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概要

1956年制作。

当時はまだ荒唐無稽とされていたSFに「潜在意識」「自我の関係」といった心理学を取り込んだ異色作にしてSF映画の金字塔的作品。

一部の特撮にアニメーションが用いられており、ウォルト・ディズニー・カンパニーが協力している。

今作に登場するロビー・ザ・ロボットはSFに登場するロボットキャラクターの一つのモデルを確立した。

あらすじ

西暦2200年。人類は地球を離れ、宇宙に移民する時代を迎えていた。

アダムス機長率いる宇宙船「C-57-D」は、20年前に消息を絶った移民船団の調査の為惑星「アルテア」に到着する。

移民船団で生き残っていたのはモービアス博士とアルテアで生まれた博士の娘のアルティラ、博士が開発したロボットのロビーのみ。

モービアスは、かつてアルテアにはクレール人という高度な科学力を持った先住民が存在したが、突然滅亡してしまったと語る。そして到着した移民船団は正体不明の怪物の襲撃を受けて自分たち以外全滅してしまったという。モービアスはクレール人の遺跡に残っていたエネルギーを作る設備を解析し、生き残るために肉体を飛躍的に向上させ、ロビーを作ったのだった。

もうじきC-57-Dも怪物の襲撃を受けると語るモービアス。そして彼の予告通り、謎の怪物が襲撃してきた。怪物の正体は?アダムス達は惑星から脱出できるのか?

キャスト

モービアス博士:ウォルター・ピジョン

アルティラ:アン・フランシス

アダムス:レスリー・ニールセン

劇中の舞台

アルタイル4(アルタイル第四惑星)

宇宙移民団が、地球時間で20年前に移民し、その後連絡を絶っていた惑星。

重力に大気組成は地球と同じで、呼吸や生存に支障はない。しかし惑星自体の自然環境は、荒野が広がっているのみで、現在は生物の姿は見られない。原生の植物も無い様だが、移民団が持ち込んだと思われる植物は植生していた。

移民団の生き残りは、現在はモービアス博士と、その娘アルティラのみである。

その地下には、かつてのこの惑星で繁栄を誇った「クレール人」の残した、広大な遺跡が残っている。

クレール人

アルタイル4の先住民族である宇宙人。現在は絶滅し、地下遺跡のみがその存在を示しているに過ぎない。

かつて大変な進化をとげ、極度に発達した科学を創り上げていたが、解明されていない原因で突然に滅亡したとの事。

クレール人の地下遺跡

アルタイル4の地下に存在する。

劇中の、2200年代の地球を遥かに上回るオーバーテクノロジーが隠されており、モービアス博士はそれを研究し続けている。

博士によれば2000世紀は前の遺物だが常に自己保存と修正が行われており、機能が全く失われていないとのこと。

巨大なエネルギーを生成する設備が存在し、モービアス博士により一部が分析され、使用している。その結果、モービアス自身の能力も飛躍的に上昇する。

ロビーは、能力が上昇したモービアスにより設計・製造されたもの。

謎の怪物

モービアス博士が言及した、正体不明の怪物。

その姿は完全に透明であり、人間の肉眼ではとらえる事は不可能。ただし、透明とは言え質量は存在し、足跡を残す事は可能。

また、こちらからの物理的な攻撃は不可能。

アダムスたちに対し、明らかな敵意を有し、クルーやC-57-Dを襲撃した。

しかし襲撃の際に、C-57-Dの周囲に展開していた電磁バリアにより阻まれ、その放電によりわずかにその姿が浮き上がる。

※画面左奥の怪物。

その姿は、巨大なゴリラやライオンにどことなく似ている巨大な顔面と、腕を兼ねる前足のようなものが見えたのみで、全体像は不明(ただし、あくまで「どことなく似ている」だけで、実際にはどんな動物にも似ておらず、共通点は見いだせない)。

残された足跡から、石膏の型を取る事に成功。そこから察するに、巨大な爪を有している形状かつ、四足歩行に適した足なのに二足歩行をすることも判明する。つまり、『生物の進化の法則を無視した形状をしている』事に他ならない。

