ピクシブ百科事典は2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

目次 [非表示]

概要編集

数多くの難事件を取り扱う「相棒」の中でもいかに複雑過ぎる人間の心情を描き、非常に後味の悪い結末を迎え、特命係が目の前にいた犯人を逮捕出来なかった数少ない作品の一つである。


ストーリー編集

小野田官房長の大学時代の同級生で人気犯罪小説家の菅原英人(大杉漣)の自宅に、脅迫状と切断された人間の指が送りつけられるという事件が発生した。そこで、小野田は捜査三課での麻薬摘発事件を終えたばかりの特命係二人に菅原の護衛を任せられてしまう。菅原曰く、前日のラジオで「誰かに命を狙われてみたい」などと不用意な発言をしたことが原因だという。


しかし、命が狙われているのにも関わらず当の菅原本人は全く危機感すら抱いておらず寧ろ特命係に対してこき使うなど図々しい態度を取っていた。呆れ返る亀山だが、そんな様子を心配していた妻の珠江(結城しのぶ)は夫の無礼に特命係へしきりに頭を下げるばかりだった。実は小野田から上記の相談を持ちかけられたのは彼女であり、何が何でも夫を守って欲しいと懇願され、やむ無く承諾したのだ。


それでも右京と亀山の二人は菅原の護衛を続け、彼のサイン会やイベントでも彼の身辺警護を行った。にも関わらず、本人は妻や特命係の想いなどは微塵も感じず、小野田と4人で飲みに行けば、自分が狙われていることなど忘れたかのようにホステス相手にはしゃぐ始末。そして小野田自身も彼の能天気ぶりな様子を見ながら、菅原が売れないころ珠江がずっと苦労させられてきたと言い、菅原のワンマンぶりには流石に頭を抱えていたという。


次第に亀山は脅迫状は単なるのデマか嫌がらせだと思い始め、彼の命が狙われることはないと思い込み始めてしまう。一方の右京はそれでも小野田や彼の妻から依頼された以上は責任を持って守り抜くと意思を固めていた。

そんな翌朝、菅原の家に一箱の小包が届く。そして、その小包を開くと大爆発が起きてしまい、あろうことかその小包を開けたのは妻の珠江だった。駆け付けた特命係はすぐ様に救急車を呼び、珠江を介抱するも程なくして珠江は死亡してしまう。一方の菅原本人は爆破場所から離れていた為、軽傷で済み大事には至らなかった。


その後の捜査で、爆発した宅配便は珠江の実家を装って出されていたことが判明し、今回の犯人の狙いは珠江でその次に菅原本人を狙う可能性が高いと右京は推測する。

この危機的状況から特命係は菅原を自宅から離れたアパートの一角へ避難させる。だが、相変わらずワンマンな菅原は狭いアパート生活に我慢出来ず、勝手に飛び出しクラブやキャバレーで飲み歩き、馬鹿騒ぎするばかり。そんな様子に痺れを切らした亀山は「あんたのせいで奥さんは死んだんだぞ!!それなのに…あんたは奥さんを愛していなかったのかよ!?」と一喝するが、それに対して菅原は珠江に対する愛はそのもので、それを喪われたショックを紛らわす為に、全て呑んで忘れるしか無かったと泣きじゃくる始末。その心情に多少理解した亀山は彼の酒にも付き合い、何とか蟠りは解消出来た。

その夜、アパートへの道を歩いていた右京と薫は、アパート近くで左手に包帯をした不審な男を発見する。右京が男に近づき拘束しようとしたその時、菅原が体調不良を訴え苦しみだす。不意を突かれた右京は結局不審な男を取り逃がしてしまうが、咄嗟に路上に落ちていた封筒を拾う。封筒の中には脅迫文が入っており、やはり逃げた不審な男が犯人だったと確信する。だが、右京はその男をどこかで見た覚えがあるという…。


これにより、犯人が自身らの居場所を突き止められてしまった事から右京は直ぐに別の隠れ家に移動する事を提案する。しかし、これ以上犯人に狙われ続けるのに耐えられなくなった菅原はマスコミに対して記者会見を開き、犯人に対して新作の印税(約、1千万円)すべてを賞金にかけるという。さらに犯人に対して「俺を殺せるものなら、殺してみろ」などと更なる挑発をかける。


すると翌日、菅原の自宅に三度脅迫状が届き、「今回は見逃してやることにした」といった内容の手紙が届く。以前の脅迫状と見比べてみると筆跡は似ており、同一人物から送られてきているようだ。菅原はこれで一件落着とし特命係をお役御免にしようとするが、右京は肝心の犯人を捕まえるまでは油断は出来ないと護衛を続行。


しかし、まもなく右京らが追いかけていた犯人と思われる不審者な男が遺体となって発見されてしまう。その男は物語冒頭で右京たちが麻薬捜査のときに見掛けた麻薬の売人と思われるホームレスの男だった。死因は麻薬の過剰投与による中毒死で、菅原に送りつけられてきた指との切断面のDNAも一致し、やはりこの男が犯人だった。しかし右京はホームレスの男がどうやって麻薬やそれを買う金を持っていることに更に不信感を抱く…。



