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概要

瞳術は「甲賀忍法帖」の登場人物甲賀弦之介が使用する忍法。

その要諦は『害意をもって攻撃を仕掛ける相手に対して、その害意を跳ね返す』というもので、術者の眼光を媒介に強力な催眠効果を相手にもたらすゆえに瞳術の名を冠する。

瞳術の使用時は、弦之介の眼が黄金の閃光そのものと化したように爛々たる光を放ち、その効果圏において攻撃を仕掛けようとした者は忘我の内に味方または自身に己の持つ凶器や技を振るわされ、自滅させられる。

“いかなる兵法者、忍者といえども、相手をみずして相手を斃すことはできない。しかも、弦之介と相対したとき、見まいと思っても、目が、弦之介の目に吸引されるのだ。”と原作中で評されるように、瞳術は盲目でもない限り敵対者に必滅の結果を与える。その危険性は伊賀鍔隠れ衆の重鎮である薬師寺天膳の口から早い段階で語られていて、伊賀屋敷で瞳術によって伊賀者6人が瞬く間に倒された際には本拠地において圧倒的に数で勝る伊賀陣営が恐怖と警戒のあまり総員金縛りの体たらくを見せている。

甲賀伊賀双方の魔人たちが破天の忍法を携えて跳梁する原作においても、その原理から無敵を誇る瞳術だがやはり弱点があり、一つは忍法行使の基礎となる両目を封じられると完全に無力されること、もう一つが上記のように盲目の相手には一切の効果が発揮できないことである。

このため、物語の中盤は強力無比な瞳術の封印のために伊賀が必死の暗躍を進め、終盤は明かぬ瞳のために引き起こされる如法暗夜の悲恋で物語は幕を閉じることと相成る。

また、甲賀弦之介の師である室賀豹馬は盲目であるがために、夜のみ目が開き瞳術の死光を放つ“猫眼呪縛(びょうがんしばり)”の使い手、弦之介の夜の代役として作中活躍する。

瞳術の亜種

甲賀忍法帖を始まりとする忍法帖シリーズには無数の忍者と彼らが使用する忍法が登場し、その中には眼光を媒介とする瞳術に似たものも複数存在する。

いずれも眼光・視線のみで相手を支配する取り回しの良さと幻怪無比な性能から、物語の中で鮮烈な印象を読者にもたらすものがほとんどである。

  • 幻五郎憑き

「江戸忍法帖」の寝覚幻五郎が使用。その視線を一瞬でも浴びた者は、彼の隻眼の魔力に捉えられて自意識を消滅させられ、幻五郎そのものと化す。幻五郎憑きにかかった者は一切の抵抗もできないまま、彼の意のままに操られ暗殺や自白を強要させられることになる。精神力の強い者には破られ術者が疲弊するという弱点があるものの、そこらを歩いている者が次の瞬間には暗殺者と化す戦慄の忍法である。

  • 山彦

「外道忍法帖」の主人公・天草扇千代が使用。視線を媒介にして自身に受けた攻撃、自傷の痛みを相手に反射する。己が傷つくというデメリットはあるものの、敵からの追撃を妨げる回避、触れずに苦痛を付与する奇襲など応用が利く。作中では弦之介のように敵の攻撃で盲目になるものの、視線を介さず感覚しただけで周囲の人間に苦痛のみか快楽を与えるという成長を見せ、感覚どころか物理的な傷すらも遠距離の相手に与えるという離れ業を終盤に披露している。

  • 時よどみ

「信玄忍法帖」の墨坂又太郎が使用。両目から放つ金光を相手に照射することで、生物の持つ時間感覚を停滞させる。時よどみにさらされ続けた者は外界と主観の時間を切り離されることで脳だけ老化して短時間で即死し、一瞥を受けるだけで時間感覚を乱されて攻撃のタイミングをずらされてしまう。作中、武田側の忍者がまるで手出しできないという壊れ性能を披露している。

  • 通鬼交

「秘戯書争奪」の木ノ目軍記が使用。『医心方』の房内篇に記された“断鬼交”を応用して生まれた忍法で、自在に春夢を見て同時に女性にも同じ春夢を見させる、いわば夢の中で犯して心身を完全支配するというものである。当初は術者も半分夢見た状態でしか行使できなかったが、研鑽の末に視線を交わすだけで相手の夢の世界に入り込むという能力を獲得している。敵からすれば無害としか思えない女性が突如として刃を構え襲い掛かる文字通り悪夢の忍法だが、致命的な弱点が存在した。

  • 幻眠の術

これのみ短編。「さまよえる忍者」の滝川右近が使用。視線を介して相手の肉体に己の精神を投射して乗っ取る。要は相手は己の体の中で人事不省に陥り、自分は相手の体で好き勝手できるというとんでもない忍法である。当初は“傀儡精”という別の忍法に発展したが、後に睨むだけで相手の肉体を乗っとるという幻眠の術本来の能力を発揮した。しかし、これが右近に破滅的な結末をもたらし、読者にも無関係でない結果を残すこととなる。

その他

漫画「NARUTO-ナルト-」をはじめ、多数のアニメや漫画、ライトノベルで「瞳術」という言葉は使われている。また、瞳術の設定内容は作品によって異なる。

更に、瞳術に似た(近い)もので、「目に宿る力」の設定は多数あり、邪眼魔眼呪眼等と言った呼ばれ方をするものもある。

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