この謎の怪物により、モービアスとアルティラ以外の移民たちは殺害されてしまった。

関連タグ

MGM SF映画

冒険の惑星:翌年公開された、ロビー・ザ・ロボットが登場するSF映画。資料によっては「続禁断の惑星」というタイトルも散見されるが、ロビーが出演する以外、内容や物語に関係性はない。

伝説巨神イデオン:今作に大きな影響を受けた。監督を務めた富野由悠季は本作に対し複雑な感情を抱いており、多くの場で度々言及している。

怪物の正体(ネタバレあり注意)

※この先、ネタバレが存在します。

モービアスの娘、アルティラは、アダムスと恋仲に。

アダムスはモービアスとアルティラを、せめてアルティラだけでも地球に連れ帰ろうとする。

しかし、怪物は再び出現。そしてその際、クレール人の遺跡の装置が稼働し、エネルギーが最大出力に達している事に気付いたアダムスは、モービアスを問い詰め、怪物の正体を見破る。

あの透明な怪物、その正体は「イドの怪物」なのだと。

イドとは心理学用語で潜在意識の中の本能的な欲求のこと。つまり、モービアスの潜在意識、自我そのものが、遺跡の装置により増幅され、具現化した存在が、あの怪物の正体だったのだ

移民団やC-57-Dの乗組員を襲った怪物も、実はモービアスの潜在意識、秘めた憎しみのなせるわざであった。

そして、クレール人が滅亡した理由も、この潜在意識の具現化によるものだった。クレール人自身もまた、自らの潜在意識を制御できず、それが巨大なエネルギーと化し、互いに殺し合い自滅したのだと。

イドの怪物は、分厚い鉄の扉を破り、モービアスとアルティラ、そしてアダムスらに襲い掛かる。ロビーに怪物を攻撃しろと命じるモービアスだが、ロビーは怪物が元々主人であるために攻撃ができない。

自分の悪しき心と向き合ったモービアスは、そのまま怪物の前に立ちふさがり、致命傷を負う。

自分自身を攻撃した怪物は、そのまま消滅。しかしモービアスは致命傷を負った。

モービアスは、遺跡の自爆装置を作動させ、アルタイル4とともに滅ぶ道を選ぶ。

そしてアダムスは、アルティラとロビーを伴い、C-57-Dでクルーたちとともに脱出。

アルタイル4の爆発を見つつ、地球へと帰還するのだった。

評価

高校時代に本作を鑑賞した富野由悠季は2008年のインタビューの中で否定的な評価を下している。富野は「SF映画は画面が広くあるべきなのにセットで撮影しているのが丸わかりで死ぬほどつまらなかった」とカメラワークを酷評した。また、イドの怪物が鉄の扉を破って攻めて来るシーンについても後年にダメ出しをしており「向こうからつついてるな!っていう感じが見えるんで、ああ、これはダメ!本当はリアルに落ちなくちゃいけないのに!って、本当にゲッソリしました」と苦言を呈している。

本作を始めとした同時期の映画について富野は「SF好きのヤツは物語を作ることを知らない。演劇というものに興味を持ってないだけに、人を動かして劇を作っていくという一番根本的な作業を知らないのではないかな」と悟ったという。

その一方で、2024年のインタビューの中では「あのね、名作なんだけれども……」と前置きした上で本作について語っている。

若干唐突な終盤のくだりについては「そこにいくプロセスが全くないのですごく子ども騙しな作りだと思った」と批判しており、「伝説巨神イデオン」を監督した際はそれを解消するために反面教師として意識していたという。とはいえ、ラストで描かれる心理的なテーマには「まさに人間の深層心理にある衝動みたいなものをどういう風に映像化していくかということを、確かに『禁断の惑星』から教えられました。教えられたからこそ、その部分の記憶があるから『イデオン』ができたんです」と自作に影響を与えたことを認めている。

このように、富野は本作に対して賛否両論の評価を下してきたが、良くも悪くも多大な影響を受けたことは公言しており「ですから僕は『禁断の惑星』は、あのイドのところがない限り、それまでは大好きな映画なんです」と思い入れの強い作品として挙げている。

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