ヨゾラノ星
よぞらのほし
作者のS.SHIMIZU氏自身は普段メカ系の作品を投稿しており、戦後生まれのため被爆者ではないが、個人的こだわりから当作品を投稿する7年前から8月6日になると広島原爆に関連した作品を投稿している(後述)。実際この漫画を執筆にあたり30年以上に渡り資料を調べるなどしたうえで執筆・投稿しており、人物や一部地名等はフィクションではあるが、当時の情勢や主要建築物等は事実に基づいたものとなっている。
本編および派生作品である「上を向いて歩こう」の登場人物を記述する。
滝田家
元々は広島浅野家に仕える武士であったが、明治維新後は快田村(広島から約10km離れていると説明があることから、現在の広島県海田町がモデルと推測される)に移住。そこで塩屋を営むようになり、明治21年に商店へ業態変換し現在に至る。表向きは商店であるが祖父の代から裏の取引も行っており、その利益で星を女学校へ通わせることが可能となっている。
- 滝田星(たきた せい)
本作の主人公で、広島光明高等女学校の1年3組生。昭和7年(1932年)9月15日生まれ。明朗活発な性格で、だれとでも仲良くなれる。詳細については滝田星を参照のこと。
- 滝田精一郎(たきた せいいちろう)
星の兄で、唯一血が繋がった肉親。父親(滝田精作)が借金を抱えて蒸発したため死を選ぼうとしたが、夜空を見て思い留まり、祖父の遺産などで借金を返済しその後結婚し2人の子を授かる。以前一度招集されたことがあるがその後予備役となり、招集されないまま終戦を迎えている。被爆当時は市内から35km離れた向原(現在の広島県安芸高田市)にいたため被爆を免れ、その後広島へ行き発見した星の看病にあたる。火傷を負った星に対する愛情は変わらず、戦後闇物品を売り捌き星の火傷を治療するための資金を稼いでいる。
- 滝田松子(たきた まつこ)
精一郎の妻で、星の義姉。星の母親代わりとして面倒を見る。被爆時は家におり、爆風で家が小破したものの無事であった。広島光明高等女学校出身で、被爆した星のために自分が着ていた服を新しい制服として与える。
- 滝田時生(たきた ときお)
精一郎の長男で、星の甥。星同様やんちゃな性格である。被爆前に島根へ学童疎開していたため無事で、被爆後の星の容姿のため同級生からいじめを受けていたが、義姉思いは変わらず仕返しをする。
ちなみに滝田家の男は代々「精」の文字が付けられているが時生には付けられていない。これは先述の通り時生が生まれる前に精作が借金を作って蒸発したため、精一郎がそれを嫌いあえて外したためである。
- 滝田光子(たきた みつこ)
精一郎の長女で、星の姪、時生の妹。星になついていたが、被爆後はその容姿に慣れず怖がっている。
- 月(つき)
星が被爆した日に広島市内で拾った猫。精一郎が星を救護所から連れて帰った時もついていき、そのまま滝田家の飼い猫となる。
火神家
大日本帝国軍人の家系で、家の規律は非常に厳しい。父母と息子2人、末娘の5人家族である。息子2人は戦地で死亡し、母と末娘も被爆で死亡。父のみ終戦を迎えたが、戦犯で収監された。集団下校で星たちと広島駅へ向かっていることから、家は広島駅周辺とみられる。
- 火神礼子(ひがみ れいこ)
メガネがトレードマークの広島光明高等女学校1年3組級長。昭和7年(1932年)5月6日生まれ。厳しく躾けられており、クラス内でも規律を重んじる性格である。星とは当初対立していたが、敵軍の空襲で腰が抜けて動けなかった中星に助けられ、それ以来仲良くなる。8月6日は建物疎開作業中に瓦を落とした星を叱ろうと駆け寄った際に被爆。星を覆いかぶさる状態となり、黒焦げの状態で即死。
- 火神厳造(ひがみ げんぞう)
大日本帝国海軍大佐で礼子の父。軍人として礼子を厳しく躾けていた。家族を戦争で失い、唯一生き残った自分もB級戦犯として巣鴨プリズンへ収監されることとなる。収監前に滝田家を訪れ、礼子の最期を星から聞こうとする。死亡時の惨状を知り、星と精一郎に感謝の意を述べた後、自分の不甲斐なさに涙しながら広島を後にした。
