概要
永劫破壊(エイヴィヒカイト)とは、謎の魔術師メルクリウスが創始した術。
名称の由来は、世界に渦巻く既知感、すなわち永劫回帰の法を破壊する為に編み出された事から。
性質
聖遺物を人間の手で取り扱うための魔術であり、その使用・発動には人間の魂が必要となる。
この術を施された者は、魂の回収のために慢性的な殺人衝動に駆られるようになる代わりに、所持している聖遺物を破壊されない限りは不老不死となる。
また、人を殺せば殺すほどに魂が聖遺物に回収され、感覚を含む身体能力や防御能力が向上していく。感覚能力も単純な五感の強化だけでなく、霊視による魂の識別や、テリトリーを拡大することで範囲内の人物の気配・呼吸・心音・精神状態の察知などができるが、防御能力に関しては特に強化され、回収した魂の数に比例した霊的装甲を纏うことで肉体の耐久度が格段に向上する。
対人武器は最大効率で使用しても一撃一殺が限度であるため、何千人もの魂を纏った肉体には傷一つ負わせられない。
普通の人間が想像し得る破壊という意味においては、一発で何千人も殺せる武器でなければ話にならない。
螢曰く、ベイやマレウスは大空襲の中でも無傷で、真っ当な手段で斃すなら核兵器が必要。
序盤によると、ベイは街を地図から消せる。
つまり魂を破壊する手段がある魔術的な攻撃以外はほぼ無効ということである。
仮に肉体が損傷・欠損しても、魂を糧に損傷度合いに応じて再生する事も可能。
なお三騎士は数万人~十数万人の魂を纏った不死英雄であるため、核爆発級の攻撃力があり核爆発でも殺せない。頭部や心臓を潰されても、全身が粉々になっても、魂を糧に瞬時に再生可能。
聖遺物による攻撃は物理的・霊的の両面で防がなければ止められず、その傷は通常の負傷ではなく歴史を重ねることで蓄積された想念という呪いであり、致命的な毒となりうる。
常人なら即死。たとえ実体を持たぬ死霊の類でも、聖遺物を武装化する彼らの秘奥はあらゆるものを殺傷する。
人であれ、魔であれ、神であれ、戦えば鏖殺。修羅の戦鬼のみが揮える禁断の遺産とその攻撃を、無効化する法は事実上存在しない。
基本的に聖遺物の使徒は聖遺物の使徒でしか倒せない。
この理を操る者には銃火器を始めとする“常識的攻撃手段”が原則として通用しない。毒ガスを吸っても死なず、無酸素で窒息することもない。
聖遺物が砕かれるとその使い手も砕かれる。
これは聖遺物に宿る魂と聖遺物に溶け合い融合した魂の二つを砕かれると、霊質の破壊が物質の破壊に繋がるという理論。
魔人練成とも呼ばれるこの術理は習得が極めて高難度である。
その困難さは「魔人となるにはまず超人であらねばならない」「基準を底辺に合せていない」と作中で述べられるほど。
凡人では最初の活動位階すら制御できずに自滅してしまう可能性が非常に高い。
聖遺物
聖遺物とは人々から膨大な想念を浴び意志と力を得た器物を指す。
その想念は種別を問わず、信仰心や怨念等、どのような形でも力を得れば聖遺物と呼べる物になる。
徳の高い歴史ある逸品から、騎士団結成当時の主力兵器といった物まで多様な聖遺物が登場する。
聖遺物の使徒と聖遺物は基本的に同化し、霊的に強い繋がりを持つ。
その為、聖遺物を元の持ち主から強奪するのは極めて困難……なのだが、作中ではそれを成し遂げてしまった人物がいる。
作中で披露された強奪は、一度相手に殺されて魂を吸収された後、相手の内側から体と聖遺物を乗っ取るという荒業。
相手の支配を振り切るには強靭な魂が必要な上に、奪う相手と聖遺物との結びつきが強い場合は奪取不可能なので、ヴィルヘルムが「万に一つも有り得ない」と言うほど確率は極めて低い。
武装形態
永劫破壊は四種の武装形態に分類されるが、これは使い手の性質、聖遺物の特性により先天的に決まる。
人器融合型
肉体を聖遺物と融合させる形態で、形状は素体と大きく異なる。
攻撃特化型であり、全タイプ中最高の身体能力を発揮する。
ただし、聖遺物との同調率にムラがあり、同調率が高くなるほど極度の興奮状態となって理性的な判断が困難になる。その為、格上相手に善戦しやすい反面、格下から足をすくわれやすいタイプである。
作中では蓮、司狼、ヴィルヘルム、シュライバー、シュピーネが該当する。
武装具現型
聖遺物を刀剣などの武器として扱う形態で、形状はほぼ素体準拠。
バランス型であり、特筆すべきメリットもデメリットもない。
主従関係がはっきりしている事から暴走・自滅の危険性が低いのが特徴で、バランス型ゆえに格下相手に足をすくわれない。
