概要
この橋は中海と日本海を繋ぐ水道上に存在し、船舶の通り道となることから、船舶の通行に支障の無い高さまで橋を嵩上げする必要があり、そのため高さは水面上44.7mもの高さとなっている。
この高さまで道路をあげるため、接続部の勾配は鳥取県側で5.1%、島根県側は6.1%という急勾配となっている。
特に島根県側(江島側)から見てこの坂道を「ベタ踏み坂」と称しているが、この元ネタはこの坂道を使った「ダイハツ・タントカスタム」のCMからである。
全長1.7km。中央支間長250mはコンクリート桁橋として日本一長い。
歴史
元々中海は日本海と連続した湾だったのが、現在の境港市にあたる砂州の形成によって湖化したという歴史を持つ。そのため中海は、その奥側の宍道湖と共に汽水湖となっていた。
時代が下って昭和時代、中海を干拓し淡水化する事業が計画され、日本海とを結ぶ水道上に水門が形成されることになる。
これを中浦水門と呼び、水門を閉じることで中海と宍道湖をまとめて淡水化出来る状態となった。
更に水門上には道路がつくられ、これまで船で渡るしか無かった江島と境港を陸上交通で渡すことも可能になった。これによって、農業に適した水質に変えると共に、干拓によって農地に利用する予定…だったのだが。
時代の変化により、農業は下火、米は減反政策が取られることになり、干拓事業は無用の長物と化してしまう。更に、アオコが発生したり、宍道湖の名産品であったヤマトシジミの減漁などの漁業被害まで報告されるなど環境の悪化が懸念され、干拓・淡水化事業は中止となる。
加えて、水門上の道路は跳ね橋となっていたことから船舶の通行の度に門が開けられて通行止めになるなど支障が出ていた。そもそも中海上には松江・米子という山陰地方有数の都市の港湾があり、それを境港で全て受けることなど不可能に近いため、航路の通り道の確保は不可欠だったのである。そこで、新たな橋を形成することになった。これが当橋である。
中浦水門時代の反省を活かして(そもそも水門は水路を閉じるのが主目的だったので仕方のないことだが)、船舶が常時通行しても陸路が塞がれないように、十分な高さを取ることとなった。
これこそが先述の「ベタ踏み坂」の理由となっているわけだが、急勾配とする代わりに従来の水門道路では通行出来なかった大型車の通行も認められるなど、水門時代より概ね利便性は上がっている。
なお、道路としての役目も水門としての主目的も失った中浦水門は、(水質改善のために利用するという案も出たものの)2005年をもって正式に廃止され、2009年には撤去が完了した。
余談
漫画『美味しんぼ』14巻では、主要キャラクター岡星良三の椀方試験に絡んでシジミの産地として宍道湖が取り上げられ、中浦水門が取り上げられている。主として環境問題から見た話であり、残念ながら道路としての問題点は取り上げられていない。