- 火神加代(ひがみ かよ)
礼子の母。主人である厳造同様礼子を厳しく躾けていた。被爆後の直接的な模写はないが、厳造によって死亡したことが明らかにされている。また、作者の落書きで死因は崩壊した家の下敷きになったことが明かされている。
- 火神勝利(ひがみ かつとし)
礼子の兄で、長男と推測される。作中では登場せず、厳造によって戦死したことが明らかになっている。作者の落書きでは1945年時点では23歳の海軍中尉で、沖縄戦で戦死したことが明かされている。
- 火神勝海(ひがみ かつみ)
礼子の兄で、次男と推測される。作中では登場せず、厳造によって戦死したことが明らかになっている。作者の落書きでは1945年時点では21歳の海軍少尉で、兄同様沖縄戦で戦死したことが明かされている。
白鳥家
皇族とも親しい伯爵の家系。元々東京に住んでいたが、疎開のため叔父の家があり戦災を免れていた広島の紙屋町(広島の繁華街で、爆心地から500m程度)へ移住する。原爆により家族全員が死亡。
- 白鳥雪恵(しらとり ゆきえ)
東京から広島光明高等女学校1年3組に編入してきた伯爵令嬢。昭和7年(1932年)12月22日生まれ。広島光明高等女学校に登校する際は本来の制服である白いセーラー服で登校したりするなど浮いていたが、次第に星と打ち解けるようになる。奥田大尉によって一時は不登校になるが、星によって再び登校するようになる。星らとともに建物疎開中に被爆し何とか生き延びるが見分けがつかないほどの裂傷を負い、星と逃げる中最後は鶴見橋付近で火に巻かれ死亡したと推測される。
- 白鳥貴子(しらとり たかこ)
伯爵夫人で、雪恵の母親。戦時中にもかかわらずピンクのワンピース姿で雪恵を付き添っていた。軍費として財産を供出する一方「この戦いは続かない」と雪恵に言っていた。主人を送った後原爆により倒壊した家の下敷きになり、雪恵と主人の名を叫びながら火に巻かれ死亡。
- 白鳥杜博(しらとり もりひろ)
雪恵の父親で伯爵。不登校になった雪恵を説得する。8月6日は知人に会うため中島(現在の平和記念公園がある地域)へ向かい、付近で被爆し死亡。
二木家
滝田家と同じ快田に住む家族。父母と娘の3人家族である。
- 二木悦子(にき えつこ)
広島光明高等女学校1年3組生徒で昭和7年(1932年)11月12日生まれ。星と同じ快田から通う幼馴染。被爆で全身火傷を負い、母親に看どられながら8日に死亡した。遺体は母親が家まで連れて帰っている。新太郎から悦子が死亡したことを聞いた星はショックを受け、その後、最終回で兄と共に二木家を訪れ、仏壇に手を合わせている。
- 悦子の母
名前不明。原爆投下直後、滝田家を訪れ松子に広島方面からきのこ雲が上がっていることを告げた。その後広島へ向かい悦子の最期を看取る。一人娘の悦子を失ったことが受け入れられず、生き残った星を恨んでいた。
- 悦子の父
名前不明、最終回に登場。仏壇に手を合わせるため訪れた星と精一郎に恨み節を言う妻を叱り、帰り際に星と精一郎に感謝の言葉を述べている。
広島光明高等女学校生徒
広島市皆実町にある女学校。モデルは広島県立広島第一高等女学校(現・広島県立広島皆実高等学校)と推測される。戦前は白のセーラー服に紺のスカートであったが、戦争が進むにつれて藍染のモンペ姿になっている。
2年生以上が工場勤務となり、1年生も校庭での畑作作業を経て7月より奇数組と偶数組に分かれて校外での作業を行なうようになった。8月6日は奇数(1、3、5)組が鶴見橋の西側(爆心地から約1.3kmの全焼全壊地域)で疎開作業をしていたため熱線と爆風の直撃を受け、星と休んでいた3人以外は全員死亡した。一方で偶数(2、4、6)組は爆心地から約3km離れた東錬兵場の林中で作業待機中(熱線の直撃を受けず、錬兵場のため爆風の被害も限定的)であったため生存者が多かった(手信号で林から出ていた2組級長が火傷で重傷を負っている)。再開後は元偶数組を中心に東組と西組に再編されている。