ただし、未熟者には決定力の欠けた器用貧乏となってしまう事が多い反面、強者には万能となって隙がなくなるタイプである。
作中ではラインハルト、エレオノーレ、ベアトリス、螢、櫻井戒らトバルカインが該当する。
事象展開型
聖遺物を媒介として魔術や呪術のような働きをする形態。
物理的破壊の顕現ではない事が多く、攻撃力は低く中には皆無の者もいる。
反面、防御や補助に優れており、殺す事が困難であり、人器融合型と組んだ場合は好相性。
特殊発現型
上記のいずれにも属さない、もしくは複数の性質を持つ形態。
他を上回る強大な力を発揮する事もあれば、状況次第では全く役に立たない事もあるなど、非常に不安定。
マキナとトリファは武装具現型と人器融合型を併せ持つ二種特性であり、肉体そのものが聖遺物で且つ常時形成位階という性質を有する。その為、他の武装形態と比較して聖遺物との同調率が群を抜いて高い。 ただし、トリファは論理が逆転しており、聖遺物との同調率が高い事が、聖遺物を保有し首領代行で有り続けられる条件となっている。
位階
活動、形成、創造、流出の四位階からなる。
活動
永劫破壊の第一位階。
聖遺物の特性を限定的に使用可能になり、身体能力は常人より遥かに高くなっているものの、聖遺物の力が暴走する危険性が高い。
Assiah(アッシャー)という名称……なのだが作中はほぼ形成以上での戦いが殆どなので、この名称が呼ばれる事はほぼ無い。
形成
永劫破壊の第ニ位階。
名称はYetzirah(イェツラー)であり、作中ではたびたび耳にする言葉である。
術者の魂と融合した聖遺物の武器具現化、及びそれを可能にする状態を指す。
人と魔術武装の霊的融合が成される事により、この位階に入ったものは人の範疇から外れた超人となる。
契約している聖遺物が目視可能になったことで威力が大幅に増大し、使い手の五感及び霊感も活動位階に比べて上昇する。
その振り幅は聖遺物の特性及び術者の技量、魂の保有量次第で変わるが、黒円卓の騎士にとって音速を超える体術を発揮する程度のことは難しくない。
なお、本作とは別世界観の相州戦神館學園八命陣では、登場人物の龍辺歩美がこの言葉を発するシーンがある。
創造
永劫破壊の第三位階。
名称はBriah(ブリアー)であり、作中の登場人物の殆どが使うのがこれである。
聖遺物を用いた戦闘における必殺技を使用可能になる位階である。
この位階に達した術者は、心の底から願う渇望をルールとする異界を作り出す能力を得る。心の底から願うといっても、それは常識などを度外視した「狂信」領域であることを要し、この領域に達したものは一見理知的でも、根本的に常識とかけ離れた価値観、常識を持つ者が多い。ようは真性の×××になれという事。
人が抱く渇望には求道と覇道の類別がされており、どちらの渇望を持つかで創造の能力が求道型と覇道型に大別される。
創造は物事への狂信が条件なので後から変更するといった事は基本的にできないが、例外は藤井蓮。
求道型
求道型は内に向かう渇望であり、「~になりたい」という渇望が該当。
自分自身を創り出した法則で満たして一個の異界とする。
蓮のように自分に何らかの能力を付加するもの、螢のように自分の存在そのものを変化させるものに分かれる。
自分という一点のみに絞って発動するので、理としては非常に強固であり、一対一の決闘向き。
覇道型
覇道型は外に向かう渇望であり、「~~したい」といった渇望が該当。
自分の周囲を創り出した法則で染め上げて異界化させる。
ヴィルヘルムのように周囲そのものを異界にさせるもの、ルサルカのように周囲の一部を異界にさせるものに分かれる。
他者を自分の理に巻き込む以上は抵抗されるのが当たり前であり、求道型のような特化した強さは得られないが、無条件で大勢を巻き込めるので一対多の集団戦向き。
ざっくり言うと空間支配能力の一種である。
流出はネタバレ項目にて解説
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以下特大ネタバレ
本来の意味
永劫破壊(エイヴィヒカイト)とは、神になる為の補助装置である。
神が作り出した永劫回帰の法下では、魂は死した瞬間に生を受けた母の胎内へと回帰し、再び同じ生を繰り返す。だが、エイヴィヒカイトにより聖遺物に取り込まれた魂は回帰する事ができなくなる。 本来回帰すべき魂を聖遺物という媒介に溜め込む事により神の下に還る魂の流れを塞き止め、世界を破壊する為の血栓を作り出す事。
