために、この二人の出会いが御都合主義的に済ませられてしまっている印象を受けかねない故、このような印象を受け手に与えてしまっていると思われる。


ただし念を押すと、二人は交流を通じて九太はバケモノ界での目標達成後の新たな目標を見出し、楓は切磋琢磨に勉強する蓮の姿を見て次第に素直になるようになるなど(概要の欄に記述した楓の友人達も、恐らくはそれによって得た可能性がある)、それぞれが得たものは大きい。


また本来は交われない筈の世界同士で育ったこの二人が交流するということは、それまで関係を絶っていたバケモノと人間がかつてのように再び一つになろうとしていることも示唆されていると言える


関連イラスト編集

どうかな?

微笑ましいな。


関連タグ編集

バケモノの子 九太 蓮(バケモノの子)

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