戦後も星を除きモンペ姿(星は松子のお下がりの白セーラーを着用)であったが、二年生になった時に他の生徒も卒業生のお下がりを貰い、戦前のセーラー服に戻っている。
3組生
- 森永敏江(もりなが としえ)
昭和7年(1932年)6月25日生まれ。普段は無口であるが、喋らせると口が悪くクラスメイトからは距離を置かれている一方で、慰問会の仕方に騒ぐ奥田大尉に対し「女々しい」と一蹴するなど気が強い。病弱な母親がいる。星らと共に、建物疎開作業中に被爆し、背中に大火傷を負った。広島光明高等女学校に収容されるが、母親の前で「名誉の戦死」と強気な態度を崩さないまま、終戦の日の前夜の14日に死亡。
- 中田久美子(なかた くみこ)
昭和7年(1932年)10月6日生まれ。細目が特徴で府中町から通う。被爆で日赤病院へ駆けつけた母親ですら当初見分けがつかないほどの全身火傷を負う。母親が水を飲ませようとし兵士に止められるも軍医から「もう助からんから好きなだけ飲ませてあげなさい」と余命宣告され、母親に看どられながら7日に死亡。
- 鶴木加代(つるき かよ)
昭和7年(1932年)11月29日生まれ。金輪島から学校へ通う。長身が特徴で、絵を描くのが得意。被爆で全身火傷を負い、似島第2検疫所で金輪島にいたため無事だった母妹に看病されるも「猫ちゃん(猫川)がいない」と言いながら12日に死亡。
- 猫川珠(ねこかわ たまき)
昭和7年(1932年)7月7日生まれ。日焼け肌が特徴。3組クラスで一番背が低く、木登りが得意であった。
先述の鶴木とは同じ金輪島出身で仲が良く、いつも一緒にいた。被爆で行方不明になり、兄弟が鶴木の証言を頼りに捜索した結果弁当箱のみ見つかる。結局遺体は見つからず、13日に認定死亡となった。
- 市村十和子
副級長。被爆で左半分に火傷を負い、半壊した光明高等女学校に収容されるも、級長(礼子)がおらず代わりに点呼が取れなかったことを先生に詫びて8月10日に死亡。続編で4組の級長と幼馴染であることが明かされている。
- 花田菊子
全身火傷を負い丹那(宇品の東側)の軍兵舎に収監され、最後はうわ言を言いながら母親に看取られ8月11日に死亡。
- 間垣留子
全身火傷を負い共催病院に収監され、最後は水を欲しがりながら姉に看取られ8月11日に死亡。
- 亀田
普段は無口で物静かであるが、手相が見れるということで注目を浴びている。被爆後引率の先生たちと日赤病院に向かうも火が付いた家屋の倒壊に巻き込まれ焼死。
- 佐々木由江
- 田辺晴美
広島光明高等女学校教員
- 高橋栄子(たかはし えいこ)
1年3組担任。星や礼子が合唱会(その後誤魔化すために慰問会とした)を提案し、本来禁止であるが快諾した。建物疎開の引率中に被爆で重体となり、生徒に対し日赤病院へ向かうよう告げた(自身も引率して悦子や久美子らと共に日赤病院へたどり着く)が、その後死亡したことが明らかにされた。
- 西崎武一
広島光明高等女学校体育教練科教師。海軍予備役でもあり、雪恵の服装に対して校長へ抗議したり奥田が接収した際は張り切っていた。被爆により死亡したことが明らかになっている。
- 山田廉造
広島光明高等女学校校長。白鳥家の服装に苦言を呈するも押し切られ、奥田大尉の接収に何もできずにいた。原爆投下後は消息不明と思われてたが12話冒頭でそれらしき人物が校門前に立っており、続編で正式に生存していることが明らかになっている。
- 藤巻平(ふじまき たいら)
広島光明高等女学校の英語教師で、1年西組の担任。英語が敵国語であったため原爆投下前は授業を中止していたが、終戦により復帰。元3組で唯一生き残った星を心配し、級長である佳子とともに星を何とかして登校してもらうよう画策する。
軍人・予備役
- 奥田栄吾(おくだ えいご)