それこそがエイヴィヒカイトの真の目的であり、作中でエイヴィヒカイトに「永劫破壊」とルビが振られているのはその事を示している。
流出
永劫破壊の最終位階。
名称はAtziluth(アティルト)。
己が願いによって全世界を塗りつぶす力。覇道型の創造位階の能力によって作り上げられた異界と法則を永続的に流れ出させ、世界を塗り替える。
流れ出した法則は既存の世界法則と激突し、勝利すれば新たな世界法則と化す。ようは旧き神と新しき神の戦いである。
一旦始まってしまった流出は、術者が死ぬまで永久に続き、術者自身でさえも途中で止めたり消したりする事は不可能。これは全能とされる神でさえどうしようもなく、もし流出から解放されたければ、別の流出で塗り替えるしかない。
ただし、流出で世界を変える事ができるのは覇道の渇望をもつ者に限られる。
求道の渇望を持つ者は、自らの内に展開した異界が永劫閉じないようになり、術者自身が世界の理から外れた完全存在となる。作中初期のマリィが該当する存在である。
流出という求道を無視した命名になっているのは、この技の創始者メルクリウスが欲したのが覇道の神格だけだったから。
メルクリウスがラインハルトと蓮を生み出して流出位階まで育てたのは、覇道流出の衝突で穴をあけてもらい、マリィを己のいる場所に導くためである。
なお、実は魂を吸収できる数には上限が存在する。
その限界は個々の格に依存するらしく、作中における序列は正田氏曰く、以下の様になっている(トバルカインは特殊なので除外)。
メルクリウス>>>>蓮≒ラインハルト>> 神格の壁 >>大隊長>>>>ベアトリス≒ヴィルヘルム≒トリファ>その他の団員
白本によると、単純に多寡を持って挙げるなら、ラインハルト、シュライバー、マキナ、エレオノーレ、ヴィルヘルム、トリファ、ルサルカ、リザ、ベアトリス、シュピーネ、カイン、螢の順。
この内、量・質ともに高度なものはマキナ、エレオノーレの二者だが、桁違いの量を有するラインハルトと、彼の肉体に繋がっているトリファの強度は他を遥かに圧倒している。
そしてその反対に、質の一点を極めているのが蓮である。
作中や白本で判明している魂の保有量は、ラインハルトは数百万人を超える総軍
三騎士は数万から数十万人の軍団から軍集団(マキナは六万人、シュライバーは18万5731人)
ベイとトリファは八千人の旅団(質ではトリファはベイより数段劣る)
マレウスは連隊規模
螢は数百から千人前後の大隊規模(黒円卓の一員となれる最低基準)
虚無と夢幻のフラグメントとのコラボに於いて、流出位階に至っている藤井蓮とマリィが神座の外の世界に向かっている。
その際、力を大幅に制限しないと外の世界に向かうことが出来ない事が判明している。
逆に言えば、力を制限する事さえ出来れば神座の外の世界に向かう事が可能である事を逆説的に証明している。
ちなみに流出に至っていない者もとのフラ世界に来ているが、その者達はとのフラ世界と神座世界の衝突時にとのフラ世界に流されたか、連れてこられたかのどちらかのみとなっており、恐らく流出位階の者でないととのフラ世界には自力で行く事が出来ないと予想される。
余談ではあるが神座世界は覇道神や求道神になった者は座を掌握する神との戦いは避けられないのが原則であるが、とのフラコラボで神座の外の世界に行ける事が判明したので外の世界に逃げてしまえば戦いを避ける事が可能だと考えられる。
尤も、求道神なら兎も角、覇道神だと覇道が恒久的に広がり続けてしまうので逃げた先の世界に悪影響を与えてしまいその世界の住人から排斥されてしまう可能性があるだろう。
さらに言えば逃げ続けた所で覇道の流出が止まる訳ではないので、いずれ神座の神と覇道衝突してしまい最終的には戦わざるを得なくなってしまうかも知れない。
これらは考察の一環に過ぎないので、確定した事では無いことを留意頂きたい。
以下さらにネタバレ
類義語として、マリィルートのifの続編神咒神威神楽における太極(たいきょく)がある。あちらも名称が違うだけで実態は流出と同じである。
神咒神威神楽の東征軍の面々が使用する太極は、求道型の流出位階。自己愛の満ちた大欲界天狗道の世界では、覇道型の神格は基本的に生まれないのである。
Diesiraeの属する神座万象シリーズでは、流出者、すなわち神格による世界法則の塗り替え、神座の交代劇が繰り返されており、この力によって世界が成り立っている。