滝田星
たきたせい
pixivユーザーであるS.SHIMIZU氏が2015年8月6日から執筆を行なっている「ヨゾラノ星シリーズ」(ヨゾラノ星および続編のヨゾラノ星2)の主人公である。
昭和7年(1932年)9月15日生まれ。兄家族と一緒に広島県の快田(モデルは海田町)に住み、広島市皆実町にある広島光明高等女学校(架空の女学校。以降光明女学校)に通う。
性格は明朗活発な性格で、誰とでも仲良くなれる一方で、お転婆っぷりから周りを振り回してしまうことも。一方で辛い時もカラ元気で乗り越えようとするがすぐ見破られ、感情を露わにすることも多い。
以降ネタバレが含まれるため、作品を読んでいない方はスキップしてください。 |
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被爆前(出生から1年3組生まで)
1歳の時に父・精作が借金を作って蒸発し母親も倒れ、血が繋がっている兄・精一郎は自暴自棄になり自殺も考えるが星空を見て留まり、祖父が残した遺産をもとに代々付き合いのある大畑家の介入で借金が帳消しとなり事なきを得る。母親は3歳の時に死去したがこの時大畑家の娘・松子と精一郎が結婚し母親代わりとなり、その後甥となる時生と姪となる光子が誕生している。
上述の序章から12年後、星は13歳となり光明女学校1年3組生となる。性格の相違で級長の火神礼子と対立するも広島駅での空襲(※1)で礼子を助けたことから仲直りし、また東京から越してきた伯爵令嬢の白鳥雪恵ともすぐ打ち解け、学級内で浮き気味の雪恵をサポートする。このように周りとすぐ仲良くなる一方で、戦時中の統制(白セーラーが着れない、野外活動で授業がまともに受けられない、陸軍に学校を接収されて険悪な空気が流れる)という葛藤を抱えるも明るく振舞う日々を送り、1年生全体による慰問会(※2)を成功させる。
1945年8月6日
広島市の鶴見橋付近で他の1年3組生と建物疎開中に被爆。爆心地から約1.3kmの地点(※3)で、他の1年3組生は先生を含め大火傷や裂傷を負うも星だけは左頬の火傷だけで済む。これは当日朝に姪の光子が藍染めの夏服を鋏で切ってしまい、代わりに雪恵から仲直りのためにもらった白セーラーの夏服を着て行ったこと(※4)、さらに直前に瓦を落としてしゃがみ、爆心地側から礼子が覆いかぶさるように駆け寄ったことから陰になった功を奏した結果である(代わりに礼子は熱線を直に受ける形となり、黒焦げで即死)。
その後裂傷でボロボロになった雪恵を連れて逃げるも、途中雪恵が倒れ介抱のため一時その場を離れた時に雪恵は火に巻かれ死亡。ショックを受けながらも星自身はどうにか火災から逃れられ、さらに河原で休んでいる時に快田方面へ向かうトラックが走っているということで東錬兵場へ向かう。途中炊き出しの支援を受け、また猫(ツキという飼い猫になる)を拾いながらながら東錬兵場に到着。当初は伍長に乗車を拒否されるも抵抗し、伍長の部下の説得や階級が上の曹長の進言もあり最終的には乗車を許される。
一方で貴重品の避難のため広島市内から35km離れた向原(現在の安芸高田市)にいた精一郎は広島がやられたという報告を受け、急いで帰還。快田の学校に向かい星を探すも避難者の惨状や日が落ちてきたことから見分けがつかずその場を立ち去ろうとしたが、星も精一郎を見つけ、最後の力を振り絞り兄を呼び、それに気づいた精一郎によって無事連れて帰ることができた。
1年西組生として
家に戻った星は治療を受け始めるも隣に住む新太郎によって幼馴染の二木悦子が8日に死亡したことを聞かさる。また暫くして火傷した左頬がケロイド状となり、自分の変わり果てた姿を見てショックを受ける。さらにどうにか学校へ通えるようになるも、町民や通学の車内で「お化け」や「ピカの毒が移る」という差別を受け、それでもどうにか学校にたどり着くも悦子だけでなく1年3組生全員が死亡したことを聞かされる。