登場時は陸軍大尉で、第3特別輸送隊隊長。広島光明高等女学校を接収し、女学生に対し奉仕活動を強要する。戦後は復員し運送会社に勤務している。星と再開した時責められたが、その後星や夕子がヤクザに絡まれた時助け、以来星や夕子と打ち解けるようになる。詳細については奥田栄吾を参照のこと。
- 新島
階級は伍長。被爆で負傷した者をトラックで快田へ送るための指揮をしていたが、女性は後回しと決めたため、星から抗議を受ける。新島の意に反した行動をとった部下の田村を殴るも、負傷した曹長の命には逆らえず、渋々星をトラックへ乗せる。
- 田村
新島の部下。星を気の毒に思ったため新島の意向に逆らい星をトラックへ乗せようとしたため新島に殴られるが、「何のための軍人か考えろ」と抗議する。
- 河井
階級は曹長。負傷し快田へ向かうトラックに乗った際、命令に逆らった田村を殴る新島に対し星を乗せてやるよう命ずる。
その他関係者
- 黒田夕子(くろだ ゆうこ)
黒田家長女。昭和2年(1927年)10月18日生まれ。女子挺身隊として爆心地から3.8km離れた宇品の縫製工場で作業中に被爆。自身はほぼ無傷であったが、家族は家のあった場所で全員灰となった状態で発見され、その灰を巾着袋に入れお守りとして持参している。詳細については黒田夕子を、家族についてはヨゾラノ星外伝を参照。
- 尾形新太郎(おがた しんたろう)
滝田家の裏に住む少年。被爆時は呉の工場にいたため直接被爆は免れたが、身内探しのため連日広島を訪れたため長時間放射能を浴び続けたことで原爆症により死亡した。これが原因で「ピカの毒」の噂が快田に広まり、星をはじめ滝田家は差別されることになる。
- 遠藤道子(えんどう みちこ)
滝田家の近くに住む少女。被爆で顔に火傷を負い、家で療養していたが裏山で首を吊り自殺。精一郎が遺体を家に送り届けようとした時周りの陰口に激怒する。
- 大畑伝造(おおはた でんぞう)
松子の父、星の祖父にあたる。滝田家とは古くからの付き合いがあり、精一郎の父が夜逃げした際も再興の支援を行っている。終戦後疎開していた時生を引き取りに現れ、帰りの汽車の中で長男である時生がしっかりしなければいけないことを告げる。
- 加藤春夫(かとう はるお)
滝田家の隣に住む男性。星の被爆後周辺から差別を受けている滝田一家に対して変わらず接しており、助け合わなければならないことを述べている。
- 中津大五郎(なかつ だいごろう)
滝田商店と取引をしている男性。息子がいるが、被爆により行方不明になっている。道子が首を吊った時星ではないかと精一郎に報告し、野次馬の言動に激怒した精一郎をなだめ道子の遺体を一緒に届けていた。
- 滝田陽三(たきた ようぞう)
精一郎の祖父の弟の息子で、向原で農業を営んでいる。精一郎の祖父の遺品を向原へ移す際広島方面からのきのこ雲を見てマグネシウム工場が爆発したと思っていた。
- 木村純吉(たきた じゅんきち)
精一郎の父の姉の息子。きのこ雲の正体を確認しに役所へ向かったのち、大慌てで広島がやられたことを精一郎たちに知らせていた。
- ヤクザ
夕子にショバ代を求めて絡んでいた3人組。星に石を投げられしばこうとしたが、近くに住んでいて帰ってきた奥田にどかされたためケンカを売ったところ逆に撃退される。元々は下級兵で、元大尉だった奥田の一喝で直立不動になっていた。
連載終了後の設定資料集では中折れ帽姿が「甚八」、長身が「長介」、背が低いのが「五郎」となっているが、続編では作者のミスで「甚八」の名前が「甚平」となっている(本作では名前が出てこなかったため「甚平」が正式名となる)。
- 奥田春江(おくだ はるえ)
奥田大尉の妻。作中では奥田大尉によって原爆によって死亡したことが明かされたのみで、名前や描写はなかった。作者による落書きで名前と容姿が明かされ、奥田大尉の剣道の師匠の娘で、子供の頃からの知り合いであった。また、作中の奥田大尉の会話で居住地が中島本町(現在の平和公園周辺)で、爆心地から500m以内の場所であったことから、即死であったことが推測される。