真相編集





















この先ネタバレ注意‼︎























その後、菅原はこれまでの心の傷を癒しながら日本を離れ、スペインに移住し本を書いて暮らすと明かした。そしてその出発の日、ハイヤーに荷物を積み込んでいる菅原の前に右京と薫が現れる。そして右京は彼にこう切り出した。






「狙われていたのはあなたではなく奥さんの方だった。そして狙っていたのはあなただ。」







そう、今回の一連の事件の首謀者は菅原自身であり、全ては警察や世間に自身を信用させる為に行なった自作自演だったのだ。これまで自身に送り届けられていた脅迫状は菅原本人が下書きした物を例のホームレス協力し書かせたもので、同時に妻の珠江を死に追いやったのも菅原であり、知り合いの爆弾作りのプロに頼んで爆弾を製造し、わざと珠江が爆弾入りの小包を開けるように仕向けたのだ。例の脅迫状に同封されていた指もホームレスの男から金で買った物で、小包が爆発した際に菅原だけが軽傷に済んだのも、予め爆弾がいつ届けられるかを確認しており、爆弾の製造者からその爆弾の危険性から知らされた事からとっさにハンカチで口を覆い事なきをえたのだ。

そのホームレスを殺したのも菅原であり、特命係に彼が脅迫状を送り続けた犯人だと見破られてしまった事から、彼が麻薬中毒である事をいい事に、致死量の麻薬を投与して自殺に見せかけ口封じに殺害したのだ。


つまり、菅原がこれまで右京らに見せていた姿は仮の姿で、本性は極めて残忍であり、目的や夢の為なら殺しをも厭わない冷酷な男だった。


杉下が彼に疑念を抱かせた決定打は彼の小説に描かれたサイン文字であり、「悪」の字が「惡」という旧仮名遣いであったり、「奴」「如」の女偏に特徴があるなど共通点が見当たり、ホームレスの男は英人が書いた脅迫状を丸写ししたため、文字の特徴がそのまま出てしまったのだ。


しかし、そこまで愛していた妻をなぜ手にかけなければならなかったのか?


その動機は余りにも身勝手過ぎる理由だった。


妻の珠江は自身が売れなかった頃から支え続け、自暴自棄になった頃も親身になって支え続けていた。やがて自身が書いた小説が売れ、ベストセラーの小説家になった頃でも珠江は菅原を相変わらず献身に支え続けた。

だが、菅原本人はそれを手放したくない束縛と勝手に思い込み始め、自分がやりたい事や好きな事も全て彼女に阻まれ次第に嫌気や嫌悪を感じ始めてしまう。そして、常に自由を求め続ける彼にとって珠江は「単なる邪魔者」と見做すようになり、もはや彼女は自分の人生には不要と判断し今回の犯行に至ったのだ。


こうして、自身が犯人だと認めた菅原だったが、同時に「自分が犯人だという証拠はあるのか」と開き直る。

確かにこれまで右京が述べたのは全て推測だけで、彼が犯人だという決定的な証拠はない…。そして証拠がなければ警察としては手も足も出ない…。反省も悪びれる事もなく立ち去ろうとする彼を特命係はただ見過ごすしか無かった。

それでも右京は菅原に対して、「今はその時間がありませんが、いつか必ずあなたを落とします」と必ず彼を逮捕する意志を伝えその場を立ち去る。


そして菅原もそのまま立ち去ろうとすると、あのサイン会に訪れていた青年と出会す。


「先生……」









菅原の胸に鈍い音が響く。



右京らが振り返ると青年は血まみれのナイフを握りしめており、菅原は血を吐きながら狼狽えていた。

そして、青年は駆けつけた特命係にその場で取り押さえられ、菅原はそのまま崩れ落ちた。


「どうして……」(菅原)


「だって先生、殺されたいって言ってたから」(青年)


青年は彼の書いた犯罪小説の虜となってしまい、彼の願望を叶えたいが故に犯行に至ってしまったのだ。


正に因果応報な仕打ちを受けた菅原は自分自身を憐れみ、死に際の際には




「こんな退屈な国で生き続けるくらいなら、死んだ方がマシか…」




と悟りながら、息絶えた。


彼の屍に自身が書いた小説本が落ちており、その末尾には一寸先は闇という彼にふさわしい諺が記されていた。


特命係はなすすべもなく、その最期の姿をただ黙って静かに見届けるしかなかった…



余談編集

ゲストの大杉漣氏は後のシリーズで準レギュラーキャラの衣笠藤治役を担当する。

関連記事

親記事

兄弟記事

pixivに投稿された小説 pixivで小説を見る

コメント

問題を報告

0/3000

編集可能な部分に問題がある場合について 記事本文などに問題がある場合、ご自身での調整をお願いいたします。
問題のある行動が繰り返される場合、対象ユーザーのプロフィールページ内の「問題を報告」からご連絡ください。

報告を送信しました

見出し単位で編集できるようになりました