概要
pixivユーザーであるS.SHIMIZU氏が2015年8月6日から執筆を行なっている「ヨゾラノ星シリーズ」(ヨゾラノ星および続編のヨゾラノ星2)の登場人物である。
登場当初は日本陸軍の大尉(将校)であったが、終戦により復員。その後は運送会社勤務を経て、奥田運送を設立した。
武勇にも秀でており、柔道3段剣道4段の腕前を持つ。性格は気が短く、大尉時代は作業が遅いだけで兵士を蹴飛ばす、光明高等女学校の校長に対して軍刀を振り回して恫喝する、あげく抗議に来た皇族と親しい伯爵夫人を「我々こそ皇軍である」「あなたこそ不敬」と一喝するなど、当時の日本陸軍の暴走っぷりを象徴する言動をしていた。終戦後は久々の再開に怯える校長に対し「軍務でやっていたこと」と弁明していたが、復員後もヤクザを棒で倒したり、元少尉の教師をお仕置きしたりと性格は変わっていない。
大尉時代は中島本町(現在の平和記念公園一帯)に住んでおり、家族は(確認できた限りでは)妻の春江と弟の栄造、栄造の妻である明子がいる。春江は子供時代からの馴染みで、剣道の師範の娘であったが、原爆で死亡(※1)。明子も広島の別の地域にいたが爆心地から離れていたためか無傷で生存し、その後栄造も満州より復員している。
猫アレルギーで、猫が近くを通るだけで発疹してしまう。
経歴
以降ネタバレが含まれるため、作品を読んでいない方はスキップしてください。 |
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作品登場前
大正3年(1914年)8月24日広島市生まれ。陸軍士官学校(※2)を経て、将校となった。太平洋戦争突入時は第27師団の中尉として中国におり、のちに広島で被爆者救済のため行動を共にする軍医の田原東山と同じ部隊となる。東山が一時除隊のため帰国後、1944年(昭和19年)に発生した大陸打通作戦(一号作戦)にも参戦したが、右目を斬りつけられ喪失。その後左目も見えなくなったことから本土へ帰国。除隊準備のため予備役となっていたが左目の視力が戻ったため復帰し、大尉に昇進のうえ中国軍管区本部第五輜重兵連隊第三特別輸送隊の隊長に就任した。
大日本帝国陸軍大尉
1945年(昭和20年)5月末、広島城周辺の中国軍管区本部と宇品港との中間点にあった光明高等女学校に注目し、校長を恫喝のうえ輸送拠点として接収。伯爵令嬢である白鳥雪恵の制服が白い理由で袖を破るなど女学生にも横暴な態度で、また奉仕活動を強要するなど恐れられていた。滝田星らが合唱会を企画しているのを知って却下したが、その後慰問団による慰問会の要望があり、それが女学生によるものと知らず許可してしまう。慰問会当日に慰問団の正体が女学生を知った栄吾は速攻中止させようとするも、その理由が後付けでしかないことから、星のクラスメイトである森永敏江に一度決めたことを撤回しようとしたこの態度に「女々しい」と嫌味を言われ、赤面しながらその場から退散した。
8月6日、光明高等女学校校舎内で荷物の確認しているところへ閃光が走り、被爆。校舎は爆風で大破し、栄吾自身も負傷するも熱線の直撃は避けられたためどうにか無事で、その後宇品から救出に来た船舶司令部(暁部隊)と合流し、壊滅した中国軍管区本部に代わる拠点となっていた広島電鉄本社で遺体の焼却命令を受け、光明高等女学校の敷地内で作業に従事するうちに終戦を迎える。
運送会社社員
終戦後は日本が負けたこと、武装解除のうえ軍人でなくなったこと、故郷でもある広島が焼け野原になったこと、そして原爆で妻を失ったこととで自暴自棄になり生きる気力を失っていたが、原爆投下前の上官の言葉を思い出し運送会社を設立するためバラックを建て、運送会社に勤務することになる。途中自暴自棄になってた滝田星と再会したり、屋台で出来上がっていた黒田夕子とも会っている(※3)。当初は特に接点がなかったが、家の前で夕子と星が甚平たち3人のヤクザに囲まれているところに割って入り、さらに甚平の「ハナタレ」発言にキレてヤクザを撃退。このことで星や夕子と仲良くなる。
それから1年が過ぎた1947年(昭和22年)、栄吾は運送会社の仕事に従事する傍ら、先述の焼却した遺体の回収・運搬作業をしたり、猫アレルギーを拡声する夕子を追いかける日々を送る。そんな中弟の栄造が復員したことで自身の運送会社設立に着手する。知り合いだった孤児の伊藤大介を養子にし、ヤクザの鉄砲玉にされかけた甚平たちを誘い、さらに自暴自棄でヒロポンに手を出そうとしていた栄造を制裁・説得し、栄造の妻である明子を含めたこのメンバーで「奥田運送」を設立した(ちなみに夕子も誘おうとしたが、伝え方が悪く怒らせたためメンバーに入らなかった)。
奥田運送社長
奥田運送を設立して間もなく、第27師団で一緒だった東山と再会。「被爆者を救済したい」との東山の想いに共感し、協力を約束する。丁度星を見かけた東山が栄吾にその話をすると栄吾も星の兄である精一郎に話をし、星も同意したことから東山による星の治療のきっかけになった。また学園祭が中止になりかけた時も光明高等女学校まで出向き、塚田凛子や他の大人達と一緒に説得したことで開催にこぎつけるなど、よき理解者となっている。
一方で星のクラスメイトで学園祭で顔見知りだった川島幹治が原爆症で亡くなり、葬儀に出席した際にこっそり現れて遺体の提供を申し出た原爆傷害調査委員会(ABCC)の職員に対し殴りかかろうとするなど、未だ原爆との恐怖に戦わなければならないことに強い憤りを感じていた。
さらに時が過ぎた1949年(昭和24年)。自身が住んでいた中島本町が平和記念公園になることに異議を唱えつつも奥田運送は順調に規模を拡大している様子がうかがえ、高校生になった星に対し卒業後は試験および面接免除で入社させようとしている。
補足
- ※1:中島本町は爆心地から500m以内に収まっており、燃料会館(現レストハウス)以外の建物はすべてが全壊し、燃料会館の地下にいた職員1名を除きこの周辺にいた者は全員が即死したと推測されている。作中では他にも白鳥雪恵の父親である白鳥杜博伯爵が中島本町の知人に会いに行ったところへ被爆し、即死したことが告げられている。
- ※2:作中では記述はないが、尉官クラスの陸軍将校になるには陸軍士官学校卒が必須(科目によっては例外あり)であったことから。なお、陸軍士官学校の学力は最低でもMARCHまたは関関同立レベル(上位の陸軍大学校レベルだと帝国大学相当)と教職員としても充分通用するため、大介を養子にした後中学入学までの間栄吾が大介の勉強を教えている。
- ※3:この時夕子の顔を見て「どこかで見た顔」と雪恵に似ていることを述べている。
関連項目
中尾重蔵:はだしのゲンの登場人物で、元軍人かつ社長という共通点がある。但し重蔵の階級は軍曹(下士官)で階級的には栄吾より6階級下(尤も二等兵から5階級上がって軍曹になっており、戦場での経験は重蔵のほうが上)で、また栄吾が運送業に対し重蔵は看板屋である。