概要
鳥山石燕著の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』にも記載されている中国や日本、琉球の伝承に伝わる芭蕉の精霊(妖怪)。
文献によっては芭蕉の精という名で紹介されているものもある。
芭蕉の霊が人に化けて人を驚かせたり誑かす存在で、中国の説話集『湖海新聞夷堅続志』などでは芭蕉の精が女性の姿に化身して読経中の僧侶の元を尋ねる話が記載されており、『今昔百鬼拾遺』の解説文によれば、この話を元に日本の謡曲「芭蕉」が作られたとされる。
また、琉球(沖縄県)では芭蕉から繊維を取る為に作られた“蕉園”と呼ばれる場所を夜更けに通ると異形の者の姿で現れて人を驚かせるといわれており、これを避けるためには刀を手にしていればよいとされる。
また、琉球では午後6時過ぎに女性は芭蕉が生い茂る場所の中を歩くことが戒められており、もしこの戒めを破って芭蕉の元を歩くと美しい男性あるいは様々な化け物に出会い、それらを目にすると必ず妊娠させられてしまうとされ、身籠った子供は10ヵ月後に産まれるが、その子供は牙を生やした鬼の様な子供であり、しかもその後にも毎年同じような子供を産み続けてしまうとされる。なお、このような子供が生まれた時は熊笹を粉末にした物を飲ませて殺さなくてはならないといわれている。
そのほか、信州(現在の長野県)に伝わる伝承では僧侶が寺で夜通し読書をしていると何処からともなく美女が現れて誘惑して来たので、怒った僧侶は短刀で斬り付けると女は血を流して逃げ去って行った。翌朝、僧侶が血の跡を辿って行くとその後は庭まで続いており、庭に植えられた芭蕉が切り倒されていたという。