このような状況から星の心は荒み、さらに建物疎開を命じた奥田栄吾元大尉との再会や雪恵に似た娼婦・黒田夕子によって現実を突き付けられた星は何もできなかったことを悔やみ感情を爆発させてしまう。さらに礼子の父・厳造の訪問で自暴自棄になってしまい、これによって不登校となったばかりか家族にもあたるようになり、家庭崩壊寸前(※5)まで陥ってしまう。
しかし改組で星のクラスになった1年西組の担任・藤巻平をはじめとするクラスメイトの努力や自分が母親代わりにならないといけないという義姉・松子と差別を許さなかった時生の振る舞い、何より不登校を知りながらも「どうあろうと星は星」と諭した精一郎の話を立ち聞きした星は自暴自棄になっていた自分の愚かさを感じ、翌日再び家族と打ち解け、学校へ通うようになった。その後夕子や栄吾とも打ち解けるようになり、悦子の家を訪れ仏壇に手を合わせ、誠一郎と一緒に帰路星空を見るところで第1部は終了する。
3年1組生
上述から約1年が過ぎ、3年生になった星は背が伸び、左前髪で左頬を隠す容姿となっている。また夜に散歩することが日課となっている。
この年から男子校である陵南中学校の生徒を受け入れるようになった光明女学校であるが、男女交友は不純であるという教えから星も当初は遠慮しがちになる。しかし市外からの移住者である輩の行動を見た星が止めに入った際逆に差別を受けたところ、陵南中の級長である川島幹治に助けられる。また、幹治自身も背中に裂傷を負い、復学が1年遅れることを知る。この件以来星は幹治の好意を抱くようになり、また他の陵南中生徒とも次第に仲良くなっていく。
一方で左頬の火傷について普段はカラ元気で乗り切るも、周りからはお化け扱いされたり、鏡を見ると感情的になって壊したり、さらにABCC(原爆傷害調査委員会)の調査で顔を撮影されてショックで夜一人で泣き叫ぶ状況になるなど心身ともに傷が癒えない状況であった。この様子に精一郎は闇取引などで得た資金を基に日赤病院で手術を試みるも、ケロイドが再発してしまい失敗に終わってしまう。ショックを受ける精一郎夫妻をなだめる星であったが、その後星を見かけた元軍医で外科医の田原東山によって再度治療を試みるようになる(※6)。
学校では次第に幹治を意識するようになり、そのことで級長で友人である山本純子とボタンの掛け違いでケンカをしてしまうが、お互い事情を察すると仲直りする。しかし光明祭(学園祭)終了後に幹治は体調を崩し入院。年末にクラスメイトで見舞いに訪れ帰る中、幹治は星を引き留め2人きりの時間が過ぎ、幹治は何げない一言を述べた後星と別れることになった。この時間が最後の出会いとなり、年が明けて1月16日に幹治が白血病で病死したことを告げられる。幹治の死を受け入れられず葬儀で放心状態だった星であったが、その後純子から受け取った手帳を見て幹治が白血病であることを自覚しながら闘っていたことを知り、人目をはばからず泣き叫んだ。そしてお別れ会としてお焚き上げ(※7)を開催し、幹治との別れを告げるのであった。
※1:爆撃ではなくグラマンF6Fによる機銃掃討。なお原爆の威力を確認する目的から広島市におけるB-29による爆撃は実施されていない。
※2:当初は合唱会であったが奥田栄吾大尉が却下したため傷兵を招いての慰問会として活動。大尉は生徒の行動とは知らず許可してしまい実施される。なお大尉は真相を知り中止を命じようとするもクラスメイトの森永敏江の嫌味に反論できず退散する。
※3:鶴見橋の位置は爆心地より東側1.5kmで、そこから西に200mの地点で活動していた。現在の平和大通りの東端である中区田中町から鶴見町あたりと推測される。
※4:はだしのゲンでも白服が熱を反射し、黒や藍色の服と比べて燃えなかったことが語られている。
※5:これは星の態度だけでなく、快田の住人が得体の知れない原爆の後遺症で滝田家全体を差別したことも原因。なお滝田家だけでなく、原爆投下時負傷しただけでなくその近くにいた者の家族全体への差別行為は常態化されており、後遺症の研究が進むまで続いていた。
※6:作中で大人になった星の語りが挿入されており、それによると東山により手術は20年近くにわたり15回実施され、最終的には治ったことが語られている。
※7:焚火であの世にいる死者に渡したい物を焼いて届ける風習。